複雑・ファジー小説

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赤が世界を染める、その時は。
日時: 2016/02/25 00:54
名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)

+ + + + + + + + + + + + + + +

『必ず勝利せよ。敗北は死だ』

            scene.6 message.by.raimei 

+ + + + + + + + + + + + + + +


+この小説をオススメできない方+
・荒しが趣味な方
・中二病が嫌いな方
・更新が早くないと嫌な方
・作者のもうひとつのカキコネームを知っている方
・作者に文才を求めている方
・誤字多し。直す気3%。でも教えてくださると嬉しいです。



【2012年冬・小説大会+複ファ金賞】
ありがとうございました!!!!!!!
いやいや、見た時はビックリでした……。
本当にうれしいです!!!今でも信じられないくらいです。
本当にありがとうございました。
まだまだ続くというか、書きたいことがまだあるというか、自分の中で終わりが見えていないので終わりまでお付き合いしていただいたらうれしいです……!!



+目次+
第1章『赤=私=雪羽=バカ』
>>1 2>>2 3>>3 4>>4 5>>5 6>>6 7>>9 8>>12 9>>15 10>>16 11>>19 12>>20>>21 13>>23 14>>27 15>>29 16>>32 17>>34 18>>41 19>>43 20>>44 21>>45 22>>46 23>>47 24>>48 25>>49 26>>50 27>>51 28>>52 29>>53 30>>54 31>>55 32>>56 33>>57 34>>58 35>>59 36>>60(完結)

第2章『人生。』
>>61>>62 3>>63>>64 5>>65 6>>66 7>>67 8>>68 9>>69 10>>70  11>>71  12>>72 13>>73 14>>75 15>>76 16>>77 17>>78 18>>79 19>>80 20>>81(完結)

第3章『現実逃避に失敗しました。』
>>82 2>>83 3>>84 4>>85 5>>86 6>>87 7>>88 8>>89 9>>90 10>>91 11>>95 12>>96 13>>97 14>>98 15>>99 16>>101 17>>102 18>>103 19>>104 20>>105 21>>106 22>>107 23>>108 24>>109 25>>110 26>>111 27>>112 28>>113 29>>114 30>>115 31>>116(完結)

第4章『レッドエイジ』
>>117 2>>118 3>>119 4>>120>>121 6>>122 7>>123 8>>124 9>>125 10>>126 11>>129 12>>130 13>>131 14>>132 15>>133 16>>134 17>>135 18>>136 19>>137 20>>138 21>>139 22>>140 23>>141 24>>142 25>>143 26>>144 27>>145 28>>146 29>>147 30>>148 31>>149 32>>152 33>>153 34>>154 35>>155 36>>156 37>>157 38>>158 39>>159 40>>160 41>>161 42>>162 43>>163 44>>164(完結)

第5章『燕は高く、空を飛ぶ』
>>165 2>>166 3>>167 4>>168 5>>169 6>>170 7>>171 8>>172 9>>173 10>>174 11>>175 12>>176 13>>177 14>>178 15>>179 16>>180 17>>181 18>>184 19>>185 20>>186 21>>187 22>>188 23>>189 24>>190 25>>191 26>>192 27>>193 28>>194 29>>195 30>>196 31>>197 32>>198 33>>199 34>>201 35>>202 36>>203 37>>204 38>>205 39>>206 40>>207 41>>208 42>>209 43>>210 44>>211 45>>212 46>>213 47>>214 48>>215 49>>216 50>>217 51>>218 52>>219 53>>220 54>>221 55>>222 56>>223 57>>224 58>>225 59>>226 60>>227 61>>228 62>>229 63>>230 64>>231 65>>232 66>>233 67>>234 68>>235 69>>236 70>>238 71>>239 72>>240 73>>241 74>>242 75>>243 76>>244 77>>245 78>>246 79>>247 80>>248 81>>249 82>>250 83>>251(完結)

第6章『Your love which binds us』
>>252 2>>253 3>>254 4>>255 5>>256 6>>257 7>>258 8>>259 9>>260 10>>261 11>>262 12>>263 13>>264 14>>265 15>>266 16>>269 17>>270 18>>271 19>>272 20>>273 21>>274 22>>275 23>>276 24>>277 25>>278 26>>279 27>>280 28>>281 29>>282 30>>283 31>>284 32>>285 33>>286 34>>287 35>>288 36>>289 37>>290 38>>291 39>>294 40>>295 41>>296 42>>297 43>>298 44>>299 45>>300 46>>301 47>>302 48>>303 49>>306 50>>307 51>>308 52>>309 53>>310 54>>311 55>>312 56>>313 57>>314 58>>317 59>>318 60>>322 61>>323 62>>324 63>>325 64>>326 65>>327 66>>328 67>>329 68>>330 69>>331 70>>332 71>>333 72>>336 73>>338 74>>340 75>>341 76>>342 77>>343 78>>344 79>>345 80>>346 81>>347 82>>348 83>>349 84>>350 85>>351 86>>352 87>>353 88>>354 89>>355 90>>356 91>>357 92>>358 93>>359 94>>360 95>>361 96>>362 97>>363 98>>364 99>>365 100>>366 101>>367 102>>368 103>>369 104>>370 105>>371 106>>372 107>>373 108>>374 109>>375 110>>376 111>>377 112>>378 113>>379 114>>380 115>>383 116>>384 117>>385 118>>388 119>>395 120>>397 121>>399 122>>400 123>>403 124>>404 125>>405 126>>406 127>>407 128>>408 129>>409 130>>410

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.75 )
日時: 2012/05/14 17:17
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


14・行為。


わたしのうえでおとうさんはないている。
わかっている。
こわくてたまらなかったけれどいまではもうどうでもよかった。
いたい。
でもかんかくがうすれてきてもういいやっておもった。
へんなかんじがして、いやで。
でもおとうさんはずっとあやまってないているからもうそんなかおしないでほしくて。

わたしはただむりやりわらおうとした。

かなしくないのになみだがとまらなくて。

それをみたおとうさんはまたかなしそうにして、わたしのかみをなでる。

「ごめんな、ごめんな」

あやまらないで。
そういいたくてものどがうまくならない。
どうすればいいの。
わたし、おとうさんをなかせたくない。

おとうさんはまたそうしてこしをふりはじめる。

つらくて、おなかがおもい。
くちがうまくしまらない。
したをみるのがこわい。

じゅぶじゅぶおとがする。

みみはふさがない。
きっとおとうさんがかなしむから。

わたしはただおとうさんをみつめて、むりにわらえばいいの。

じゅぶじゅぶじゅぶ。


 + + + +


「いいですよ」

すんなり出した言葉に、社長は驚いたように目を見開いた。
少し眼鏡がずれる。
私の言葉が意外だったようだ。

社長は咳払いをして眼鏡を指で押し上げた。

「雪羽ちゃん。もっと恥ずかしがらないの?」

顔を近づけてくる社長に動じずに、私は社長の目を見つめ続ける。
この人、人に顔を近づけるのが好きなのかな。

「え、はい」

別にその程度、どうってことない。

抱くというのはアレだろう。
『アレ』だろうが、私は驚いたのは社長が私に『ソレ』を持ちかけてきたことだ。
そんなに、女の人に飢えているようには見えない。
それにこんな町だ。
そういうことをしてくれる女性は、金さえあれば幾らでもいそうだ。
別にそんな社長に嫌悪心も抱かない。
人間の、いや、動物の自然な欲求なのだから。

「……意外だな。連れって恋人でしょ? なら、断られると思ったんだけど」

首を傾げていた私は今度は目を見開いた。

あぁ、この人、凄く優しい。私のこと、心配してくれているのか。
連れは決してそういう関係ではないけれどやんわりと、私の居場所がここではないことを、教えてくれたのだ。

私は嬉しくなってそっと目を細めて笑った。

「……ありがとうございます」

社長は再び私の髪を指ですくと私から離れた。
そして机の上のコップを手にとって一口啜る。

「で? 雪羽ちゃんさ、初めてなの? そういう商売やってたわけ?」

ずばずば聞いてくる人だな。
なんかそこまで遠慮がないと逆にすがすがしい。
ここまできて隠すのは悪いと思い、口を開く。

別に、隠す必要なんてないし。

「いいえ。そういう商売はやったことありませんよ。でも初めてじゃないです」

社長の後ろにある時計を見ると、そろそろ出勤時間だ。
早くこの話は終わらせないといけない。
社長も暇じゃないだろうし。きっと忙しいだろう。

「へぇ。初めての相手は?」

「お父さんです」

がしゃん。

音がして驚いた。どうやら社長がコップを落としてしまったようで、中身が床に散乱する。

後で私が拭いておこう。
そう呑気に思ったが、今は動ける雰囲気ではない。
社長は、眉を寄せた困惑した表情で、私をしばらく呆然と眺めてから顔を伏せた。
申し訳なさそうに。

「あ、気にしないで下さい。トラウマでもなんでもないので」

きっとお父さんにはお父さんなりの考えがあった。
お母さんもきっと分かってた。
家族で私をどうするかの話し合いが、きっと行われたのだ。
ソレの結果がアレならば私には逆らう権利はない。
私のことを思っての行為なのだ。
アレはきっと。そう願う。いや、確実にそうなのだ。
私を守るために。
結果的には逃れられなかったけれど、それでもしっかり愛は伝わったのだ。
私は、愛されていた。
みんなに。幸せだった。
今でも。幸せだ。
今、こうして生きているのが信じられないくらいに、私は幸せ者だ。

「……そ、う。ごめん」

気にしなくてもいいって言ったのに、社長は私のことをちらちら伺いながら謝ってくる。
本当に優しい人だと思って、私は苦笑いをそっと漏らした。


〜つづく〜


十四話目です。
設定が決まったので忘れないうちに。
R指定?
下ネタ?
いいじゃないか!そんなん!
皆もっとフリーダムに小説書こうぜ!

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.76 )
日時: 2012/05/14 17:22
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


15・言葉。


今日の赤きぐるみの元気が無いことは明白だった。
赤きぐるみは、いつものように駆け寄ってくる子供たちを構っているが、やはり私には分かる。
無理をしている。何か隠している。何を? アイツの日常生活にきっと何かあったたんだ。アイツの気分を害するような、落ち込むような何か、事件が。
なんだろう。凄く気になる。ただの好奇心で心配というわけではない。

でも、苛々する。
何だよ。変なの。もっと元気出せよ。なんか、落ち込んで。暗くて。そんなの、お前じゃない。お前に似合わない。
私がアイツの素顔を、性格を知っているわけではない。
ただ、勝手に自分が抱いているアイツのイメージを、押し付けているだけだ。
でも、なんか、誰にも相談していないんだろ。どうせ。
そんなはずないか。アイツは私とは違う。私とは。
私と、何が違うんだ。
前向きに生きていること? 真剣なところ?
いや、真剣にやっているかどうかなんて、誰にも分からない。
きぐるみを着ているのだから。
でも、相談はしないといけないんじゃないか?
だって、相談をすれば心がある程度楽になるだろ。少し、心が晴れるだろ。解決策が見つかるだろ。
って。私は何様なんだ。私だって誰にも相談していないじゃないか。誰にも相談しないで、勝手に人生諦めて。みんなに迷惑かけて。心配もかけて。
そんな私がアイツに、顔も名前も知らないアイツに何か指示ができるのか?
出来ない。きっと出来ない。

でも。

「……クソッ」

やりたい。
元気付けたい。何かあったのか、本当にあったのかまったく分からないけれど、何か悩んでいるなら。何か人生つまずいているなら。
前を向いて欲しい。生きて欲しい。楽しんでもらいたい。

私のように、私のように、ならないで欲しい。

私はベッドから跳ね起きて、机の引き出しを開けて紙とペンを出した。
長い間字を書いていないので、へなへなの字だったがそれでも書いた。
私の言いたいことが伝われば、それで良い。

私は書き終えるとペンを投げ出して、窓を開けて赤きぐるみに向けてその紙を放った。


 + + + +


あたしはレッドライアーに肩を貸しながら、町を彷徨っていた。
もう随分と辺りは暗くなってきたし、帰ろうと先ほど提案したが、決してレッドライアーは首を縦に振らない。頑固だ。
もっとめんどくさがり屋だと思っていた。
でもそろそろ危ないと思う。
治まりかけていた息はどんどん上がって来ているのだ。
レッドライアーは、あのバカを見つけるまで帰らない気のようだが、そうも行かない。
自分の体の心配も少しはして欲しい。
かなり面倒見がいいようだ。

「ねぇ、大丈夫?」

休憩を兼ねて立ち止まろうとしたが、レッドライアーは構わず進もうとする。
疲れているはずなのに、目からは光が消えない。
相当あのバカが心配のようだ。
心配。かぁ。認めなさそうだな。

「こんなに闇雲に探したってしょうがないよ。もう宿に帰っているかもしれないわよ」

するとレッドライアーが立ち止まる。
私は驚いたがすぐに同じく足を止めた。
今まで何を喋らなかったが、漸くその堅い口を開いて、私の耳元で囁くように声を発した。

「そうだな。赤女はバカだから、あそこしかいけないよな。だよな。きっと帰ってるよな。そうだよ。きっと、居る。帰ってる。大丈夫、大丈夫」

繰り返し、自分に言い聞かせるようにして呟いた後、レッドライアーの息はやっと整ったようだった。
それが強がりでも、レッドライアーに戻った気がする。

今日は星が良く見える。久しぶりに空を見るとすごく綺麗だった。


〜つづく〜


十五話目です。
ちょっと前進。やっと前進。
やっぱり二章は短めですね。
自分の中では終わりが見えました。

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.77 )
日時: 2012/05/14 17:27
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


16・心配。


本当に、大丈夫なのか。
いや、アイツじゃなくて、俺。なんか凄く変だ。
アイツに何かあったら困る。とかじゃない。いや、俺、何が言いたいんだろ。
とにかくアイツを早く見つけないと、変になってしまいそうだった。
何か、変。ダメだ。こんなんじゃ、ダメだ。
もっと別なことを考えよう。
そうだ。
これから。これからのこと。
もちろん、アイツ等の事は追う。追ってどうするか決まったわけではない。
でもなんだか一度決めたんだ。
アイツ等は始末しないといけない。アイツ等は危険だ。世界に悪影響しか及ぼさない。
だから、俺が追って捕まえて、消さないと。
それで? いつこの町を出ようか。
だって全然アイツ等の話は聞かない。
どれくらいの被害が出たとか事件とか。
だから、もう少しここに残ってみよう。
こっちの方向に来たのは間違いないのだ。
仲間を1人でも、捕まえることが出来れば、ソレは大きな成果だ。
ここにもう少し残るとして。
それで。赤女は。赤女はどうしよう。
ついてこさせるのか?
アイツ等は危険だ。赤女なんて連れて行っていいのか。
いや、それ以前に。
アイツは、アイツは見つかるのか。
もう会えないんじゃないか。会えなかったら、どうしよう。
これから1人でアイツ等を追うのか。
1人で。1人。慣れているはずだ。
赤女に出会うまでは1人だった。
だから、何だ。この間まで赤女が居て、1人じゃなかった。
それは、辛い。1人は、辛い。可笑しい。こんなの俺じゃない。俺じゃ。
頭が痛い。耳鳴りがする。
頭が。耳が。痛い。痛い。

「ぁ! ……ライアーさん!」

耳、が。
アレ。痛くない。嘘のようだ。身体が軽い。顔がすんなり前を向く。
居た。居る。道路の真ん中。赤いホテルの前。立っている。
赤いジャージで。いつものように。俺を待っているみたいに。
立って、申し訳なさそうに表情を曇らせて。
美しい黒髪と、黒目。
あぁ、良かった。見つけた。やっとだ。やっと会えた。漸く。本当に良かった。
足が。踏ん張れる。自分で歩ける。前に進む。
赤女も俺に近づいてくる。
まるで、もう何百年もあっていなかったようだ。久しぶりに見る。
目頭が熱い。
本当に良かった。情けないから、泣かない。

本当に。心配、心配かけやがって。

ためらう事なく、赤女の身体を抱き寄せた。
俺、変だ。やっぱり変だ。
でも、分かった。
変なのはきっと、コイツの、赤女のせいだ。
コイツは俺の中で小さなものだ。存在価値は低い。
なのに俺を可笑しくする。どうして。本当に、むかつく。

「……ごめんなさい。迷惑をお掛けしました」

赤女の腕が俺の背中に回って俺を抱きしめ返す。
そこでやっと息を吐き出した。
心が満ちていくような感覚。

「……まったくだよ」

何でこんなにコイツのことで、真剣にならないといけないんだ。
どうして。コイツなんか全然俺はどうでもいい。
そうだ。そのはずだ。だから、疑うなよ。

赤女は俺をそっと引き離すと、ふかぶかと頭を下げた。大分後悔しているようだ。
もっと後悔しろ。反省しろ。
こんなに俺を可笑しくさせやがって。どれだけ歩き回ったと思ってる。

ミーニャが後ろでくすくすと笑っているが、きにしない。
多少頭に来るが、後で殴る。いや、殴らないかも。
だってコイツとはもうお別れだ。きっと。
この世界は広い。
誰かと再会するなんてまぐれか奇跡だ。
だからコイツとはもう会わないと思う。いや、会えない、か。
いやでも不思議とそれを疑っている自分が居る。
本当に、会えないのか?
そんなのはまぁ分からないとして。

「や、え、お姉さん!?」

顔を上げた赤女はとても驚いたようで一歩下がる。
オーバーリアクションだ。

「なんか、申し訳ないです! でも、また会えるなんて運命ですね!」

運命か。
それもあるかな。
そんなものがあったって別にいいだろ。
だって、この街は暗すぎる。


〜つづく〜


十六話目です。
今回は何処できろうか迷いに迷ってこんなところで終了。
あと少しで第二章はオワリ。
二十話目くらいでオワリかもしれないです。
第三章は、どうかな………………。
未定です。
話は決まってます。

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.78 )
日時: 2012/05/14 17:30
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


17・休憩。


パンケーキをフォークで契って口に運ぶと、蜂蜜と美味しい。
蜂蜜と美味しい、なんて変な言い方だな。
私は料理に詳しくないから、良く分からないけれどとにかく美味しくてステキだ。
大体の女の子は甘い物が好きだから。私も好きだ。辛い物は苦手ではないけれど、まぁ、甘いほうが好きだ。

今、3人で来ているのはお姉さん行きつけだというカフェ。
凄くおしゃれで、お姉さんの雰囲気に良く合っている。
お姉さんは仕事柄、あまり顔を覚えられたくないらしいので1つの店にはあまり行かないようにしているらしいが、ここには良く来てしまうのだという。
納得する。
だって、さっきからコーヒーカップを拭いているおっちゃんはダンディーだし、とても居心地が良い。
コーヒーも美味しいらしく、ライアーは文句なしにコーヒーを啜っていた。
最初は警戒しているような素振りを見せていたが、今は大人しい。

「で? 仲直りはすんだの?」

お姉さんは、前よりも雰囲気がやわらかくなっている。
でも前のツンとしたお姉さんも、今の私たちになれてきたようなお姉さんもどっちも美人だ。
そんなのは当たり前のはずだけれど、人にはそれぞれその人に合っている雰囲気があるような気がする。
それは馴れにもよる。
だって最初からツンツンしていたライアーが、突然ベタベタしていたが気味が悪い。
通り越してキモチワルイ。
でもお姉さんは違う。
お姉さんがベタベタしていても可愛らしいから許せる。

お姉さんは頬杖をついて、綺麗な金髪を右耳にそっとかけた。
見とれてしまいそうになる。

「はい。お姉さんのお陰で。ありがとうございました」

私は右手のフォークを置き、深々と頭を下げる。
本当に、ライアーが部屋に居なかった時はどうしようかと思った。
でもお姉さんがついていてくれたお陰で、ライアーも無事だった。
私よりもライアーが、危なっかしいということはありえないけれど、やっぱり私も心配だった。

私から引き起こした面倒事なのに。
面倒事。やはり。やはり私はまたライアーに迷惑を。

目頭が熱くなったのを感じて俯いた。前に居るライアーに心配をかけないように。

「あ、あたしは何もしてないわよ」

隣のお姉さんはそう恥ずかしそうに言って、窓の外に顔を向けてしまう。
もう大分時間が経った。
もう夜だ。真夜中。それでもこの店はやっている。
外は凄く暗い。

「……いや、助かった。感謝してる。俺1人じゃ見つけられなかったと思う」

ライアーもお姉さんに感謝しているようで、だいぶ時が和やかに流れていた。
お姉さんは頬を染めて唇を尖らせる。
子供っぽくて凄く可愛い。癒しだ。

そのお姉さんが、自分のコーヒーカップの取っ手を指でなぞった。

「で、さ。これから2人はどうするの?」


〜つづく〜


十七話目ですね。
こんにちは。
最近こまめに更新しているのは三章を書くのが楽しみだからです。
友人のキャラをだします。
キャラが多いですね。
ちなみにアスラを作った友人と同一人物です。

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.79 )
日時: 2012/05/14 17:34
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


18・激励。


そうだ。これからのこと。私は何も考えていなかった。
考える暇がなかった。
初めての仕事。そしてライアーとの喧嘩。
いや、喧嘩というより私が一方的に拗ねただけだ。
そのことはまた改めてライアーに謝らないといけない。説明もしないと。
でも、イマイチなんで自分があんな行動をとったかはっきりしない。
ちゃんと話を聞いてくれないのに拗ねたのだろうが、もうライアーがそういう性格だということは分かっていたはずなのに。
言い訳はよくないから正直に話そう。

それで私はどうすればいいんだ。
さっきの行動からみて、ライアーは怒っていないようだ。
でもまだついていっていいのか?
そもそもどうして私は、ライアーについていっているんだ?
ハラダ・ファン・ゴの弁償のため?
だってそれはお姉さんの言うとおり、あの武器が偽物だったのだから折れたのは私のせいじゃない。
だとしたら、私がついていく必要はないはずだ。
ライアーも私に、どうしてもついてきて欲しいというわけじゃなさそうだし。そんな素振りは見せたことがない。
それにしてもあの偽物の事件は酷かった。
ライアーの左手もあの事件のせいだ。いや、アスラのせいか?
でもアスラが本当に悪いのか?
アスラは私を狙っていた。どうしてだろう。そこのところをもっと彼と話してみたい。
どうして私を狙うのか。
でも聞いてどうするんだ。
私が彼の大切な人に何かしたとして、謝るのか?
身に覚えのないことだったら? 私以外の別人だったら? 彼を攻めるべきか?
お前のせいで、ライアーが大変な目に合った。
言葉をぶつけてそれで満足なのか。
そんなこと、私はしたくない。

じゃあ、私は一体、何がしたいの?

「俺はこの町にもう少し居る。調べたいことがあるんだ」

私が悩んでいる時に口を開いたのはライアーだった。
調べたいことってなんだろう。
そんなこと、私にには言ってくれなかった。
その調べたいことのために、この町にわざわざ来たのだろうか。
どうして私にには言ってくれないんだろう。
一応、連れなのに。
連れ、だな。仲間じゃない。友達でもない。意味の分からない関係。私たちは一体なんだ。

最近、悩み事が多い。
いろんな人に迷惑をかけているのには気付いている。
今日だって社長に迷惑をかけた。
無理矢理仕事に出た。
だってあのまま帰るなんて出来なかったし、ライアーの居るかもしれないホテルに帰るのが嫌だったんだ。
我が儘すぎる。嫌になる。

「へぇ。バカは?」

ライアーの言葉を受け流したお姉さんが、私のほうを見つめた。
本当に綺麗な青い目。
それに全て不安を吐き出したくなる。弱音が零れそうだ。

私は、これからどうすれば? 何をすれば? 何がしたい? 何が出来る?
進歩しない自分が嫌です。我が儘な自分が嫌いです。バカで、目障りな自分なんて早く消えれば良い、なんて思います。
誰かが励ましてくれるのを待ちました。誰も来てくれないのが普通でした。
でも、でも、今は心配してくれる人が居て。励ましてくれる人が居て。待ってくれる人が居て。
私、もし1人になったら立ち直れないかもしれないんです。
温かすぎて、怖いんです。

「私、私は」

「俺と一緒にこの町に残る」

最低。最低だ。
私は口ごもった。黙った。ライアーの言葉を待った。私で、自分で決めようとしなかった。自分はどうすればいいのか、考えなかった。
最後の判断をライアーに任せて、責任から逃れようとしたんだ。
最低だ。本当に、駄目な奴だ。しっかりしろよ。何も進歩しない。
こんなんじゃ、いつかこの熱を、温かさを、離してしまう。
そんなのは嫌だ。絶対嫌だ。
まだこの熱に浸っていたい。

「…………」

椅子に座っている自分の両足の上で、両手を握り締めると、ポケットの中にある何かに触れた。
あまり身体が動かないようにして、中身を引っ張り出す。
それは小さく折りたたんだ白い紙だった。
私は、この紙を知っている。中に何が書いてあるのか知っている。

そうだ。私は。頑張らないと。折角彼女が。

「あの、調べたいことってなんですか?」

『楽しく生きろ! バカ!』


〜つづく〜


十八話目ですね。
今回長め。
少しずつ誤字修正してます。
今日は時間がないのでしませんが、鑑定をしていただいたのでurl貼りますね。
ラストスパート頑張ります。
終わったら色々言い訳すると思います。


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