複雑・ファジー小説

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赤が世界を染める、その時は。
日時: 2016/02/25 00:54
名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)

+ + + + + + + + + + + + + + +

『必ず勝利せよ。敗北は死だ』

            scene.6 message.by.raimei 

+ + + + + + + + + + + + + + +


+この小説をオススメできない方+
・荒しが趣味な方
・中二病が嫌いな方
・更新が早くないと嫌な方
・作者のもうひとつのカキコネームを知っている方
・作者に文才を求めている方
・誤字多し。直す気3%。でも教えてくださると嬉しいです。



【2012年冬・小説大会+複ファ金賞】
ありがとうございました!!!!!!!
いやいや、見た時はビックリでした……。
本当にうれしいです!!!今でも信じられないくらいです。
本当にありがとうございました。
まだまだ続くというか、書きたいことがまだあるというか、自分の中で終わりが見えていないので終わりまでお付き合いしていただいたらうれしいです……!!



+目次+
第1章『赤=私=雪羽=バカ』
>>1 2>>2 3>>3 4>>4 5>>5 6>>6 7>>9 8>>12 9>>15 10>>16 11>>19 12>>20>>21 13>>23 14>>27 15>>29 16>>32 17>>34 18>>41 19>>43 20>>44 21>>45 22>>46 23>>47 24>>48 25>>49 26>>50 27>>51 28>>52 29>>53 30>>54 31>>55 32>>56 33>>57 34>>58 35>>59 36>>60(完結)

第2章『人生。』
>>61>>62 3>>63>>64 5>>65 6>>66 7>>67 8>>68 9>>69 10>>70  11>>71  12>>72 13>>73 14>>75 15>>76 16>>77 17>>78 18>>79 19>>80 20>>81(完結)

第3章『現実逃避に失敗しました。』
>>82 2>>83 3>>84 4>>85 5>>86 6>>87 7>>88 8>>89 9>>90 10>>91 11>>95 12>>96 13>>97 14>>98 15>>99 16>>101 17>>102 18>>103 19>>104 20>>105 21>>106 22>>107 23>>108 24>>109 25>>110 26>>111 27>>112 28>>113 29>>114 30>>115 31>>116(完結)

第4章『レッドエイジ』
>>117 2>>118 3>>119 4>>120>>121 6>>122 7>>123 8>>124 9>>125 10>>126 11>>129 12>>130 13>>131 14>>132 15>>133 16>>134 17>>135 18>>136 19>>137 20>>138 21>>139 22>>140 23>>141 24>>142 25>>143 26>>144 27>>145 28>>146 29>>147 30>>148 31>>149 32>>152 33>>153 34>>154 35>>155 36>>156 37>>157 38>>158 39>>159 40>>160 41>>161 42>>162 43>>163 44>>164(完結)

第5章『燕は高く、空を飛ぶ』
>>165 2>>166 3>>167 4>>168 5>>169 6>>170 7>>171 8>>172 9>>173 10>>174 11>>175 12>>176 13>>177 14>>178 15>>179 16>>180 17>>181 18>>184 19>>185 20>>186 21>>187 22>>188 23>>189 24>>190 25>>191 26>>192 27>>193 28>>194 29>>195 30>>196 31>>197 32>>198 33>>199 34>>201 35>>202 36>>203 37>>204 38>>205 39>>206 40>>207 41>>208 42>>209 43>>210 44>>211 45>>212 46>>213 47>>214 48>>215 49>>216 50>>217 51>>218 52>>219 53>>220 54>>221 55>>222 56>>223 57>>224 58>>225 59>>226 60>>227 61>>228 62>>229 63>>230 64>>231 65>>232 66>>233 67>>234 68>>235 69>>236 70>>238 71>>239 72>>240 73>>241 74>>242 75>>243 76>>244 77>>245 78>>246 79>>247 80>>248 81>>249 82>>250 83>>251(完結)

第6章『Your love which binds us』
>>252 2>>253 3>>254 4>>255 5>>256 6>>257 7>>258 8>>259 9>>260 10>>261 11>>262 12>>263 13>>264 14>>265 15>>266 16>>269 17>>270 18>>271 19>>272 20>>273 21>>274 22>>275 23>>276 24>>277 25>>278 26>>279 27>>280 28>>281 29>>282 30>>283 31>>284 32>>285 33>>286 34>>287 35>>288 36>>289 37>>290 38>>291 39>>294 40>>295 41>>296 42>>297 43>>298 44>>299 45>>300 46>>301 47>>302 48>>303 49>>306 50>>307 51>>308 52>>309 53>>310 54>>311 55>>312 56>>313 57>>314 58>>317 59>>318 60>>322 61>>323 62>>324 63>>325 64>>326 65>>327 66>>328 67>>329 68>>330 69>>331 70>>332 71>>333 72>>336 73>>338 74>>340 75>>341 76>>342 77>>343 78>>344 79>>345 80>>346 81>>347 82>>348 83>>349 84>>350 85>>351 86>>352 87>>353 88>>354 89>>355 90>>356 91>>357 92>>358 93>>359 94>>360 95>>361 96>>362 97>>363 98>>364 99>>365 100>>366 101>>367 102>>368 103>>369 104>>370 105>>371 106>>372 107>>373 108>>374 109>>375 110>>376 111>>377 112>>378 113>>379 114>>380 115>>383 116>>384 117>>385 118>>388 119>>395 120>>397 121>>399 122>>400 123>>403 124>>404 125>>405 126>>406 127>>407 128>>408 129>>409 130>>410

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.140 )
日時: 2012/07/13 18:35
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



22・悪化と劣化の狭間で。


夢っていうのには、色々と種類があって。自分が分かるものとか、分からないものとか。自由に動ける物と、動けない物。色が付いている物とか、付いていない物とか。色んな世界があって。
そして、これを分類するなら、悪夢だ。
私はよく夢を見る。寝る前に色々と考え事をしているからか、多種多様な夢。最近はライアーとか凪も出てくる。
これは夢だ。夢。自分で動けて、色のついている夢。でも、自分で分かっているのか、どうか、分からない。夢なのか、これは、夢か。私の望通り、夢か。夢なら良い。さっきまで完全に現実だった。でも、夢。
……そんな都合の良いことは、無い。あるはずが無い。それが世界で。そんな世界で、私たちは生きていくしかない。
全身は凍りついた。眼球が、ビーストから離れない。目はどこか分からない。それでも、じっと顔だろう所から、目を離すことができない。現実から目が離せない。
凪は赤をばら撒きながら、地面に倒れている。お腹に、ぽっかりと大きな穴が開いている。私のせいだ。私のせいだ。私が、我儘だから。聞き分けが悪いから。私が全部悪い。否定してくれなくていい。私は悪い。それを、否定しないで。私は悪くないと言わないで。私を許さないで。最後まで、優しくしないで。
汗が止まらない。粘液が乾いてきて、ぱりぱりしている。涙はぴったりと止まった。気持ち悪いとか、苦しいとか、怖いとか、考えられない。
死ぬ。絶対死ぬ。絶対死ぬ。私は死ぬ。だって、勝てるはずがない。私に、こんなギガントを、倒せというのか。そうしないと、生き残れない。私、生き残りたいのか。私は、生きていて良いのか。このまま生きていたら、きっとまた人に迷惑をかける。こんな最悪の事態が、また起きるかもしれない。私は、改善しないから。改善。しなくちゃ。改善を。こんな生活嫌だ。嫌なんだよ。私だけで手いっぱいな私なんて、嫌だ。私だって、私だって、凪みたいに。ライアーみたいに。お父さんみたいに。人のことも守れる人間に、なりたい。そう、決めた。変わろうと、思った。違う。思っている。だから。私は。大丈夫だ。私なら、大丈夫。大丈夫。
私の手の汗は、不思議と引いた。何事も無かったかのように、心は落ち着いている。
私は、銃を構えた。体が動く。軽い。軽い。自分の体じゃないようだ。誰かに、操られて居るようだ。
ふっと息を短くは居て、視線の先のギガントを見据える。
どこからか、自身が湧いてくる。私なら、平気だ。だって、私だもの。ここでなんか死ぬはずは無い。引き金に、指を添える。
もう、いいや。当たらなくてもいいや。
私が今、自分で道を開いているかどうか。それが、大切だ。ここで、変わるんだ。私は、自分で立つ。自分で開いた道を歩く。他人の開いた道は、もう歩きたくない。
適当に、無心で標的を定める。そして。
迷うことは一瞬だって無かった。
私の指は、あっさりと引き金を引いた。

腕に衝撃が伝わって、思わず腰が引ける。驚いたけど、すぐに立て直して、ギガントの様子を見る。
よし。当たっている。これだけでかいのだ。当たるのは当然だ。いや、当然ではないか。
弾は、ギガントの頭の右側を深く抉っていた。紫の甲羅のような頭の断面からは、黄色の触手のミニバージョンみたいのが、びちびちと跳ねている。気持ち悪いけど、まだまだ動けるようだし、緊張を解いてはいけない。そんな事は、分かっている。大丈夫だ。調子には乗っていない。頭はいたって冷静だ。
もういっちょ、かますか。
そう思って、再び銃口を向ける。
一発目で、十分の自信を持てた。

良かった。ほら。

私は、大丈夫なんだって。


〜つづく〜


二十二話目です。
会話文がないだと。
こんなことあったっけ。

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.141 )
日時: 2012/07/14 14:21
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



23・一方通行の三途の川。


今度も、何も考えないで、撃った。もう一発。死んでいようが、生きていようが、関係ない。念のために、もう一発。空薬莢が、足元に散らばっていく。
ただただ無心に撃つ。何度も、何度も、少しずつ位置を変えて。
自分が少し、怖い。なんでこんなに無心で撃てるんだろう。相手はさっきまで恐くてたまらなかった、ギガント。もう一生、絶対に倒すことなんて出来ないと思っていた化け物。そんな相手に、私は今、たった1人で立ち向かって居る。他人の銃を使って、無心で。
何も考えられない。腕がしびれて来ている。それでも止めない。
コイツは、凪を殺した。私に優しくしてくれた凪を。違うよ。私にとって凪は、他人なんかじゃない。他人じゃ無かった。もう身近な存在になっていた。
かちゃん。
いきなり、手ごたえが無くなった。あぁ、そうか。弾が終わったんだ。
急いで銃から片手を離して、その手にナイフを握る。まだ、銃は使える。殴るのにだって使える。ナイフだけじゃあどうにも頼りないから、手放さない。
私はギガントの居る方向に目を向けた。気配がない。逃げられた? 違う。違った。そこには、紫の物体が、倒れていた。息が口から洩れる。勝った。勝ったんだ。恐る恐る近付いて、確認してみても、反応しない。触手の一本だって、動かない。やった。勝った。
そう思うと、全身から力が抜けて、がくりと膝をつく。手がジンジンと痛い。背中の痛みがぶり返す。
そして、ギガントの体の先を見た。
凪。凪。優しい凪。優しかった凪。私の、友達。凪。凪。凪が。凪が。
再び、涙が出て来た。手で拭っても、まだまだ出て来る。ヤダな。私、まだまだ弱いな。違う。違うって。私は悲しい。悲しくて、死んでしまいたい。凪を見殺しにした自分を、消してしまいたい。私は、なんて酷い奴なんだろう。
手を土に着けて、這いずるように、凪に近付く。血の匂いが酷い。それでも、私は近付きたかった。凪に、触れたかった。あと少しで、私の手が凪に触れる、そう思った時、首に何かが巻き付いた。

「っ!!!!」

驚いて、涙が止まる。凪の姿が霞む。凪の柔らかい髪は、粘液でべたついている。背中にぽっかりと空いた穴を見ると、こっちの心にも穴が開く。
私のせいだ。私のせい。触手は遠慮なく、私の首を絞めつける。苦しい。でも、もう良いかもしれない。どうせ、私はここまでだったんだ。生易しいから。いつだか、ギガントの子供にしっかりとライアーは止めを差していた。私の様にバカじゃ無いから。
ライアー。ライアーには本当に申し訳ないことをした。ライアーは私たちが死んだのを、いつ知るだろう。一生、知らないかもしれない。それは少し、嫌だな。
意識が、離れていく。とてつもなく、眠い。驚くほど、力が出ない。
死を、覚悟した。

「赤女……?」

のに。


〜つづく〜


二十三話目です。
まぁ、主人公だからね。

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.142 )
日時: 2012/07/15 21:32
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



24・現実なんて、大嫌い。


息を切らして、森を駆けていると、いつかの日のように緑と対照的な色、赤がちらりと見えた。もしや、と思い、近寄るとやはり赤女で。だけど、全然ほっとしなかった。胸がぎゅっとしまって、本当に心の底から驚いた。
赤女が、後ろで倒れているギガントの黄色い触手に首を絞められて、居た。
息が止まって、頬から汗が出た。苦しそうだけど、逆らう様子も無い。
何やってるんだよ、抵抗しろよ。じゃないと、じゃないと、死んじまうだろうが。なんで、抵抗しないんだよ。怒りがどこからか込みあげてきて、何をどうしていいか分からなかった。でも、赤女が抵抗していない理由は、分かった。すぐに。
視界の端の、赤。それは、間違いなくあの耳障りな喋り方をする。凪。凪だ。さっきまで、話していた。記憶の新しい、人物。それが今、それが今。
なんだよ、これ。俺、失敗したのかよ。一足遅かったとか、そういう感じ? 冗談じゃない。冗談じゃない。どっちも助けるって、柄にでも無くそう思って、そんな自分に疑問を待たずに、迷うことも無く、ここにやって来たのに。間に合わなかった? 守れなかった? 最悪、最悪。消えたい。ウソだよ、こんなの、ウソウソウソ。
ウソなんだって。起きろよ。ウソなんだろ。ウソだって言えよ。立って、起き上がって、冗談ですって、笑えよ。そうしたら、そうしたなら、俺だって、笑えるのに。今なら、笑って許してやるって。今なら、今だけなら。だから、起きてくれよ。お願いだから。
なんて俺は考えていた。落ち付け。落ち付けって。落ち付かないと、最悪な事態が、取り返しのつかない事になる。そうならないように、しないといけない。だから。だから。
俺は、腰から短刀を引き抜いて、赤女の首に伸びる触手を、両断した。気持ちの悪い液体が少し体に掛かるけど、気にしない。そしてすぐさま、紫色に近付いて、頭らしき場所を切り落として、動かないことを確認する。うん、大丈夫そうだ。
俺は慌てて、少しずつ冷えてきた頭のまま、ため息をついた。咳込んでいた赤女が、心配そうに俺を見上げる。
違うぞ。違う。呆れたんじゃない。ほっとしたんだ。よかった。赤女は助けられた。でも、でも。

「ライアーさん、ライアーさん」

コイツには珍しく、お礼の言葉を言わなかった。そこに違和感を感じたけれど、黙っておいた。だって、赤女の体が、震えていたから。何だか色々大変だったようだ。赤女の背中の部分の赤が、濃くなっている。
血か。
なんだよ、自分も傷ついてんじゃんか。お前も悪くないよ。凪だって、悪くないのに。まるでさ、お前らが弱いのが悪いみたいなの、止めてくれよ。違うんだって。俺が悪い。俺が、助けられなかった。
俺は、震える赤女の頭を撫でた。なぁ、どうしてこんな優しい手つきするんだよ、俺。何のつもりだよ。俺は、最低なのに。
赤女は、俺の手を握った。だからお前も、俺に優しい手つきしないでくれよ。泣きたくなるだろ。泣きそうなんだって。
俺、俺が一番嫌い。赤い髪をした、赤い目をした自分が、嫌い。クオが行った『嘘吐き』の意味はいまだに分からないけれど、いや、分からないフリをしているけれど、それでも嫌い。自分が嫌い。

「凪さんが、死んじゃいました」

だから、そうやって無理して笑わないでくれよ。無理にでも、思いっきり泣いてくれよ。俺の分まで泣いてくれよ。そうじゃないと、壊れちゃいそうになるだろ。
それにしても、認めない。俺は、認めない。認めたくない。俺は、この事実を、認めない。つまり、さ。

「死んでねぇよ」

捻じ曲げるんだよ。


〜つづく〜


二十四話目です。
文字数が分からない。

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.143 )
日時: 2012/07/16 18:53
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



25・リピートに飽きた時。


「死んでねぇよ」

2回目を口にした理由は、自分を納得させるためであった。赤女は驚いて、俺を見上げた。
死んでない。死ぬわけないって。こんなことで、俺が後悔してたまるかって。
俺は凪の体を抱き上げて、歩き出した。森を抜けよう。
そして。そして。アイツのもとへ行こう。そして、事実を捻じ曲げて貰わなくちゃいけない。コイツが、凪が死んだって言う悪夢を、食べて貰おう。全部無かったことにしよう。
赤女は一向に立ち上がりすらもしない。
なんでだよ。消そうぜ。全部、無かったことにすれば、いいじゃんか。そうやって、都合の良い世界を作って行こう。そうしないと、やっていけなくなるだろ。そうしないと、俺、泣きそうで。嫌なんだって。こんな世界は。凪の目は、もう開かない。そんなことは無い。あのクリーム色を、俺はまた見るよ。
赤女は、口の端を、ひくつかせた。目が揺れて、口からか細い音が漏れた。

「ライアー、さん?」

まるで、俺が間違っているみたいな、そんな声。
止めてくれよ。気が付かせないでくれって。俺も、不安なんだ。死んでない。そう自分に言い聞かせないと、駄目な位。俺はとても弱い。こんなことで不安定になるほど。
一度、紫色のギガントを踏みつけて、森を出る方向に足を進める。しばらくして、俺の隣に、赤女の姿が現れた。赤女は、困ったように笑っていた。
そんな顔しないでくれよ。
俺は、見たくなくて視線を赤女から凪に移す。

「そうですよね、そうですよね」

事実を壊しに行く。嘘吐きの俺が、この夢を、消しに行く。
その前に、赤女の感覚を、少し壊してしまった。


 + + + +


赤いうそつき。レッドライアー。それは、僕が付けた二つ名。今ではもう世界的に有名になった、僕が育てたハンター。この世界で勘違いされて居ることは多い。ライアーの二つ名はみんながそう呼び始めて、付けられたものではない。
僕が、付けた。彼には嘘吐きの称号が似合う。誰よりも、似合う。
何も知らないフリをして。1人だけ、事実から逃げた。いや、逃げてはいないか。逃げてはいないな。
だって彼は今でも、赤という色を嫌い、そして、黒髪黒目になることに異常に執着して居る。それは『あれ』を覚えている証拠だ。
そして、隠しているのかな。僕にまでも、『あれ』を知って居ることを、隠しているのかな。
最低。なんか気分悪いな。ライアーがボクに隠し事なんて。そんな。でも、いいか。反抗期くらいあった方が、面白いもんね。

それでも、いつまでもその嘘が通じると、思うなよ。
いつまでも、甘い世界に入れると、そう思うなよ。
その世界は、いつか壊れるよ。


〜つづく〜


二十五話目です。
あっというまにこんな数字に。
嘘吐きました、短くは無いかもです。

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.144 )
日時: 2012/07/18 17:04
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



26・早く、早く、欲望が腐らないうちに。


当ても無く、ふらふらと街を歩いた。
私は、もう前の私とは違う。
今日は、誰にも言わないで、家を抜け出した。悪いことをするのは初めてなので、ドキドキとわくわくが入り混じり、変な感じがする。
癖になりそうな感覚を胸に抱いて、歩を進めていると、視界の端に、赤が入った。あの日の赤を思い出して、その方へと向くと、いつかの風船を空にばら撒いた赤い着ぐるみの中身が、全身を黒に固めた男と一緒に歩いていた。歩調は早く、何やら焦っているようで。私は、なんとなく気になった。心が引っ掛かる。なんだろう、この感じ。あの黒い男が抱えているものは、なんだ。遠くて見れないけれど、近くの人間が驚いているのは分かる。
そんなに、驚く物なのかな。
私は、赤着ぐるみが、普通の生活をしているのに、ほっとした。
なんだ、大丈夫じゃんか。良かった。もしかしたら、私がなんか言わなくても、平気だったのかな。まあ、いいか。とりあえず、私はアイツに救われたわけだし。アイツが居なかったら私は今も、ベッドの中で狭い世界を必死に守っていただろう。掌で、つまんない、モノクロの世界を、転がして。それの何が楽しいのか、もう今の私には、分からない。
遠くから聞こえる私を呼ぶ声に、私は軽く笑った。
ああ、毎日って素晴らしい。


 + + + +


「列車を出せ、早く」

でも、ギガントが。
そんなことをいう女を、俺は睨み付けた。女はおどおどしながら、俺の手の中にあるものを見て、口に手を当てた。顔から熱が引いて、青白くなる。
気持ち悪いのか。吐いた方がいいぞ。その方が、楽になる。だけど、ここでは吐くなよ。吐いたら、吐いたなら、凪が傷つくでしょ。凪はまだ死んでないって。だからそんな、顔しないでくれよ。

「良いから、早く」

早くしてくれよ。じゃないと、早くしないと、頭がおかしくなりそうだ。赤女は、さっきから目線を落としている。赤女も、凪を見ることができないようだ。俺は見れる。こんなもの、平気だ。だって凪には変わりないから。血は止まって、赤黒くなっている。
女が言うビーストは、もう倒した。赤女と凪が。俺は何もしていない。コイツ等が頑張ってくれたから。もう、平気だ。
だから、もう列車は出せる。それを、上手く説明できる人間は、ここには居ない。赤女も俺も、頭が混乱していて、上手く言葉が出ない。
早くしてくれ。この思いを、分かってくれ。

「何してるんですか、早く出してあげて下さいよ」

人間の関係という物を、俺は少々バカにしていたようだ。いつの間にか、背後に立っていた人物は、その機械的な目で俺の手の中の凪を一瞥し、女に向き直る。
異様なそいつを見て、女が後ずさった。そして、そいつの翳した物でさらに後ろに下がる。彼の握っている物は、先ほど俺たちが倒した、ギガントの死骸だ。腐った臭いが、強烈だった。なんでだろう。凪の匂いは、気にならないのに。

「……アスラ」

縋る様な声が出て、なんだか情けない。赤女の体が、強張るのが見て取れる。だが、あの時のようにアスラから殺気は感じられなかった。それを見て、俺はそっと胸をなでおろす。

「何をしてるんですか、早く」

アスラが追い打ちをかけると、女がしばらくお待ちください、なんて言葉を残して、走り去った。
良かった。なんとか、列車を出して貰えそうだ。早くしないと、凪が完全に腐って、どうしようもできなくなる。
ここから、アイツの所までは、大分離れている。のんびりなんて、していられない。これは、完全に消してしまわなければいけない。

「なんで、こんな、」

俺たちを助けるなんて、変だ。アスラは、赤女の肩を掴んでから、そっと離した。一瞬、心臓が跳ねた。両腕は塞がっているから今赤女に手を出されたら、終わりだった。危ない。
そうだ、すっかり忘れていたけれど、赤女にとってコイツは、アスラは天敵だ。尋常じゃない恨みを、アスラは赤女に持っているから。でも、今はなんでだろう。なんというか、どちらかと言うと味方っぽいから。安心したのだ。少しだけ、心を開き始めていたんだ。それに気付いて、心をそっと閉めた。気を引き締めなくちゃいけない。気をつけないといけない。
そんなこと、当然なことなのに。

「……別に、ちょっと気になっただけだ」

気になっただけ、それだけで、わざわざギガントの死骸を運んで来たのか。つくづく変な奴だ。心に少し、余裕ができた。
落ち付こう。落ち付かないと、アイツに頼るんだ。何をされるか分からないけど、でも、俺はコイツを生き返らせたい。この事実を、認めたくない。
これは、俺の我儘だ。


 + + + +


「さてと、ワタシは少し出かけてくるよ」

消えてしまえ。
お前なんか、消えてしまえ。嫌いだ。全部嫌いだ。

「いい子にしてろよ、していなかったら、どうしようかな。なんでもできるぜ、ワタシは、何でもできる」

言ってろ。好きにしろ。言いたいだけ言え。ただ、俺はお前が嫌いだ。大嫌いだ。お前なんか嫌い。俺の前から、早く消えろ。目が腐る。

「あー、でも、どうしようか。魔術、平気だよね。母親よりも、魔術は苦手なんだろ?」

うるさい。うるさい。そうさ。俺は、魔術が嫌いだ。お前と同じくらい、嫌いだ。だって、魔術は全部、壊したんだよ。俺も、母さんも、全部全部。そして、魔術に縋るしか無い俺も、俺は嫌い。魔術なんて、この世から消えればいいのに。

「じゃーね、すぐに戻れるか、分からないけど」

ひらひらと揺れるその手を、引きちぎりたい。イライラする。お前の全てに、イライラする。そして、お前は俺に背を向ける。
その背中を、一回り小さいくらいの影が、追いかけた。俺は、それを薄く開いた目でしか見れない。足も手も動かない。動けたら、もうとっくに逃げているのに。
舌打ちをしかけた時、小さな影が俺を振り返った。

「大丈ブ? 元キ、出しテ」

出るか。何言ってんだよ。ほら、早く行かないと、お前のご主人様が、行っちゃうぞ。そう思うけど、口には出さない。しばらく俺の様子を覗ってから、再び小さな影は動き出す。
俺は、それを見送って、拳を握りしめた。
ごめん。ごめん。俺、本当に迷惑な奴だ。瞼の裏に、3人を浮かべる。
俺は俺のことが嫌いだ。
でも、みんなのことが好きな俺は、好きだ。
そう、感じさせていてくれないか、アシュリー、ムーヴィ、銀。


〜つづく〜


二十六話目です。
参照800、あざました!!


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