複雑・ファジー小説
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- ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1
- 日時: 2013/05/23 22:08
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
明るくて陽気なミルクレープと、その師匠ノエル。
そして少し馬鹿なプレッツェル君や、シスコンのシフォンさん、マフィンちゃん、不運なことにもマフィンちゃんに恋しちゃったマカロンさん。
そしてある呪いから生まれた過去から今につながる魔法使いの壮大な物語が今ここに!
おとぎ話が現実に?七人の人形遣い。消えた七人目はどこへ?
そして人形遣いが言う『ソール』とは何者か?
戦いへ踏み出す一歩を。
ギャグもあるよ☆
第一魔法 1−11まで
第二魔法 12—23
第三魔法 24−36
第四魔法 37−48
第五魔法 49−50
私は一体誰なのか、
この世界が消されようとしているのなら、私は守るよ。だって皆が大好きだから!!
原作。どるさん。キャラクターデザイン(名前や性格など設定もろもろ)←神。
書く人、だらだら長くてごめんね(泣) 緑ノ 柊
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.38 )
- 日時: 2013/05/23 18:41
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
その後。もうなにも手が付かなくって。
お腹もすかなくって。
ベッドに顔をうずめて、声を押し殺して泣いた。
薄暗い部屋に、ただ虚しくわたしのしゃくりあげる声だけが響いて。
誰も近くに居てくれない事が、誰も慰めてくれない事が悲しくってまた涙が込み上げてきた。
……それはまあ、誰も入ってこないで、って言ったのは私だけど。
「顔出してくれるくらいしてよぉ……」
心も顔をぐしゃぐしゃになって、誰にも見られたくないと思う反面。誰かに傍に居て欲しかった。
思い通りにならないこの現実に一人、「馬鹿ぁ」と愚痴を吐いて、頭の中は永遠と同じ事を考えていた。
そう。あの人の事を。
脳裏に浮かぶ映像はどれもこれも、真っ赤に燃える夕焼けと、綺麗な栗色の髪を靡かせるあの人。
あの人が話してくれた夢。
そう……夢。
あんなに、自信ありげだったじゃない。なに辞めているのよ。そうよ……わたしは。わたしあんなに楽しそうに将来の事を語る人初めてだったんだから。
もちろん今でもあんなに夢にまっしぐらで、純情で一図な人。あの人以外に会ったことがない。
……兵士になったと聞いた時。わたしだってあんなに舞い踊ったんだ。あの人はそれ以上に嬉しかったに決まっている。
ならその夢を捨ててしまった時。自ら兵士を辞めてしまった時。彼はどんなに辛かっただろうか。
彼の立場になって考えてみると、また涙が溢れてきた。
「そんなの辛すぎるよ……」
どんなに泣いても、どんなに目元が赤く腫れあがっても、涙が止まる事はない。
わたしはこの時、改めて人体の不思議さを思い知った。
人の体の役七十パーセントが水分で出来ている事は知っている。
だったら後どれだけ涙を流したら、わたしの体は干上がるのだろう。
あとどれだけ声をからしたらこの涙は収まってくれるのだろう。
こんな事をしている場合じゃない。わたしだって仮にもここの幹部。仕事は山ほどあるし、部下もこんなわたしのことをずっと待っている。
分かってる。そんなの。分かっているよ。
でもどうしよう。涙が止まらないの。どうしようもなく悲しくって痛くって。ぐちゃぐちゃになって。
わたしの体の水分は、あと何パーセント残っているのだろう。
たとえわたしの中の水分があと十パーセントだったとしても、わたしは涙を流し続けるのだろう。
残りがあと〇,〇〇〇一パーセントになるその時まで、わたしは貴方を思って涙を流し続けるのだ。
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.39 )
- 日時: 2013/05/23 18:42
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
駄目ね……私も。
あの時シャルロットの表情を見て、「嘘よ」と言ってあげたくなってしまった。
たとえ彼女がそれを望んではいないと知っていても。
彼、良い仕事するのよ……なんて、そんな明るいニュースをあの子に伝えてあげたかった。
……これが母性って奴なのかしら。
シャルロットは今でも自室にこもりっきり。
あれからもう結構時が経つというのに。彼女の声を聞いたという者は、私以外誰もいない。
周りによく気配りができて、評判のいい彼女の事だ。ここで大声を出したら迷惑がかかるとでも思っているのだろう。
そんなこと今だけは気にしなくても良いのに。
そうこちらが思っていても。それは彼女自身が許さないのだろう。
「……似てる」
今日此処を出て行ったプレッツェル君とそっくり。
「誰がですか?」
ふと声をかけられ、我に変える。
どうやら知らぬ間に声に出ていたらしい。
「なんでもないのよ」
と微笑みかけると、部下の一人は不満そうに「……はぁ」と呟くが、上官の私には逆らえないと思ったのだろう。そろそろと部屋を出て行った。
部下が部屋を出ていったことを確認すると、机に眼を落とし書類の整理を始める。
「あら」
そう声を上げたのは、いつの間にか机の上においしそうなホットミルクティーが置かれていたから。
どうやらさっきの部下の一人が、気を利かせて態々此処まで持って来てくれたらしい。
まだ、冷めていない。淹れたてのミルクティー。
カップを鼻の前まで持ってくると、ほわほわと立ちこめる湯気に鼻先を擽られた。
甘いミルクの香りが鼻から入り、胸を幸せでいっぱいに満たしてくれる。
「……おいしそう」
呟くと、自然に頬が緩んだ。
大の大人も甘い物。おいしい物には逆らえないものね。
カップに口をつけ、熱々のミルクティーを喉に通す。
ミルクティーは食道を通り胃に到達し、お腹をほっこりと温める。
「……ふぅ」
小さく、幸せそうにそう吐息を吐いたその時だった。
ポツポツポツ
雨音がノックしたのだ。
やがてポツポツとまだ可愛らしかった雨音も、ざぁざぁと激しいものに変わり。
窓の向こうで町人たちが大急ぎで雨宿り出来る場所を、探し回っていた。
私は部屋で一人呑気に。
「雨ね……」
しかしそんなサフランに突如驚くべき出来事が。
ばんっ!
「サフラン幹部!」
乱暴扉が開かれ、ずぶ濡れのままずかずかと部屋に入ってきたのは、サフランの部下であった。
「いきなりなんです?」
私は突如上官の部屋にやって来た部下に不満を露わにしながら、取りあえずは用件を尋ねる。
「実は先程……」
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.40 )
- 日時: 2013/05/23 18:42
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
*
……さすがに泣きすぎた。頭が痛い。ずきずきする。
きりりと痛むこめかみを、手で押さえながら、シャルロットはベッドからのそりと起き上る。
今は何時だろうと、近くに会った目覚まし時計を見てぎょっとした。
午後三時。
あれからもう七時間過ぎている。
さすがに泣きすぎだろうと、自分でも呆れてくる。
そして鏡の向こう側にいる人物に、呆気にとられた。
髪はボサボサ。目元は赤く腫れあがり。鼻は赤く、決めては瞳の充血。
「……酷い顔」
そっと頬に手をやり、深くため息を吐く。
こんな顔じゃ、あの人に会うどころか、この外にでも出れない。
再度落胆のため息を吐く。
するといきなり扉が開き、今一番会いたくなかった人が大慌てで飛びこんできた。
「シャルロット!」
私は一瞬頭の中はエラーの文字で一杯になり、目の前で肩で息をするその人を、目を点にして見ることしか出来なかった。
「えっと……サフランさん?」
やっと声が出せたのは、多分一分ぐらい経った後。
サフランさんはまだ苦しそうにぜいぜい言いながら、ちょっと待ってと手を突き出す。
……え、何?何が起きたの?
なんとか目の前にサフランさんがいることは分かった。でもどうして?何で突然?しかも何で走って来たの?このそう広くない館内で!?
やはりわたしの頭は、サイトを読み込み中だったのに突然バグってシャットダウンし始めたPCのごとく、もういろいろと……限界でした。
重大なのは、サフランさんの部屋とわたしの部屋はそう離れていない事。
わたしがもしサフランさんの部屋に向かって全力疾走したとしても……こんなに息切れはしない。
結論→なんかもう色々と怖い。
「重大な知らせがあるの!」
わたしがなんかもういろんな事を考えている間に、どうやらサフランさんは体力が戻ったようである。
私も我に返り、いけないとぶんぶん首を振り、いつも通りの自分を装う。
サフランさんは眉を顰め、いかにも深刻そうな面持ちだった。
緊張で額に汗が滲むのが分かった。
ごくりと生唾を飲み込み。
「何ですか……?」
わたしは秘かに、自分が仕事をしていなかったせいで部下がトラブルにでも巻き込まれたのではと心配しながら、そう尋ねる。
……が、わたしの心配はどうやら無駄なものだったらしい。
サフランさんは朗笑をすると。
「実は先程、私の部下がプレッツェル君を見かけたって報告して来たのよ!」
……プレッツェル?
わたしは頭の中をそのワードで何度も検索をかけてみるが、該当者は見つからず。
結局首を捻る事しか出来なかった。
そこでサフランもやっと合点がいったらしく。「あぁ」と手を打つと。
「プレッツェル。貴女がずっと恋焦がれてきた男(ひと)の名前よ」
その瞬間わたしは全身に雷が撃たれたかのような衝撃が走った。
プレッツェル。それがあの人の名前……。ずっと知りたかったあの人の!
興奮で紅潮する頬を抑えて、今すぐにでも飛び跳ねたい衝動に駆られたがそこまでしてしまえば、さすがにサフランでもドン引きされる事は火を見るよりも明らかなので、止めておく。
「それでっ、どこに居たんですか?プレッツェル様!」
サフランもそのままの調子で返してくれると思ったのだが、サフランは急に顔を曇らせてしまった。
「サフランさん?」
「……あのね。ものすごく言いにくい事なんだけど。プレッツェル君……」
わたしは酷く言いにくそうにしていたサフランさんの態度を、その言葉を聞いてやっと理解した。
彼は……あの人は……。
「可愛い女の子と一緒だったんですって」
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.41 )
- 日時: 2013/05/23 18:43
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
突如降り出した大雨は、偶然にも、と言うかわざと神様がそうしたかのように、外出していた私達の上に容赦なく降り注いだ。
「ぎゃー!雨雨!雨だよぉー!」
「んな事言われなくても分かってるよ!」
まったくあともう少しでカフェ「Dolce Del Canard」にたどり着くという時だったのに。
運が悪いというか良いというか……。
「そうですか……大変でしたね」
店内に入ってすぐに、私達を出迎えてくれたのは、花のように愛らしい笑顔。
「……うん。あともうちょっとってところで……びしょ濡れだよぉ」
愛想も良く気配りも出来るマフィンちゃんが。ほかほかのタオルを用意していてくれた。
もうこうなる事を予測していたように。
プレッツェル君も一生懸命栗色の髪を拭いている。
「プレッツェル君ってさ」
「うん?」
そう私が話しかけると、プレッツェル君は一度髪拭き作業を中止して、耳を傾けたくれた。
私がその先、なんて言うのかも知らないで。
「普通だったら水も滴る良い男。なんて言うけどさ」
「……お、おぉ」
プレッツェル君は少し照れたように頬を赤くしたが。言葉の余韻に気が付いて眉を顰めて「ん?けどさ?」などと呟いている。
「どっちかって言うと、プレッツェル君は、水が滴るハムスターって感じだよねっ!」
「うっせぇ!誰がげっ歯類だ!」
ナイスなツッコミを返すプレッツェル君を、私は褒めたたえる。
もちろん馬鹿にした様子で。
「オー偉い偉い。よくそんな難しい事知ってたね!」
「なっ!」
プレッツェル君は悔しそうに、拳を握り締めたが。
やがて意気消沈。
がっくりとうな垂れてしまいましたとさ☆
「もういいよ…ミルとこんなことやってたら日が暮れちまう」
「まぁ、それも一理ありますけどね」
マフィンちゃんは苦笑いをしながら、私達のそばに温かい紅茶の入ったティーカップを置いてくれた。
わたしは「ありがとう」とお礼を言うと、遠慮なくそれをいただく。
温かい液体が喉元を通り、冷え切った体を心地よく温めてくれた。
「……おいしい」
「ホントだ……」
プレッツェル君も幸せそうに、その茶色の液体を見つめ、その甘くて良い香りに思わず瞳を閉じた。
マフィンちゃんは嬉しそうに頬を緩めると。
「ちょっと待っていて下さいね」
とととと……
可愛らしい足音を立てて、店の奥へと入って行った。
その瞬間シフォンさんの周りをどす黒いオーラがまとった事を、幻覚だと思いたい。
「……あのぅ、シフォンさん。何で不機嫌なんですか」
一応確認のためそう尋ねると、むすっとした態度で「別に」と冷たくあしらわれてしまった。
そうなる事はなんとなく予想していたけど、実際そうされると傷つく!
ハートがひび割れ、泣きそうになっているところでなんともタイミング良く。
「お待たせ〜」
マフィンちゃんが入って来た。
マフィンちゃんは今にも泣きそうな私と、冷汗を流すプレッツェル君。そして不穏な雰囲気を漂わせる我が姉を、それぞれ困惑しながら見つめると。
「……どうしたの?」
そこで私達は有り得ないような場面に遭遇するのである。
「ううん。なんでもないわよ」
あの。あのシフォンさんが爽やかな笑顔を浮かべたのだ。
えええええええええ!
という顔を二人して並べていると、またシフォンさんの睨みがとんできた。
二人して「ひぃ!」と肩をすくめる。
そんな様子を見て何を勘違いしたか、マフィンちゃんは羨ましそうに微笑んで。
「仲が良いですね」
どこをどう見てそうなるんですか!?
- Re: ギルドカフェ 〜Dolce Del Canard〜 1 ( No.42 )
- 日時: 2013/05/23 18:43
- 名前: どる&柊 (ID: UgGJOVu5)
マフィンちゃんが焼いてくれたというスコーンは、ほっぺが落ちる程に美味しかった。
焼きたてのスコーンはほろっと口の中で崩れて。バニラビーンズのいい香りが口の中で広がった。
「おいしい!」
その驚くべき美味しさに、思わず声をあげると、マフィンちゃんは心の底から嬉しそうに。
「本当ですか?御気に召されて光栄です」
しかし、私はそのマフィンちゃんの口調が気に入らなかった。
なんだかこう。敬語使われているから嫌ではないけど。遠ざけられているような気分になる。
「マフィンちゃん。その言葉使い止めてよ」
あ……ちょっときつい言い方になってしまったかもしれない。
そう後悔してももう遅かった。
あぁ〜顔を上げたくない。と私が思うのも必然だよね。うん。
そう私が思ったのはシフォンさんとプレッツェル君の睨みが、今までで一番、冷酷かつ鋭いものであったからである。
とまぁナレーション風に言ってみても無駄な訳で。
「……ふーん。ワタシの妹によくもそんな冷たい事が言えるなぁ」
冷たいのは貴女の方です!
とツッコミ精神がうずきましたが。今は我慢。今そんな事言ったら確実に……殺られる!
「おいミル今のはさすがに……」
シフォンさん程度ではないが、やはりプレッツェル君も今の私の口調に不満があったもよう。
私はぶんぶんと首を振り、懸命に誤解を解こうとする。
私が言いたかったのはそう言うことではないと。
「違うのか……じゃあどうゆう意味だ?」
シフォンさんも人の話をまともに聞けるよう成長したのか(上から目線)一旦睨みを中止して話しに耳を傾けてくれた。
「私が言いたかったのは、そのマフィンちゃんの敬語だと……なんだかそのぉ……えと」
その先がまとまらずに、うじうじと適当に言葉をつなげていると。
面倒くさがりなシフォンさんの堪忍袋の緒が切れて……しまった。
突然カウンターを両手で思いっきり叩いたと思うと。
「うじうじしていないで、さっさといいなさぁい!」
「「はい!」」
情景反射的に返事を返すと。何故か重なる声があった。
そして、しらーとした態度で横を向くと先程の声の持ち主と目がった。
「……ついさ」
……ついって。何も悪くないのに。つい謝っちゃう人とかいるんだよねぇ。たまに。可哀想というか……哀れというか。
まぁ今はその話しは置いといて。本題は私の誤解を解く事だ。
私は話しを始める前に、ひとつため息を吐く。
「つまり私が言いたかったのは、敬語を使われると他人扱いされているようで嫌だったんですよっ!」
……冷めた沈黙。
……と。私は急激な焦りを覚えた。
あれ……伝わってない!?それとも私が変な事言ってたとか!?
迷いに迷って結局シフォンさんに目線で助けを求める。『何か悪かった?』と。
シフォンさんはわざとらしく大きなため息を吐き。ずいっと私の鼻先に人差し指を突き付けてきた。
そのスピードと近さに、目をつかれるのではと思った私はのけ反る態勢になる。
「マフィンの口調は生まれつきなのよ」
「うっ、生まれつき?」
そんな事があるのかと小さな疑問を抱きながら、その次の言葉に耳を澄ます。
「えぇ。そうよ。姉のワタシでさえ敬語なんだからね」
「本当ですか!?」
それは確かに驚きだ。家族でさえ敬語!?そんな事が有り得るのか?有り得るのか。
「何かおかしいですか?」
マフィンちゃんはこれが普通と言わんばかりに、首を傾げている。
マフィンちゃんにとっては普通でも、世間様的に言うと特質なんだよ。
しかし歳もそう離れてはいないしかも姉妹にさえ、敬語を使うとなれば、タメ口で話しをするのは極めて困難。いや、不可能だ。
でもそれでも……これだけは出来るだろうということを、私は思いついてしまった。
「じゃあさ。私達もう友達なんだからあだ名で呼んでよっ!」
「え!?」
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