複雑・ファジー小説
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- ジアース 〜沈んだ大陸〜
- 日時: 2011/10/27 21:16
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
スレ設立日時 2011/09/02 22:01
初めまして。こんにちは。ハネウマと申す者です。
ここでは今年の七月九日ぐらいに完成した小説を一日一回のペースで少しずつ投稿していこうと思っています。
はっきり言って、駄作です。特に序盤なんか手探りな感じで・・・ちょちょっと待った、ブラウザバックしないでください!終盤になると幾分かマシになりますから!いやホントよろしくお願いします!
駄作とわかっているなら修正しろって話ですが、アレです。面倒くさい(殴
それとこの「沈んだ大陸」の続編を今執筆中でそれもいつか投稿する予定だからたとえ駄作でも載せとかないと嫌なのです。
コメントには誠意を持って返信したいと思います(訳:頼む・・・コメントを・・・コメントをくれぇ・・・)
多少のグロはあると思います。いやこれってグロって呼べるのか?ぐらいです。十二歳以上なら全く問題ないと思います。
コメディ・ライトの方では「茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく」という小説を投稿しています。気が向いたら見てやってください。
参照のURL、ブログの方も毎日更新中なのでこれも気が向いたら見てやってください。
では物語へ。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.14 )
- 日時: 2011/09/13 18:29
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼魔獣討伐後
「ありがとうございます」
ソロドラの村長が言う。「予言の旅人さん。本当に感謝してもしきれないです」
「そうだ、ありがとよぉ」「たびびとさんありがとー!」「ゆっくりしていってね」
「当然の事をしたまでですよ」村人たちに感謝され、僕は使い古された言葉で照れる。
今日中にでも帝都へは行けるが、宿屋でもう一泊する事にした。宿代はタダだ。
「ふぅ……いてて」ヘルガがベッドで昨日のように寝転がっている。
「見てたよ」「……何を?」「能力。風使いだったんだね」ヘルガが感動気味に言う。
「ああ……この能力が発動しなければ、僕は死んでいた」僕は手のひらで小さなつむじ風を起こしてみせる。
「でも僕は、本当にこれでよかったのかって、今更思う」
「どういうこと?」
「あの魔獣の頭領、人語が使えるとは聞いてなかったから……もしかすると、話し合いで解決できたかもしれない」甦る、魔獣を殺した時の感覚。ずぶずぶと胸を貫く時の嫌な音、感触。
「私はそうは思わないよ」ヘルガが寝返りをうち、胸の痛みにやや顔をしかめる。「相手は野蛮な魔獣。話し合ったって無駄だよ」
「そうか……そうだな、きっと」僕は顔を曇らせるが、納得することにした。
「さぁて! そろそろお昼ごはんかな!」ヘルガが張り切る。「食堂で待ってようっと」
僕は部屋から出てゆくヘルガの背を見、苦笑する。
自分の手のひらを見つめる。遂に僕も魔人になった……。達成感を覚える。やっとヘルガの仲間になれた気がした。
そして、僕も食堂へと足を運ぶ。
僕らはしばらくソロドラに滞在することにした。ヘルガは大丈夫だと言い張るが、村医者によると肋骨の怪我を治すのに二週間はかかるらしい。その時を待つ。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.15 )
- 日時: 2011/09/14 21:34
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼ソロドラを発つ
ヘルガの傷は完治し、僕らはソロドラを発とうとしていた。時間が早朝なのは、昼までに帝都に着くためだ。
「ふぁーぁ……」ヘルガの準備が遅い。
「欠伸なんてしてないで、早くして、ヘルガ」
「わーかってるよ……」「ちょ、それは宿の備品だ、持って行っちゃだめだろう」「あー、ごめんごめん寝ぼけてた」
準備は完了し、僕らは宿の主に挨拶する。「お世話になりました」「なーりまーしたー」
「よければまた来てくださいね」笑顔に見送られ、僕らはソロドラを発った。
帝都はここから北西にある。草原を歩き続けるにつれ、ヘルガの頭もはっきりしてきたようだ。
「私さー、実をいうと魔人狩りには憧れてるんだよね」寝惚け気味だった声色はいつもの声に戻っている。
「何故?」
「だってさ、旅をするにあたって、魔人を探すためという大義名分があるじゃん」
「確かに。逃げ回る必要が無い」
「でも私には魔力感知能力がさっぱり無いからそんな事もできないし、旅が終わるまで逃げ続けなくちゃいけない。魔人は辛いよぉ」
「辛そうな感じには聞こえないんだけど」「辛いんだってば! 笑ってても辛い時は辛いんだよー」
生暖かい風が僕らの服をなびかせる。「旅が終わるまで、って言ったけど、いつ終わらせるつもり?」
「ジアースのネルア地方から見て南、ラフロル地方にまだ言った事が無いんだ」ヘルガのボサボサの赤髪も風でゆらゆら揺れる。
「ラフロル地方?」
「うん。元々はベルタ王国の支配下にあった大きい島だよ。陸地の半分が樹海って言われてるとんでもない地方。そこを巡ったら旅は終わりかな」
「じゃあ帝都の後はそこへ行こう」言った直後、僕は僕に戸惑う。旅には危険がつきまとう事がわかった、なのに何故。
「え? ついてくるの?」「え……あ……ダメかな」
「いいよいいよ、一人旅は寂しいしね」ヘルガは笑顔で返してくれた。僕は安心する。
そうしていると、遠くに城が見えてきた。「あれがレゼラ城だね」「へぇ。随分大きい」
「そういえば、シムンは何しに帝都まで来たんだっけ?」
僕は背負った長剣の鞘を示す。「この鞘に合う剣を作ってもらうため……と、無くした記憶が取り戻せるかと思って」
「剣だったら『職人通り』に行けば作ってもらえるね」「職人通り?」
「うん。鉄器鍛冶やら何やら、色んな職人が密集してる通り」「そこに行けば、レビオレと会えるのか」
「レビオレ?」「ああ、ザッパの野鍛冶に聞いた、そんな名の刀鍛冶がいるって」僕は記憶を手繰り寄せる。
「じゃ、そこを目指そう」ヘルガが体をほぐす。「いや、その前に、ごはんかな」
- Re: 沈んだ大陸 ( No.16 )
- 日時: 2011/09/15 18:47
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼マジュル
「あなたが、レビオレさんですね」
薄暗く奇妙な臭いが充満する路地の隅にうずくまっている男がいた。僕は声をかけた。
「そんな名もあった」その男、レビオレは顔を上げずに答える。「今は、ちがう。今の俺は、ない」
「どういう事かはわからないですが」僕は手を差し伸べる。「僕に、剣を作ってもらえませんか?」
男が顔を上げた。僕が思わず手を引っ込めたのは、その顔が随分老けていて、よだれが口を滴っているからだった。
「無理だ」「何でですか? あなたは腕のいい刀鍛冶だったと噂に聞いていたんだけれど」その噂は、だが今は……と続く。
「無理なんだ」レビオレは頭を抱える。「今の俺は、剣をつくれない」
僕とヘルガは顔を見合わせる。「何でなんですか?」
「無理だっつってんだろぁ!」レビオレは声を荒げ、立ち上がろうとしたが滑って転んだ。周りに人はおらず、訝しむのはヘルガと僕の二人だけ。
「あなたは腕の立つ刀鍛冶だった。そうでしょう?」僕は根気よく尋ねる。
「無理だ」レビオレは倒れた体勢をそのままに、うわ言のように話す。「不可能だ」
僕はレビオレの手が、濃い黄色の液体が入った瓶に伸ばされているのに気づいた。レビオレはそれを手に取り、飲む。しわくちゃな顔が綻ぶ。
「今はマジュルを飲むことだけが生きていることだ」レビオレが言う。その血走った目は狂気に呑まれている。
「シムン、行こう」ヘルガが言い、その場を去る。僕はヘルガについていく。黄色のどろどろした液体を口元からあふれ出させるレビオレと呼ばれた男のみがその場に残された。
「な、ダメだったろ?」そう言う男の名はギエルといった。レビオレの居場所を教えてくれた刀鍛冶だ。
「……ああ」首肯する。「どうしてあんな風になってしまったんだ?」
「あいつ、マジュルがどうとか言ってなかったか?」「言っていた」「原因はそれさ。あれを飲むと頭がほわほわになって、幸せになるっつう代物だ。これだけだと良い物に聞こえるが、実際はそんなこたぁねぇ。飲めば飲むほど、頭がおかしくなり、最後にはああなっちまう」
「レビオレは何でそんなものに手を出してしまったのか」「わからねぇ。ただ……これは俺の推測だが、失恋したからだと思うんだ」
「失恋」「そうさ。近くの酒場の娘に恋心を抱いていたようなんだが……。不憫なやつだよ」
失恋は精神をそこまで追い込むものなのか。僕にはわからないが、よだれを垂らして僕を見たレビオレの姿は脳裏に焼きついている。
「治す術はない?」「そりゃ本人次第さ。本人が我慢できるかどうかだ。俺はそれを成功させた奴を知ってる」
「なんにしても、僕がここで剣を作ってもらわない理由は消えた」「そうかい。任しときな」ギエルは胸をどん、と叩く。
僕は長剣の鞘を机に置く。「この鞘に合う剣を作ってくれ」
- Re: 沈んだ大陸 ( No.17 )
- 日時: 2011/09/16 18:37
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼帝都
ギエルは剣を完成させるのに三日かけるという。
宿の予約を済ませ、僕とヘルガは帝都を見て廻ることにした。
「私は帝都に来るのは三回目だけど、ここは広いから道に迷わないようにしないとね」「ああ」
僕は行き交う人々の多さに戸惑っていた。荷物を肩に担いで運んでいる人や、玄関先を掃除している人、中には鎧を着た騎士の姿もある。
「まずは中央広場に行ってみようか」ヘルガが提案する。「色んな芸がみられるよ。ピエロの玉乗りとか」
「面白そう」僕は頷き、ヘルガについていく。歩く僕には全てが新鮮だ。商人が声を張り上げ宣伝する商店通りをくぐり抜ける。
中央広場には真ん中に大きな噴水があり、人だかりの向こうには楽器を弾き鳴らす人々。陽気な雰囲気に包まれている。
人だかりをかき分ける。「わぁ、あれなんて楽器だろう」ヘルガがはしゃいで指差す。金髪の男が——この帝都には金髪の人が多い——オカリナを吹いていた。その横にはチェロを弾く人、ギターを弾く人がリズムに体を揺らしながら演奏している。オカリナ奏者は表情豊かで観る者を魅了する。
情熱的だった。聴き入ると、体の底から力が湧いてきて、踊りだしたくなる。
「ね、いいでしょ?」ヘルガが楽しげに言う。
「本当だ」僕は心の底から同意する。
演奏は終わり、拍手が起こる。僕とヘルガもそれに加わり、辺りは拍手に包まれた。用意された箱に、次々と貨幣が放り込まれる。
興奮は次第に冷めてゆく。僕は視界の端に、薄暗い路地をとらえた。よく見るとうずくまった人がぽつぽつと居て、隣にはまっ黄色の液体が入った瓶。
「ヘルガ」「……うん。いるね。マジュル中毒者」ヘルガが嫌悪感を示す。
「前に来たときは、あんな人たちもマジュルなんてものもなかったはず」
中央広場の明るさとは相反する狭い路地の暗さ。表と裏。「異変が起きてるということか、ここで」
「よし」ヘルガが真剣な面持ちで言う。「異変の原因を探ってみよう」
僕は驚いた。「何故?」
「気になるからだよ。きっと裏でマジュルを売って儲けている奴がいるに違いない」
「そいつを特定して、どうする?」「説得するよ。やめさせるんだ。マジュルなんて人を壊すようなものを作っていいわけがない」
「確かにそう……いやしかし」僕は迷う。首を突っ込んでいい事なのだろうか。
「とにかく、私は聞き込みをしてみるよ」「あ、ちょっと……」ヘルガが早歩きで狭い路地に向かい、僕は仕方なく追いかける。
「茶色い髪の男だった」「背が高かった」「にこやかだった」「常に帽子を被っていた」
マジュル中毒者が言うにはこういう事らしい。勿論ろくに答えられない人もいたが、数々の意見を総合すると、マジュル売りの人物像が浮かび上がってきた。落ち込んでいる人間に優しげに声をかけ、マジュルを薦める。中毒者を大量に現し、マジュルを大量に売る。
「許せない!」ヘルガは中毒者たちに声をかける度にそう言った。「絶対犯人を見つけよう、シムン」
最初はあまり乗り気ではなかったが、僕も今ではヘルガに同調していた。金の為に人の心の闇につけこみ、心を壊す。そんな人間がのうのうと暮らしていていいはずがない。
聞き込みを続けるうち、帝都は夜の帳に包まれる。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.18 )
- 日時: 2011/09/17 16:59
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼闇を知る男
「よ、いっちょあがり!」
ひゅん、と振り、ギエルは僕に両刃の長剣を手渡した。「どうだ? 俺が作った剣は」
「すごく良い感じ」今までになく馴染む感触。
鞘も手渡され、剣をそれにゆっくりと、収める。
「どう? シムン」「うん。ぴったり合う」「記憶の方は?」「……全然。何も変わらない」僕とヘルガの二人はやや落胆する。
「で、旅人のお二方さんよ。これからどうするんだ?」
「……しばらく帝都を見て廻ろうかと思ってる」マジュル売りの正体はまだ掴めていない。
「あ!」ヘルガが唐突に声をあげる。
「どうした?」
「きみさ、マジュル中毒から立ち直った人を知ってるって言ってたよね!」
「おう、言ったな」ギエルは首肯する。
「ああ、なるほど」「そうだよ。その人を紹介してくれないかな。聞きたい事があるんだ」
「世の中には、知らない方がいいこともある」
商店通りの一角、食べ物売り場でその男は言った。「君たちが知ろうとしていることは、それだ」
「そんなこと言ったって、私は引き下がらないよ」「私『たち』、だ」ここまで来たからには諦めない。
「マジュル中毒から立ち直ったんでしょ?とにかく教えてよ、知っている事があるなら」
「俺にあまりマジュルのことを思い出させないでくれ……」ため息混じりに言いつつ、男は店を閉める。
「俺が探った情報を教えてやる。知ったところでどうしようもないがな。来い」
ついていく。男の家に入る。椅子とテーブルだけのシンプルな部屋で、三人は腰掛けた。
そして男は話し始める。マジュル売りの正体と、その背後にある「組織」について。
「とまぁ、こんなところだ」
男は全てを話し終え、沈黙が室内を満たす。
衝撃的な話だっただけに、実感が湧かず、僕はうつむいたままだ。
「それ……本当なの?」信じられないという思いはヘルガも同じなようだ。
「さぁてな。誤情報を掴まされている可能性はあるし、さっきも言ったが、俺の推測も交えている」
「それが君の推測も含め真実だとしたら……」僕は低く呟く。「レゼラの国家の危機と成り得る……」
「だったら、尚更!」ヘルガが立ち上がった。「『組織』を止めなきゃ!」
男は驚く。「お前、俺の話を聞いてなかったのか!? 相手はゆくゆくはこのジアースを支配できる程の……」
「だからだよ!」ヘルガの目は真剣だ。
「しかし」僕は冷静になろうと努める。「敵の本拠地がどこにあるのかが分からなければどうしようもない」
「マジュル売りに聞けばいい!根気よく探せば見つかるはず」
僕は言う。「つまり、脅して聞きだす、ということか」
ヘルガが動じる。「それは……」
「一時の感情に身を任せるのはよくないな」男が諭す。「とはいえ、俺の情報と推測が確かだとするならば、レゼラの今の体制はいつ崩壊してもおかしくない」
「座して崩壊を待つか、何か行動を起こすのか」僕は二つの選択肢を提示する。「ヘルガは後者がいいかもしれないけど、行動するには仲間が必要」
「そう……だね」ヘルガが椅子に座る。「でも、体制が崩壊したとしたら、今の平和なジアースはなくなってしまうと思う」
「そうかもしれない」僕は頷く。「しかし、僕らにはどうしようもない」
再び室内には静寂が訪れる。
一方、城門近くの広場は喧騒に包まれていた。
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