複雑・ファジー小説
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- 赤が世界を染める、その時は。
- 日時: 2016/02/25 00:54
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)
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『必ず勝利せよ。敗北は死だ』
scene.6 message.by.raimei
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+この小説をオススメできない方+
・荒しが趣味な方
・中二病が嫌いな方
・更新が早くないと嫌な方
・作者のもうひとつのカキコネームを知っている方
・作者に文才を求めている方
・誤字多し。直す気3%。でも教えてくださると嬉しいです。
【2012年冬・小説大会+複ファ金賞】
ありがとうございました!!!!!!!
いやいや、見た時はビックリでした……。
本当にうれしいです!!!今でも信じられないくらいです。
本当にありがとうございました。
まだまだ続くというか、書きたいことがまだあるというか、自分の中で終わりが見えていないので終わりまでお付き合いしていただいたらうれしいです……!!
+目次+
第1章『赤=私=雪羽=バカ』
1>>1 2>>2 3>>3 4>>4 5>>5 6>>6 7>>9 8>>12 9>>15 10>>16 11>>19 12>>20>>21 13>>23 14>>27 15>>29 16>>32 17>>34 18>>41 19>>43 20>>44 21>>45 22>>46 23>>47 24>>48 25>>49 26>>50 27>>51 28>>52 29>>53 30>>54 31>>55 32>>56 33>>57 34>>58 35>>59 36>>60(完結)
第2章『人生。』
1>>61 2>>62 3>>63 4>>64 5>>65 6>>66 7>>67 8>>68 9>>69 10>>70 11>>71 12>>72 13>>73 14>>75 15>>76 16>>77 17>>78 18>>79 19>>80 20>>81(完結)
第3章『現実逃避に失敗しました。』
1>>82 2>>83 3>>84 4>>85 5>>86 6>>87 7>>88 8>>89 9>>90 10>>91 11>>95 12>>96 13>>97 14>>98 15>>99 16>>101 17>>102 18>>103 19>>104 20>>105 21>>106 22>>107 23>>108 24>>109 25>>110 26>>111 27>>112 28>>113 29>>114 30>>115 31>>116(完結)
第4章『レッドエイジ』
1>>117 2>>118 3>>119 4>>120 5>>121 6>>122 7>>123 8>>124 9>>125 10>>126 11>>129 12>>130 13>>131 14>>132 15>>133 16>>134 17>>135 18>>136 19>>137 20>>138 21>>139 22>>140 23>>141 24>>142 25>>143 26>>144 27>>145 28>>146 29>>147 30>>148 31>>149 32>>152 33>>153 34>>154 35>>155 36>>156 37>>157 38>>158 39>>159 40>>160 41>>161 42>>162 43>>163 44>>164(完結)
第5章『燕は高く、空を飛ぶ』
1>>165 2>>166 3>>167 4>>168 5>>169 6>>170 7>>171 8>>172 9>>173 10>>174 11>>175 12>>176 13>>177 14>>178 15>>179 16>>180 17>>181 18>>184 19>>185 20>>186 21>>187 22>>188 23>>189 24>>190 25>>191 26>>192 27>>193 28>>194 29>>195 30>>196 31>>197 32>>198 33>>199 34>>201 35>>202 36>>203 37>>204 38>>205 39>>206 40>>207 41>>208 42>>209 43>>210 44>>211 45>>212 46>>213 47>>214 48>>215 49>>216 50>>217 51>>218 52>>219 53>>220 54>>221 55>>222 56>>223 57>>224 58>>225 59>>226 60>>227 61>>228 62>>229 63>>230 64>>231 65>>232 66>>233 67>>234 68>>235 69>>236 70>>238 71>>239 72>>240 73>>241 74>>242 75>>243 76>>244 77>>245 78>>246 79>>247 80>>248 81>>249 82>>250 83>>251(完結)
第6章『Your love which binds us』
1>>252 2>>253 3>>254 4>>255 5>>256 6>>257 7>>258 8>>259 9>>260 10>>261 11>>262 12>>263 13>>264 14>>265 15>>266 16>>269 17>>270 18>>271 19>>272 20>>273 21>>274 22>>275 23>>276 24>>277 25>>278 26>>279 27>>280 28>>281 29>>282 30>>283 31>>284 32>>285 33>>286 34>>287 35>>288 36>>289 37>>290 38>>291 39>>294 40>>295 41>>296 42>>297 43>>298 44>>299 45>>300 46>>301 47>>302 48>>303 49>>306 50>>307 51>>308 52>>309 53>>310 54>>311 55>>312 56>>313 57>>314 58>>317 59>>318 60>>322 61>>323 62>>324 63>>325 64>>326 65>>327 66>>328 67>>329 68>>330 69>>331 70>>332 71>>333 72>>336 73>>338 74>>340 75>>341 76>>342 77>>343 78>>344 79>>345 80>>346 81>>347 82>>348 83>>349 84>>350 85>>351 86>>352 87>>353 88>>354 89>>355 90>>356 91>>357 92>>358 93>>359 94>>360 95>>361 96>>362 97>>363 98>>364 99>>365 100>>366 101>>367 102>>368 103>>369 104>>370 105>>371 106>>372 107>>373 108>>374 109>>375 110>>376 111>>377 112>>378 113>>379 114>>380 115>>383 116>>384 117>>385 118>>388 119>>395 120>>397 121>>399 122>>400 123>>403 124>>404 125>>405 126>>406 127>>407 128>>408 129>>409 130>>410
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.210 )
- 日時: 2012/11/02 17:34
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
43・野次馬のような過保護。
目が痛い。どこもかしこも痛い。骨の中が無くなったかのように、体に力が入らない。疲れているのだと、思う。疲れているだろう。無茶してきた奴らのせいで、たくさん魔術を発動させたから。疲れるんだよ。集中してなきゃいけないから。
ロムには直接は言わなかったけど、ヒダリの怪我はロムのそれよりはるかに酷くて、治療も大変だった。
気を失っていたロムを抱えてヒダリは帰ってきた。自分の方がすごい怪我で、動けないはずの癖に、俺がロムの治療を終わらせるまで、ヒダリを治そうとする俺の手をヒダリは拒み続けていた。
仕方が無いから、ロムを手早く治療してヒダリに取り掛かった。
俺でいいのか。そんなことが頭の中をぐるぐるして、あんまし集中できなくて。
俺は本当は魔術なんか使えない。こんな重症の人間を治療できるだけの力もない。資格もない。それなのに。
もっと上手い人を連れてくるべきだろ。俺はそう思うのに、雷暝様はそんな事はしない。俺たちだけで十分だって。
ヒダリがボロボロになって帰って来ているのを見て、雷暝様はすごく切なそうな顔をした。そして、一度だけヒダリの紫の髪を撫でて、その場を去った。
なんで、あんな顔をするんだろう。俺たちは雷暝様の道具であって、仲間じゃない。部下でもない。
雷暝様は、道具が傷ついた程度で、あんな顔をするのか。
『情けねぇよなぁ』
違うだろ。そうじゃないんだよ。情けないわけじゃない。雷暝様は、優しいんだ。俺たちのことを、愛してくれているんだ。道具として。玩具として。それなら、問題ない。それでも、問題ない。もう慣れたから。そんなことは知っているから。俺たちは、幸せ者なんだよ。雷暝様に愛されるなんて。
それは、負けていないから。負ければ、俺たちの運命は決まる。それだけで決まる。負けた瞬間、泣いても騒いでも、雷暝様に殺される。負ける奴のなんかに、雷暝様は愛を注がない。
ヒダリはすごいから。感情がないかのように、ただロムの指示に従って命を狩る。
黒いフードをなびかせて、冷たい赤い目で相手を狩る。それはもはや芸術であった。美しいんだ。あれほど人の最後を美しく飾ることができる人間が、他に居るのか。きっといないから。
俺はだから、ヒダリには死んで欲しくない。ヒダリはきっと、ロムが止めない限り、人を殺すのをやめない。
それはきっと間違っているのだろうけど、でも、止めたら、負ける。負けたら、死ぬ。死んでしまう。
殺さないということは、死ぬこと。殺すとは、生きること。
『違う違う。負けるのが死ぬの。勝つのが生きるの』
そうだろうか。死ぬと生きる。殺すと殺さない。勝つと負ける。これは全部、つながっているわけじゃないのだろうか。関係を持っていないのだろうか。それはきっと違うよな。そう信じようとしているだけだ。それは逃げているのと一緒。
恥ずかしいことで。
『良いだろ、別に。考えるときくらい逃げていても。殺されるわけじゃない』
久しぶりにマシなことを言う。そうだね。考え事くらい、ネガティブでも良いでしょ。負けていても良いでしょ。それくらいはしないと、本当に、自分を見失ってしまいそうだから。
廊下の奥に進む。
寒いな。ここに日はあまり当たらない。じめじめしていて、暗い。そのせいか、他の場所よりも寒い気がする。
壁と同じ色の扉に手をかけて、開ける。鍵なんてかかっていない。
雷暝様はそれを必要じゃ無いと考えた。雷暝様はだいぶ、この少年を舐めているようだ。
部屋に一切の光は無い。ここの扉を開く事でやっと、微かな光が部屋に入る。
その光を感じ取ったのか、部屋の中心で蹲っている少年が、体を捻った。誰が入って来たのかを確認するらしい。
少年の手足は、縛られている。
縛っている布は、俺が作ったもので、普通の布とは違って頑丈だ。引きちぎるのも、噛み切るのも難しいだろう。それでも、その布を口に宛がうことをしなかったのは、これまた雷暝様がこの少年を舐めているからだ。
「……誰だ」
疲れているのか、それとも喉が乾いて居るのか、少年は掠れた声を出した。そしてすぐに咳き込む。ほこりでも気管に入ったのかな。
俺は返事をせずに、部屋の中に進む。
部屋の隅にあった死体は、いつの間にか扉の近くまで来ていて、なぜだか頭が凹んでいる。蹴られたかのような傷。
きっとソウガだ。真っ先にこの少年に会ってちょっかいを出したのは、確かソウガだったから。雷暝様が居ないうちを狙っていた。
本当に、男には手段を選ばないのだから。
「何の用だ」
今度ははっきりと、俺を否定する声になった。
俺は少年の近くに、腰を下ろす。
そういえば、ロムの寝ている部屋にコーヒーカップを置いてきてしまった。あれがあると、眠気が飛んでいい具合に研究がはかどる。疲れがとれていないのももしかして、コーヒーを飲んでいないからだろうか。
まさかそんなことは無いと信じたい。あの飲み物が人の疲れを紛らわせるものだなんて考えたくない。麻薬みたいなものじゃないか。
少年の瞳は、きれいな緑だった。俺の瞳も緑だけど、俺の目は何だか明るすぎる。黄色が混じっているのか黄緑色にも見える。だから好きじゃない。
こんな緑なら、好きになっていただろうに。
「ただ、顔が見たかったんだ。ごめんね」
〜つづく〜
四十三話目です。
長くなった。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.211 )
- 日時: 2012/11/03 12:08
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
44・個性のようなコンプレックス。
「つまり、俺たちはここで戦えば良いわけだ」
銀に一通り説明をした後、くるくると跳ねた金髪の女を振り返る。
銀は多分、この状況に納得はしていないだろう。そんな顔をしていたから。でも、仕方がないと思っているのだと思う。助かるけど、申し訳ない。
金髪女は一番強い。他の兵士は役立たずとみても良い。ただの数。そうなると、厄介なのは金髪女ただ一人。脅威はそれだけ。でもこれが、しんどいと思う。コイツはきっと、強い。それも、俺たち二人じゃ少しつらいくらいに。本当に、こんなに疲れていなけりゃあ、簡単なはずだ。銀が体力が戻るまでは、逃げられないだろう。だったら、早くコイツ等を満足させた方がいいだろう。
俺の判断は、間違っていないかな。ここで銀に聞いては、駄目だ。銀を不安にさせちゃいけない。俺が銀と居るのに。銀は、俺にしか頼れないのに。俺がしっかりしていないと、いけないのに。だから、俺が頑張らないと。アシュリーにもパルにも、俺が正しいかどうか、聞けない。
俺、情けないな。何時だって、誰かに頼ってばかりだ。
「そうそう。最近アッチもこっちも動いてないから。これ以上長引かせるのもねぇ。食料とかの事情もあるし」
金髪女は、そうして自分の指で髪を巻き始める。少しくすんでいて、あまり綺麗じゃない金。銀とは大違いだ。
銀は最近、疲れている。ビーストの血ばかりで、人の血を飲んでいなかったのもそうだけど、アスタリスクの場所に慣れているからこそ、ここの自然の空間に慣れることができないのだ。だから、体調を崩してしまった。アシュリーとパルに連絡ができない状況ことも、精神的にきているみたいで元気がない。痛々しくて、正直見てられない。
俺たちをこんな目に合わせた赤髪を、許すことなんて絶対に、できない。
「私、ダルトファルト騎士団三番隊隊長の、レドモン」
レドモンはそういって、手を差し出して来た。俺はそれを見つめるだけで、取らない。仲良くするつもりなんて無いからだ。大体、俺たちは人の気持ちとか分からない。分かろうとも思わない。だって俺たちの苦しみはコイツ等には分からないから。俺たちはどうあがいても、別の人間だ。
レドモンは肩をすくめて、手を県の鞘に置いた。抜くつもりではないと思う。そこに置くのは隊長としての癖だろう。すぐ抜けるように、すぐ戦えるように、気を抜かないように。
レドモンは、俺たちを信用していないみたいだ。それどころか、ここに居る部下たちも、心からは信用していないだろう。
そんな、人を常に疑うような目をしている。
人を人の心で見る目。だからこそ、俺のこの髪と目を見ても、何も反応しなかった。見た目で人を判断していない証拠。
俺でさえ、俺のこの見た目には、吐き気を催したというのに。
「俺は、ムーヴィだ」
「俺は、達羅銀孤。銀って呼んで」
後ろで、器の中の鮮血を飲んでいた銀が俺に続く。
レドモンは、俺たちが血を欲していると知ると、これを飲むと良いなんて言って、近くの部下を躊躇いなく殺した。潔さに、俺は驚いて、それを買ってこの状況になることを決意した。
コイツは強い。肉体的にも、精神的にも。
「あー、私のこと、レドモンって呼ばないでね。レドでもレモンでもいいから」
自分の名前を呼ぶたびに、レドモンは嫌そうな顔をする。
銀の、血を飲み干す声が聞こえて振り返ると、すっかり腹は満足したみたいで目をキラキラさせて唇を舐めた。
そういえば、こんな状況でもこんなに人に囲まれるのは初めてかもしれない。こんなに、俺たちが人と会話をしているなんて。アスタリスクの所有物だった頃では、考えられない。
「えー、なんでだ?」
銀はレドモンという名前が珍しいのか、呼びたくてうずうずしているようだけど、、それはきっと叶わない。
レドモンにとって自分の名前は、コンプレックスなのだ。俺には分かる。
「その名前は私だけれど、私はその名前ではないからよ」
なんて意味の分からないことを言うレドモンは、何かを思い出すかのように、目を伏せた。
〜つづく〜
四十四話目です。
お腹空くと気持ち悪くなってくるんですよね。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.212 )
- 日時: 2012/11/04 11:02
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
45・大人のようなカンコ。
とはいっても、あんまり豪華な物はごちそうできない。燕はそんなことを申し訳なさそうに言った後、再びテントを出て行った。
確かに、お腹は減っている。カンコもそうみたいで、何も言わない。
カンコは髪と服の乱れを直して、湯気を失ったカップを私に差し出した。中には、赤茶色の液体が入っていて、何かの葉っぱが底に沈んでいる。
見たことないお茶だ。香りも嗅いだことがない。
「毒は入っていない」
カンコは、お茶をじっと見つめる私を見て、私がお茶を警戒していると思ったのか、お茶について補足をしてくれた。私は頷いて、お茶を口に含む。
少し苦いし、温いけど、喉をしっかりと滑っていく、ちゃんとした飲み物だ。
草原の中で、しかも戦争をしていて、忙しいだろうに、私たちの面倒を見てくれるなんて。普通に考えたらおかしい。何か裏があるに違いない。
でも、でも。
「雪羽、あんまり警戒を解かない方が良いよ。人は、怖い」
ずきりと心差すような言葉。
私より小さいカンコが、私よりもそんな事を知っていて、理解しているなんて。こんなこと、カンコのような子供が、知っていることじゃない。こんな汚いことを理解してるなんて、思いたくない。
私は、何度も頷く。声が出ない。苦しい。
私が、情けなくて。カンコにすら、注意をされて、心配をされて。私もしっかりしないと。
早く、ジャルドにカンコを届けないと。そして、謝らないと。こんなことして、ごめんなさいって。守れなくて、道連れにしてごめんなさいって。
私が俯いているのを見て、カンコはどんなことを思っているのだろう。きっと、情けないって思ってる。頼りないって、思ってる。私自身も、思っているから。
だからこそ、しっかりしないと。自分のことを分かっていないよりは、きっと、ずっと良い。
私は顔を上げる。私の情けない姿を、カンコはしっかりと見ていてくれた。目を逸らさないでくれた。私に、失望しないでくれている。
そう。私はまだ頑張るから。だから、見ていて。私が大きく慣れるまで、この世界の汚い部分まで見られるようになるのを、見ていて。私を、見ていて。
私はもう、一人じゃない。私を見てくれる人が居る。
私を待っている人が居る。
「雪羽、頑張ろう。一緒に、一緒に」
カンコは、感情が豊かじゃない。表情も少ない。でも、言葉で表してくれる。私は、カンコがもっと、人形みたいな子だと思っていた。違った。全然違った。私よりも強くて、大きくて、人間らしい。
カップを床に置いて、またカンコの肩に手を置く。力を込める。
一緒に、頑張ろう。そう言ってくれたのは、カンコだ。
「……カンコは、強いね」
私は、また泣きそうになっているのにさ。
〜つづく〜
四十五話目です。
今更ながらあの花の小説を読んで、最終回だけアニメを見ました。
ボロボロ泣いてしまってやっぱり友達っていいって思えました。
ずっと昔にみんなで作った秘密基地は、もうないです。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.213 )
- 日時: 2012/11/04 11:44
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
46・慎重のような大胆。
俺は船員が不思議そうな顔をするのも気にせずに、誰もいない部屋から鞄を持ち出した。もしかしたら、生きているかもしれないから。だから、置いてきたりなんかしない。
まだ、頭の中には霧がかかって居るかのようにもやもやしているし、あれが夢なんじゃないかって思えて来る。ジャルドも同じみたいで、現実なのか確かめるかのように、折れた柵をずっと撫でていた。
俺も俺で、船内をうろうろしてみたりした。実は夢で、ひょっこり赤女が向こうの廊下から顔を出すんじゃないかって、思って。
こんなんじゃ駄目だって、分かっている。これじゃあ、凪の時と同じだ。死体がぐちゃぐちゃなら、いくらクイーン・ノーベルでも生き返らせることはできない。
つまり、赤女は、もう。
ギュッと、鞄の紐を握る手に力を込める。
全部俺の荷物は黒で統一しているのに、赤女のリュックサックを持っていることでそれが浮いているように見える。
赤女の荷物は少なかった。女ならもっといろんなものを持つべきなんだろうけど、赤女は違う。化粧品とか、そういうものを一切使っているのを見たことがない。
しかし、赤女の肌は黒い目と黒い髪を引き立たせるかのような白で、結構綺麗だ。逆に、使わない方が良いのかもしれない。そう思ってしまうほど。
気が付けば赤女のことを考えている俺に、うんざりする。でも、まだ信じないから。まだ、駄目だって分かっているけれど、拒むから。
赤女の死体を見るまでは、まだ。
「ライアー、どうする?」
ジャルドの目はまだ虚ろだ。
普段なら自分で判断できる人間なのに、今はそうじゃない。カンコが居なくなったからなのか、それとも、カンコが居ないからなのか。それは分からない。
カンコと一緒じゃないジャルドを見るのは、これが初めてだからだ。
カンコは、ジャルドの隣に何時も立っていた。それは、ジャルドが隣を許したからであり、信用しているからであり、そして必要だからだ。
俺にとって、赤女はそんな存在なのだろうか。違う、絶対に違う。俺に必要なのは、赤女が持っている黒という色であり、赤女なわけじゃない。
「……ゴールデンアームスの件を解決しに行く」
一瞬考えた末に応えると、ジャルドは俺の方を睨みつけるかのように見た。
仕方がない。クオに頼まれたんだから。俺はクオの期待を裏切ったりなんか出来ない。
赤女は俺のとって重要な存在じゃない。だから良いんだ、これで。赤女を探すのは、そのあとだ。それで良い。
赤女の扱いなんか、これで。
「……ライアー……?」
「なんだよ。ジャルドはどうする? 俺と来るか?」
ジャルドの拳に、力が入ったような気がした。確かに怒っているよな。大切なカンコが、知らない女と道ずれで落された。
ジャルドは答えない。呆れているのだろう。
俺はいじいじしてばかりだよ。
「……赤女たちが落ちたのは、多分、ゴールデンアームスたちが争っている場所らへんだと思うけど」
〜つづく〜
四十六話目です。
なんだか喪失感が今すごいです。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.214 )
- 日時: 2012/11/04 15:07
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
47・親子のような二人。
「な、おい」
燕はご飯を持ってくると言ったのに、手ぶらで戻ってきた。幕を片手で軽く捲り、半身を入れて手招きをしてくる。
どうやら急いでいるようだ。
私はカップのことは忘れて、カンコの手を取って立ち上がった。カンコは全然抵抗はしない。私たちは素直に燕に従ってテントの外に出た。
カンコは初めてじゃないけど、私は初めて。カンコの言った通り、テントの外は草原だった。そして、私たちが居たテントと同じような物が周りに何個もある。距離を置いていない。その方が効率が良いということだろう。
争っているのだから、辺りの空気はピリピリとしている。みんな気を引き締めているんだ。でも、なんでだろう。意外と、緩んでいる感じがするかもしれない。もっとしっかりしている方が良いのに。
燕も、なんだか緩かったし。
私たちがもしも、敵の仲間だったらどうするんだろう。そんなことは全く考えていないようだったし。
燕が私たちを連れてきたのは、上半身裸の男のところだった。
身長は大きい。今まで見てきた人の中で一番かもしれない。そして、威圧感がすごい。髭に囲まれた口はきっちりと締まって居て、厳しそうな感じがする。鋭い眼光は睨むように私に向けられている。
カンコは動じていない。
太い指には宝石の指輪がはめられている。ネックレス、ズボンの装飾。
お金持ちのようだ。
「親方、連れてきたぜ」
燕はそういうと、親方の横につく。
燕と男に身長差はすごくて、まるで親子のようだ。もしかして、親方は二メートルはあるんじゃ無いだろうか。
もしかして、ああ、そうか。身長だけじゃない。纏って居る空気が重すぎて、大きく見えるんだ。自然に、怯えさせられちゃってたんだ。
しっかりしないと。
私はそっと、カンコの手を握る手に力を込める。カンコも受け入れてくれる。
「……黄金の両腕だ」
ゴールデンアームス。ライアーが言っていた、人だ。この人が起こしてる抗争を止めるんだって、言っていた。
そういうことだ。そういうことだ。凄い偶然だよ。凄いな、本当に。
つまり、ここで待っていれば、ライアーが来る。ジャルドもライアーについて来てくれていれば、これで万事解決ってわけだ。良かった。
でも、ライアーが私のことを探していたら。そうしたら、ここには来ないのかもしれない。
ならないよな。あれは、違う。落ちるところに手を伸ばしてくれたのは、助けたかったわけじゃない。ただ、人間として、ただ反射的に手を伸ばしただけかもしれない。
そうだよな。
だからきっとライアーはここに来る。絶対。
私はキッと、負けないようにゴールデンアームスを見上げる。
ゴールデンアームスの眉がピクリと動いたけど、気にしない。
私がこんな顔をするとは、思わなかったのだろう。
「雪羽です」
「カンコ」
とりあえず、名乗ってはおく。
燕がなんだか横でそわそわしている。なんだろう。私の名前はさっき聞いたでしょ。
組んでいた腕をほどいて、私の頭に大きな手を押し付けるゴールデンアームス。
私は指の間からゴールデンアームスを見上げていた。指輪がごつごつしていて痛い。髪が絡みそうだ。
そして、しばらくして離す。
なんだ。何がしたかったんだ。
私は意を決して、声を放つ。
ゴールデンアームスの威圧に負けないように。
「私は、貴方たちの抗争を止めに来ました」
〜つづく〜
四十七話目です。
まだまだまだ。
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