複雑・ファジー小説
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- 赤が世界を染める、その時は。
- 日時: 2016/02/25 00:54
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)
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『必ず勝利せよ。敗北は死だ』
scene.6 message.by.raimei
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+この小説をオススメできない方+
・荒しが趣味な方
・中二病が嫌いな方
・更新が早くないと嫌な方
・作者のもうひとつのカキコネームを知っている方
・作者に文才を求めている方
・誤字多し。直す気3%。でも教えてくださると嬉しいです。
【2012年冬・小説大会+複ファ金賞】
ありがとうございました!!!!!!!
いやいや、見た時はビックリでした……。
本当にうれしいです!!!今でも信じられないくらいです。
本当にありがとうございました。
まだまだ続くというか、書きたいことがまだあるというか、自分の中で終わりが見えていないので終わりまでお付き合いしていただいたらうれしいです……!!
+目次+
第1章『赤=私=雪羽=バカ』
1>>1 2>>2 3>>3 4>>4 5>>5 6>>6 7>>9 8>>12 9>>15 10>>16 11>>19 12>>20>>21 13>>23 14>>27 15>>29 16>>32 17>>34 18>>41 19>>43 20>>44 21>>45 22>>46 23>>47 24>>48 25>>49 26>>50 27>>51 28>>52 29>>53 30>>54 31>>55 32>>56 33>>57 34>>58 35>>59 36>>60(完結)
第2章『人生。』
1>>61 2>>62 3>>63 4>>64 5>>65 6>>66 7>>67 8>>68 9>>69 10>>70 11>>71 12>>72 13>>73 14>>75 15>>76 16>>77 17>>78 18>>79 19>>80 20>>81(完結)
第3章『現実逃避に失敗しました。』
1>>82 2>>83 3>>84 4>>85 5>>86 6>>87 7>>88 8>>89 9>>90 10>>91 11>>95 12>>96 13>>97 14>>98 15>>99 16>>101 17>>102 18>>103 19>>104 20>>105 21>>106 22>>107 23>>108 24>>109 25>>110 26>>111 27>>112 28>>113 29>>114 30>>115 31>>116(完結)
第4章『レッドエイジ』
1>>117 2>>118 3>>119 4>>120 5>>121 6>>122 7>>123 8>>124 9>>125 10>>126 11>>129 12>>130 13>>131 14>>132 15>>133 16>>134 17>>135 18>>136 19>>137 20>>138 21>>139 22>>140 23>>141 24>>142 25>>143 26>>144 27>>145 28>>146 29>>147 30>>148 31>>149 32>>152 33>>153 34>>154 35>>155 36>>156 37>>157 38>>158 39>>159 40>>160 41>>161 42>>162 43>>163 44>>164(完結)
第5章『燕は高く、空を飛ぶ』
1>>165 2>>166 3>>167 4>>168 5>>169 6>>170 7>>171 8>>172 9>>173 10>>174 11>>175 12>>176 13>>177 14>>178 15>>179 16>>180 17>>181 18>>184 19>>185 20>>186 21>>187 22>>188 23>>189 24>>190 25>>191 26>>192 27>>193 28>>194 29>>195 30>>196 31>>197 32>>198 33>>199 34>>201 35>>202 36>>203 37>>204 38>>205 39>>206 40>>207 41>>208 42>>209 43>>210 44>>211 45>>212 46>>213 47>>214 48>>215 49>>216 50>>217 51>>218 52>>219 53>>220 54>>221 55>>222 56>>223 57>>224 58>>225 59>>226 60>>227 61>>228 62>>229 63>>230 64>>231 65>>232 66>>233 67>>234 68>>235 69>>236 70>>238 71>>239 72>>240 73>>241 74>>242 75>>243 76>>244 77>>245 78>>246 79>>247 80>>248 81>>249 82>>250 83>>251(完結)
第6章『Your love which binds us』
1>>252 2>>253 3>>254 4>>255 5>>256 6>>257 7>>258 8>>259 9>>260 10>>261 11>>262 12>>263 13>>264 14>>265 15>>266 16>>269 17>>270 18>>271 19>>272 20>>273 21>>274 22>>275 23>>276 24>>277 25>>278 26>>279 27>>280 28>>281 29>>282 30>>283 31>>284 32>>285 33>>286 34>>287 35>>288 36>>289 37>>290 38>>291 39>>294 40>>295 41>>296 42>>297 43>>298 44>>299 45>>300 46>>301 47>>302 48>>303 49>>306 50>>307 51>>308 52>>309 53>>310 54>>311 55>>312 56>>313 57>>314 58>>317 59>>318 60>>322 61>>323 62>>324 63>>325 64>>326 65>>327 66>>328 67>>329 68>>330 69>>331 70>>332 71>>333 72>>336 73>>338 74>>340 75>>341 76>>342 77>>343 78>>344 79>>345 80>>346 81>>347 82>>348 83>>349 84>>350 85>>351 86>>352 87>>353 88>>354 89>>355 90>>356 91>>357 92>>358 93>>359 94>>360 95>>361 96>>362 97>>363 98>>364 99>>365 100>>366 101>>367 102>>368 103>>369 104>>370 105>>371 106>>372 107>>373 108>>374 109>>375 110>>376 111>>377 112>>378 113>>379 114>>380 115>>383 116>>384 117>>385 118>>388 119>>395 120>>397 121>>399 122>>400 123>>403 124>>404 125>>405 126>>406 127>>407 128>>408 129>>409 130>>410
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.50 )
- 日時: 2012/05/11 20:11
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
26・赤が走っているとき。5
全く、面倒なことになった。
俺は大体赤女の命なんてどうだっていいんだ。
赤女の黒髪と黒目さえ無事であれば。
そのためには、赤女には生きていてもらわなければならない。
もしアイツが死んだなら、俺は赤女の首だけを持って移動することになる。
そんなのは真っ平ごめんだし、アイツの黒目が心配だ。
死んだら瞳孔が開いて、あの黒真珠のような綺麗な濁りの無い目が、台無しになってしまう。
あれ、もし生きたままアイツの眼球を取り出したらどうなんだ?
あの黒目は健全なのだろうか。
赤女を生きたまま連れまわすより、そっちのほうが楽そうだ。
何て、今は考えている場合ではない。
そいつは一度吼えるなり、俺に突っ込んできた。
そいつの武器はそいつ自身の右腕らしく、指先まで尖らせて俺に向けている。
対する俺は生憎武器がなく、体術には自信がない。
俺はそんなに筋肉がつく体質では無いため、武道家には向かない。
そんなのは自分自身が一番熟知していた。
だが基本的なことは理解している。
奴の右腕を俺の身体に向けさせないように上手く流せば良い。
そのために俺もそれらしい体制をとった。
右手を引いて左手を少し前へ。
腰を低く落として奴から目は離さない。
距離はあらかじめとってある。
大丈夫だ。
そう思っていた。
奴は早かった。
俺の動きを予想して動いた。
咄嗟に突き出した俺の右腕をさらりと避けて、俺の懐に入ってきた。
ヤバイ。
不味い。
このままでは奴の右腕は俺の身体を貫通するだろう。
何の金属か分からないが、とにかく硬そうなこの会社の壁を少なからず破壊したのだ。
力は半端じゃない。
俺は胴体を守ろうと、そいつの右手を自分の左手で掴んで身体を左に投げた。
くるりと反転して奴を見つめる。
奴はまだ俺に背中を向けていた。
俺は左手を開閉してみた。
グチャリと嫌な音がした。
肉がそげている。
ちらちらと硬いものにあたる感覚がするから、きっと骨が少し出ているであろう。
想定したことでは合ったが、俺はアイツの速さのほうが凶器だと思った。
幾ら右手の破壊力が高くても、遅ければ意味がない。
だがアイツは速い。
速すぎる。
目で終えなかった。
消えたかと思った。
「速いな」
久しぶりに本音が素直に出た。
俺は素直ではない。
そんなのは昔からだ。
ずっと前からだ。
ただ、今言っておきたかった。
「褒めてる?」
そいつは俺を振り返ってきた。
何も映さない、ガラス玉の様な目の中のメモリが小刻みに震えている。
こっちからでは詳しくは判らないがそんな気がした。
「多分」
いや、褒めている。
俺はここでやっと素直では無い性格を発揮した。
聞かれた内容がなんだか気に食わなかったので、あえて曖昧にしておいた。
感じるところ、奴は攻撃して来ない様なので構わず左手を見た。
血がだらだらと溢れている。
止まる気配はなさそうだ。
やはり骨が見えている部分があった。
見てしまったら余計痛くなってきたので、目を放す。
「お前は、頭がいいな」
一瞬分からなかったが、どうやら褒められているようだ。
褒められるのは久しぶりではない。
つい先日、赤女にこの赤髪と赤目を褒められたばかりだ。
俺の赤髪は赤髪と言っても、茶髪に近いわけではなく、真紅だ。
本当に赤い絵の具をチューブから出してそのまま塗りたくったような色。
純粋な赤。
同じく瞳も少し暗いものの、純粋な赤だ。
その色を俺は心底嫌っている。
本当に気に食わない色だ。
俺の髪と言い、目と言い、赤女と言い。
「普通、自分の手を犠牲になんか咄嗟にできる芸当じゃあない」
段々と胸糞悪くなってきた。
そこまで何か言われるといっそ気持ちが悪い。
気味だ、気味も悪い。
慣れていないから少し身体に鳥肌がたった。
「……そうか」
絞り出した声は不自然じゃなかっただろうか。
今の俺にはそれを判定する能力はない。
なんだか頭がボケッとする。
あれ?
もしかして俺、自惚れてる? 喜んでる?
いやいや、このままではいけない。
俺は集中しようと右手で自分の頬をぶった叩いた。
良い音がした。
流石に両手で叩く気にはなれなかったけれど、コレで充分だった。
集中しろ。
今度は腕後と持っていかれるかもしれない。
「もういいか? このくらいで」
何がもう言いのかわからないが、もう攻撃してもいいかということだろう。
いちいち、なんだかわざとらしい奴だ。
気に食わない。
俺はもしかしたらコイツが苦手なのかもしれない。
「いいぞ」
俺は短く答えてさっきと同じ体制をとった。
そこで気づいたが、まだあのおっさん、逃げてなかったのかよ。
〜つづく〜
二十六話目ですね。
最近多く更新しているわけは本を沢山読んでいるからです。
本読むと、小説書きたくなりますよね!
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.51 )
- 日時: 2012/05/11 20:15
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
27・赤が走っているとき。6
ジャルドの腹にナイフが刺さるのを、私はただ見つめていた。
この角度からは分からないけれど、分かる。
ジャルドは今きっとボーっとしていたんだ。
それを見逃すほど、あの女性もバカじゃないってことだ。
甘くもないだろう。
数回くらいしか会ったことは無いけれど、ジャルドは彼女のことを気に入っている。
雰囲気で分かる。
嫌いという気持ちもあるけれど、興味もある。
ジャルドはその気持ちから目を逸らそうともせず、あぁ、そんなこともあるさ、見たいな顔をしている。
そういうところがジャルドの強いところなんだと思う。
それにしてもジャルドは何でボケッとしていたのか。
それは私も分かる羽目になった。
声。
声だ。
二度と聞きたくもない、最低最悪の外道の声。
その声が私の耳に何処からか侵入して来て、脳を侵していく。
もう2度と聞きたくもないのに。
あぁ、カンコ。私の可愛いカンコ。元気かい。元気そうで私は安心したよ。カンコが元気じゃないなんて私にはとても耐えられない。カンコ、少し背が伸びたかい?悪い事じゃあないね。だけど私の知っているカンコが少し変わってしまうというのも悲しい物だ。カンコ、身体は大丈夫かい。無理はしてはいけないよ。カンコは私のものなのだから勝手に壊れることなんて許されないのだよ。私の手から逃げたつもりかい。そういうところは成長していないのかな。子供のままだね。可愛いカンコ。私のものだよ。カンコは一生私のものだ。私はカンコをいつまでも見守っているのだよ。どうだい気分は。自分の見られない物から見られる気分は。不安だろう。時々うなされているね、カンコ。私が怖いのかい。心配することはないさ、カンコ。カンコなら大丈夫だ。カンコは私のものなのだからね。何も考えず、バカみたいな顔して生きるがいいさ。今はそうしていなさい。そしていつか私にその愛らしい顔が歪むのを見せてね。後カンコ、あの男に壊されないようにしなさい。あの男に汚されるようなカンコはカンコじゃないよ。分かっているね。カンコ。私のカンコ。私だけのカンコ。
「黙れっ……」
私は搾り出すように誰にも聞こえない声量で呟いた。
お願いだから黙ってくれ。
もう私を解放してくれ。
怖い。
あぁ、怖いとも。
私は世界で一番貴方が怖い。
いい加減私もうんざりなんだ。
貴方の声は私の身体に浸食して私を壊していく。
それがたまらなく気持ち悪くて、怖くて。
きっと今ジャルドも声を聞いたんだ。
時々私とジャルドに話しかけてくるあの声の正体は、私はもう分かっている。
この声の哀しみと恐怖から、ジャルドを解放してあげたい。
だから私と離れて欲しい。
私を捨てて欲しい。
でもしない。
ジャルドはしない。
私をはなしてはくれない。
私は結局それに甘えているだけだ。
ジャルドを苦しめたくないのに、私は1人になりたくない。
ジャルドはどうだろう。
ジャルドも私のように、1人になりたくないのだろうか。
私なんかといたくないだろうか。
聞くのが怖い。
もしそれでジャルドが私を否定したら。
私は。
どうなってしまうだろう。
1人なんて絶対嫌だ。
だからお願い。
私から離れていかないで。
私はこの思いを自分の胸にしまうしか方法が無いのだけれど。
〜つづく〜
二十七話目です。
今回は短め。
一息つきましょう。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.52 )
- 日時: 2012/05/11 20:17
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
28・赤、走る。
私はコレでもかというくらい全力疾走していた。
あの場に私がいたって、何の解決にもならない。
そんなのは分かっている。
だけど今私はライアーがものすごく心配だった。
きっと大丈夫だ。
私のことをねらった彼は結構強いだろう。
女の勘。野生の勘。
ライアーが死ぬことは絶対ない。
なのになんで。
私はこんなにも動揺しているんだろう。
自分のことだけを考えて生活して居ればよかったのかもしれない。
今までは。
でも今は違う。
私は周りを見なければいけない。
私のせいで誰かが命を落とすかもしれない。
そんなのは嫌だ。
いっぱい、たくさんの人が笑っているのが良い。
泣いている顔がたくさん何て堪えられるはずがない。
だから私はライアーに迷惑はかけられない。
当然だ。
決まっている。
でも怖い。
私に何ができる?
今まで何も考えないで生きてきたっていうのに。
こんな地味で救いようがないくらいバカな私に、何が守れる?
ライアーの事を守ることなんて、本当にできる?
絶対に迷惑はかけないと言い切れる?
死んでいた。
死んでいた。
ライアーが助けてくれなければ、私の脳みそは今頃廊下にぶちまけられていただろう。
自分で気付けない。
全く気配を感じることができなかった。
ダメだ。
ダメだ。
こんなんじゃ。
ネガティブはいけない。
私らしくない。
ポジティブだ、ポジティブ。
レッツポジティブシンキング!
元気だ、私は元気、私ならできる。
平気だ。
これから先、きっと何もない。
私はどれ位走ったかは分からないけど、今まで直線だった廊下に右に曲がる道が現れた。
迷わずその先を見ると奥にエレベーターが見えた。
一階に戻るにはエレベーターに乗るしかないだろう。
会談の位置は知らないし、探している暇もない。
私は早くライアーの言ったとおり、外に逃げないといけない。
私はさっさと行こうと思った。
だが、見えてしまったのだ。
右に曲がる道じゃない、直線に伸びる廊下の50メートルくらい先に人影が。
影は2つ。
1人はしゃがんで、もう1人は立ってしゃがんでいる人に細長い物を向けている。
顔は確認できない。
どんな状況かもわからない。
でも私の足は動いていた。
だってしゃがんでいる人の髪が、金色に光り輝いているのが何とか確認できたから。
〜つづく〜
二十八話目です。
久しぶりの更新でしたか。
今、風邪を引いていて辛いです。
喉が、喉が痛い。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.53 )
- 日時: 2012/05/11 20:41
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
29・赤の恩返し。
考え事を止めたジャルドはやはり強かった。
あたしなんてコイツにかなうはずなかった。
そんなことは分かっていたけれど、ジャルドの腹にナイフを刺せたから、何となくいい気になっていたんだろう。
迂闊だった。
バカだな、あたしは。
あたしは仕事を何回か成功させているから、それなりに強くなっていたと思っていたのに。
なのに。
この男の前に立つと、全てが勘違いだったと言われているように感じる。
何も成長していない、と。
確かにあたしは何も成長できていない。
それどころか劣化しているかもしれない。
成功して、もしかしたらあたしはやれるんじゃないかって、強くなったんじゃないかって、思ったときコイツが現れてあたしを否定して、あっさりあたしを倒していく。
なんなんだよ。
あたしにもう少し希望をくれよ。
いいじゃないか。
あたしだって強くなりたいんだ。
自分を守っているだけで精一杯なんだ。
そんなのは嫌なんだ。
「もう終わりかな? キティー」
廊下に座り込むあたしを見下ろして、鞘に入れたままの刀を向けてくるジャルド。
クソッ……。
かつてあたしに向かって、コイツが鞘から刀を抜いたことがあっただろうか。
無い。見たことが無い。
悔しい。
悔しくてたまらない。
あたしはたまらなくなって、下唇をかんだ。
ジャルドが刀を振りかぶった時だ。
急にジャルドが見えなくなって、あたしの視界は赤くなった。
血?
違う。
血ではない。
血はこんなに鮮やかじゃない。
この赤は。
どこかでみた。
「わ、私の連れに何しようとしてんですか!!」
あぁ、コイツ。
あの時麻薬売りから助けた女か。
いかにもバカですよーって感じの。
え? 何でこんなところに?
「お?」
ジャルドも驚いているようだ。
当然だ。
いきなりバカ面の女が、意味不明なこと言いながら2人の間にわって入ってきたのだから。
あたしを、庇う気のようだ。
あぁ、バカだな。
コイツ。
救いようがない。
根性は認めるけれど、普通助けようとするか?
見ると、足は震えているし、情けないことこの上ない。
だけど、こんな奴でもあたしのために殺されるのは後味が悪いし絶対にさせたくない。
「ちょっと、アンタ……」
あたしは急いで立ち上がってコイツをかばおうとしたけれど、体の自由が利かない。
立ち上がれない。
何なんだ。
あたし、こんなに弱かったんだ。
バカだと思っていた奴に庇われるくらいに。
あたしはまた悔しくなって俯いた。
いつもならこんな姿ジャルドには見せたくないけれど、今は耐えられなかった。
あたし、何してるんだろう。
あたし、あたしは。
「これはこれは、お嬢さん、こんにちは」
気持ち悪いくらいしっかりとした口調になるジャルドが腹立たしい。
コイツの裏表が激しいことを知っている人はあまり多くない。
ジャルドはきっと、自分の本当の性格を知られることを恐れているんだ。
そんなジャルその気持ちは、あたしには分からない。
コイツは性格が悪いから分かりたくもない。
コイツの気持ちなんか。
ふとジャルドがあたしの方に顔を向けた。
それに気がついたあたしは顔を上げた。
何でこんなことをしたんだろう。
いつもなら、顔なんて合わせたくないのに。
ジャルドの目はあたしをしっかりと捉えている。
その目は本当に? という疑問の光を宿していた。
何が、本当なのかと言うと、あたしとこの赤い女が『連れ』なのかということだろう。
答えにくい質問にあたしはまた顔を下に向けた。
情けない。
何回目だろう。
こんな気持ちになるのは。
自分だけ取り残されているの事に雰囲気で気が付いたのか、赤い女が声を張り上げた。
「なんなんですか! やめてあげてください!」
今の状況を見て、あたしが危ないことに気が付かない奴はいないだろう。
コイツなら気が付かないことはありえそうだ。
大して話したこともないのにそう思った。
ジャルドは一瞬めんどくさそうな表情を作りかけたけれど、何とか持ちこたえて、人のよい笑みを貼り付ける。
「あー、危ないことはしていませんよ。この女性が気分を悪そうにしていたので助けてあげようと思ったのです」
「う、嘘です!!」
声は震えていたけれど、それは充分威嚇になったと思う。
証拠に少しだけジャルドが楽しそうに笑った。
あたしや少し離れたところで何やら顔を青くしている少女に向ける、本当のジャルドの笑みだ。
その表情を初めてみた赤い女は驚いたのか、怯えたのか、少しだけ後ずさった。
それでもなんとかこらえたようだ。
逃げ出さないのは立派だと思う。
「暴力はいけないです!」
勇気ある赤い女の行動に影響されたのか、あたしの体に少しだけ力が入ったのを感じた。
〜つづく〜
二十九話目です。
テストだったので遅くなりました。
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.54 )
- 日時: 2012/05/11 20:45
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
30・赤の恩返し。2
正直この小娘がわって入ってきたときは不快感だけだったけれど、話してみると面白い。
まさか、この女に連れぇ?
意外も意外。
超ビックリだ。
この女は人に頼ることを嫌う。
俺も同じようなところがある。
とまぁ、こんなことは前話したような気がするから省略。
俺はめんどくさいことが嫌いなんだ。
それで、話を戻すとこの小娘、小動物みたいだ。
俺を恐れている。
怖いんだな、俺が。
確かに俺は絡み辛いところもあるだろう。
というか絡み辛いところしか無い。
そんな俺を満足させられるのは、この世界に数えられるくらいしかいないかもな。
それは淋しいことじゃない。
理解者が少ないなんて、嘆くことじゃない。
だから俺は大丈夫なんだ。
何て話がずれたから戻す。
あぁ、きりがねぇな。
俺はお喋りだから関係ないことばっかり話してしまう。
意識を集中しよう。
この小娘は何でか全身赤で固めている。
赤が好きなのか? 異常者め。
腰に差しているのは頼りない小型ナイフ。
背中にあるのは立派な武器だけれど、それは使い物にならないだろう。
それは俺が用心棒をやっているこの会社の武器だから。
こんな奇妙な女、どんな行動とるかわからない。
読めない。
単純でバカそうだ。
でも、何なんだ。
この、嫌な感じ?
わからない。
何なんだ。
とにかく、嫌な感じがするのだ。
ふぅ、と息をつく。
まぁ、いいか。
見たところ、腕はたちそうにない。
俺にかかれば1発だ。
でも何となく気に入ってしまった。
何処を?
何か、面白そうな感じがするところ。
それ以外に理由はなさそうだ。
だけど、仕方無い。
これ以上面倒事になるのはごめんだから、この小娘はここで消しておきたい。
もったいないなぁ。
もしかしたら、俺のお気に入りになることができるかもしれないのによ。
「そろそろ、どいてくれませんかねぇ?」
まだゆっくりとした口調で話す。
俺はかっこいい紳士だからね。
今の俺の服装はだらしないけれど、それを気にしている時間がもったいない。
「嫌です! ダメです!」
全然怖くねぇ。
吃驚するほど可愛らしい威嚇に、俺は思わず笑っちまいそうになる。
だけどそれを堪えようと
「じゃあ容赦しねぇよ」
した。
したはずなんだ。
俺はかっこいい紳士のはずなんだ。
でも違くなっちまった。
どうして。
おかしい。
そんなのは決まっている。
この女、何か面白い。
何か、どこかが、俺に合っている。
俺の好きなタイプだ。
カンコ。キティー。そしてこの女。
俺のタイプに統一性はないな。
ただ、俺が気に入るかどうか。それが問題なんだ。
だが、カンコは大切にしたい。
キティーは嫌がっている姿を、悔しがっている姿を見たい。
この女は怯えている姿を見たい、かも。
この扱いのさは、なんなんだろう。
ほんとに、自分のことのはずなのに、全くわからない。
何なんだ?
俺。変だな。
いつものことだ。
俺、変。
変態?
違う。
紳士。
そう。
俺は、紳士。
「貴方、一体なんなんですか!?」
俺の態度の豹変振りに驚いていた小娘が、まだ突っかかってくる。
おもしれぇ。
「俺? 俺は、かっこいい紳士、ジャルド!」
〜つづく〜
三十話目です。
いやぁ、ついに三十話ですか。
長く続いていますね。
うん。
私はもう新しい話書きたいのですが。
新キャラ出したい。
でもキャラ多いですもんね。
なんでだろう。
なんか、多い。
内容薄いくせに。
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