複雑・ファジー小説
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- ジアース 〜沈んだ大陸〜
- 日時: 2011/10/27 21:16
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
スレ設立日時 2011/09/02 22:01
初めまして。こんにちは。ハネウマと申す者です。
ここでは今年の七月九日ぐらいに完成した小説を一日一回のペースで少しずつ投稿していこうと思っています。
はっきり言って、駄作です。特に序盤なんか手探りな感じで・・・ちょちょっと待った、ブラウザバックしないでください!終盤になると幾分かマシになりますから!いやホントよろしくお願いします!
駄作とわかっているなら修正しろって話ですが、アレです。面倒くさい(殴
それとこの「沈んだ大陸」の続編を今執筆中でそれもいつか投稿する予定だからたとえ駄作でも載せとかないと嫌なのです。
コメントには誠意を持って返信したいと思います(訳:頼む・・・コメントを・・・コメントをくれぇ・・・)
多少のグロはあると思います。いやこれってグロって呼べるのか?ぐらいです。十二歳以上なら全く問題ないと思います。
コメディ・ライトの方では「茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく」という小説を投稿しています。気が向いたら見てやってください。
参照のURL、ブログの方も毎日更新中なのでこれも気が向いたら見てやってください。
では物語へ。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.44 )
- 日時: 2011/10/11 21:55
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼追悼 2
それから、敵二人の埋葬を終えた。僕らは壊れて血の飛び散ったアジトの壁を見て、再び絶句。
血を拭き取り、吹き飛んだ木片を掃いて捨て、僕ら八人は長いテーブルを囲んで椅子に座るなり立って壁にもたれかかるなりして集合した。横の壁の大きな穴から吹き込んでくるぬるくて湿気を含んだ風は心にぽっかりあいた穴に虚しさを運んでくる。
「死んじまったな……俺達のかけがえのない仲間が」フォレストが物憂い表情で壁にもたれる。
「くよくよしていられねぇだろ、と言いたい所だが……正直、今はくよくよしていたいぜ」とピシェラ。
「コト、フィロス、メヴァ……私たちがもっと早くに現場に駆けつけていればこんな事にはならなかったかもしれないのに……」とヘルガも気を落とす。
「今は感傷的になるのも仕方がない」とロゼッタが普段の淡々とした声色を捨て、落ち込んだ様子で話す。
「新しくリーダーを決めなければなりませんね」マカロフが問題を提起する。「適任者は……誰でしょうか?」
「その事に関しては俺に考えがある」フォレストが壁から離れ、しっかり立つ。「まずリレイ、自己紹介してくれ」
僕は頷く。七人の目が僕に集中する。
「ロゼッタ、リル、マカロフ、ピシェラ、マクロアース。改めて自己紹介する。僕の本当の名前はリレイ。伝説の『勇者』」
ロゼッタとピシェラ、マクロアースは怪訝な顔をし、マカロフは目を丸くする。
「伝説とは、ボクが知っているヒラル時代の伝説でしょうか?」マカロフは興味深げといった風に質問する。「本当なら、是非その体、研究させていただきたいのですが」
「本当だよ」僕の代わりにヘルガが答える。「やっぱり魔力の封印がかかっていたみたいで、森の聖域で封印を解いて貰ったんだ。そしたら記憶が一部、戻ったみたい。そうでしょ、リレイ?」「うん、その通りだけどマカロフ、研究するのは勘弁してくれ」
「ダウト。伝説はおよそ千年前だ。現在にその『勇者』が存在するはずがない」とピシェラが冷静な意見を述べる。
「それが……僕にもよく説明できない。けど、僕は本当に『勇者』なんだ」時空の歪みに呑み込まれ、時空を超越した、なんて言ったってわかるはずもない。僕にとってだって理解できる限界を超えている。それなのに僕は確かにここに存在する。不思議な事だ。
「そして、新リーダーについてだが」フォレストが少し声高に言う。「リレイが適任だと思う。今のリレイは『勇者』としての力を完全に取り戻しているからな」
「そうだね」真っ先に同意したのはヘルガだ。「伝説の『勇者』がリーダーともなれば、負ける気がしないよ」
他のメンバーも同意してくれた。ただ、リルの反応が無いのが気にかかる。
僕は今、フィロスの後を継ぎレジスタンスのリーダーとなった。正直不安だが……いや、不安などない。責任は果たさなければならない。死んでいったフィロスのためにも。「みんな、ありがとう。なんとしても皇帝とその『組織』を倒そう」
「それで、問題のガラン・ダルクロードだが」とフォレスト。「伝説の『魔王』である……かもしれない、という事がわかった」
「皇帝が!?」最も驚いたのはかつてレゼラ城にいたマカロフだ。
「ああ。そうだろ、リレイ?」「うん。僅かばかり甦った僕の記憶によると」
「なるほど、そうでしたか……」マカロフは椅子に座りなおす。「確かに『組織』をまとめるカリスマ性には驚嘆させられるものがありましたが……」
「となると、だ」座って肘をついているピシェラが元の体勢になおり、話す。「『勇者』対『魔王』の構図だな。まさに伝説の再現」
「伝説では、魔王がジアースを支配した時、世界は邪悪に包まれた」壁にもたれかかるロゼッタが言う。「もしかしたら既に樹海の外は魔獣だらけの混沌とした地になっているかもしれない」
「一刻を争う事態だね」マクロアースがテーブルの上のマグカップをいじりながら話す。「伝説の再現、か。早く魔王を倒さないと、犠牲が増えてしまう」
「僕が言いたい事はそれ」僕は腕を組んで言う。「明日、いや今日にでも出発して、魔王を再び倒さなければ」
「思い立ったらすぐ行動!」ヘルガが場のしんみりした空気を無視して、あるいは盛り上げようとしたのか、椅子から立ち上がる。「みんな!準備しよう!」
仲間達は次々に席を立ち、あるいは体重を委ねていた壁から離れ、それぞれの準備を始める。
僕はリルだけが椅子に座ったままなのに気づく。
僕は声をかける。「大丈夫……じゃないか。でも準備、早めに済ませておいた方がいい」
「分かってる……」答えるリルは相当顔色が悪い。「でも……動けないの。私……もうダメかも……これ以上、生きていたくない……」
これはかなりの重症だ。「メヴァだって、君には元気に生きていて欲しいと思っているはず」
リルの肩に手を置いてみる。その小さな体は今にも崩れてしまいそうに見えた。「やめてよ……死なせてよ……私の勝手にさせてよ……それで姉さんに会いに行くんだ……」リルの目に再び涙。
僕は拳を握る。「『死なせて』? 冗談じゃない。そんな事は僕が、僕たちが許さない」
僕はリルの手をとり引っ張り上げ、自分の前に立たせる。「きゃっ」
「独りよがりになるな。死ぬなんて安易な方法で楽になろうと思うな。早く立ち直ろう。そして、メヴァに君のたくましく生きる様を見せてあげよう。君は知ってるはず、生きていれば様々な楽しい事がある」
「…………」
「君は、僕達のかけがえのない仲間。途中で退場なんて僕が許さない。進もう、涙で前がぼやけていたって恐れずに。僕と仲間が君の道しるべになる」
リルは嗚咽を漏らす。「うぅ……ごめんね……心配かけちゃって……」「いい。互いに心配しあうのも、仲間として当然」
「ありがとう……もう死にたいなんて言わない。でも、もう少し泣かせて……」リルは顔を覆うと、声をおさえ噎ぶ。ひとまずは安心かな。僕はその場から離れ、帝都へ行くための準備をする事にした。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.45 )
- 日時: 2011/10/12 21:41
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼城の最上階で
「魔人狩りバチスが実験体零型を捕らえました。連行しましょうか?」
城の最上階は俺の好きな場所だ。十分に広く、五本の石柱が石の屋根を支えている。全方位に開けた景色。帝都からソロドラ山脈、港町やその他、全てを見渡せる。レゼラ、いやジアースを手に入れた気分に浸ることができる。
そこへ、俺が最も信頼を置く部下、キネルが実験体が戻ってきた事を報告にやってきた。
「例の実験計画の最初の被験者か」その実験体は最も実験しやすいと研究者の中で好評だったという。
「ええ。また改造を施したようですが」
「連れてこい。今度はどんな奇形になるのか楽しみだ」「御意」
キネルが去り、この空間は再び俺だけのものとなる。吹きぬける風を吸い込む。闇の精霊が支配する、狂気を孕んだ風だ。俺は満足気に頬を緩ませる。黒いマントがはためく。
ルディア地方には山の聖域に、ラフロル地方には森の聖域に選りすぐりの魔人を送り込んだ。じきに彼の地は闇の精霊のみの住処となり、完全に支配が完了する。俺が知る限り、ジアースの「組織」による支配に滞りはない。
気になる情報があった。「勇者」に酷似した男が存在するという。不死身の男——ザードから伝え聞いた事だ。
ザード。俺は奴が嫌いだ。千年前でもそうだったが、いつもどこかで目上の存在である俺を見下している感がある。確かに俺自身、あいつを灰にする事はできても勝つ事はできない。もしも戦うとしたら、その戦いは終わることはないだろう。俺は勝つ事ができない相手が存在するという事が許せなかった。
話が逸れた。「勇者」に酷似した男が存在するという。絶滅したはずのトボク族がまだ存在していた、という事だろうか。それがたまたまザードの目には勇者に見えた、それならいい。だが本当に勇者だとしたら……?
「馬鹿馬鹿しい」俺は独りごちる。「それに、あの程度の輩に俺が倒せるはずもない」そう、俺を相手に負けそうになり、仲間のお陰でなんとか引き分けに持ち込んだ、その程度の勇者など。
俺は手に持った鞘を目の前に掲げる。中には、千年前勇者が使用した退魔の聖剣が入っている。何故か実験体零型が持っていたという代物だ。
「始めるか……」柄を右手で掴む。ゆっくりと抜いてゆく。
「ぐ……ぬうあああ……っ」迸る痛み。闇の精霊の宿った俺がこの光の精霊が作ったという聖剣に触ると、拒絶反応が起こるのだ。
唸りながらも、俺は聖剣を最後まで抜く。痛みが最高潮に達する。「ぐおおおっ……」
支配してやる。己が持つ闇の精霊の圧倒的な力を証明しろ! 俺はこの聖剣を支配する!
「うがああああああああっ!!!!!!」
数十分後。
「ガラン陛下! 緊急の報告に参りました」キネルは走ってここまで来たようで、息があがっている。
息が上がっているのは俺も同じだった。聖剣を鞘に戻し、キネルを振り返る。傍らに実験体零型の姿があった。手錠がついていないのに気づく。
「ほう、実験体の意思のコントロールに成功したわけか」「それどころではありません、陛下!」
「何だというのだ」
「帝都南東門が破られ、城下に七名の『レジスタンス』と自称する者が侵入しました!」
思わず笑いがこぼれる。「ふん。たった七人に何ができる。集団自殺の新パターンか」
「それが、兵を送り込んでいるのですが、強力な魔人に全く敵わないようです。こちらは城内の魔人を向かわせましたが、どうなることか……」
「魔人か」暇潰しにはなりそうだな。「俺が行こう」
「陛下!?」「なに、問題はなかろう。俺が負けると思うか?」
「……思いません。陛下が行かれれば完勝間違いなしです」「そうだろう、それでこそ我が側近だ」キネルの肩を叩く。
「それと、森の聖域に行ったメンバーが帰還しました。作戦は失敗しました」「何だと!?」
「申し訳ありません。どうやら先程申し上げたレジスタンスにやられたようです」「ふん、益々楽しみだ。どんな者達なのかその面拝ませてもらおうじゃないか」
悪寒。
何だ?
ビュウ、と風を切る音が背後から聞こえる。振り向く。
人間が、飛んでいた。
空中から迫る男。俺は咄嗟に聖剣を抜き放つ。剣と剣の衝突で金属音が鳴り響き、風が吹き荒れる。俺は吹きすさぶ鎌風をかわし、大きく後退する。
俺は戦慄く。こいつ……っ!
「ガラン・ダルクロード」飛んできた男が剣の切っ先を俺に向けて言い放つ。
「お前を、再び殺しにきた」
勇者との遭遇は、千年前と同じ、城の最上階での事だった。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.46 )
- 日時: 2011/10/13 22:58
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼レゼラ城襲撃作戦・城の最上階 1
作戦は単純だ。
僕以外の七人のレジスタンスが城下で騒ぎたてて城内の魔人達を誘き出し、手薄になった魔王の周辺を僕が空から襲撃する。魔王を倒せばこちらの勝ちだ。僕はこの作戦において最も重要なポジションについていた。
最初の攻撃で討ち取るのがベストだったが、そこまで上手くいくとは考えていなかった。だが、城の最上階という狙いやすい最高の位置にいたのにも関わらずそのチャンスを無駄にしてしまったのにはがっかりだ。
魔王は赤錆色を基調とした分厚げな服に、何らかの紋様が編みこまれた黒のマント。身長は二メートル程あるだろうか。その巨大さも相俟って、威圧感が僕の身を堅くする。
そして、魔王と一緒にいる者が二人。三対一になるとは想定外だった。勝てないかもしれない……僕は剣を握る手が汗でじわりと濡れるのを感じる。まずは挑発するなりしてなんとかタイマンに持ち込めば……。
ある事に気づいた。
「シビ……?」命の恩人、「シムン」の名付け親がそこにいた。水中の古城の場景が思い出される。
「…………」シビは反応しない。
「シビだろう? 何でこんなところにいるんだ。答えろ、シビ!」
「応答が許可されテいまセん」シビの口調はどこか機械的だ。
「ククク、お前に実験体零型と接点があったとはな」魔王の笑いが含有するのは、良いアイデアを思いついた時の感情の昂りか。
「キネル、実験体零型を戦わせろ。一対一でな」
「何故ですか!? 私も戦わせて下さい。陛下に奇襲をかけた不埒者に成敗を……」「キネル。一対一だ。従え」
「……はっ。仰せのままに」
キネルと呼ばれた金髪の男は何かを呟く。
「インストンフトゥフィータ」
キネルの呟きに呼応し突進してくるシビの攻撃をかわす。「おい! シビ! どうしたんだ!」
今のシビの腕と脚には針が無数に生えている。ラリアットが風を切る。僕はそれを避け、もう一度呼びかけた。「シビ!」
シビはおしの如く黙っている。繰り出される攻撃を避け続け呼びかけ続けるが、届かない。
僕とシビは一旦動きを止めた。猛攻にシビのスタミナが追いついていない。
僕はシビの向こう側で観戦している奴らに問いかける。「シビに何をした!」
「キネル、答えてやれ」「はっ」
キネルが言う。「知らなかったのか? そいつは実験体零型と呼ばれる者。『組織』による人体実験を繰り返し、意思のコントロールに成功した」
「人体実験だと!?」「そうだ。一度は逃亡したが、今では私の思うがままに動く。ソレは最早人間ではない。脳が他者に支配された、戦闘用操り人形だ」
ふざけるなよ。「人間じゃない? 操り人形だ? ふざけるなよ。そんな実験をしているお前達『組織』の方が人間じゃない畜生だ!」
シビが活力を取り戻す。攻撃をかわしつつ、僕は叫んだ。「見せてやるよ! お前達の支配がどれだけ柔なものかを!」
僕は剣を鞘に収めた。無数の針をかわし、シビの懐に潜り込む。
手のひらにじいんと痛みが走る。シビを頬をはたいた僕は、肩を掴んで揺さぶった。「シビ! 聞こえるか! 僕だ! あんたが助けたシムンだ!」
肩を掴む手に激痛が走る。肩から生えた針が手を貫通していた。「シビ……っ!」
諦めない。命を救ってくれたシビを、今度は僕が救うんだ。「シビ! ……ありがとう。僕が記憶を失ってパニックになりかけた時、話し相手になってくれたのはとても安心した」
手から血が滴りシビの肩を濡らす。シビの動きが止まる。「君がいなければ今の僕はいないんだ。本当に感謝してもしきれないよ」
シビの無感情な表情が歪み、感情を取り戻す。口が動く。「シムン……お前なのカ……?」
僕は満足気に笑う。「やぁ。久しぶり、命の恩人」
「ハハ、照れるジャないか」「どこかで聞いた言葉だ」僕とシビは笑いあう。
キネルはシビが正気を取り戻した事に驚き動揺している。魔王は不機嫌そうに眉をひそめる。
「ナぁ、俺は『呪』に縛られているンだ。だかラ俺はお前を殺そうとしテしまう。そこで頼みがアる」
シビは笑顔を作り、こう言った。
「俺を、殺してクれ」
「セロフトゥゾルミナ」キネルの呟きでシビは取り戻した感情を捨て去る。瞳の光が失われたように見えた。
再びシビの腕に針が無数に生え、パンチが俺に襲い掛かる。俺は身をかわし、後退する。
「全く、どいつもこいつも」僕は歯軋りをする。「死なせてだの殺してくれだの……命を何だと思っているんだ」
手に走る激痛は治まる気配がない。恐らく毒によるものだ。あまりの痛さに、剣を使うのを諦めた。
「君にはしてない思い出話がまだ沢山残ってるんだよ! こんなところで死なせてたまるか!」
僕は魔力を集中させる。風が巻き起こる。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.47 )
- 日時: 2011/10/14 22:36
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼レゼラ城襲撃作戦・城の一階ホール 1
私達は兵士たちに魔人の圧倒的強さを見せつけ戦意喪失させた後、城へ侵攻した。
非常に広いホールで待ち受けるのは、五人の男。見知った者が三人いた。濃紺のローブに身を包んだザード、金髪に赤のメッシュを入れたドラギオ、魔剣の一族の証である純白の髪を持つアレン。そしてもう二人は、金髪を肩まで垂らした筋肉質な男と白衣を身に纏い眼鏡をかけたスキンヘッドの男。
作戦では、ザードの相手をフォレストが、ドラギオの相手をマカロフが、アレンの相手をロゼッタが、それ以外の未知の相手をピシェラとマクロアースとリルと私——ヘルガがする手筈になっていた。しかし、実際に作戦を実行する時には柔軟な対応が必要となる。
「ヘルガさん」私はマカロフに呼び止められる。「ボクは白衣の男とやり合うことにします。理由は後で言います。なので、ボクの代わりにドラギオと戦って下さい」
「わかった。私もコトの仇を討ちたいしね」マカロフと手のひらを打ち合う。「頼んだよっ!」
そして、私はドラギオと対峙する。
「腕の骨、もう治ったんだ」「ああそうさ! 城には治癒の能力を持った魔人がいてな! 俺はドラギオ・バースアク! お前は!?」
「ヘルガ・フロウル」私は武者震いに口をにやつかせ、名を名乗る。
「へぇ! 中々珍しい名前じゃねぇか!」ドラギオはポケットから一握りの飛礫を取り出す。「さあ! 楽しんでいこうぜベイベー!」
ボクは旧ニュートン研究所所員、ハルバート・アーウィンと対峙する。
ボクは問いかける。「今はニュートン研究所はどんな呼称になっているのですか?」ハルバートが答える。「そりゃ勿論、『アーウィン研究所』ですよ、マカロフ先輩」
「未だに魔人化人体実験を進めているのですか?」「ええ。あなたが実験体零型とともに逃げ出さなければもっと研究が捗ったんですがね」
ボクは魔人化人体実験には反対だ。「人の体を無理矢理弄くり回すのはよくないですね」
「そうでしょうかね? 本人には許可を取ってあったじゃないですか。元々乞食だった人間のクズは、金をチラつかせればすぐに食いついてくる。金と住居を得る代わりに非人道的な実験をされても構わないと本人の口から確かに聞きましたよ? 後からもうやめてくれなどと泣きついてきても無駄な事」ハルバートは眼鏡の位置をくいっと整える。ボクは無言。
「あなたも内心では、人体実験に手を染めたかったんじゃないですか? あなたほどのマッドサイエンティストならそうだとしてもおかしくない。それに、『実験体壱型』は」
ハルバートの白衣が突然破れ、上半身があらわになる。ありえないほどの筋肉が上半身についている。腕が腋から生えてきて、腕が六本になる。背中からは触手が生え、くねくねと不気味に蠢く。触手の先端には口がついていて、牙がてらてらと光る。
この世のものとは思えないグロテスクな生物がそこにいた。
「実験体壱型、即ち零型の次の実験体は、私自身。この力を手に入れた今、あなたが私に勝てる確率は限りなくゼロに近い」
ザードは不死身だ。千年以上前から生きているし、物理攻撃はおろか、毒すらも効かない。
だが俺には秘策があった。
「一応、名前を聞いておこうか」「俺はフォレスト・リーグル。お前の動きを封じてやる」秘策があることを気取られてはいけない。
「ふん、動きを封じることしかできない雑魚め」これだ。このザードの余裕。ここにつけこんであの「種」を使えば……!
「雑魚かどうか試してみようか!」石に植物のツタを生やす。それはザードを拘束せんと伸びるが、ザードの手元の闇から出現した漆黒の大鎌により断ち切られる。
相手は恐らく、「フォレストが自分の相手をするのはその能力を活かして動きを封ずるためだ」と考えているはずだ。まさか勝てる方法があるとは思ってもいないだろう。そうであってくれ。
ザードはツタをかわしつつ切り落としつつ、俺の方に突進してくる。俺は目の前の地面に植物を生やす。食虫魔草「ブヨバブ」巨大バージョン。俺は鎌による斬撃をかわす。
ザードはブヨバブのつぼみのような葉の集合体に足を突っ込み、足をもぎ取られる。ここだ! 再生した足に絡みつくツタ。いける! 俺は懐から「種」を取り出す。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.48 )
- 日時: 2011/10/15 20:49
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼レゼラ城襲撃作戦・城の一階ホール 2
アレンは二本の魔剣を構え、私をきっと見据える。
「ロゼッタ、あんたが相手でも手加減はしないぞ」「姉さんとは呼んでくれない、か」私も背中の魔剣をすらり、と抜く。
「あんたには感謝してるよ。俺がこんなに強くなれたのはあんたへの嫉妬心のお陰だからな」
「嫉妬……」「そうだよ。俺は神童と呼ばれたあんたが妬ましかった。落ちこぼれだった俺の気持ちがあんたには分かるはずもねぇ」
アレンは右手の魔剣を掲げる。「そして俺は嫉妬を体現するこの魔剣『エンヴィ』を手に入れた。それから俺は無敵になった……。魔剣使用時の副作用もない。俺はあんたを超える! そしてその魔剣『ソロウ』を頂いてやる!」
私は悲しくなる。アレン、あなたは既に魔剣使用時の副作用に罹っている。力に溺れるという副作用に。
私は魔剣「エンヴィ」と「ペイン」を携えて向かってくるアレンに対して魔剣「ソロウ」の特殊能力を発動させる。
僕は非力だ。だがこのナイフと自身を不可視にさせるこの能力さえあれば一撃必殺の攻撃を繰り出せる。
……はずだった。
「んぐうっ」呻くのは僕の方だ。
能力を発動中なのにも関わらず、金髪を肩まで垂らした筋肉質な男は正確にボディブローをかましてきた。衝撃で能力は解除される。吹き飛ぶ僕。
「肋骨の二、三本イっちまったんじゃねぇか?」その通りだった。なんて力だ。
「マクロアース! 大丈夫!?」リルが叫ぶのが聞こえる。「よくも……!」リルは剣を構えて奴に飛び掛る。無茶だ、いくら剣術の練習をロゼッタとしていたからといって、奴のスピードについていけるはずがない!
ハイキックがリルを襲った。バシィと嫌な音が響き、思わず目をそむける。リルは少し吹き飛び、倒れ、そのまま動かなくなった。
「死んだな」奴はリルを一瞥すると、こちらに近づいてくる。死んだ……? 嘘だろ……?
リルは動かない。頭から出血していて、それは大理石の床を濡らす。まさか……本当に……?
僕は立ち上がる。再度能力を発動させ、自身を不可視の状態にさせる。足音を立てずに動き回る。
「さて、次で終わらすか。俺にはハルバートのように獲物をいたぶる趣味はないんでね」奴がこちらを睨む。くそっ、何でこっちの居場所が分かるんだ?
そうか、魔人狩りか……! しかし、この距離で魔力感知できるものなのか? ザード並みに優れた魔力感知能力を持っているということか?
「せめて自己紹介くらいはしておくべきだったか。俺の名はバチス。電撃使いの魔人狩りだ」
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