複雑・ファジー小説
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- ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1
- 日時: 2013/05/23 22:08
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
明るくて陽気なミルクレープと、その師匠ノエル。
そして少し馬鹿なプレッツェル君や、シスコンのシフォンさん、マフィンちゃん、不運なことにもマフィンちゃんに恋しちゃったマカロンさん。
そしてある呪いから生まれた過去から今につながる魔法使いの壮大な物語が今ここに!
おとぎ話が現実に?七人の人形遣い。消えた七人目はどこへ?
そして人形遣いが言う『ソール』とは何者か?
戦いへ踏み出す一歩を。
ギャグもあるよ☆
第一魔法 1−11まで
第二魔法 12—23
第三魔法 24−36
第四魔法 37−48
第五魔法 49−50
私は一体誰なのか、
この世界が消されようとしているのなら、私は守るよ。だって皆が大好きだから!!
原作。どるさん。キャラクターデザイン(名前や性格など設定もろもろ)←神。
書く人、だらだら長くてごめんね(泣) 緑ノ 柊
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.3 )
- 日時: 2013/04/20 22:00
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
それにしても……長い道のりだった。
まだ足許がフラフラする……。
まあ実際船に乗っていたのはほんの三、四時間くらいだったのだが、船酔いの吐き気で十三時間ぐらいは地獄を体験していたかのように思われる。
「うえー……」
それでも憧れのガナ—ド生活。しかも一日目で吐いてたまるか!と吐き気をなんとか飲み込む。
「まさか自分が本当に酔うとは……」
思いもしなかった。
港に付いたらそっこう魔法を使える人を探そうと思ってたのに……。
「うぅ……気分が……」
頭痛のする額を少しでも和らげようと、揉んでいると、急に声をかけられた。
「大丈夫か?……あぁ、違う。ですか?」
なんとも不思議なことばだ。
私が「へ?」と顔を上げると、真新しい……制服?これは何の制服だろうか。まぁ軍服のようなものを着た青年がそこには立っていた。
「どちら様……?」
とまだ顔色がわるいであろうが、困ったような笑みを浮かべ尋ねると、
「はっ。オレ……いや私は今日兵士に任命されました。プレッツェルという者です!」
……は?
当然ミルクレープは唖然とした表情を浮かべる。
目をぱちくりとさせていると、
「まだ自分。分からない事ばかりで力不足だとは思いますが。よろしくお願いします!」
そう深々と頭を下げられた。
……え?え?え?えええええええええええええええええ!?
頬をひきつかせているミルクレープに気が付いているのかいないのか、プレッツェルと名乗った青年は顔を上げると、気合いの入った表情で笑った。
その勢いの良さに押され、つい私は。
「……はい」
と言ってしまったのだ。
彼が本当に嬉しそうに瞳を輝かせたのが、今でも忘れられない。
そしてこれがどうゆうことか言うと、事の発端は。
「今日ベアルネーズ港に隣国のお偉いさんが来るんだ。プレッツェルその方が来る港まで行って、ついでに、この町を案内してはくれないか?」
との王様の命令であった。
初めての王様直々の命令……。
これは絶対に成功しなくては!
そしてオレは威勢よくこう返事をしたのだ。
「はっ!」
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.4 )
- 日時: 2013/04/20 22:00
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
それでそのお偉いさんの特徴はと言うと、橙色っぽい金髪の長髪。髪質はさらっさらのストレート。
……だから私が王様の友人と勘違いした……と。
すごく。すごく申し訳ないんだけど。私はただの田舎娘であって。王族とはなんの接点もないのですが……。
と言いたいのだが、ものすごく言いずらい。
だってすごく尊敬というか、らんらんとした目で見てくるんだもの!
ああ……ホント止めて。私じゃないのにぃ……。
「それでは行きましょう!是非!貴女に案内したい所があるんだ……です」
「何それ?敬語?」
思わず突っ込むと、プレッツェル君の顔から血の気が失せていき。
「……すみません」
と謝られた。
いえ、別に良いんですよ?私が貴方にどんな感情を抱いても今後の貴方には関係のない出来事だから……というか、私が貴方の探している人じゃ無いことに気が付いて!!
しかし今はとにかく弁解しないと(この先ずっとこの暗い雰囲気だと気まずいから)!
「いや。別に……そうゆうのも良いんじゃないかな?面白いし」
少し棒読みになってしまった気がするが、ラッキーな事にプレッツェル君はそのことに気が付かなかったらしく、みるみるうちに元気を取り戻していった。
……顔に出てるよ!なんて分かりやすい子!
「良かったです」
と、ほっとした表情になったので、私も安堵の息を吐いたが。
いや、ちょっとまてよ。そもそも私は……、
「私は君の思っているような人間じゃないんだよ?」
もちろん私は君が思っているように、隣国のお偉いさんでもないし、国王の血筋でもないという意味を込めていったのだが、何を勘違いしたのか。
「そうですね」
予想外の返答に、私は気が抜ける、
……は?
プレッツェル君は顎に手をやり考えるような動作をした。
「オレ……私が思っていた以上に若いし、少し田舎くさいですしね」
……うっ!痛いところをついてくる。
でもごもっともなので、反論も出来ない。
黙ってその言葉に耳を傾けていると、プレッツェル君は私の心を読んだのか。いきなり頭を下げて、
「すみません!オレ正直者なんで!本当すみません痛いとこついて!」
ごめん。謝られるのがまた傷つくんだけど……。
とは言えずに、私は「あはははは……」と苦笑するしかなかった。
そこで気まずいこの場を取り繕うとしたのか、手を打って。
「それでは行きましょう!こっちです!」
私の手を取って走り出した。
「えっちょっ!?」
突然の事で、私は抵抗も出来ず彼に腕を引かれ自然と足は駆け足になる。
……ちょっと、船酔い後にいきなり走るのは辛いんですが……。
またぶり返しそうな吐き気がまたこみ上げそうになり、うっと口元を抑える。
「……ごめん」
気分の悪さに耐えきれそうにもないので、プレッツェル君の肩を叩きなんとかこっちを向いてもらう。
プレッツェル君は私の顔色を見て、ぎょっとしたように目を見開いた。
「……気分悪くなるんで歩いてもいい?」
「……あ。悪い」
プレッツェル君は申し訳なさそうに私から目を逸らす。
ああ、私多分外見五歳くらい老けて見えてるよ。絶対……。
それでもミルクレープは依然吐いてたまるかと、心に強く決めているのだった。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.5 )
- 日時: 2013/04/20 22:01
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
「……大丈夫ですか?」
私は持ってきていた水筒の中身を飲み干し、「ふぅー」と息を吐く。
その横でまだプレッツェル君は心配そうにオロオロしていた。
でもこうやって街中を歩いているだけでも気分が少し良くなった。
私は意識した笑みを浮かべ。
「うん。ちょっとはましになったかな?それにしてもごめんね、私がこんなだから案内したいところに行けなくて」
「いや、いいんですよ……貴女の体調が良くなったのなら」
プレッツェル君はほっとした表情になり、私もそれを確認するとさっきから不思議に思っていた事を口にする。
「私、ガナ—ドはもっと騒がしい所かと思ってた」
「……ホント、何も知らないんだな……です」
「……ごめんね」
私は地図も見ないで知らない道を歩き回って迷うタイプの人だからね。
実はこっちのことは全く知らないで、今日いきなり来てしまったのだ。
それにしてもガナードがあの港からこんなに遠い所とは思わなかった。勘違いとはいえ「どこか回りたいところはありませんか?」ってプレッツェル君が聞いてきてくれたよかったぁ。あ、でもそれはあくまでも私がお偉いさんだと思ってるから、こっちに滞在している間にどこか見ておきたいところはありませんかって意味だったんだろうなぁ。
なんだかそう思うと、罪悪感が……。それに早くこの人の誤解を解かなくちゃ。
「ガナードは魔物が多く出るからあまり発展はしていない地域なんだ」
プレッツェル君は呆れたようにため息を吐きながら、きちんと世間知らずな私に説明してくれた。
「あ、そうなんだ……」
なんだか勝手に想像していたところとは違ってがっかりしたけど。でもまあ正直ありがたい。そんな騒音と喧騒が激しい(勝手な自分の想像だけど)の所に行っていたら、確実に私はアウトだっただろうから。
それに……。
周りに広がる無駄にだだっ広い畑。可愛い洋服は泥だらけになってしまっているのにお構いなしに、草原を駆けまわる子どもたち。
この風景も、意外と気に入ってる。
……懐かしいな。
と私は目を細めたが、思えばついさっきまでいた自分の故郷を懐かしむのはおかしいと少し笑った。
「どうしたんだ……ですか?」
プレッツェル君は首を傾げて尋ねる。
「いや……」
私ははしゃぎまわる子どもたちを昔の自分と重ねながら、独り言のように答える。
「故郷の事を思い出しちゃってね」
「……故郷を?」
プレッツェル君も私と同じ様に子どもたちをじっと見つめ、やがてはにかみながら言った。
「……良い故郷だったんだな……です」
と良い事を言ったにも関わらず。また彼の敬語はぎこちなくて。思わず笑ってしまうと少し拗ねたような顔を向けられた。
そして二人で顔を見合わせて笑い合った。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
振り返るプレッツェル君に微笑み返したその時だった。
背後から猛スピードで馬車が走り去り、私のスカートの裾に微量だが泥がついてしまったのだ。
急いで泥を払おうとするも、泥は僅かに湿っていて思うように取れない。
「あっちゃー」
顔をしかめて懸命に泥を払おうとするが、そこで気が付いたのが何故かプレッツェル君は肩を震わせ怒っていた事。
「え?何?どうしたの?」
動揺しながらも恐る恐る尋ねると、プレッツェル君はきっと顔を上げいきなり怒声を上げた。
「貴様なんて事をしてくれたんだー!!!」
貴様こそ何を言っているんだー!!
私はドン引きしてしまったが、それでもプレッツェル君の怒りは収まらず。遂には腰に差してあった大きな剣に手を伸ばす。
その途端私は彼が何をしようとしている事を理解し、みるみるうちに健康的な桃色だった頬は青ざめていった。
「キャー止めて止めて止めて!大丈夫だから!」
大慌てで止めさせようとするが、うるさいと言いたげに睨まれてしまった。
ヒィィィィィィ!?どうして私が睨まれなくちゃいけないのよぉー!
内心叫び出したい気持ちでいっぱいだったが、なんとか止めさせようとプレッツェル君の腕を掴む。
「止めろっ!」
どんっ!
そして私はプレッツェル君につき押され案の定土の上に倒れそうになりましたとさ……。
プレッツェル君は慌てたように私に手を伸ばすけど、その手も数センチ足りなくて。
あぁ、ぐしゃっという土の音とプレッツェル君が悲鳴を上げる光景が目に浮かぶ。
私、憧れの地ガナ—ドでお気に入りの服を泥だらけにするんだなぁ……マジかよー。
背中にくるだろう鈍い衝撃を想像して、固く目を瞑った。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.6 )
- 日時: 2013/04/20 22:02
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
ふわっ……
しかし実際に背中に与えられた衝撃はなんとも柔らかく温かいものだった。
ん?
驚いて瞳を開けると、予想していたよりも近くに可愛らしい顔があった。
「大丈夫ですか?」
その子は心配そうに眉を顰め、私をじっと見つめた。
まるでルビーのように真っ赤で綺麗な瞳—。
「……あの?」
私はその子の顔に見惚れてしまったため、ハッと我に返った。
「あっ、ごめんね!」
態勢をなおし、改めてその子と向きあう。
薄い桃色の内巻きのボブカットが可愛らしかった。
その子はまるで花のように愛らしい笑顔を浮かべた。
女の子の私でもドキッとしてしまう。まぁそれくらい可愛らしい子だった。
「……良かったぁ。怪我とかしてないですね」
どうやら私の事を心配してくれていたらしい。私もにっと白い歯を見せて、
「うん、全然平気だよっ!」
腕をぶんぶん振りまわして見せた。
女の子は長い睫毛をぱちぱちとさせ瞬きをすると、小さく笑い声を上げた。
その仕草がまた可愛らしい。
「わたしマフィンと申します。貴方は……?」
「私はミルクレープ!よろしくね」
私が手を差し出すと、マフィンもその手を握り返してくれた。
私の手の中にその手がすっぽりと収まってしまうぐらい、彼女の手は小さかった。
「……へぇ、あんたミルクレープって言うのか……ですか」
後ろでプレッツェル君がそう言ってから、私はまだ自分が名乗ってなかったことに気が付く。
て言うか突き飛ばしておいて謝らないってどうゆう事?
しかしプレッツェル君本人は呑気な事、大きなあくびをひとつ。
もう終わり良ければすべて良しって感じだ。
私意外に傷ついたんですけどぉ……。
でもマフィンちゃんがクスクスとその愛らしい顔で笑いだしたから、なんだかどうでも良くなった。
後ろでプレッツェル君も恥ずかしそうに俯いた。
でもまあ自業自得。笑われたくないならそのぎこちない敬語を直しなさい。
と私は心の中でひっそりとほくそ笑む。
「あ」
突然マフィンがちゃん声を上げた。
「あ?」
私も首を傾げて、オウム返しをする。
「……土が」
そう言って私のスカートの裾を指差す。
……あぁ、私も忘れかけてた。
「大丈夫だよ。これくらい」と言いかけた私の声はマフィンちゃんの焦った声に掻き消されていく。
「大変!染みになってしまいます!ミルクレープさん私の御店に来て下さい!」
「……は?」
予想外の提案に、私は間抜けた声を出した。
「……え?」
それはプレッツェルも同じだった様で、二人して顔を見合わせる。
私達どうやら、マフィンちゃんの御店に行かなくてはいけなくなったようです。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.7 )
- 日時: 2013/04/20 22:08
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
そしてマフィンちゃんについて行くがまま、たどり着いたのは「Dolce Del Canard」と書かれた看板がかかっている、こじんまりとした、しかし味のある喫茶店だった。
ぽけーとしたままそれを見上げていると、マフィンちゃんが少し自慢げに笑う。
「すごいでしょ。私あのお店のウェイトレスなんです。店長は私のお姉ちゃんなんですよ?」
「へぇー、そうなんだ」
もういろんな事が起きすぎて、勝手にしてって感じ。
なんだかんだで結局はこんなカフェにまで来てしまった。
「ついて来てください」
マフィンちゃんはさっそく店の中に入ってしまうし、それの後に続くのはプレッツェル君。
おい、いいのか。と私はつっこみたい。がもはやつっこむ気力も無い。
疲れ切った足を引きずるようにして、私も後に続く。
趣のあるアンティーク調の扉を開けると、中は意外ににぎわっていた。
「お姉ちゃん!」
マフィンちゃんが珍しく大声を上げて、厨房の奥から姿を現したその人は……。
「何?マフィン」
間の前のマフィンちゃんとそっくりな外見をしていた。
その人は私達に気が付くと、肩眉を上げ私ではなく、プレッツェル君を獲物を見つけたライオンのごとく睨みつけると、
「チッ」
盛大に舌打ちをした。
何故に!?
唖然とその人を見つめていると、あッと言う間にマフィンちゃんの周りに人だかりが出来てしまった。
「待ってたよマフィンちゃん。君のお姉ちゃんったら相変わらず無愛想で口もきいてくれないんだ」
「マフィンちゃん!酷いでしょー!僕なんて危うく殺されかけたよー!」
どうやら客たちもマフィンの姉に対し相当な不満を抱いているらしい。
あらら……と肩をすくめたその時だった。
じゃき。と音がした。
一瞬でさっきの騒々しさが嘘だったかのように静かになる。
そしてその理由は……、
「お前らその手を離せ」
マフィンちゃんのお姉ちゃんが構える銃だった。
その銃口はマフィンちゃんのか弱そうな肩に触れている客に、確実に向いている。
「なんならお前のその汚れた手。二度と使えないようにぶち抜いてやろうか……?」
マフィンちゃんのお姉ちゃんの瞳は真剣そのものだった。
……真剣(マジ)!?
客は生唾を飲み込み、恐る恐る手を離す。
他の客たちもそろりそろりと後ずさりしていった。
完全にマフィンちゃんの周りに誰もいなくなると、お姉ちゃんは静かに頷きやっと、銃をしまった。
もちろん私が抱いたこの人の第一印象は……。
「シスコン?」
だったが、すぐさま睨みが飛んできて、
「違う」
即効否定。
「……そうですか」
いや完全にシスコンでしょ。貴女。
と言いたいが言ったら今度こそ殺されそうなので黙っておく。
「もう駄目だよ、お姉ちゃん!せっかく来てくれている御客さんなんだから、もっと大切にしないと!」
マフィンちゃんのお姉ちゃんは、顔をしかめたが、どうやら妹には逆らえないらしく、
「……分かった」
短くそう答えた。
まあこの場面を心温まる姉妹愛と感じる人もいるかもしれないが、私はこう感じた。
いや、だから貴女シスコンじゃん。やっぱ。
多分プレッツェル君も同じ事を考えていたのだろう。
「シスコンだ……」
背後でボソリと呟いたのが聞こえた。
「だからシスコンじゃないって言ってるだろう!」
さっきよりももの凄い睨みが飛んできた。
どんな地獄耳だよ。
「はいっ!」
びくりと体を動かして、プレッツェルは何故か兵士とかがよくやる、敬礼のポーズをした。
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