複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

赤が世界を染める、その時は。
日時: 2016/02/25 00:54
名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)

+ + + + + + + + + + + + + + +

『必ず勝利せよ。敗北は死だ』

            scene.6 message.by.raimei 

+ + + + + + + + + + + + + + +


+この小説をオススメできない方+
・荒しが趣味な方
・中二病が嫌いな方
・更新が早くないと嫌な方
・作者のもうひとつのカキコネームを知っている方
・作者に文才を求めている方
・誤字多し。直す気3%。でも教えてくださると嬉しいです。



【2012年冬・小説大会+複ファ金賞】
ありがとうございました!!!!!!!
いやいや、見た時はビックリでした……。
本当にうれしいです!!!今でも信じられないくらいです。
本当にありがとうございました。
まだまだ続くというか、書きたいことがまだあるというか、自分の中で終わりが見えていないので終わりまでお付き合いしていただいたらうれしいです……!!



+目次+
第1章『赤=私=雪羽=バカ』
>>1 2>>2 3>>3 4>>4 5>>5 6>>6 7>>9 8>>12 9>>15 10>>16 11>>19 12>>20>>21 13>>23 14>>27 15>>29 16>>32 17>>34 18>>41 19>>43 20>>44 21>>45 22>>46 23>>47 24>>48 25>>49 26>>50 27>>51 28>>52 29>>53 30>>54 31>>55 32>>56 33>>57 34>>58 35>>59 36>>60(完結)

第2章『人生。』
>>61>>62 3>>63>>64 5>>65 6>>66 7>>67 8>>68 9>>69 10>>70  11>>71  12>>72 13>>73 14>>75 15>>76 16>>77 17>>78 18>>79 19>>80 20>>81(完結)

第3章『現実逃避に失敗しました。』
>>82 2>>83 3>>84 4>>85 5>>86 6>>87 7>>88 8>>89 9>>90 10>>91 11>>95 12>>96 13>>97 14>>98 15>>99 16>>101 17>>102 18>>103 19>>104 20>>105 21>>106 22>>107 23>>108 24>>109 25>>110 26>>111 27>>112 28>>113 29>>114 30>>115 31>>116(完結)

第4章『レッドエイジ』
>>117 2>>118 3>>119 4>>120>>121 6>>122 7>>123 8>>124 9>>125 10>>126 11>>129 12>>130 13>>131 14>>132 15>>133 16>>134 17>>135 18>>136 19>>137 20>>138 21>>139 22>>140 23>>141 24>>142 25>>143 26>>144 27>>145 28>>146 29>>147 30>>148 31>>149 32>>152 33>>153 34>>154 35>>155 36>>156 37>>157 38>>158 39>>159 40>>160 41>>161 42>>162 43>>163 44>>164(完結)

第5章『燕は高く、空を飛ぶ』
>>165 2>>166 3>>167 4>>168 5>>169 6>>170 7>>171 8>>172 9>>173 10>>174 11>>175 12>>176 13>>177 14>>178 15>>179 16>>180 17>>181 18>>184 19>>185 20>>186 21>>187 22>>188 23>>189 24>>190 25>>191 26>>192 27>>193 28>>194 29>>195 30>>196 31>>197 32>>198 33>>199 34>>201 35>>202 36>>203 37>>204 38>>205 39>>206 40>>207 41>>208 42>>209 43>>210 44>>211 45>>212 46>>213 47>>214 48>>215 49>>216 50>>217 51>>218 52>>219 53>>220 54>>221 55>>222 56>>223 57>>224 58>>225 59>>226 60>>227 61>>228 62>>229 63>>230 64>>231 65>>232 66>>233 67>>234 68>>235 69>>236 70>>238 71>>239 72>>240 73>>241 74>>242 75>>243 76>>244 77>>245 78>>246 79>>247 80>>248 81>>249 82>>250 83>>251(完結)

第6章『Your love which binds us』
>>252 2>>253 3>>254 4>>255 5>>256 6>>257 7>>258 8>>259 9>>260 10>>261 11>>262 12>>263 13>>264 14>>265 15>>266 16>>269 17>>270 18>>271 19>>272 20>>273 21>>274 22>>275 23>>276 24>>277 25>>278 26>>279 27>>280 28>>281 29>>282 30>>283 31>>284 32>>285 33>>286 34>>287 35>>288 36>>289 37>>290 38>>291 39>>294 40>>295 41>>296 42>>297 43>>298 44>>299 45>>300 46>>301 47>>302 48>>303 49>>306 50>>307 51>>308 52>>309 53>>310 54>>311 55>>312 56>>313 57>>314 58>>317 59>>318 60>>322 61>>323 62>>324 63>>325 64>>326 65>>327 66>>328 67>>329 68>>330 69>>331 70>>332 71>>333 72>>336 73>>338 74>>340 75>>341 76>>342 77>>343 78>>344 79>>345 80>>346 81>>347 82>>348 83>>349 84>>350 85>>351 86>>352 87>>353 88>>354 89>>355 90>>356 91>>357 92>>358 93>>359 94>>360 95>>361 96>>362 97>>363 98>>364 99>>365 100>>366 101>>367 102>>368 103>>369 104>>370 105>>371 106>>372 107>>373 108>>374 109>>375 110>>376 111>>377 112>>378 113>>379 114>>380 115>>383 116>>384 117>>385 118>>388 119>>395 120>>397 121>>399 122>>400 123>>403 124>>404 125>>405 126>>406 127>>407 128>>408 129>>409 130>>410

Re: 赤が世界を(略)参照300で内臓が口から出てきた。 ( No.60 )
日時: 2012/05/12 21:33
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: WylDIAQ4)


36・赤。


訳が分からない。
どうして。

「アスラ」

弱弱しい声だった。
終わりが近い?
ふざけるな。
まだだ。
違う。

「……せんぱ、」

声がかすれている。
誰のって、俺の。俺の、声が。
戸惑っている。
俺が。

先輩。

「心配するな、俺が居る」

しっかりした声だった。
対照的だった。
俺の声と違って震えてなんかいなかった。
終わりが近いのに。
来るなよ。終わり。どっかいけ。

「……どこ、に、せんぱ、」

情けないな、俺。
しっかりしろよ。

「泣くなよ」

俺が殺した。

久しぶりに命を奪った。
虚しい。
マスター。励ましてよ。マスターの声が聞きたいよ。俺、そろそろやばいよ。限界だよ。心が。

冷たくなっていく先輩を、俺は乾いた眼球のままで見送った。

アイツ等を追う気になれなかった。

ねぇ、先輩。
貴方は何を見て
『泣くなよ』
って言ったの?

 + + + +

「あんた!」

「あ?」

大体の話を聞いた後、赤女がうるさいのでとりあえず金髪女の用事を済ませようと、金髪女の案内に従ってきた。

すると金髪女があるドアの前で暴れ始めた。

「いい加減おろしなさいよっ!」

別に軽いし、負担ではなかったけれど、こんな風に暴れられると面倒なので仕方なくおろす。

やっぱり目立った外傷はないものの、体力的にきているようだ。
まぁ、泥棒だし用心棒とでも戦ってきたのだろう。
結構腕は経つのだろうか。
興味はないけど。

「あぁ、レッドライアー、バカ、その」

ふらふらとしていて顔色も優れない。
でもコイツはどうやら、負けず嫌いで、人にあまり頼られたくないらしく、ここで俺たちと別れを告げる気らしい。

「ぁりがと」

それは短いけれどしっかりとした言葉だった。
俺の場合、何もしていないが別にいいか。

「えっ、わたっ」

ということでバカはここで黙らせておく。
どうせ『まだ手伝いますよ』とか言うつもりだったのだろう。
俺はもう面倒なことにしたくはないので、気絶させて金髪女と同じように肩に担いだ。
それに、俺は泥棒とかそういうことは詳しくないから、俺と赤女がついていっても足手まといだ。

ここで別れるのがお互いにとっていいだろう。

「そうか、じゃあな」

金髪女は少し赤女のことを心配しているようだった。
でも俺はさっさとここを出たいし、いい加減ゆっくりしたい。
左手も治したい。
さっきは運よく赤女に気付かれなかったが、時間の問題だろう。
?
気付かれたからってなんだってんだ?
ま、いっか。

本当に、疲れた。
寝たい。眠い。

 + + + +

「カンコ? 大丈夫か?」

ジャルドの声は凄く落ち着く。
私はしっかりとジャルドのシャツを握り締めていた。

「う、ん。もう大丈夫」

段々と胸のざわめきは収まってきていた。

本当にあの女なのだろうか。
私が感じたこの嫌な感じは。

「ねぇ、ジャルド?」

「どうした?」

私が我が儘を言うのは珍しいかな。

でも。

「離れよう、ここ」

嫌なんだ。
吐き気がするし、鳥肌が止まらない。
色んな思いが、恨みが、混じりすぎているんだ、ここは。
とても普通に生活できないよ。

「いいよ」

ジャルドは優しく微笑んでくれた。

テンポの良い優しい心音に私は頭を押し付けた。

凄く、眠たいよ。


〜エンド〜


一章完結!
一生は雪羽とライアーとカンコとジャルドとキティーとアスラの話です。
正直、グダグダでしたが終わることができてよかったです。
次からは二章。
雪羽とライアーの旅はまだ続くようです。
会話分多い………………w
最初は切ない感じを出そうとあえて白くしてみましたよ。
アスラ君はまた出るのでしょうか。

Re: 赤が世界を(略)やっと一章完結! ( No.61 )
日時: 2012/05/13 13:20
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


1・左手。


「あ、ライアーさん」

重い瞼を上げると目の前には赤女がいた。
アレ?
一体何があったんだ?
そういえば。思い出してきた。
ハラダ・ファン・ゴなんて行くんじゃなかった。

「だ、大丈夫ですか?」

ホテルに戻ってきたところまでは覚えている。
それから俺はとにかく眠たくて、ベッドに倒れこんで。
それからだな、記憶がないのは。

「ごめんなさい……。私の我が儘のせいで……」

赤女は、俺が横になっているベッドの左側の椅子に、腰を下ろした。
申し訳なさそうに目を伏せている。
多分、俺の左手を見たのだろう。
油断した。
俺の左手はもう包帯でぐるぐる巻きにしてある。
かなり綺麗に仕上がっているし、痛みはないから医術士がやったのだろう。このバカに医術が使えるとは到底思えない。

「……あぁ」

左手を動かそうとすると、赤女が俺の左手をがっしりと掴んだ。
ピリッと痛みが一瞬走った。
まだ完治はしていないようだ。
でも顔には出さない。
赤女が大騒ぎしそうだから。

「本当に、ごめんなさい」

赤女の両手が緩んで、そっと俺の左手を包み込む形になった。
何か、変な感じ。

「別にお前のせいじゃないだろ」

さらさらと、重力にしたがって滑り落ちる赤女の黒髪を見つめながら、そんな言葉を吐き出した。
俺に優しい言葉なんて似合わないはずなのに。

赤女は顔を上げた。泣いてはいなかったが、今直ぐにも泣き出しそうな表情だった。
うわ。どれだけ自分の事追い込んでいるんだ、コイツ。バカだろ。知っているけど。こんな奴だって事は。

「また、借りできちゃいました」

そうやって無理矢理笑う姿もバカらしい。

1発殴ってやりたくて、立ち上がろうとすると、赤女が立ち上がった。
唐突だったから驚いて動きが止まる。

「あの、医術士さんに治療を頼んだんですけど、そのときに、しばらくは動かないほうがいいって」

「……なんで」

久しぶりに俺らしい不機嫌そうな声が出た。
よし。その調子。最近ちょっと変だったって、俺。しっかりしろよ。

「結構な殺気に晒されて、身体に思っている以上の負担がかかっているって」

再び申し訳なさそうになる赤女。
そんなに俺は怖いか。
それもそうかな。
いつだって眉間に皺がよっているって誰かに嫌味を言われたことがある。
誰だったかな。

「でも、私が色々身の回りのことを、して差し上げますから!」

安心してください! と叫んで買出しに出かけた赤女に、俺の頬は引き攣っていた。

 + + + +

何とかしなくては。
ほら、また。空回りしている。
しっかり逃げていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
私のせいだ。
私の我が儘のせいでライアーは怪我をした。
酷い傷だった。酷く疲れていた。
私のせいだ。
私はどうして狙われているの? 私、何か悪い事した?
分からない。
身に覚えがない。命まで狙われるくらいの憎しみが、私に向けられている?
分からない。どうして。
でも、分からないをずっと放置しちゃいけないでしょ。
進めよって。
何度言えば分かるんだ、この馬鹿。
頼るなよ。
私がライアーを支えなきゃ。
麻薬には引っかからない。絶対。お姉さんから教わった。
頑張れ。私。
ライアーの身体から疲れが取れるまでの間。少しだけの間。それだけを支えていこう。
まずは小さなことから、だよね。
面倒事には巻きこまれないようにしよう。うん。


〜つづく〜


二章スタート!
一話目です。
短めになりそうです。
新キャラはまだですかね。
頑張ります。

Re: 赤が世界を(略)やっと一章完結! ( No.62 )
日時: 2012/05/13 13:24
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


2・生。


早く終わらないかな。私の人生。もういいよ。疲れたもん。そろそろでしょ。あと少しでしょ。あと少しの辛抱。つまらないよ。毎日毎日さ。私同じことの繰り返しで。進まないもん。進む気なんてないし。疲れるだけじゃん。進むとか進まないとか、考えてみるとバカらしいじゃん。くだらないじゃん。それはさ、人生を楽しめている人にしか言えないセリフでしょ。なら私には関係ないし。早く終わらないかな。こんなこと考えているだけの人生だよ。要らないよ。必要ないよ。必要ないものを、いつまでもとっておくなんて、バカのすることだよ。私バカじゃないし。だから早く捨てたいのよ。終わらせたいのよ。

「お嬢様。お医者様がいらっしゃいましたよ。診察を」

「うるさいなぁ」

邪魔しないでよ。私、もう何も考えたくないの。生きているだけで精一杯なの。もう疲れたんだって。ほっといてよ。私の人生が、あんたたちの人生に、何か問題を与える? 与えないでしょ。関係ないでしょ。だから放って置いて。

「お嬢様……」

年配の私の世話係が、何かを諦めたように息を吐き出した。

そう。それでいいの。私はそんな環境が落ち着くの。それでいいの。聞かないでよ。それでいいって。私もう諦めたのよ。諦める以前に、生きたいって思ったことないし。私生まれた時点で負け組だし。その時点でやる気失くしているし。我が儘でいいよ。世間体なんて関係ないよ。私は私で充分だよ。その私も捨てたいんだよ。

「お嬢様の病気は治すことができるのですよ?」

「その治療費、町にでもばら撒いてきたら?」

きっと皆必死になって飛びつくよ。少し面白いかもね。少しだけ。だから、少しだけだから私は生きる気になんてならないよ。残念でした。

私はベッドの中から窓の外を見守っている。神様みたい。少し高い位置から何も考えないでみんなの世界を見守る。この屋敷には3階だって4階だってあるけれど、私はここの2階でいいの。少し高い位置からで良い。高すぎると見えにくいでしょ。人の表情とか。意外とみていると楽しいの。でも私が生き続ける理由にはならないの。

「……お嬢様……」

しばらくすると、3人程居た世話係は諦めて部屋を出て行った。
広すぎるこの部屋は静寂に包まれる。
私はベッドからあまり出ないのに、何でこんなに広いんだろう。
意味ない。バカじゃないの。お父様もお母様も、私のこと心配しにきたりしないくせに、世話係に伝言頼んでさ。私に直接言いにこいよ。本当にバカ。それじゃあ信用できないよ。お父様もお母様も心配しているって? 本当に? ただの言葉じゃん。そんなの。私が生きる理由にはならないよ。残念でした。誰も悲しまないじゃん。私、誰ともつながっていないんだから。

残念でした。
誰が残念なのさ。

「バカばっか」

私は1人きりの部屋で膝を抱えて眠ろうとした。

死ぬのも、コレだけ簡単ならいいのに。


〜つづく〜


二話目です。
二章目のメイン登場です。
察しはつくでしょう?
あぁなってそうなっていくのです。

Re: 赤が世界を(略)やっと一章完結! ( No.63 )
日時: 2012/05/13 13:29
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


3・きぐるみ。


気がついたけれど、ライアーのために私は一体何をしようとしているんだ? 看病? そんなことをしたって、彼はきっと嫌がるだろう。
相当頑固なのだから。
私に看病されるくらいなら、と無理をしてでも動きそうだ。
それを阻止するために私は調節をしないと。
ライアーが自分でやれると思ったことはしないようにしないと。
そうしないと、ライアーの身体に負担がかかる。
借りを返すどころか、またお世話になってしまう。
最近は私のせいでゆっくりできていないはずだから、今だけはゆっくりして欲しい。
なら私にできることは食事を作ることだろうか。
結構な歳月1人でいるから料理はできる。人並みには。
でもそれを人に食べさせた事はない。正直不安。
ライアーは不味い料理は床に放る事だってしそうだ。
怖い。やっぱり人に否定されるのは嫌だ。誰だってそうだろう。

そのためには、やはり金が必要なので、私は今現在仕事を探している。
そりゃあライアーに頼むほうが早いだろう。
でも、私はそこまでライアーに頼っていいのか? ダメだろう。
それじゃあまるで飼い犬だ。
私は人間なのだから、自分で何かするときの金は、自分で用意したほうが良いに決まっている。

「お嬢さん」

後ろから声を掛けられたのに気が付くのには、時間がかかった。

だって私は、求人のチラシがたくさん張られた掲示板を、凝視していたからだ。
仕事をやるといってもアルバイトで、いつでもやめられるものが良い。良いに決まっている。
いつライアーの調子が戻り、この町を離れるかわからない。
いや、本当に離れるのだろうか。
というかライアーは何のためにこの町に……?

「お嬢さん?」

「ハイ?」

2回目の呼びかけに対して私は振り返った。
いつかのように麻薬を売られないか心配だったが、この間のような言ってはいけないことだろうか、その、みすぼらしい格好ではなかったので少し警戒を解いた。
でも、人は見かけによらない。
でも見かけだけで判断するのは、極めて危険なので警戒を完全に解くことはしない。
一応引っ掛けにくい女性を演じたいところだが、お姉さんのような雰囲気は漂わせることはできないということは百も承知なので、あまりバカそうな顔をしないように、気を引き締める。

「何を探しているの?」

彼は優しそうな笑みで眼鏡を押し上げた。
悪い人ではなさそうだ。
おっと、いけないいけない。
もっとしっかりしないと。
面倒事に首を突っ込んではいけない。

「あの、仕事を……」

そこで口を押さえた。ダメだ。
私はなにも成長していない。
あまり知らない人の質問に答えてはいけない。自分の情報を教えることになるからだ。

「仕事? 若いのに?」

遅かった。
今からでもこの人から距離をおきたい。
1人で町に出るんじゃなかった。怖い。お姉さんにでも縋りたい。
それじゃあダメなのは分かっているけれど。
人を信じることが怖い。この町じゃあ、いつ騙されるか、いつ人生を間違えることになるか全く分からない。
それだから私は、いつまで経ってもバカなままなんだな。救われないよ。

「なら、そうだな……うちで働く?」

「や、やめておきます!」

即答だった。
でもここで断っているなら、私はきっと一生仕事を探すことなんてできないだろう。
でもこの人はなんだか怖い。
求人の紙のほうが怖くない。

「そお? キミ、ぴったりだと思うんだけどなぁ」

「え」

思わず声を出してしまったことを後悔した。
確かに興味が沸いた。
私にぴったりってなんだろう。すっごく気になるけど、口角がいきなり上がったこの男の人の、顔を見るのが怖い。
思わず目線を下げそうになったけれど、ギリギリ保った。
それにしても、この人背が高い。気にしない。
顔が近い。き、気にしない。

「ど、どんな仕事なんですか……?」

バカ野郎。
バカの塊だ、私は。
決意したこととやっていることが真反対だ。
辛い。こんなバカな私にうんざりする。
私ってこんなバカだったんだ。知らなかった。
ライアーと出会って私は、良く自分を見直すようになったと思う。

男の人は目を細めて笑った。
もう怖くなかった。
でも近かった。鼻と鼻がくっつきそうだった。背中に壁が当たっていた。

コレで怖くないって、私、もうどうにかなってしまったのだろうか。

「きぐるみの仕事!」


〜つづく〜


三話目です。
今回は少し長め。
この男の人キャラが濃いですけどモブにしようか迷っています。
どうしよう。

Re: 赤が世界を(略)同じような小説書いている方アドバイス下さい! ( No.64 )
日時: 2012/05/13 13:33
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


4・無駄。


分かっていた。
小さい頃から、私は自分の死を悟っていた。
幼い頃、お母様が私の手を握って聞かせてくれた。

貴女は不幸なんかじゃないわ。いつかきっとお外で遊べるようになるからね。心配しなくていいわ。大丈夫よ。安心して。

私は身体が弱かったから、外に出ることは滅多になかった。
それを気遣ったお母様の言葉を、私は両手でしっかりと受け取った。
しばらくして、手放した。
必要無い。私にこの言葉は必要無い。
幼いながらに私は、私のことをよく理解していたからだ。
お母様は所詮、お母様なのだ。
私ではない。
私は別に生きたくなかった。
生き続ける理由がなかった。
毎日に楽しみがなかった。
暇ではなかった。
暇という感情を抱くことさえめんどくさい。
もう、どうでもいい。
結局、私がこれからどうしようが、生きようが、死のうが、無駄なんだ。
お父様も声をかけてくれたことがしばしばあった。

泣くなよ。お前は大丈夫だ。必ず幸せになれるからな。

私はその言葉を聞き流した。
聞く価値がない。私は泣いてなんかない。大丈夫なんてどうでもいい。幸せになんかならなくて良い。
そんなことを毎日考えていたら、誰も私に声をかけなくなった。
お母様の顔も、お父様の顔も最近見ていない。声も聞いていない。

私は一体、何を望んでいるのだろう。
答えてくれる人なんか誰もいないと知っていた。

 + + + +

「仕事ぉ?」

赤女が帰ってきたのは、もう日も沈みかけた夕方だった。
奴はなんだか妙に興奮しているようだが、何とかそれを表に出さないようにしている。
出ているが。

「はい! しばらくの間、やることになったんです!」

なんだか楽しそうな赤女の呼吸は荒く、頬は赤い。
何だコイツ。仕事ぐらいで。
俺は仕事なんかしたことない。
最初からハンターをやっている。
だからなのか、あまり『仕事』という単語に良い印象は受けない。
ここはしかも都会だ。

「どんな仕事だ? 危険な仕事じゃないだろうな?」

赤女はバカだ。
自分では、最近迷惑をかけないようにコイツなりに努力はしているようだが、バカがやる『努力』なんて高が知れている。
不安だった。心配ではない。ここ重要。

「はい! ちゃんと確認してきました!」

赤女は椅子に座らずに、ベッドに手を付いている。
赤女が時折視線を向ける左手に、俺は無意識に力を入れていた。
少しだけ、痛い。
だが、気にすることではない。
よくある傷だ。俺にしてはかすり傷程度だし。
肉がそげただけだ。
もう大丈夫なのに。

「きぐるみを着て、風船を配るだけですって!」

「……へぇ」

なんか、赤女っぽい。
赤女はなんだか、子供っぽい、幼いイメージがあるので妙にしっくりする。
大体その仕事は、赤女が自分で探したのだろうか。
だとしたら、コイツ、案外自分のことを良く分かっているようだ。
俺は、どうなのだろうか。俺はちゃんと、自分のことを分かっているだろうか。

「……まぁ、頑張れよ」

無理はするな。

その言葉は胸の中だけに留めておいた。


〜つづく〜


四話目です。
私はしっかりとキャラ同士の人間関係をかけているでしょうか。
不安です。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。