複雑・ファジー小説
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- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.4 )
- 日時: 2017/05/09 16:57
- 名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)
…代官山のイタリアンダイニングで女子会が開かれていた。「ここのイタリアンおいしいね。」頬張りながら料理を堪能する一際目立つ女性がいた。身長はおそらく170はあるだろうモデル体型。ファッションも女子会のお友達より目立っている。桃瀬桜22才。来年は大学を卒業するし、就職先も決まっていた。今日はクリスマス前に彼氏いない、ふられた女子の残念会も兼ねていた。「ねぇ、桜。あんた食い意地はってるけどさ、彼氏と本当に別れたわけ。」親友の未知が心配そうに聞く。「当たり前よ。駐屯地祭は大っ大っ大イベントだよ。それに装甲車やあのライトアーマーまで…くーったまんない。彼氏とデートどころじゃないよ。」「はぁ…あんたそれだからふられたのよ。普通さ、彼氏が優先でしょ。」「そういう未知だって、媚び売りすぎて彼にウンザリされたでしょ。」「あーっ、その話またふる。」とめどなく言い合い続く女子会。やがて二次会はカラオケボックスになり、陳腐な流行り歌に女子だけで盛り上がった。「ちょっとお手洗い行ってくるね。」桜だけたまたま抜け出してトイレで用を足し、手洗い場で鏡を覗いた。「はぁ。あたしってこんな人生でいいのかな。」そう呟いた瞬間、斜め後ろに気配を感じた。いつの間にいたのか、壁に寄りかかって腕組みしてる格好いい中年女性が立っていた。「桃瀬桜ね。あなた。」「え、どうして名前を。」「名前だけじゃないわ。桃瀬秀隆と梅乃の間に生まれた長女。父である秀隆は現在失踪中…でしょ。」「どうしてそれを…あなた一体。」「おっと、怪しい人間じゃないって、あなたもうわかってるはずよね。それがあなたの 秘密 の一つだし。あなたにふさわしい職場があるわ。もし興味があるならここへ明日19:00に来て。OLにしとくには勿体ないわ。」名刺を渡され、その裏に待ち合わせ場所が書かれていた。「あれ、あの人…」桜が気がついたら女性は消えていた。「宇佐美涼子…」名刺の名前を呟きながら、何かこれまで感じたことのない胸騒ぎを覚える桜だった。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.5 )
- 日時: 2017/05/10 17:26
- 名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)
…翌日。二日酔い覚めやらぬ中、桜はベッドから起きた。シーツにマットもフランス製。決して贅沢というわけでなく、バイト代と母のWebデザイナーの稼ぎとで折半で購入。おかげで寝心地はいいのだが…「いっけない。私こんなに寝てたっけ、遅刻しちゃうっ。」慌てて身支度始めるものの、ストッキングが破れる。「ちょっと、楓、紅葉、ストッキング貸して。」隣室から顔そっくりの双子が顔をだす。「お姉ちゃんデカいんだからサイズ合うわけないよ。」「デカい言うな。もういいよ。あっ、それから紅葉、あんたアラームでも起きなかったら起こしてって言わなかったっけ私。」桜の口調にもあっけらかんとしている。「う〜ん、そうだっけ。忘れてた。えへへっ。」頭を掻いて悪びれる風もない。「あ〜っもういい。紅葉を当てにした私がバカだった。」額に手を当てがっかりする桜。とにかくメイクもそこそこにありきたりのスーツで出掛けた。靴だけはジミーチュウ。それだけは外さない。地下鉄を乗り継ぎ、霞ヶ関のダイニングバー「囲炉裏」に到着した。「へぇ、霞ヶ関にもこんな店あるんだ。」関心しながら店員に案内され、一人の実年男性の部屋に案内された。「あっ、おじさま。」「やあ久しぶりだね。随分と見違えたもんだ桜ちゃん。まあ座って。」促されるまま席に着いた。と、その時。「あ、別に変な関係じゃないですよ。愛人じゃないんで。」桜から言われて慌てる店員。「いえ、そんな事…失礼します。」桜は思わず口を抑える。「いけない私つい…」「いいんだ桜ちゃん。それが我々に必要な君の秘密だから。」「え…」彼女は突然言われてあの宇佐美という女性を思い出した。「昨日の女の人も同じことを…」「ああ、宇佐美のことかい。だろうね。もう、わかってると思うが、君をある役職にスカウトしたいと思ってね。」男は田川篤郎という。「警察官にですか。」「いや、それとは違う。今まで警視庁庶務課勤務と君や君のお母さんに伝えていたが、あれは嘘だ。私の本職は警視庁公安外事課特捜班主任だ。正確には外事課別班R・D・A所属だがな。これだけ言えば大方察しは付くだろう。」桜は真っ直ぐ田川を見据えて言った。「つまり警視庁と防衛省共同の即応スパイ組織…ですか。父が関わるかも知れない仕事ですね。」「更に察しがいいな。君にとって不足ない仕事だと思うが。どうかね。」「わかりました。卒業と共にそのR・D・Aに就きます。」「そう言うと思ってた。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.6 )
- 日時: 2017/05/16 16:47
- 名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)
…「聞きたいことがあります。」桜は改まって田川に聞いた。「何だい。」「おじ様は本当は父の失踪と関わってたんじゃないですか。」お猪口の手を止めて見据える田川。「どうして聞くのかね。」「おじ様にだけは私の秘密が通じないからです。」「なるほど。多分そうじゃないかと思った。だから私は魔物扱いされるんだがね。」「魔物…」「何、君が選抜訓練に合格すればわかることだ。さぁ、少し早いが就職祝いに一献、乾杯。」「か、乾杯。」お猪口を手に二人は杯を交わした。それからというもの、母梅乃は大手広告代理店「電光」に内定が決まったと大喜び。Webデザイナーとしても喜ばしかった。絶対警察や自衛隊といった公職に就くことは反対していただけに電光は朗報意外何物でもない。勿論R・D・Aの偽装内定なのだが…国習院大学の卒業式が終わると、新人研修の名目で3ヶ月間合宿に行くと見せかけ、極秘のR・D・A訓練施設で選抜訓練を受けた。完璧な訓練プログラムで、これまで警視庁は叩き上げか、先輩から指導を受けて捜査員を養成していたやり方を根底から否定し、陸自特殊作戦群と共同で試験を指導する形を取った。一見すると民間企業の施設にしか見えないが、警備は厳重だ。桜は尾行、家宅侵入、車両運転、心理学、銃撃、CQC、外国語、暗号解読、野戦訓練等、他の生徒を圧倒する成績で見事合格した。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.7 )
- 日時: 2017/05/31 01:59
- 名前: 梶原明生 (ID: wh1ndSCQ)
…初夏を匂わすこの季節、研修を終えた桜が我がマンションに帰ってきた。「ふー、くたくた。あーお母さんのカボチャ煮が久々食べたい。」玄関前にくるなり重いキャリーバッグを置いて上目づかいに呟く彼女。「ん、何で。玄関開いてたっけ。…」鋭い感なのか彼女は一抹の不安を抱きながら、すでにCQBの手順で入ろうとした。手にはキーホルダーに付けたクボタンを中指に挟み、臨戦態勢でクリアリングしていく。「紅葉、楓、お母さん。」呟きながらリビングに入ろうとしたら人影。「まさか。」思い切り殴ってやろうとドアを開けた瞬間。「お姉ちゃんお帰りーっ。」紅葉、楓の双子がいきなりクラッカーを鳴らす。「パン、パン、電光正社員おめでとう。」何とサプライズパーティーだったのだ。「何だ、脅かさないでよ。てっきり…」「てっきりって。」「いや、何でもない。ありがとう皆。」「お帰り。わが愛しの長女よ。」母の梅乃がキスして抱きつく。「やめてよ子供じゃないんだから。」しばし桜は困惑した。そんな親交もつかの間。翌日には電光、ならぬ、霞ヶ関の警視庁R・D・A本部に出社した。日産マーチはすでに購入済みで、IDカードを警備に見せて駐車場に入る。と、いきなり猛スピードで割り込むホンダシビックに遭遇。「ちょっと何っ」スターバックスのコーヒーがこぼれる。シビックからはショートカットの女が降りてきた。「ごめんね。トロトロしてるやつ嫌いだから。」「よ、万屋じゃない。あんた訓練所から変わってないね。て、配属先あんたと同じ…」「残念ながらそうね。じゃあお先。」車から降りた二人は挨拶にもならない会話で歩き出した。やがて裏口前に到着するとそこには、腕組みした宇佐美主任の姿が。「待ってたわ。それじゃ私についてきて。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.8 )
- 日時: 2017/06/01 18:35
- 名前: 梶原明生 (ID: Xc48IOdp)
…宇佐美はIDカードを翳して警視庁内に入って二人を促した。歩いていくとロッカールームが。「ここで着替えるんですか。」桜が不思議そうに聞くと、少しニヤリとしながら応える。「いいえ。…ここがR・D・A本部オフィス入り口だから。」奥のロッカーにIDカードを再び翳すと、ロッカーそのものが自動的にズレて金属製のドアが出てきた。指紋と網膜スキャンと番号打ち込みでドアが開いた。「す、凄い。…こんな所に。」「そうよ。さぁ入って。」桜の感嘆に冷淡に答えながら地下施設への階段を降りていった。そこには上とは裏腹に、ガラス張りの近代的オフィスが存在していた。自動ドア開いてすぐ驚いた。待合いソファーだろうか、長身の体格のいい短髪の、陸自迷彩服に半長靴を着た男が腕枕に寝ていた。「え、これって…」「ああ、気にしないで。彼は南スーダンから帰ったばかりで休んでるの。」宇佐美は桜に、さも当たり前のように答える。「あ、宇佐美主任。例のISの男の身元が判明しました。…て、おっと、新入社員ですか。なら朝礼中失礼しました。」ファイルを開きながら声を掛けてきたのは、これまた長身の細身な長顔のイケメン。それでいてどこか柔らかな顔のラインが小憎い。「わぉ、初日からラッキー。」桜は内心ガッツポーズしていた。「頭のネジは締めなさい桃瀬。会社じゃないのよ。」「あ、すみません。」見透かされた気になり姿勢正す桜。「紹介するわ。うちのチームの電子技術担当の桂正則。そして先ほどの自衛隊さんは特殊作戦群出向の今田成昭三尉。あと一人は…ま、遅刻の常習犯だから紹介はいいわね。」「あれ、おじさま…じゃない、田川主任はどこに。」桜の疑問に答える仮眠男。「基本俺達はここにいない。田川主任も恐らく捜査中で外回りだ。ま、もう一人は女漁りかもな。恋路に仕事に国家テロ。それがR・D・Aの特徴だからな。さて、眠い。」再び爆睡する今田。「わかった。つまりそういうこと。桃瀬桜、万屋由香、早速動いてもらうわよ。コードネームはルージュファイターとルージュマークス。覚えといて。」いよいよ桜のルージュファイターとしての活躍が始まった。…次回 「女の傷」に続く。
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