複雑・ファジー小説
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- ジアース 〜沈んだ大陸〜
- 日時: 2011/10/27 21:16
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
スレ設立日時 2011/09/02 22:01
初めまして。こんにちは。ハネウマと申す者です。
ここでは今年の七月九日ぐらいに完成した小説を一日一回のペースで少しずつ投稿していこうと思っています。
はっきり言って、駄作です。特に序盤なんか手探りな感じで・・・ちょちょっと待った、ブラウザバックしないでください!終盤になると幾分かマシになりますから!いやホントよろしくお願いします!
駄作とわかっているなら修正しろって話ですが、アレです。面倒くさい(殴
それとこの「沈んだ大陸」の続編を今執筆中でそれもいつか投稿する予定だからたとえ駄作でも載せとかないと嫌なのです。
コメントには誠意を持って返信したいと思います(訳:頼む・・・コメントを・・・コメントをくれぇ・・・)
多少のグロはあると思います。いやこれってグロって呼べるのか?ぐらいです。十二歳以上なら全く問題ないと思います。
コメディ・ライトの方では「茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく」という小説を投稿しています。気が向いたら見てやってください。
参照のURL、ブログの方も毎日更新中なのでこれも気が向いたら見てやってください。
では物語へ。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.9 )
- 日時: 2011/09/08 19:25
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼ルディアの港
朝の太陽に照らされる二人。僕らはバッグに色々な物を詰め込んで、帝都レゼラへ向かう。
ヘルガによると、ルディア地方から西に行ったネルア地方にレゼラ城はある。ネルア地方まで行くには、途中で船を利用するらしい。
今、僕らは草原を歩いていた。時折魔鳥と呼ばれる鳥型の魔獣が僕らを襲ったが、ヘルガの敵ではなかった。
僕は問う。「帝都まではどれくらい?」ヘルガが答える。「うーん、どれくらいだろう。明日には着くんじゃないかな」
「帝都って、魔人狩りもいるんだろう? 大丈夫?」「それなんだよね〜、まぁ、しばらく能力さえ使わなければ大抵は大丈夫だよ。何もしてないのに魔人だとわかっちゃうほど魔力感知能力が高い人って少ないから」
「僕は何もしてないのに、魔人狩りに襲われた」「うーん、魔人狩りは魔人に触れるか近づくかすることで魔力を感知するんだけど……。それと、能力を発動させるとしばらく魔力の『残り香』がつくから、感知されやすくなるね。まぁ、きっとあの魔人狩りは例外中の例外だってことじゃないかな」
「なら安心か」「まぁ、私は今まで逃げてこれたわけだしね」
「魔人狩りが存在するのは何故だろう?」僕は更に疑問を投げかける。「皇帝は魔人を集めて何がしたいんだろう?」
「魔人には並みの人間より遥かに殺傷力がある場合が多いんだ。その魔人を味方につければ百人力だからだ、て聞いた事があるよ。三国時代が終わってジアースをレゼラが支配するようになったとはいえ、まだ反乱分子が残ってて、それの排除とかで忙しいらしいね」
「ジアースは世界の事だよね。三国時代っていうのは?」「昔、ジアースはレゼラ・ルヤナ・ベルタの三つの国家が国境紛争を繰り返しながら存在してたんだよ。その時代を三国時代というんだ。末期には戦争が絶えなかったよ……結局はレゼラの魔剣の一族が活躍してルヤナ・ベルタの二国は潰されちゃったんだ」
「魔剣の一族?」「うん。レゼラ城があるネルア地方で三国時代に現れた人たちで、魔剣と呼ばれる特殊な剣を持って傭兵として戦場に派遣されてたんだけど、今はその全員が戦死・病死したと聞くね」
「全員が……」改めて戦争の壮絶さを知る。
しばらく二人は黙って歩き続けた。冬の終わり頃を告げる強い風が草原を渡り僕らの服をなびかせる。僕は目を細める。
日が真上から二人を照らし出すと、建物が見えてきた。港だ。
「さて」ヘルガが張り切って言う。「出航の前に、腹ごしらえだ!」
料理店に入り、僕らはそれぞれに注文する。「……ヘルガ、それは多すぎじゃないか?」ヘルガの注文した料理は僕の三倍はあろうかというほどの多さだった。
「いやぁ、右腕の魔獣にも栄養がいかなくちゃ駄目なんだよ。これだけ食べても魔獣のせいで私の体は成長しないし、まったく不便な体質だよ」
食べ終わり、店を出ると帆船が一隻泊まっていた。
「旅客船をご利用ですね、お一人千ネカオになりますが、お子様は五百ネカオでご利用いただけます」
「あ?私がお子様?喧嘩売って」「あーはい、そうです、千五百ネカオ支払います」
こうして僕らはネルア地方へ出航した。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.10 )
- 日時: 2011/09/09 18:49
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼海賊
船の航行は順調だった。僕は船尾に立って、離れていく港を見つめていた。ルディアで起きた様々な出来事が脳裏をよぎる。短い期間に色々な事が起きすぎだ。僕はため息をつく。
「どうかした?」「ん。……僕の人生、メチャクチャだなって」
「ハハ、そうかもね」ヘルガの物言いは率直だ。
「記憶喪失って時点で何がなんだか」
「これから思い出を作ってけばいいんじゃない?気楽に、さ」「ヘルガは常人より遥かに気楽な人生を過ごしてそうだ」
「うーん、これでも色々悩んでたりするんだよ」「例えば?」「夕飯をどうしようかとか」
「気楽だ」僕は手をふらふらさせる。「気楽の極みだ」
「いや、旅人には常に付きまとう悩みの種だよ」思ったより真面目に返され、思わず吹き出してしまう。
「私は常人より遥かに食べる人生を過ごしてるからね」「確かに。大変だ」
僕はこちらに向かって進んでくる船がある事に気がついた。横帆の旅客船と異なる縦帆船だ。向かい風を受けているはずだが、帆には追い風を大きくはらみ、速い。
船の上が次第にざわつき始める。その理由は他でもない、近づいてくる船ではためいている旗。髑髏のマークだ。
「海賊船だ」ヘルガが低く呟く。「ここの守人は誰だろう」
するすると信号旗が上がる。恐らくは海賊船へ警告を行っているのだろうが、相手はスピードを落とさず向かってくる。
船長の指示で乗客は船の中へ避難を始めた。一方で、船首に立っている女は自信に満ち溢れた表情で向かってくる船をみつめている。
「ヘルガ、避難する?」「んー、守人さんが活躍すれば逃げる必要はないよ」
ヘルガは船首の女を指差した。「おう、あたしが活躍するから逃げる必要はないぜ」女が応える。金色で短めの髪、女にしては背は高い。
船と船の間は着実につまってきている。
女は手のひらを上に向けた。すると、光を放つ玉が出現する。光の玉はどんどん大きくなっていき、それは女の体の大きさを超えた。
「止まれぇ!」女が叫び、光の玉を投げた。海賊船の帆へ直進する。帆にぶつかった瞬間少しめり込み、はじけて消えた。
「なっ……あれっ……?」
女はうろたえる。どうやら思ったような結果にならなかったらしい。
「おい、大丈夫?」僕は焦る。
「わりィ。大丈夫じゃない」
「私の出番か……!」ヘルガが張り切る。「シムンは船室にいて! ここは私たちが引き受ける!」
僕は言われたとおり船室へ戻る。武器になりそうなものを持った男達がビクビクしながら待っていた。「そこの兄ちゃん、外は今どうなってる?」問われ、答えようとした瞬間、轟音とともに衝撃を受けた船が大きく揺れた。メリメリと耳障りな音が響き、船室内の人々をおののかせる。
「ぶつけられたぞ!」「守人は何やってるんだ!」「俺たちは外で戦うぞ!」「女子供をボートで逃がすのが先だ!」
混乱の中、手ごろな鉄の棒を手に入れ、僕はもう一度外へ出た。
ヘルガは乗り込んでくる海賊たちをちぎっては投げちぎっては投げ。それを金髪の女が遠くから光の玉で援護している。光の玉に当たった海賊たちはそれに貫かれ、息絶える。
海賊はやられるばかりだ。僕がそう思った時、ヘルガの体が吹き飛ばされ、僕の足元に落ちた。
「ヘルガ!?」「いてて……現れたな、魔人」ヘルガに大した外傷はない。
ヘルガを吹き飛ばし乗り込んできたのは、茶髪の男だった。「今だ! 野朗ども、やっちまえ!」
「させるかっ!」ヘルガが茶髪の男へ迫る。その瞬間、風が吹き荒れ、ヘルガの小さい体はまたも吹き飛ばされる。
「風使い……向かい風のはずなのに追い風を受けていた理由か」ヘルガが呟いた時、茶髪の男は光の玉に貫かれ、海へ落ちた。ヘルガは金髪の女に感謝の合図を送る。
ヘルガが吹き飛ばされたのを皮切りに、海賊が船に侵入する。応戦する男達の武器は、フライパンやビレイピンだ。これだけでは死人が出るのは時間の問題。すぐにヘルガが戦線へ復帰する。
僕はヘルガが向かった方向とは別の方向から海賊が来るのに気が付いた。鉤爪付きのロープを駆使し、一旦落ちた海から上がってくる連中。僕は応戦しようと左手に鉄棒を持ち、身構える。
一方金髪の女は海賊の中のもう一人の魔人と対峙していた。光の玉を投げても打ち消される相手。
「船を強化したのはあんたか」
「その通り。その光球は俺と船には通じない。潔く負けを認めるんだな」
「ったく、海賊の馬鹿共が」女は言葉を吐き捨てる。「魔人を手に入れただけで調子に乗りやがって」
「調子に乗れるほどの強さを手に入れたんだが」魔人の男は言う。「更に調子に乗ってもいいか?」言い放ち、サーベルを取り出す。
「けっ……地味な戦い方はしたくないが」女は腰のナイフを抜き、逆手に構える。「あたしはどんな相手でも負ける気はないぜ」
「その心意気、女にしちゃ上等だな」サーベルを構える男。
一瞬の静寂のその後。刃と刃の擦れ合う音が鳴り響く。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.11 )
- 日時: 2011/09/10 21:44
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼ネルアの港
「ありがとうございます」
ヘルガは船長に感謝され驚いている。「え!? いや、当然の事をしたまでですよー」
「田舎では魔人はあまり受け入れられていないが、ここは、船の守人のような、思考が普通の魔人の存在もあって魔人を悪く思う奴は少ないんだ」金髪の女が言う。「あたしはコト・ステラだ。あんたには感謝してるよ」
そして、僕の事を指差す。「あんたにもな。海から上がってくる敵の存在に気づかなければ挟み撃ちに遭っていた」
「いえいえ、僕なんて皆さんに比べれば非力ですよ」照れ、謙遜する。ヘルガがからかい、周りの人々が笑う。
それからは順調な航海が続き、僕らはネルア地方に到着する。
「じゃあ、またな」コトは最後の言葉だけトーンを落とす。「……魔人狩りには気をつけろよ」
「わかってるよ」ヘルガが応じる。
「とはいえ、皇帝に仕えるのも悪くはないぜ。給料もなかなかだ」
「そうかもね。旅に飽きたら、そうするかもしれない」
「では、機会があれば、また」僕は手を振る。
旅客船にいた全員が生き延びることができたのは、ヘルガの存在によるところが大きいだろう。僕は相方の強さに改めて感服すると同時に、一つの疑問を抱く。
船から降りた後、ヘルガに聞いてみることにした。「ステラさんが『田舎では魔人は受け入れられていない』と言ってたけど、何で?」
「実をいうとね」ヘルガが嫌そうに答える。「魔人の多くは、気がふれた人間なんだ。私みたいに正常な魔人は、ただでさえ数少ない魔人の中でも少数なんだよ」
「そうだったのか……」
「だから魔人は人前では能力を使わないようにしてるんだよ。魔人っていうだけで見る目が変わるからね……良い意味でも、悪い意味でも」
僕はスヌ村で出会った黒髪の少年を思い出す。殺戮を行ったあの少年も気が狂っていたのだろうか。
「さ、帝都を目指そう! 道はこっちだね」ヘルガが地図を見て指差す。方角は西。「ソロドラっていう村を経由して行くよ」
「わかった」僕は荷物を背負いなおす。「どれくらいかかる?」
「夕方には着くと思うよ。今日はソロドラの宿で夜を過ごすんだ」「了解」そして二人は歩き始める。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.12 )
- 日時: 2011/09/11 17:56
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
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▼ソロドラ
ジアース、ネルア地方は夕暮れを迎えた。
山のふもとに位置するソロドラ村を太陽は地平線から照らしている。
「お待ちしておりました、旅人の方」宿屋の主である男が会釈する。
「待ってた? 僕たちをですか?」
「はい。あなた方が来るのはわかっておりました。ささ、ルディアから遠路はるばるおいでいただき、疲れておいででしょう。部屋へご案内致します」
腑に落ちない。「どういうことなんですか? 僕たちが来るのを何故知っていたんですか?」
「ここには偉大な占い師がおりまして」男は言う。「その占い師が言ったんです。『ルディアからきたる二人の旅人が山魔を葬りソロドラに再び平穏が訪れる』と」
僕とヘルガは顔を見合わせる。
「今日はどうぞお休みになってください。今、夕食の準備をしますので」男は部屋の扉を閉め、静寂が部屋を満たす。
ヘルガはベッドに座り、倒れこむ。僕もそれにならい、二人は天井をみつめる。
「どういうことなんだろう?」僕が先に疑問を口にする。
「魔人かな、占い師は」ヘルガが答える。「帝都にも予言者がいて、皇帝に助言をしているらしいけど」
「魔人か……魔人狩りには会ってないのか」「能力が予言だけなら、もう間に合ってる、ってことじゃないかな」
「なるほど……」僕はそう言うと同時にため息をつく。「しかし、今日は疲れた」
「疲れたねぇ」ヘルガも大きく息を吐く。
「そしておなか空いた」
宿での夕食は豪華だった。
「わぁ、ふぉんな凄い料理は久しぶりだな!」「口に入れたまま喋らないでくれ」
「どんどん食べてください。おかわりもありま」「おかわり!」
宿屋の主は苦笑し、ヘルガのご飯をよそう。「本当によく食べるんですね」
「食べなきゃいけない体質なんですよ」僕は口にいっぱいご飯を入れたままのヘルガに代わって説明した。「こんなに美味しい料理、ありがとうございます」
「いえいえ、あなた方はこの村の救世主ですから」
「ほのほとぬんだふけど」
「そのことなんですけど、一体どういうことなんでしょうか?」僕は上手く喋れないヘルガに代わり、尋ねる。
「それが……今から一月も前のことでしょうか」男が話し出す。「この村の隣、ソロドラ山に、突然知能の高い魔獣が現れたのです」
「魔獣が」「ええ。三メートルもあろうかという背丈に筋肉の塊のような赤黒くトカゲに似た人型の体、頭には二本のねじれた角が生えていて。多くの部下と思われる人型魔獣たちを引き連れ、巨大なハンマーを武器に私たちを脅し、毎日食べ物を捧げさせているのです」
「んぐ。リザードマンか。たちの悪い連中だね」ヘルガが料理を飲み込み、また次の料理を掻っ込む。
「帝都に連絡しても、なかなか魔人をよこしてくれず……そんな時、占い師があなた方の事を予言したのです」
「なるほど」僕はうなずく。「なら、相方がなんとかしてくれるはずです。この人は強力な魔人ですから」
「でも、相手は一体ではなく多数いるので、村の男達総出で退治するつもりです」「それがいいですね」
「決行は明日でよろしいでしょうか?」「はい。頑張りましょう」
「おかわり!」ヘルガ、本日五回目のおかわり!である。
- Re: 沈んだ大陸 ( No.13 )
- 日時: 2011/09/12 20:04
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼山の魔獣
息を潜め、機を伺う。
僕ら魔獣討伐部隊は魔獣のアジトと化した廃屋を遠くに見て、林の中に隠れている。
敵の見張りは三体。これを如何に素早く倒すかで戦況は変わってくる。
「手前の魔獣は私が倒す。同時に弓で高見台のニ体を撃ち落として」
沈黙は続く。ざわざわと風が渡り、木の枝を揺らす。小鳥のさえずりは走る緊張も意に介さない。
僕は息をのみ、村人から借りた農作業用の鎌を持った左手を握り締める。
「行くよ」
ヘルガが突撃し、悲鳴があがり、高見台から魔獣が落下する、地上の魔獣は一瞬でヘルガの拳に潰される。
第一関門、クリアだ。僕たちはヘルガの後に続く。
「じゃあ、行ってくるね。崩れる音を合図に、突撃」ヘルガが言い、能力を発動する。右腕を使って廃屋の屋根に着地する。
私は屋根に着地した。
そろそろと足音を立てずに進む。緊張感が張り詰める時間。
「魔獣の頭領がいるとしたら、廃屋の一番奥の大椅子だ」私はソロドラの村長の言葉を思い出す。
ここらへんかな、と見当をつけ、巨大化させた右腕の質量を一気に増加させる。メリメリと音を立てて天井が崩れる。
「ドンピシャ!」
私は天井から降下する。巨大な拳が向かうその先には、魔獣の頭領の巨体。魔獣は驚愕し、天を見上げる。
僕は扉を蹴り飛ばし、討伐部隊は廃屋内へ侵入する。奇襲に遭った魔獣たちはおろおろするばかり。
そして僕は、ヘルガの巨大な拳を受け止めている魔獣の頭領を見る。その魔獣は、僕らには分からない言語で何かを叫ぶ。うろたえていた魔獣達が平静を取り戻す。
そして廃屋内は、頭領対ヘルガ、魔獣達対ソロドラ村民の構図となる。
私は巨大なリザードマンと対峙する。
「ちぇっ……作戦では、最初の一撃で頭領さんは死んでたんだけどなぁ」私はやや落胆する。
「ナメラレタモンダゼ」頭領が人語を喋る。「オマエミタイナチビニ、オレガマケルワケガナイ」
「へぇ、一応人間の言葉も使えるんだね」私は右腕を収縮させ、しかし、色はオレンジのままだ。
頭領は鉄槌を構える。「ブットバシテヤルヨ、オマエ」「それはこっちのセリフかな」
一方、僕を含むソロドラ村民は、魔獣より数で勝っていた。だが戦況は互角。やはり魔獣と素人では殺傷力の桁が違う。相手側もそうだが、死人も出始めている。
「くっ……こんなはずじゃ」僕は歯軋りをする。その時、壁に掛けられた長剣が目についた。鎌を投げ捨て、剣を手に取る。
「! ……この感触」馴染む。僕の左手にその長剣はとてもよく馴染んだ。
その時、僕はヘルガが鉄槌に弾き飛ばされ、崩れ落ちるのを見る。
僕は頭領の前に立ちはだかる。
「ジャマダ、コロスゾ」「悪いが殺されるつもりは毛頭ない」
ヘルガが倒された時、僕は何故か代わりに戦うのは僕しかいないと感じた。
剣を手に入れ、自信がついたのかもしれない。少し後悔しているが、今更だ。
「オレハ、コロスツモリダガナ!」頭領は鉄槌を振りかぶり、僕は相手の動きに集中する。横に大きく振られた鉄槌を後ろに飛んでかわす。
振った後の隙を突き、僕は突進する。敵の、胸当てをしていない方、右胸を切り刻む。
「浅いか」追撃は加えず、バックステップで距離をとる。
相手は流れる血を気にもせず、鉄槌を振り回す。その猛攻に、僕は近づけなくなる。後ずさりし、壁が背中とぶつかる。
「まずいっ」槌が振り下ろされる瞬間、
時間がゆっくりと流れる、死と擦れ違う、
風が吹き荒れる。
「グアアッ!?」
突如発生した暴風に巻き込まれ、よろける頭領は鉄槌を手放す。
大きな隙、僕は魔獣の右胸に剣を突きたてる。
断末魔。剣は胸を貫通し、魔獣の頭領は悶えのた打ち回り、そして動かなくなった。
「今の風……能力……?」
頭領が死んだ。この事実は魔獣たちの戦意を喪失させるに十分だった。
逃げ回る魔獣たち。村人達はそれを追わず、雄たけびを上げた。負傷者の手当てに力を注ぐ。
僕はヘルガに駆け寄る。「シムン……私は大丈夫。攻撃をくらったのは右腕の上からだから、肋骨にヒビが入った程度だと思う」
「よかった」僕は安堵のため息をつく。「行こう、ヘルガ。村人のみんながふもとで待ってる」手を差し伸べる。
手をとり、ヘルガは少し痛みに顔を歪めながら立ち上がる。「ありがとう」
「どういたしまして」僕は笑顔になる。
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