社会問題小説・評論板

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はりぼて王国の女王様。
日時: 2017/08/16 01:42
名前: 小麦 (ID: Uk0b6ssr)





私立黎明女子学園。——屈指のお嬢様学園。
選りすぐりのお嬢様達が通う、正に白亜の宮殿のような学園。
しかしその中にも、やはり『格差』が有った。

私、——伊集院小瑠璃こそがそのピラミッドの頂点。
容姿端麗、文武両道、大企業伊集院グループ会長の一人娘。

私はこの宮殿の女王様。
下級生は勿論、同級生、上級生も私には敬語を使う。
私の命令は絶対。逆らうなんて絶対に有り得ない。

—こんなに完璧な私も、ストレスは溜まる。
高貴な家柄だから、作法には気をつけなくてはならない。
屋敷内の乱れた言葉はけして許されない。
常に文武ともに学園のトップでなければならない——。

そのストレスを発散するには人間を甚振るのが一番。
逆らう生意気な小娘は、私が自らの手で『制裁』する。—学園の掟。
小娘は私たちの格好の玩具になって、壊れて果てる。

だって私は女王様、周りの小娘はすべて奴隷なんだから。

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.35 )
日時: 2015/07/29 02:55
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

昼休み。

用意された大きな布袋とロープと手足を縛られた真里亜。

「入れて」

叫ぶ真里亜を美鈴と可憐が押さえつけ、大きく口を開いた袋に詰め込む。

その口をロープで縛り、そして水道管に括りつける。ちょうど大きな巾着が吊り下げられている様だった。


「あの醜い肉袋を叩きなさい」
場がざわつく。
怖気づく小娘共に、私は舌打ちで催促する。小娘達は最初は恐る恐るだが、次第に乱暴になっていき、エスカレートは止まらない。

もはや悲鳴すら上げなくなった肉袋。民衆の疲労が目に見え始めたところに、すかさず香澄がロープを切り落とし、袋はどさりと重量感のあるが冷え切った死体のような音をたてて落ちた。

解かれるロープ。袋をひっくり返すと、虫の息の真里亜が飛び出た。

「随分と無様な格好ね、この豚が」
私はゆっくりと黒光りするローファーで真里亜の顔を踏みにじる。

「死ね」

「死ね!死ね死ね死ね死ね!死んじゃえ死んじゃえ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」

一瞬、自分から出た言葉とは思えなかった。
女王様とはまるでかけ離れた、少女の憎悪に満ちた叫び。そこに居たのはセ世界屈指の完璧超人なお嬢様、「伊集院小瑠璃」ではなく弱く醜い「小瑠璃」そのものだった。奴隷たちは呆然とそれを眺める。私はそれもお構いなしに叫びながら真里亜の身体に暴力を振るう。でもそのとき、気付いてなかった。私は気付いてなかった。香澄も気付いてなかった。美鈴と可憐も気付いてなかった。みんな気付いてなかった。小瑠璃を呆然と見ていただけだった。気付いてなかった。気づけなかった。





誰も気付いていなかった。


真里亜が息絶えてるなんてことに。




Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.36 )
日時: 2015/08/04 08:01
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

3.有栖川精華の哀れなる真実

拝啓 夜船月乃様

こんにちは。お元気ですか?
私の怪我は大分快方に収まり、今は別荘で休養をとっています。
私の実家にはあの事件のことで未だにテレビ関係者や物好きの野次馬がやってきます。私は未だに家に帰れません。

紫乃の父親はあの事件のせいで解雇され、今は資産で食いつないでいるものの、もともとは貧乏な家計だったようなので資産がそろそろ尽き果て、それに連日連夜いたずら電話がかけられ、ポストには嫌がらせの手紙がぎっしり詰められ、町を歩けば睨まれ、もうお金も人望もないなら、一家心中しかないと紫乃のお姉ちゃんがぼろぼろ泣きながら話していました。

いくら紫乃が私を切りつけて殺しかけたといって。
本当に悪いのはあの女だ。
あの女が裏で全部操っているくせに。
憎い。
憎い。
あの女はなんで死なないのか。
死ね。死ね死ね死ね。
こんな人生は、無意味だったと思う。
あの女に操られて生きてきたあの日々は私の汚点だった。
消し去りたいけど消えない。
私の身体に残った傷跡も消えやしない。完治は諦めた方がいいと医者に言われた。私はあの女に傷つけられたという紋章を一生身につけていくのかと思うと死にたい。
ごめんなさい。久しぶりに出す手紙だというのにこんな内容になってしまって。
月乃ちゃんは今の引越し先はどうですか?
そんなに若いのに使用人扱いって酷いと思います。
いくらそういう家系だからって。
同年代の女の子にいろいろと言われたら、私だって耐えられません。
耐えられなかったし。経験上。
本当に死にたい。どうか殺してと思っても死ねない。月乃ちゃんはどうか



鉛筆がぽきりと折れた。
ふと自分の書いた文面を見直す。
…駄目だ、こんな手紙。久々に手紙を送る昔の友達には見せられない。
ていうか最低じゃん。友達にしか吐き出す場所が無いとか。
ゴミ箱に手紙を捨てたと同時にベッドの横に置かれた小さな液晶テレビに目を向ける。思わず瞳孔が開いた。


『黎明女子学園生徒 生徒内で集団リンチ 被害者は死亡 前回の事件とも関係か』

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.37 )
日時: 2015/08/03 11:15
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

「速報です、…本日未明、黎明女子学園にて生徒内での集団リンチが発覚、被害者は死亡しました。詳しい情報はのちほど—…」

集団リンチ。あれしかない。あの伊集院小瑠璃の女王ごっこ。
いよいよ死者が出た。
誰が死んだ?…誰が殺された?


ガチャリ。
「お嬢様、昼食のお時間です」

婆やだ。
「あの…ちょっと調べたいことがあるから、後でにしてくれない」
「いいえ、大分待ちましたよ。お嬢様がずっと寝ていたので…そろそろ冷めてしまいます、後回しに来て早くお食べになってください」
「そう…じゃあ行くわ」

早く詳細を知りたいけど冷めたご飯を食べるのは避けたい。さっさと昼食をとることにした。

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.38 )
日時: 2015/08/03 20:48
名前: 哀霧 (ID: J1W6A8bP)

どうも、哀霧と言う者です。

ちょっと前からこの小説を拝見させて頂いていましたが、



・・・凄いですね。文才。

私とは大違い。怖い。凄過ぎる。

一回読み始めたら見入っちゃいます、はい。

真里亜・・・死んじゃったか、あーあ。

小瑠璃様、これからどうするんでしょうね?


・・・あと、少し気になってるのが、

>>36の、「有栖川香澄の哀れなる真実」の、

「有栖川香澄」って、誰ですか?

有栖川清華じゃ無いんですか?

私の間違いだったら申し訳ありません・・・。

小説、とても面白かったです!

更新待ってます!

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.39 )
日時: 2015/08/04 08:01
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

>>38

哀霧さん、コメント誠に有難うございます!
大変励みになります。

名前に関しては、間違いです…
哀霧さんの言うとおり、「有栖川香澄」ではなく「有栖川精華」が正しいです。
久しぶりに登場させるので、気付かないまま間違ってしまったようですね。
修正しておきます。

ご指摘、本当に有難うございました!
拙い文章ですが、また読んで頂けると幸いです!


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