複雑・ファジー小説

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メリーな都市伝説【1000参照突破!】
日時: 2013/05/10 23:34
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
参照: https://twitter.com/raika861

↑活動用ツイッター始めました。現状報告等を呟いていきます。

オリキャラ募集終了しました。
応募してくださった皆様、ありがとうございました!


あの都市伝説が、俺の所にやってきた。
あの『話』が、俺の所にやってきた。


はじめまして、星の欠片と申します。
この作品は興味本位で都市伝説を調べて後味が悪くなったので、怖くない都市伝説の小説を書こうと思い始めたものです。
ライト板で書いていたものですが移転しました。


・都市伝説に特別な嫌悪感を持っている人はブラウザバックをお願いします。
・読んでくださった方はできれば感想等のレスを下さると嬉しいです。励みになります。
・荒らし目的の方はお帰りください。
・少なからず戦闘描写があります。
・題材が題材なので一部、残虐な描写等があります。


目次

登場人物 人間編 >>1

プロローグ >>2

第一章・人形編
#1 >>3
#2 >>4
#3 >>5
#4 >>6
#5 >>7

第二章・怒れる子狐編
#6 >>8
#7 >>9
#8 >>10
#9 >>11
#10 >>12

第三章・二色の死紙しにがみ
#11 >>13
#12 >>14
#13 >>15
#14 >>20
#15 >>21
#16 >>22
#17 >>23
#18 >>24
#19 >>25
#20 >>26
#21 >>28
#22 >>29

第四章・泡沫うたかたの煌き、不変の輝き編
#23 >>30
#24 >>34
#25 >>37
#26 >>41
#27 >>45
#28 >>46
#29 >>49
#30 >>50
#31 >>51
#32 >>52
#33 >>53

第五章・結び束ねるもの編
#34 >>54
#35 >>55
#36 >>56
#37 >>57
#38 >>59
#39 >>60
#40 >>61
#41 >>62
#42 >>63
#43 >>64
#44 >>66
#45 >>67
#46 >>68
#47 >>69
#48 >>70
#49 >>71
#50 >>73
#51 >>74
#52 >>75

第六章・鏡の休日編
#53 >>76
#54 >>78
#55 >>79
#56 >>80

番外編『おまけな都市伝説』
参照100記念 >>27
参照200記念 >>42
参照300記念 >>58
参照400記念 >>65
参照500記念 >>72
参照600、700、800記念 >>77


コメントをくださった方々
・saku様
 複雑・ファジー板で『神喰い』という作品を書いています。
 神様や妖怪が好きな方におすすめです。

・秋桜様

・氷空様

・優勇様


同作者の別作品(良かったら拝見して下さい)

二次創作(映像/アニメ、ゲームなど)板
『未来日記 The Destiny』
未来日記の二次創作。
三周目の世界で行われる新たなサバイバルゲーム!

#49 ( No.71 )
日時: 2012/12/27 20:11
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



 傘が、ふわりと宙に舞う。
 それに全員が注目していた。
 一瞬、眩い光が視界を奪う。
 次に目に見えた景色は、通常のものではなかった。
 色が、無い。
 漫画の様な、モノクロの世界。
 例外なんて一つもない。
 見えない部屋に閉じ込められた九道さんも、四隅舞踏も。
 天に浮く立道も。
 隣に立つ栗狐も。
 ……そういえば、メリーはどこに行ったのか。
 立っていた筈の姿がない。
 辺りを見渡してもそれらしい姿は見つからない。
 もしかしたら、周囲に漂う真っ白な霧のようなものが、メリーそのものなのか、と考えたとき。
「——人形は血を吐く——人形は火を吐く——」
 メリーの声が聞こえた。
「——ひとり地獄に落ち行くは私——」
 謎の詠唱はどこからか、延々と発されていく。
「——地獄くらやみ花も無き——」
 白い霧は幾億もの粒に。
 それらは結集、膨張、分散を繰り返し、ひたすらに数を増やしていく。
 とても幻想的な光景とは裏腹に、心臓に重く圧し掛かる感覚は、メリーによって成された感覚とは思えない。
「優輝さん、気を楽に……」
 どうやら栗狐は大丈夫なようだ。
『少年、この圧力は本当にあの小娘によるものか……? この邪気……考えられぬ……』
 神槍の言葉に同意する。
 これは普段のメリー気配とは違う。
 もっと黒い、悪い気配。
 近づいていれば、飲み込まれていたかもしれない。
 これを知っていて、俺を離れさせたのか。
 メリーらしからぬメリーが、詠唱の最後を飾る。

「——異形たる者、重罪は私、無間なる地獄を以って裁け——」

 一瞬にして、白い霧は黒と化した。
 広範囲にまで撒き散らされていた霧の一部が段々と一箇所に集まり、一つの形を形成する。
 いつしかモノクロの景色は、元に戻っていた。
「……メリー?」
 果たしてそれは、紛れも無いメリーの姿だった。
 ただし、俺が見慣れているメリーとは違う。
 白黒の姿。
 それでも普段の彼女と決定的に違う雰囲気が醸し出されている。
 黒く染まったドレス。
 金の髪は白く、眼は黒く。
 そして何より、顔から表情が消えていた。
 いつの間にか宙に舞っていた傘が消えている。
 手に持っているのは傘でも、愛刀の『豊穣人』でもない。
 長い棒の穂先に幅広の刃、横に突き出た湾曲した刃、その反対側には細長い盾。
 穂先の刃に付属された砲身。
 その他、とにかく様々な武器が取り付けられている。
 形状的には古くから中国で多用される戟という武器に似ている。
「……」
 一瞬にして五人を囲む不可視の部屋が解けた。
 それを悟った四隅舞踏がメリーに突撃する。
「駄目っ! 停まって!」
 九道さんが叫ぶも、四人の耳には届かない。
 目の前の強力な敵の排除を優先しようとしている。
 しかし、メリーの真たる力は四人、いや、九道さんを入れて五人、いや、俺も入れて六人の想像を上回っていた。
 点道の刀が、線道のトランプが、虎道の短刀が、救道の拳が同時に襲い掛かる。
「……」
 それをメリーは、武器に取り付けられた盾を巨大化させ四人の攻撃を一斉に受け止めた。
「なっ!?」
 四人が力を込めてもメリーを突破できる気がしない。
 チラとメリーが俺を一瞥した。
 何かを伝えたいかのように。
 そうだ、俺があいつを倒さなければ。
「行くぞ、神槍!」
『うむ!』
 メリーが四人を足止めしている隙に立道に向かって飛ぶ。
「させない!」
 九道さんが手に持った銃の引き金を引く。
 しかし、それが俺に届くことは無い。
「……」
「っ! 小娘……」
 銃弾を弾いたのは栗狐が持つそれ。
 紙垂を二枚、木に挟んだそれは祭祀に用いられる幣帛の一つ。
 最も有名だと思われる御幣と呼ばれるものだった。
 弾いた、と言っても打ち返したりした訳ではない。
 俺には理解できないような不思議な力——風ならない風で威力を削いだのだ。
 障害は何も無くなった。
 後は俺が立道を倒すだけ。
『少年、儂の戦いは空中を好まん。叩き落せ』
「応!」
 近づく俺をただ見るだけで、立道は反撃しようともしない。
 その無表情な顔を掴み、下に投げる。
 ベシャ、と力なく地面に伏し、間もなく立ち上がるのと同時、俺も地に着く。
 走り寄る間も立道は無抵抗で、ただ無表情だった。
「やめてっ! 殺さないで!」
 九道さんの悲願に答えるわけにはいかない。
 九道さんに「何か」を吹き込んだ彼ら。
 その魔性を取り払うために。
「はあああああああ!」
 強く地面に足を打ち込み、全力で拳を立道に叩き込む。
 拳は胸部を打ち抜いた。

参照500記念『おまけな都市伝説』 ( No.72 )
日時: 2012/12/31 16:45
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



てんどー「目覚めた心は走り出した未来を描くため」

せんどー「難しい道で立ち止まっても空は」

こどー「きれいな青さでいつも待っててくれるだから怖くない」

きゅーどー「もう何があっても挫けない」

かねこ「作者あのアニメ嫌いじゃなかった?」

こどー「鬱エンドは好きだがアレは無理、だそうで」

きゅーどー「脚本が虚○さんの時点で嫌な予感はしていたらしいが」

せんどー「3話のシーンは衝撃だったな」

てんどー「ふんっ!」

バッサリ

かねこ「いやああああああああマミったああああああ*!」   *マミる。首が飛ぶこと。

こどー&きゅーどー「せんどおおおお!」

てんどー「心配するなよ線道。一人ぼっちは寂しいもんな*……いいよ、こいつらも送ってやるよ」   *「一人ぼっちは寂しいもんな」。某アニメの作者の最大のトラウマ。

バッサリ

バッサリ

かねこ「わけがわからないよ*」   *某白い悪魔の格言。



参照500記念『おまけな都市伝説』



ゆーき「とりあえず更新が一月以上止まってた事について説明してもらおうか」

作者「えーとですね、まぁこれが色々理由はありまして……」

めりぃ「だからそれを説明してくださいって言ってるんですよ」

くりこ「未来日記*の更新も止まってる……」   *二次(映像/アニメ)で書いている「未来日記」の二次創作

作者「あのさ、今年最後の更新なんだしもう少し楽しくといいますか」

しし「大変だなぁ」

作者「助けろ」

しし「同情くらいはしといてやる」

作者「くそ、1面ボスめ……仕方ない、とっておきの技を披露するときがきたようだ……」

めりぃ「中二病*患者の典型的な台詞ですね」   *中学二年生頃の子供にありがちな発想等を揶揄した言葉。ちなみに作者は2012年現在高一。

作者「うるさいよ! くらえ、スターマジック*!」
*作者こと星の欠片の必殺技。
作者としての特権を生かし物語の因果律に干渉し、全ての物事を意のままにする。
一方○行だろうと『全て遠き理○郷』だろうと防御不可能。
因果孤立空間である“封○”内でも容易に干渉できる。
しかしそれらがこの小説に出てくることはないので証明は不可能。作者の妄言にすぎない。
もし上記の能力が登場する作品の二次創作を作者が書けば証明できないこともない。
しかし一つを除き、予定はない。
始動は指パッチンのため、海中等では使えない。








作者「ちなみに更新停滞の理由は主に「世界樹の○宮Ⅱ」です。五階層が難しかったです」







めりぃ「何やら夢を見ていた気がします……」

ゆーき「参照500記念だってのに何かおかしいな……」

くりこ「早く進行……」

作者「はいはい了解、では、今回は最後のオリキャラさん達に登場していただきましょう!」

???「まずは私よっ!」

めりぃ「おや?」

はなこ「長谷川 花子! よろしくね!」

めりぃ「花子じゃないですか、久しぶりですね」

はなこ「あ、先輩! お久しぶりです!」

ゆーき「先輩?」

めりぃ「あ、それはですね……」


少女説明中…


ゆーき「成程、そういうご関係で」

作者「そしてもう一人!」

みお「え、と。赤咲 美緒です。よろしくお願いします……」

しし「おぉ、「?」がない」

ゆーき「あれ、赤咲さん!?」

みお「あっ、ゆ、優輝君!?」

ゆーき「え、レジェンズ……え!?」

めりぃ「お知り合いですか?」

ゆーき「え、あ、えーと……」


少年困惑しながら説明中…


めりぃ「成程、そういうご関係で。それは衝撃的でしょうね」

作者「ま、本編では出てきてないけどね」

みお「まさか優輝君がレジェンズに関わってるなんて……驚きました」

ゆーき「俺もですよ。ところで……」

みお「え?」

ゆーき「どうしていつもマスクしてるんですか?」

みお「あ! ……えっと、これは……」

はなこ「あらら……禁忌に手を……」

ゆーき「え、どういう事?」

作者「あー! 風邪対策だよ! 風邪対策。今流行ってるからね!」

めりぃ「何で貴方がフォローするんですか?」

作者「本編で使いたいネタをここで使うわけにはいかん!」

めりぃ「何で力んでるんですか?」

作者「えっと、あー、まぁ、雰囲気的に……?」

めりぃ「何でしどろもどろなんですか?」

作者「あんたが追い込むからだよ!」

めりぃ「何でひ」

作者「あー、うるさい! さっさと話進めるぞ! こんな会話で何文字使ってんだ!」


『第一回 チキチキ、本編で触れられてないアレコレ!』


ゆーき「チキチキの意味ってなんなんだろうな?」

作者「早速論点変えようとしないでくれる?」

はなこ「それで、本編で語られてないアレコレって?」

作者「フォローありがとう。文字通り、本編で語られなかった(またの名を書き忘れてた)事柄を語ってくよ」

みお「私達は本編には出ていませんが……」

作者「仕方ない事だよね。俺の更新が遅いから」

めりぃ「自覚あったんですね」

作者「最近メリーが毒舌キャラと化してきた気がする」

めりぃ「そういう風に書いているのはあんたでしょうに」

作者「いや、だから」

くりこ「論点ずれた」

作者「はい、すいません。戻します」

ゆーき「それで、何から話すんだ?」

作者「じゃあ、レジェンズ達のレベルからかな」

しし「あぁ、俺らか」

作者「そうそう。とりあえず既に明記されてる奴とオリキャラさん達のレベルは

メリー 5
栗狐 1
シャッテン 5
リヒト 5
菊李 5
櫛禍 5
花子 3
美緒 4

だ。オリキャラさん達のレベルは登場時に変更させて頂く場合があります」

ゆーき「5率高いな」

作者「力の高い人の近くに居ると強くなるってそういう話だからな」

しし「それで、俺達のレベルは?」

作者「よっし、じゃあその前にアレの説明をしておこうか」

はなこ「アレ?」

作者「星を見る女性のレジェンズだ。あれは今のところ唯一名前が出てなかったレジェンズだからね」

めりぃ「考えてたんですか?」

作者「あぁ。作中で名前を出す予定だったが出せなかった。これが詳細だ!」

名前:星美ほしみ
名前は「『ほし』を『み』るじょせい」から。
最初は「セイラ」という名前だったが良い漢字が浮かばなかったので変更した。

能力:対象を吊るす能力
一種の超能力で上から対象に引っ掛けて引っ張る。
何かの物体を使って吊るす訳ではないので痕も残らず、見た目は浮いているだけのように見える。

性格は一言で言えば「自己中心的」
紙々とは違う方向で病んでるけど思い人に対しては一途。


作者「そんでもってレベルは……

紙々 3
星美 2
四隅舞踏 4

だな。四隅舞踏については#37でメリーが「2」と評していたがあれは虎道単体の戦闘力からの憶測だな」

ゆーき「意外と考えていて驚いた」

みお「では紙々さんや四隅舞踏さんにも詳細な設定はあるんですか?」

作者「もちろん。でも紙々は番外で準レギュラーっぽくなってるし四隅舞踏は現在戦闘中なんで今回は触れないでおこう」

めりぃ「そろそろ文字数も危ないでしょうしね」

作者「前みたいに引っかかって削りたくはないからな」

はなこ「ところで、あたし達は何章で出られるの?」

作者「えっと、二人ともかなり使いやすいキャラなので出られる話は多いと思う。登場は美緒さんの方が早い。でもどちらも章は決まってないかな」

みお「あらら……」

めりぃ「そこらへんまだ曖昧ですね」

作者「ま、今回はこの辺で。では二人とも、一言ずつどうぞ」

はなこ「あたし達の登場をお楽しみに!」

みお「え、と……よろしくおねがいします……」


作者「さて、それじゃ、終わりにしようか」

しし「そういや500記念って五章終わってからじゃなかった?」

作者「諸事情で変更した。そもそもツイッターでは六章終了後って誤植あったし」

めりぃ「六章終わるの多分三ヵ月後でしょうね」

作者「頑張るよ」

くりこ「お疲れ様でした」

ゆーき「皆さんよいお年を!」

#50 ( No.73 )
日時: 2013/01/03 20:18
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)

「————」
 開いた風穴から何かが飛散する。
 どうやら核を正確に打つ事が出来たらしい。
「——我達は四隅舞踏——個にして群たる存在——」
 立道は呻きも上げずに今まで通り言葉を並べている。
 表情崩れぬままじっとこちらを見つめている。
「——伝説と成る故に捨て去られた意思——心——其を埋めるは仮の意思——心——」
 意思、心……?
 俺に語りかけられている言葉は今までと違い、何やら意味があるように聞こえた。
「——心を封ずる仮の面——今こそ開放されるとき——」
 かりの、おもて……?
 仮の表、違う、仮の……面。
 仮面。
 それを考え付くと同時、俺は立道の右目付近に取り付けられた仮面に手を当て、打ち壊した。
「————」
 それまで隠れていた部分が露になる。
 やはり罅の入っているその顔。
 左目と同様に右目は傷一つついていない。
 仮面の無くなった立道はやはり俺を見つつ、
「……ありがとな」
 微笑んだ。
 いままでの感情の無い言葉とは違う。
 仮面によって塞き止められていた感情が再び流れ出したような。
 立道は四人を足止めするメリーに歩いていく。
 メリーはそれを——無論四人を止めつつ——警戒する。
「……お嬢さん、すまないね。ちょっと退いてくれるかい?」
 全くと言って良いほど敵意の無い声色で立道は言う。
 メリーは相変わらずの無表情でそれを見つつ、
「……」
 何かを悟ったように戟と呼ばれる武器を下ろす。
 そして四人までの道を通す。
 命を削りながら歩いていく立道は弱っているのだろうが、足を引きずることも無く、一歩一歩をしっかりと踏みしめている。
「立道……」
 近づいてきた立道に対して、四人を代表して点道が声を出す。
「皆、舞踏は終わりだ。僕らの『生』はあの時終わっていた」
「しかし……」
 何も言うなとでも言うように、無言で手で制す立道。
 もうほとんど力も残っていないようだった。
 先程までの脅威とは違って、四人の動揺を見ていると、酷い罪悪感に見舞われる。
「馬鹿だよ、君らは。僕についてくる必要なんて無いのにさ……」
「……『俺たち』は五人で一つだろう。お前一人が死ぬなんて事はあってはならない」
 今までの点道とは違う。
 一人称も、性格も、今までとは全く別人のようだった。
「……ありがとう。……もうそろそろ、時間みたいだ」
 立道の輪郭が朧気になっていく。
立花たちばな……」
 それは、聞き覚えのない名詞だった。
 立道に向かって放たれたその言葉の意味は、この時分からなかった。
点東てんとう線崎せんざき虎谷こたに救田すくいだ……」
 立道は、この四つの、名詞だろう言葉にどんな意味を込めたのだろうか。
 恐らく眼前の四人に対して向けられた言葉と共に、立道は手を前に差し出す。
 その上に、点道が、線道が、虎道が、救道が、手を重ねていく。
「……立道」
 そこに小さく声を零したのは九道さんだった。
「九道、君は君自身で答えを得た。もう僕らの後押しは必要ない」
「でも……」
「九道、君が求めるのは自分の道か? それとも導かれる道か?」
「っ……」
 唐突に問いを投げかける立道は、口元に小さな笑みを浮かべている。
 それを見ながら数秒、黙っていた九道さんは、

「……自分の、道よ」

 そう、答えた。
「そうだ。以前は答えられなかったこの問いの解を、君は見つけた。もう僕らの力は必要ない」
「……」
 伝えたいことは全部伝えきったと言わんばかりに、九道さんから眼を背けると、四人を順に見る。
「最後に、アレ、やろうか」
「……立道」
「それがお前の望みなら……」
「懐かしいなぁ……」
「出来ることなら、もう一度、『昇りたい』な……」
 九道さんの目には涙が浮かんでいた。
 でも、誰もそれに対して言う事はしない。
 ただ、スクウェアのレジェンズたる五人は重ねた手を見つめていた。
 一体何を始める気なのだろうか。
 立道がすぅ、と息を吸い、大声で叫んだ。

「山岳部——」

『最高っ……!』

 突拍子もない、拍子抜けする言葉だった。
 しかし、全員で叫んだ四文字に込められた何か、特別な思いが伝わってきた。
 言葉を終えると同時、満面の得煮を浮かべた立道は霧散し、跡形も無く消え去った。
「……」
 俺も、九道さんも、メリーも、栗狐も、神槍も。
 四隅舞踏の四人も。
 それを見届け、しかし何も言わない。
「あっ!?」
 九道さんが驚愕の声を出したのは、別の事象から。
 四隅舞踏の四人が、消滅を始めたのである。

#51 ( No.74 )
日時: 2013/01/04 20:31
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



 四人はそれに対して、やはり何も言わない。
 ただ、その現実を受け入れてはいるようだ。
「貴方達……どうして!?」
 九道さんの問いに、立道が答える。
「俺達の本体は立道。彼の消滅は、即ち俺達の死だ」
「そんな……!」
 ゆっくりと消える四人は、それでも武器を構える。
 もう九道さんに言う事はない。
 そういう様に目を背け、メリーに向かい合う。
「最後だ。少女よ、その力を見せてくれ」
 刀を両手で握る点道が言う。
「……」
 メリーは黙って、戟を構える。
「……感謝する」
 線道が。
「全く、皆馬鹿だよな。……俺も、か」
 虎道が。
「絆——即ち共倒れ、否、それこそ我らの友情っ!」
 救道が。
 それぞれの戦闘体制をとる。
 九道さんはそれを見つめて、一歩近づく。
「皆、戦って」
 その言葉を聞くと、四人が頷く。
 何か吹っ切れたように九道さんは微笑んでいた。
「さぁ、舞踏会の始まりよ!」
『応!』
 彼女を後押ししたのは何なのだろうか。
 俺にはそれは分からなかったが、それを考えている間に、四人は動き出した。
 身体を火の粉のように飛散させながら、メリーに向かって。
「メリー!」
 叫ぶも、それに返ってくる声はない。
 この悍しい邪気。
 メリーのものとは思えないそれを表出させる、しかし紛れもないメリーは向かってくる敵をじっと見つめている。
「栗狐、メリーのあれは、なんなんだ?」
 どうやらこの状態を知っているらしい、栗狐に聞いてみる。
「……あれは、禁忌の術。信仰の前借……」
「前、借……?」
 思うにそれは、存在するための信仰を先に得て存命を図るもの。
 しかし、メリーは今まで普通に存在できていた。
 それに今この状況で使うには相応しくないものだ。
 何よりも、発せられる邪気が、目的は存命ではないと示している。
「それは、禁忌なのか?」
「存命の効果もあるけど、真の意味は身体に容量以上の信仰を込めて一定時間の変化をすることにある……」
 変化。
 変わる、化ける。
 あの黒いメリーは、いつものメリーが変化したものということ。
「それ、元に戻るのか?」
「しばらく時間が経てば戻る。でも……」
 でも。
 その言葉は、俺の不安を煽る。
「変化している間は断続的に、凄まじい信仰を消費する。それに、前借した分信仰はしばらく供給されない」
「それって、つまり……」
「……諸刃の剣」
 多分喋らないのは、必要以上の力を使わないため。
 立道を倒す俺のために、そんな危険な術を使うなんて。
 それで尚、メリーは四人を相手に対等以上に渡り合っている。
 一人が胸を突かれ、消える。
 一人が額を撃ち抜かれ、消える。
 一人が横薙ぎの刃によって両断され、消える。
 対等以上どころではない。
 圧倒的だった。
「……メリー」
 俺の呟きは、恐らく聞こえない。
 最後に残った点道と鍔迫り合いをするメリーはあくまで無表情で戦っている。
 点道の力は残り少なく、最早勝敗はついていた。
「……」
「……」
 互い無言に、それぞれの武器で応戦する二人。
 力が永遠であれば、ずっと続いたかもしれない。
 しかし、決着は唐突に付いた。
 幾度目かの鍔迫り合いの合間、点道の刀が消失した。
 恐らく点道の、刀を顕現させる力がなくなったのだろう。

 そう、考え付く前に、メリーの戟は点道を切り裂いていた。

 斬撃の痕から霧散していく点道。
 メリーはそれを見て、戦いの構えを解く。
 そして数秒、点道は仮面の中から笑いを零し、
「……見事だ」
 たった一言だけ言い、倒れもせず、直立のまま、点道は消えた。
 不思議の部屋を形作る四つの柱とそれを束ね、要となる本体。
 最後に残った柱が今消え、不思議の部屋、「スクウェア」のレジェンズは終わりを告げた。
 そして、この戦いも。
「……お疲れ様」
 九道さんの、「彼ら」に対する慰労の一言で幕を閉じた。

#52 ( No.75 )
日時: 2013/01/11 21:25
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



 レジェンズと関わり始めて三度目の戦い。
 今までのものを遥かに超える激戦といえる四隅舞踏と九道さんとの戦いを終えた。
 腕時計で時間を確認すると、意外なことにまだ昼前だ。
 ほとんど人気のない裏路地での戦いでよかったと思う。
 無関係の人を関わらせたくはない。
 九道さんはしばらく、点道が立っていた場所を見ていたが、やがて溜息をつき、歩き出す。
「九道さん……」
 声を掛けて、しかし何を話せば良いのか分からないことに気付く。
 しかしそれを察したのか、
「……ごめんなさいね」
 一言残し、行ってしまった。
「……」
 九道さんは、これからどうするのだろうか。
 暗殺の仕事に戻るのか。
 改心して他の仕事を探すのか。
 そのどちらにしても、またレジェンズと関わるのか。
「少年、小娘の方が先決であろう」
「っ」
 いつのまにか身体から出てきていた神槍が言う。
 そうだ、まずはメリーを。
「メリー!」
 メリーの元に走りよる。
 その場で直立していたメリーは、一度こちらを見ると、
「……」
 元の色に戻り、力なく倒れた。
「メリー!」
 それを抱き上げると、異常に軽いと感じる。
 栗狐が来て、メリーに触れる。
「……信仰の力が無くなってる。このままじゃ消えるのも時間の問題……」
 淡々と言ってはいるが、言葉の節々から心配が感じられた。
「ど、どうすればいい!?」
「何も出来ない……前借してる以上力も供給されない……」
「そんな……、神槍、何か方法はないのか!?」
「ふむ、すまぬが儂にも良く分からぬ……」
 このままメリーが消えるのを、見ていることしかできないのか。
 そんな事を思い始めたときだった。

「っ、あっ!」
「優輝さん……!」
 レジェンズ特有と思える気配。
 しかし、突然に俺を襲ったそれは、今までとは違う、余りにも強い気配だった。
 心臓に圧し掛かるようなものではない事から、敵意を持ったものではないだろう。
 今までは感じなかった、都市伝説に対する自然な恐怖心。
 明らかにそれが今までのレジェンズと違う点。
 それが空間を裂いて現れるという特異さだった。
 良く磨き上げられた鉱石の様な眼と同じ色の煌びやかな銀髪を一つに括っている男性。
 シンプルながら清廉さと荘厳さを醸し出す白装束を着込み、手には笏と呼ばれる木の板が握られている。
 男性は唇を小さく動かしながら、威厳を感じさせる低い声を出す。
「栗狐……何があった……」
 俺と神槍には最初に何かを確認するように見たきり、目を合わせていない。
 栗狐に対してもその言葉は質問ではなく、答えを強制的に聞き出すかのような言い方。
 答えを促される栗狐の反応から、そのレジェンズの強大さが分かる。
 何せ、今までほとんどのことに反応を示さなかった栗狐が震えているのだから。
「……、力の……前借を……」
 震えながらも出した最低限の言葉で、男性は全てを察したようだ。
「……愚か者が」
 ただそれだけ言うと、此方に——というよりは抱いているメリーの方にだろう——向かって歩いてきた。
「何を——」
「人間、メリーを渡すが良い」
 俺の言葉を遮って出された男性の言葉は、逃げ道を作りながらも、その道を封鎖する様な、二択の内一択しか選ばせないようなもの。
 明らかに位の違う存在。
 それに対して俺が出来ることは、大人しくメリーを差し出すこと。


 それを、何とか踏みとどまった。
 栗狐を知っていた事から、このレジェンズがメリーの関係者という事は確実だろう。
 差し出せばもしかするとメリーを救ってもらえるかもしれない。
 しかし、信用していいものか、と躊躇う。
 まずはこのレジェンズの正体を知る事が先決だろう。
「……貴方は、誰ですか?」
 言った瞬間、頭に膨大な文字列の様なものが流れ込んできた。
「っあ!?」
 脳の許容量を超える情報を一気に詰め込まれるような激痛が襲う。
 数十秒程だろうか、やがて痛みが引く。
「もう一度言う。人間、メリーを渡せ」
 痛みで服従させようとしたのだろうか。
 だけど、何者かも分からないレジェンズにメリーを渡すわけには行かない。
「だ……めだ……!」
 向こうが本気を出せば俺一人殺すなんて容易なこと。
 虚勢にすぎなくとも、俺なりの意地だった。
「……」
 男性はそんな俺をしばらく睨み、栗狐に目を移す。
「暗示への耐性、そなたの仕業か?」
「……」
 黙って頷く栗狐。
 男性は小さな溜息を吐くと、再び俺に目を移す。
「我が名は櫛禍。古来より神隠しの命を担っている」
 名乗られた櫛禍という名前には聞き覚えがあった。

 ——櫛禍様は人間と神様の仲介役のレジェンズなんです。

 メリーが言っていた、人間と神様の仲介役。
 信仰を一手に受け、神に渡して願いを叶える。
 そんな強大なレジェンズが目の前にいる事に驚き、そして疑問に思う。
「……メリーに、何の用ですか?」
「このままでは処罰もままならぬ。一旦はこやつに信仰を送らねばならん」
「そんな事が?」
「不可能ではない。多少時間は掛かるだろうが」
 自然と俺は櫛禍と名乗ったレジェンズにメリーを手渡していた。
「……メリーは戻ってきますか?」
 その言葉を言った紛れもない俺が、その言葉に驚いていた。
 出会ってたった数日。
 それなのに、いつの間にか彼女に依存している。
 何故そう思ったのかは分からないが、早く元のメリーに戻って欲しくて。
「無論だ。信仰が溜まり次第自由にする。汝のもとにも戻ってくるだろう」
 その回答が、酷く安心できるものだった。


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