複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.29 )
- 日時: 2017/10/31 16:42
- 名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)
…「ちょ、ちょっと待ってよ菅谷さん。たまたま歩いてたら一緒になっただけで、別にこいつとは何にもないんだから。」真北も弁解に入る。「本当だって、誤解もいいところだよ。」「本当に…」「本当だって。さっきから言ってるだろ。」「ならスマホ見せて。」「え…」一瞬黙る真北。「ほらーっ。」「わかったわかった出すよ。」彼は渋々iPhoneのスマホを手渡す。「あれ、あれ、これ…」「な、琴美。だから言ったろ。浮気してないって。」「私ったら、恥ずかしい。ごめんなさい桃瀬先輩。私勘違いしたばっかりに…」気さくに返す桜。「うん、いいのいいの。悪いのは彼女ほったらかして出掛ける真北なんだから。」「先輩、そりゃないっすよ。」終止和やかになって桜は彼等と別れて日産マーチに急いだ。「なるほど、アリバイ用のアプリ使ったな。まぁいい。必ず尻尾は掴むから。」エンジンをかけて颯爽と車を走らせる。翌日、二人の青年が泊まったホテルに一台の車が某ホテル前に停まった。「あなた達が真北君の後輩さん。」「はじめまして。」「こちらこそ。これは今回の報酬ね。仕事についてもらう時にまた渡すわ。」例の杉山である。彼女は分厚い封筒を彼等に手渡すと乗車させて車を走らせた。「お手並み拝見といきますか。」張り込んでいた桜がサイドブレーキを下ろしてアクセルを踏み、静かに運転しながら杉山の車を尾行し始めた。「大聖堂貿易…」杉山はその会社の地下駐車場に入っていった。「つまりここで洗脳教育を行い、イスラム国へ送り出してんの。真北のやつ。」目立たぬ路肩に停めて桜はビルを睨みつけた。そんな時に彼女のスマホに電話が。「あれ、菅谷から…」それは間違いなく菅谷琴美からだった。「もしもし、桃瀬先輩ですか。…」話の内容は真北の事だ。やはり女の勘というやつなのか、真北の浮気がメインだった。「わかった。じゃあ、今から会える。すぐに行けるけど。」「すみません。お願いします。相談できる人があまりいなくて…」「大丈夫。私は今日休みだしね。じゃあ待ち合わせ場所で。」スマホをしまうと車を走らせはじめた。彼女には願ってもない好都合だった。イタリアンカフェに到着すると、ポニーテールの琴美が手を振る。「あ、先輩ここです。」「そこだったんだ。…で、相談と言うのは何。」エスプレッソを注文しながら聞く桜。「裕也さんの浮気相手を見つけだして欲しいんです。」「つまり私に探偵の替わりになれってこと。」探偵以上だが敢えて言うまい。…続く
- Re: ルージュファイター ( No.30 )
- 日時: 2017/11/02 16:47
- 名前: 梶原明生 (ID: Xc48IOdp)
…「すみません。やっぱり無理ですよねこんなこと。私どうかしてました。」「「いやいや、そんなことないわよ。任せて。男の浮気調べんの得意なんだから。…でも、もしいたらどうするの。」「それは…」急に押し黙る菅谷。「ゴメンゴメン。聞いた私が野暮よね。女心の難しいところだもん。でも…真北のこと、真剣に愛してるんだね。同じ女としてわかる。」「先輩…はい、愛してます。」「わかった、じゃあ調べとくね。」底に近いエスプレッソを飲み干しながら席を立ち、会計は桜が済ませた。その後車で真北の男子寮に向かい、張り込みを行った。真北が何やらおめかしした格好で寮を出る。そこへ一台のセダンがやってきた。間違いない、杉山である。「ビンゴ。あいつやっぱり丸山教授と真北を手玉に取ってたのか。」スモークのかかった車内でもう抱き合って熱いキスを交わしている二人。やがて車を走らせはじめた。真北が話しはじめる。「うまく行きましたよ愛美さん。これでイスラム戦士がまた誕生するわけですね。」「油断するのは早いわ。あの時みたいに水際で警察に捕まったら元も子もない。でもありがとう。私が愛したあなたなだけあるわ。ご褒美に沢山してあげる。」「ほんとっすか。アザーッす。」二人はやがてシティホテルの地下駐車場に入っていった。「今からお盛んにやる気ね。車チェックできるチャンス。でも一人じゃな。」桜は路肩に一時停止しながらハンドルに顎を乗せて思案にくれた。そんな時ドアをノックする何者かがいた。「あれ、正木さん。…」「お困りのご様子。俺とホテル行くかい。」「あなたが言うとチャラく聞こえて仕方ないんですけど…ま、いっか。どうぞお乗りください。ただし…泊まりませんからね。」「わかったわかった。」二人は日産マーチでシティホテルに入る。丁度人気がないのをいいことに、車から降りた桜は忍び足で杉山のセダンに向かった。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.31 )
- 日時: 2017/11/08 15:41
- 名前: 梶原明生 (ID: 0Q45BTb3)
…「困ったな。何も手がかりがないや。」他の客が来ないか冷や冷やしながら杉山のセダンを探るものの、めぼしいものは見当たらない。「仕方ない。GPSデータでももらっていくか。」桜はポケットから専用端末を取り出し、車のGPSデータをコピーした。全て元通りにして鍵をかけて自分の車に戻る。「どうだった。」「何もありません。さすがに警戒してますね。一応GPSデータコピーしてきましたから、証拠付けには役立つでしょ。」桜はエンジンをかけてシティホテルの駐車場を出た。ショッピングモールの駐車場まで移動し、田川主任と落ち合う。車を出て三人で立ち話。「探った概要を聞こうか。」「はい。予想通り間違いなく真北が伝手を頼って、人員集めしていたのは事実です。そしてその黒幕は丸山教授ではなく、彼の愛人である杉山愛美。奥さんは末期癌のため入院中。そこへ彼女が丸山教授に近づき、パソコンや端末機器を利用して教授が犯人であるかのように見せかけ、ゆくゆくは身代わりにするつもりのようです。そして杉山を動かしているもう一つの黒幕が、大聖堂貿易です。」「大聖堂貿易…」田川主任が怪訝そうな表情に変わる。「知ってるんですか…」「昔、アフガニスタン戦争を取材していた報道カメラマンが経営している会社だ。たしか、奥さんはアシスタントを勤めていて、タリバンの流れ弾に当たって死亡した苦い過去があるはずだ。二人は事実婚で、一人娘がいる。奥さんの名前は確か…杉山美咲。」「杉山っ…」桜と正木は互いに目を見合わせた。「主任、どうやらこれで全てが繋がってきましたね。」「ああ、証拠も揃ったことだし、杉山と真北が大聖堂貿易に入った時点で特殊作戦群とガサ入れするぞ。」「了解。」桜は早速日産マーチに乗り込み、車を発進させた。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.32 )
- 日時: 2017/11/11 17:57
- 名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)
…その後桜が向かったのは癌専門の総合病院だった。見舞いを装って丸山の名前を探す。予想通り個室の部屋に丸山教授はいた。「何も心配はいらない。すぐ良くなるさ。」「お母さん。何かいるものあったら言ってね。」どうやら彼は大学生の娘さんと見舞いと世話に来ていたようだ。「そうね、コーランがいいわ。」力なくベッドで答える丸山の妻。ドア脇で聞いていた桜はいたたまれない気持ちだった。やがて病室から出てくる丸山教授。桜は偶然を装った。「あら、丸山教授じゃないですか。奇遇ですね。」「お父さんこの方は…」「ああ、昔の教え子だよ。今年卒業した桃瀬君だ。」「そうだったんですか。娘の真希です。」丸山は遮るように娘に立ちはだかった。「悪いが先に行ってくれないか真希。」「はい。」娘がいなくなると態度を変える。「何だ桃瀬こんなところに。不謹慎もいいところだろ。」「申し訳ありません。ですがどうしても話したいことがありまして。杉山愛美をご存知ですね。」「はーっ。だと思った。確かに不倫は違法だが…」「そんなことじゃありません。一連のイスラム戦士養成の黒幕は大聖堂貿易社長、中神真也。そしてその娘が誰だと思います。…」「まさか。」「そのまさかの杉山愛美です。」「バカな…」廊下の手すりに寄りかかる丸山。「あなたほどの方が知らなかったんですか。」「知ってるか。古今東西愛は人を狂わすと言う。彼女とは妻と同じイスラム教会で知り合った。まさに魅力的で美しい彼女に私は心を奪われた。以来元公安ともあろう私が、彼女を信じたいという妄想に取り憑かれた。」「奥さんに悪いとは思わなかったんですか。」「理解してくれると思うよ。何せ私達はイスラム教徒だ。元来、妻は5人まで娶っていいことになっている。」「そんな…まぁいいでしょう。それよりも丸山教授、杉山があなたに近づいたのは愛情からではありません。あなたのパソコンを使って募集をかけたり、他の協力者とのやりとりに使っていた。最終的にはバレそうとわかればあなたに罪をなすりつけるつもりだった。それが本当の目的です。」「彼女に限ってそんな…」桜はスマホを取り出して真北との逢瀬の写真を見せる。「ま、真北…」「これでも一途な愛だと思いますか。彼女はイスラム過激派の人間。愛情の欠片もない女性なんですよ。」「わかった。後は君たちに任せる。」「なら、今すぐ娘さんとセイフハウスに入ってもらいます。勿論奥さんに警護を付けます。」続く。
- Re: ルージュファイター ( No.33 )
- 日時: 2017/11/16 14:05
- 名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)
…「わかったよ桃瀬。」意外にもすんなり受け入れる丸山。正木に引き渡すと、田川から電話が入る。「桃瀬、真北と杉山が大聖堂貿易に入った。ガサ入れするぞ。」「了解。すぐに向かいます。」日産マーチのダッシュボードから特殊プラホルスターに収まっていたP8拳銃を取り出した。弾倉を抜き、金色に輝く銃弾をチェックすると、再び握把に叩き込む桜。「待ってな。すぐに片付けてやるから。」アクセルを踏み込んで現場に急行した。中神はその頃、真北と杉山に労いの言葉をかけていた。「アッラーの思し召しだ。君達のしていることは正しいのだ。やがてこの国を神々の国にするために。」「お父様、素晴らしいですわ。まさにその通り。お母様を殺したのは憎きCIA。そのアメリカに加担する日本なんか私達の国じゃない。イスラム国こそ真のふるさと。」「さすがは我が娘。よくぞ言った。」跪いた二人の頭を撫でる中神。すでにビルの外は特殊作戦群と田川達のバンが数台包囲しているとも知らずに。やがて桜の車も合流した。「主任、どんな感じです。」「4階のオフィスに奴らがいて、大学生は5階フロアで洗脳教育が施されているようだ。武装した男数名が同階にいる様子。今回は特戦の連中が突入の指揮を取る。」「私も同時に突入していいですか。」「構わんが、あくまでバックアップだぞ。命の保証はない。」「構いません。お願いします。」「わかった。行け。」田川主任は渋々容認した。特殊作戦群の隊員が一斉に陸自迷彩装備でバンから飛び出す。「α班は正面から。β班は裏口から突入しろ。」「了解。」HK−417小銃を手に持ち、それぞれ走り込む。桜は彼等の後ろからP8拳銃を構えてついて行った。4階フロアに到達した瞬間、激しい銃撃戦が始まる。「二名排除。」「行け行け行けっ」無線で伝わるAK47の銃声と隊員達の的確なやりとり。スタングレネードが放り投げられ、爆発したかと思うと一斉にHK−417の発砲音が響いた。CQBの手順でフロアを確認していく。「大学生の身柄は確保。しかし、中神、真北、杉山の姿はありません。」「バカな、いるはずだ。探してくれ。」「いません。」無線のやりとりに何か気づいたのか、桜は地下駐車場を目指す。車に乗り込もうとした中神、杉山にP8を構えて叫ぶ。「動くなっ。警察よ、手を頭の後ろに。二人共早く。」仕方なく従う親子。そこへ真北が後ろから防弾ベストの背中を特殊警棒で叩く。「ごめんよ先輩。こうするしかないんだ。」…続く
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16