社会問題小説・評論板
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- はりぼて王国の女王様。
- 日時: 2017/08/16 01:42
- 名前: 小麦 (ID: Uk0b6ssr)
私立黎明女子学園。——屈指のお嬢様学園。
選りすぐりのお嬢様達が通う、正に白亜の宮殿のような学園。
しかしその中にも、やはり『格差』が有った。
私、——伊集院小瑠璃こそがそのピラミッドの頂点。
容姿端麗、文武両道、大企業伊集院グループ会長の一人娘。
私はこの宮殿の女王様。
下級生は勿論、同級生、上級生も私には敬語を使う。
私の命令は絶対。逆らうなんて絶対に有り得ない。
—こんなに完璧な私も、ストレスは溜まる。
高貴な家柄だから、作法には気をつけなくてはならない。
屋敷内の乱れた言葉はけして許されない。
常に文武ともに学園のトップでなければならない——。
そのストレスを発散するには人間を甚振るのが一番。
逆らう生意気な小娘は、私が自らの手で『制裁』する。—学園の掟。
小娘は私たちの格好の玩具になって、壊れて果てる。
だって私は女王様、周りの小娘はすべて奴隷なんだから。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.45 )
- 日時: 2015/08/07 15:16
- 名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)
その後の昼休み、私は凄まじい物を見た。
まるで女王の風格を漂わせながらあの伊集院小瑠璃に立ちはだかる真里亜。
その隣にはあの香澄がいて、側近のように真里亜に付き添っていたかと思って何かとごちゃごちゃと言っていたと思うと、おもむろに小瑠璃の椅子を蹴った。
右に倒れ、踏まれる小瑠璃。すると周りのいくつかの人間がハイエナのように集まってきて、小瑠璃を殴る蹴るの暴力に晒した。
「ザマーミロ、だね」
そう話しかけてきたのは紫乃ちゃんだった。
紫乃ちゃんとは、真里亜ちゃんを通して友達になった。好きなアイドルグループが同じだったので、けっこう仲は良かった。
ちょっと調子に乗りやすいけど、いい子だった。
でも今の紫乃ちゃんは憎悪の念に顔を歪めていた。
「あいついつも偉そうだったから、嫌いだったんだよねぇ」
そんな無茶な。
でも私は、顔を無理にほころばせて笑いながら相槌を打った。
1ヶ月ほど経っても、小瑠璃は同じような仕打ちを受けていた。
ある日下校しようとしていた私と紫乃は、相変わらずボロボロの小瑠璃を見かけた。
すると、紫乃ちゃんがその情けなくボロッちい背中にいきなり蹴りを入れた。
小さく悲鳴を上げて倒れる小瑠璃。
その後も紫乃ちゃんは小瑠璃を蹴り続けた。
「精華もやりなよ、スカッとするよ」
止めろ。
ここでいじめに加わったら、香澄の思うつぼだ。
だけど私は断れなかった。
「うん、もっちろん」
いつの間にか私は、小瑠璃を紫乃ちゃんと一緒に痛めつけていた。
「ねぇねぇ紫乃ちゃん、もっと強く蹴らなきゃ駄目じゃない?」
いつの間にかそんな事も言い出した。
「そう?じゃあ私と清華ちゃんで、いっせーのーせで蹴ろうよ」
私は完全に堕ちていた。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.46 )
- 日時: 2015/08/07 15:33
- 名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)
私たちはその後もだらだらと、小瑠璃の痛めつけられる様子を眺め、気が向いたら自分達も加わるという自堕落な立場に立っていた。
代わり映えしない毎日。だが、私の心境は少しずつ変わって行った。
小瑠璃を痛めつけることに抵抗心を無くしていったのだ。
最初は小瑠璃の悪口に対して、当たり障りの無い、お茶を濁すような態度で接していた。しかしいつのまにか私は、小瑠璃の悪口を言う側になっていたのだ。
最低人間に堕ちていた私に、転機が訪れた。
海外留学の誘いがきたのだ。
もともと私は小学校2年生までアメリカで暮らしていて、英語は堪能だった。
それをさらに伸ばすための語学留学の誘いだった。
私は直ぐに申請をし、秋にはアメリカに発った。
そして2年後、帰ってきた頃には私は中学1年生になっていた。
家庭教師をつけて2年間空白となっていた部分を春休みの間に学び、取りあえず教育面での遅れはカバーできた。
そして学園に復帰し、私が初めに会ったのは紫乃だった。
「やっほう、精華ー!!超久しぶり、寂しかった!」
「えへへ久しぶり紫乃ー。どう?元気だった?」
「もっちろん!あのね…」
私と紫乃はしばらく他愛のないおしゃべりをしていた。
すると紫乃は、こんな話題を出した。
「ねえ、小瑠璃のやつ、まだしゃしゃってるんだよねえ」
「マジで?」
「精華ちゃんはあいつのこと、どう思ってる?」
「伊集院グループの娘だからって、ちょっと偉そうにしすぎじゃないの?ちょっとお金持ってるからってさ、女王様気取りしてたけど…って思うところはあるよね」
「分かるわー。あいつさ…」
この時私は知らなかった。
真里亜はとっくの昔に外国に行き、小瑠璃は学園を支配する女王として君臨していることには。
だからあんなことが言えた。
そして紫乃はそれを知って、私から小瑠璃の悪口を引き出したのだ。
これは後になって知った事だが、小瑠璃に関しての悪口を何かしらに録音して証拠を残し、提出するとなんと高価なアクセサリー、世界的ブランドのバッグなどとんでもない高級品を渡されるそうだ。
紫乃はおしゃれに敏感だった。
たぶんおしゃれの為、自分を飾るために私を売ったのだろう。
一連の発言を告発された私は、いろんな目に合った。
もうあの時のことは思い出したくない。
紫乃を突き落としたことも。
その後、殺されかけたことも。
忘れたい。
でも私は忘れるという事は許されないのだろう。
私は紫乃の罪よりもっと思い罪を背負っているんだから。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.47 )
- 日時: 2015/08/07 15:45
- 名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)
あの事件が起こり、
私が入院している間に真里亜は帰ってきていたらしい。
罪の無い、操り人形だった真里亜。
応接間で出会った小瑠璃と香澄、香澄はたぶん小瑠璃の方に寝返ったのだろう。
真里亜はどんな仕打ちを受けたのだろうか。
死ぬときはどんなに苦しかったのだろうか。
なにしろ集団に暴力を振るわれて死ぬのだ。
ああ。
私が、真里亜のあの姿を目撃したとき、逃げずに部屋の中にでも飛び込んでいれば。
私が、真里亜が香澄に脅されているときに飛び込んで、カメラを取り上げていれば。
私が、私が、私が、
真里亜を救うチャンスなんていくらでも私は持っていた。
全部怖かったんだ。
ごめんね、真里亜。
これぐらいじゃあ償えないかもしれないけれど。
私は倉庫から持ち出したガソリンを持って別荘からそう遠くない森に行った。
奥へ、奥へ、奥へ。
奥の奥にたどり着いたところで、私はガソリンを身体に被った。
残りのガソリンを周りに撒き、ポケットからライターを取り出し、手に近づける。
赤く熱い光が身体を覆った。
焼身自殺。
それは自殺方法の中でも特別に苦しいと言われる。
でも人殺しの私には、足り無すぎる苦しさだ。
ごめんね。
真里亜。
目を瞑る。
薄れてゆく意識。
私の心は真っ暗な闇に覆われる。
闇に身を任せる。
ごめんね、真里亜。
今そっちに行って、謝りに行く。
『昨日の昼ごろ、森の中に有栖川精華(13)さんとみられる死体が発見されました。死因は焼死、自殺と見られます。今後とも詳しい捜査を—…』
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.48 )
- 日時: 2015/08/08 10:08
- 名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)
4.西条可憐の理不尽な憂鬱
私はかわいい。
私は頭がいい。
それに運動神経も抜群で、
スタイルもいい。
髪もいつもさらさらで、
何をとっても完璧な人間。
なのになんであんな奴に従っているのか今でも分からない。
本当に馬鹿げてると思う。
放課後の空き教室に私は生意気な奴を無理やり連れ込み、痛めつけるのが私の日課で、私が私でいられる時だった。
「ほらもっと謝りなさいよ!」
私は私の肩にぶつかって謝りもしなかった女にそう叫ぶ。
女はがくがくと震えながら許しの言葉を請う。
「ごめん…なさい、…ゲホッ、許して、くださ…」
「声が小さいのよ!」
私はその女の脇腹に3発目の拳を喰らわせた。
「これでもう3回目よ、何度も失敗してるけどあなた本当に何も出来ない女ね。不細工だし」
うっうっと泣きじゃくる女に追い討ちをかけるように蹴りを入れる。
あの女、伊集院小瑠璃は学園カースト上位の人間を痛めつけるのが主流だけど、私は学園カースト下位の人間しかこういう事は出来ない。
もともとこの日課については、私と被害者以外は誰も知らない事だ。
あの女にばれたら大目玉どころかあの地獄の日々の再来だ。
私は無言で女の口をガムテープで塞ぎ、苦しみながら鼻息を荒くする女を引きずってトイレに放り込む。
カブテープをべりべりと荒っぽく剥がす。女は苦痛に悲鳴を上げようとしたが、すぐに塞いだ。
「床、舐めて」
女はトイレのタイルに這いつくばって、泣きじゃくりながら舌の先を少しだけ床に這わせた。
「そんなんじゃ足りないわよ」
私は女の頭を掴み、床に押さえつける。
顔を潰される痛みと、汚いという拒否反応で女はさらに泣いた。
だいぶスッキリした。
「今日はこの辺にしておいてあげるわ」
女は安堵の表情になる。涙も幾分か止まったようだ。
「同じようなことを繰り返したり、何よりもこれを他の誰かに告げ口したりしたら…分かってるわよね?然るべき処置を下すわ」
女はぐしゃぐしゃの汚らしい顔で何度も頷く。
急いで帰らなければ。今日はいつにもなく熱中してしまったようだ。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.49 )
- 日時: 2015/08/10 09:53
- 名前: みなみ (ID: l8Wvg9Qa)
こっそり読ませていただいております。
とても書き方や表現の仕方がお上手ですね。
これからも頑張って下さい。
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