社会問題小説・評論板
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- はりぼて王国の女王様。
- 日時: 2017/08/16 01:42
- 名前: 小麦 (ID: Uk0b6ssr)
私立黎明女子学園。——屈指のお嬢様学園。
選りすぐりのお嬢様達が通う、正に白亜の宮殿のような学園。
しかしその中にも、やはり『格差』が有った。
私、——伊集院小瑠璃こそがそのピラミッドの頂点。
容姿端麗、文武両道、大企業伊集院グループ会長の一人娘。
私はこの宮殿の女王様。
下級生は勿論、同級生、上級生も私には敬語を使う。
私の命令は絶対。逆らうなんて絶対に有り得ない。
—こんなに完璧な私も、ストレスは溜まる。
高貴な家柄だから、作法には気をつけなくてはならない。
屋敷内の乱れた言葉はけして許されない。
常に文武ともに学園のトップでなければならない——。
そのストレスを発散するには人間を甚振るのが一番。
逆らう生意気な小娘は、私が自らの手で『制裁』する。—学園の掟。
小娘は私たちの格好の玩具になって、壊れて果てる。
だって私は女王様、周りの小娘はすべて奴隷なんだから。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.5 )
- 日時: 2014/11/29 15:20
- 名前: 小麦 (ID: n6vtxjnq)
›シンジさん
コメント有難う御座います!
申し訳ございませんが、ある都合によりオリキャラは募集しておりません…!
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.6 )
- 日時: 2014/11/29 15:55
- 名前: 小麦 (ID: n6vtxjnq)
「っ…!?」
清華は直様顔を上げ、私の手を見て顔を青白くした。
「や、やめて!嫌だ、助けてえぇ!」
清華は可憐によって抑えられた手を振りほどこうとした。
けれどそれも無駄なこと。可憐は見かけによらず力が強く、空手インターハイで女子個人決勝で優勝経験もある。そんな可憐に清華などが敵うわけもない。
清華は可憐に押し倒され、無茶苦茶に殴られた。鈍い音が何度も響く。群集たちが恐れおののき、1歩後ろに下がる。
清華が怯んだ所で、可憐は清華に馬乗りになり、美鈴に合図をする。
美玲は、清華の黒髪の絡んだハサミを床に投げ捨て、2本の飛び縄で清華の手足を拘束した。私は清華を見下ろしながら言う。
「ちょっとチクっとするかもしれないけれど…頑張ってね、清華さん?」
「嫌っ…来ないでぇっっ!」
清華の服は上半身がたくし上げられ、白い陶器のような腹部が丸見えになっている。黒い画鋲が手から幾つか溢れる。1つ1つが床に落ちる度に清華は小さく叫び、首を振る。
「じゃあ…いくわよ?」
黒い画鋲の針先が清華の腹に入っていく。美鈴は壊れたように笑い出し、清華の顔を何度も激しく踏み始めた。
「小瑠璃様に対して謝りなさいよぉ!あっははははは!」
清華は今までにないほどの甲高い叫び声を出し、逃げ出そうとするが、手足はもう完全に縛られていることに気づき、絶望の表情になる。
1本目の画鋲が完全に清華に刺さる。清華はもう狂ったような声しか上げない。私はお構いなしに2本目3本目の画鋲を突き刺していく。時にはじわじわと、時には思い切り。
清華はその度に反応を変える、真から恨めしそうなうめき声を出したり、不協和音のような叫びを出したり。
3本目を指し終わったところで昼休み終了のチャイムが鳴った。基本的に私が昼休み後の掃除をサボってまで玩具遊びを続ける事は無い。それを知っている清華は、顔に安堵を浮かばせた。
「残念ね、私もっと清華さんと遊びたかったのに」
私は美しく立ち上がる。画鋲を手元のガラス瓶に戻し、美鈴と可憐たちはハサミの髪を払い、清華の足元の飛び縄を解いた。
群衆は緊張感を緩め、ざわつき始め、ドアから出て行く。何人かは清華に憎しみの表情を溢れんばかりにして、思い切り清華を蹴っていく。清華は小さく痛々しい叫びを上げる。
「さようなら、清華さん」
私は可憐と美鈴を引き連れ、最後にドアから出る。清華はしゃがみこんだまま、肩の力を抜き、画鋲を取ろうと手をかけた。——そうはさせない。私は最後に清華に言い放つ。
「下校の時間まで、画鋲を抜いちゃぁ駄目よ?」
清華は目の光を失った。私たちは泣き叫ぶ清華を尻目に、空き教室から去った。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.7 )
- 日時: 2014/12/12 19:27
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
気だるい清掃時間も終わり、5時間目の体育の支度を始める。
体育服を美しく着こなし、手鏡を睨みながら身だしなみを整え、下ろしていた髪をポニーテールに括る。一通り終わらせると、美鈴と可憐が近寄ってきた。
「…あの、小瑠璃様」
「何かしら?美鈴」
「お頼みになった、有栖川清華…の、交友関係を調べて参りました」
「あら、有難う。ご苦労だったわね。」
そう。私は美鈴と可憐に、清華の交友関係を調べるように頼んでおいたのだ。
「それにしても小瑠璃様」可憐が首を態とらしく傾げる。
「何故あの小娘の交友関係などお知りになりたいのですか?」
「うん、ちょっと考えがあって…ね。」私は言葉を濁した。
「そうですか…あ、こちらです」可憐が小花柄のメモ用紙を手渡す。
綺麗な4つ折りを開く。幾人かの名前が記されているのが見える。
「特に仲が良かった—いわば親友は、一番下に記してある…」
一番下に目を走らせる。——有った。
「綾小路紫乃…」
美鈴が小さく頷く。確か清華と同じく1年3組の大手不動産屋の次女だ。
「二人はご両親も仲が良く、幼馴染だったそうで」
「…クラスでは過去の有栖川清華と同じく、比較的目立つポジションでした…あ、これ、その娘の写真です。一年前のものですが」
美鈴が薄緑の封筒から白黒コピーされた写真を取り出し、私に差し出す。
かなり画質も悪く、若干ぼやけている。しかし、整った顔である事は十分に分かった。一際目を引くような美人だ。まぁ、私には及ばないが。
「綾小路紫乃。少々強気な所がありますが、本質はけっこうな弱虫です。周囲からはまぁまぁな人気者で、クラス内での地位も結構高かったようで。一部の劣った生徒を顎で使うようなことも有ったようです。」
「あの小娘…綾小路清華は、彼女にとっての親友でした。ええ、親同士の付き合いもあり、昔からよく一緒にいた、とのことで」
「ただ今日小瑠璃様の制裁…に、ショックを受けたようで。今日は一日中塞ぎ込んでる、との事でした」
「…相当、仲がよろしかったんでしょうねぇ」
私は皮肉たっぷりに微笑む。クラス内は突然静まり返った。
「友情なんて所詮気の迷い、ただの錯覚よ」
「小瑠璃様、まさか…」美鈴が言う。でもそれは恐怖に満ちた声ではなく、期待と嫌味に満ちた声だった。可憐は無言でにんまりと笑っている。
「ねぇ私、その娘と遊んでみたいわ」
静まり返ったクラスには不穏な空気が流れ始める。どの生徒も私に強烈な視線を送っている。——最早見慣れてしまった、驚愕と、恐れと、期待に満ちた視線を。
私は構わず続ける。
「そうね、清華さんも楽しいんだけど、その—紫乃さん?とも遊びたいわぁ。一緒に遊ぶっていうのは、どお?」
「大変…面白いことを思いつきましたね。流石、小瑠璃様です」
「えぇ、さぁっすが小瑠璃様。紫乃さんと…遊べて、清華さんも嬉しいでしょう。だった二人は親友だもの」
可憐と美鈴は口々に言い合う。—良い腰巾着っぷりだ。
「可憐も美鈴も、大賛成なのね。じゃあ清華さんにもその事を伝えなきゃね。放課後にお誘いしてくれない?可憐」
「いいえ…その必要はないと思われますよ、小瑠璃様」
可憐はにたにたと笑う。
「ふうん…何故なの、可憐?」
「だって私、知ってるんですもん」
「本日の—中等科一年合同の体育は、体育教員の皆様方が揃いも揃って不在。突拍子もない出来事でしたので、時間割を変更するわけにも行かず、——好き勝手に遊んでていいんですって」
可憐は残酷にくすくすと笑う。
「そっか…なら早速次の時間、清華さんにお伝えできそうね?」
「えーえ。楽しみですねぇ、小瑠璃様?」
「それよりたった今予鈴がなったところです。急がないと遅刻してしまいますよ、小瑠璃様」
「あぁ…楽しみ過ぎて耳に届かなかったわ。さ、行きましょ。」
私たちは静まり返ったままの教室を後にした。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.8 )
- 日時: 2014/12/12 20:07
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
校庭に出ると、日差しが私の頬を突き刺した。
鬱陶しい暑さが体中に広がっていく。それに乗っかるように、ある少女が鬱陶しい笑顔を抱えて走り寄ってきた。
「小瑠璃様っ、こんにちは!私です、香澄です!ご機嫌如何でしょうかっ?」
この娘はこの私の取り巻きの1人。早く言ってしまえば可憐と美鈴の様な物だ。—だけれど、あの2人とは格が違う。彼女はランクの低い「取り巻き」だ。こういう低ランクの取り巻きを、最高ランクの可憐と美鈴は極度に嫌う。
「えぇっと…香澄、さん?何香澄さんといったかしら?」
「うふふ、御免なさいね、私達物忘れが酷くて」
可憐と美鈴は完全に見下した様子だ。香澄は嫌な表情ひとつ顔に出さず、笑顔だけを顔に満たしっぱなしにしている。
「1年2組の、甘露寺 香澄です!以後、お見知りおきを!」
香澄は頭をぺこぺこと下げる。嫌らしい、汚らしい笑顔を引っさげたまま。
私は気にもとめず、彼女を軽く押す。
「香澄さん、申し訳ないんだけどちょっと退いて頂戴な。こんな狭い通路で真ん中に立っていたら、邪魔よ。現にあなた、道を殆ど塞いでしまってるわ」
香澄は慌てて右端に退く。失礼しましたとまたも頭をぺこぺこと下げる。
私たちは頭を下げっぱなしの彼女をほうったまま足を進める。
—居た。
一人でとぼとぼと歩く、短くなった髪をぼさぼさにし、心底怯え切った表情の清華。此処に来る前に暴力を振るわれたのだろうか。体操服には幾つかの足跡と、黒い汚れが付着し、白く細い腕は所々赤く腫れている。
周りの生徒は常に彼女の半径50センチ位離れ、彼女に気付かない振りをする。
「——清華、さん?」
清華はびくりと肩を震わせ、ゆっくりとこちらを振り向く。目には泣きはらした跡が残っていて、頬には擦り傷が付いている。
「ふふっ。清華さん、また一緒に遊べるわねぇ」
清華は「や、嫌だ」と呟いて足を震わせる。
「何よ貴女、その態度は」
「そうよ、貴女は小瑠璃様に見込まれたのよ?感謝のひとつふたつ、必要じゃないのかしらね?」
「え、う、嘘…っ」目を潤ませる清華。私をちらと見やる。にっこりと微笑んでやると、瞬時に顔を背けた。
「跪きなさいよ、さ、や、か、さん?」
可憐が威圧感たっぷりの顔で睨む。
清華は為すすべもなく、弱々しく跪いた。小さな泣き声も聞こえる。
可憐が頭を数回蹴り続ける。清華はただ呻きながら終わりを待つ。
「私があなたを選んであげたのよ。さ、感謝の言葉を。」
「…こ、小、瑠璃ぃっ、様…に、選んで、い、頂けて…はぁはぁ…っうあ、有り難、っき…うぅ、しっ…っ、げほっ、し、幸せ…」
「よく出来ましたぁ。じゃあ清華さん、5時間目一緒に遊びましょうね。体育倉庫前で待ってるわぁ。」私はひらひらと手を振って去る。
「う…」清華は弱々しく立ち上がり、またふらふらと歩き始めた。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.9 )
- 日時: 2014/12/13 14:38
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
体育館倉庫前。5時間目はもうとっくの昔に始まっている。
噂を聞きつけた民衆共は、緊張と期待を押しつぶしながら見に来ていた。
「…来ない」
美鈴が、ぼそっと呟く。
そう。私の玩具、有栖川清華は、未だ来ていないのだ。
「小瑠璃様との約束をすっぽかすなんて、何処まで愚かなのかしら、あの小娘」
可憐は軟式野球用バットをぶっきらぼうに振り回しては舌打ちを繰り返す。
「ああぁ…もう10分も経ってるし。ねぇ小瑠璃様、小娘、もしかして逃げたのではないですかねぇ?そうだったら厄介な事になりますよぉ」
「そうです小瑠璃様。あの小娘を、その辺の下郎にでも探させたら如何でしょうか」可憐は民衆を見やり、くいと顎を突き出した。
「…もう、手は回してあるのよ」
私の言葉に可憐と美鈴は目を見開いた。
「どういう事でしょうか?」
「行ったままよ。それにしても遅いわねぇ…あ、ほら」
遥か向こうに2人の人影と、それを遠巻きに見守る幾人かの影があった。
「ちょっとぉ!貴女は小瑠璃様を待たせているのよぉ!ほらっ、もっと早く歩きなさい、よおぉっ!」片方の人影はもうひとつの人影を蹴り、殴る。
「…ひぐっ!ご、御免なさ…ぐ、ぅ…はぁ、はぁ…」片方の人影は今にも倒れそうな脆い体制でよたよたと薄汚く歩く。—見覚えのある、2つの影。
「ご苦労様、甘露寺香澄さん、また会ったわね、有栖川清華さん」
「—はぁ!?あいつぅ!?」
1拍可憐が素っ頓狂な声を上げる。そして何処か納得いかないような顔をし、
「小瑠璃様…あの娘に清華を連れてこさせたのですか?あの娘…香澄は、何時どう裏切り、変な気を起こすのか分からない奴なのですよ?」
「でも現にこうして玩具を持ってきてくれたじゃない。少し遅かったけれど」私はにっこりと微笑んであげる。香澄は立て板に水に話し始める。
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