複雑・ファジー小説
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- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.34 )
- 日時: 2017/11/19 15:26
- 名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)
…しまった油断したと思ったが時遅し。P8拳銃を叩き落とされ、頭に特殊警棒を食らった桜は意識朦朧となり、額から血を流した。しかし、腕固めを決めて渾身のパンチを腹や顔面に叩きつけた。倒れて呻き声をあげる真北。「動くな。」中神がなんと桜の拳銃を取り上げて彼女に銃口を向ける。「桃瀬桜…桃瀬秀隆の娘か。はは、親子共々似たことを。私達みたいに。」頭を抑えながら桜は驚いた。「何故名前を…何故父を知ってる。」「お前知らないのか。お前の父がしていることを…」「何ですって。」「お前の父親はな…」「パンッパンッ」言いかけたところで銃声が地下駐車場に響いた。同時にその銃弾を食らった中神が、心臓と腹を貫かれて倒れる。「糞っ…」死ぬ間際に桜に向けて一発銃弾を撃ち込む中神。「パンッ」胸に当たった桜は床面に倒れ込んで過呼吸になった。「桜っ。」更に男は中神に銃弾を撃ち込み、拳銃を奪った後、彼女に近づいた。半狂乱で泣き叫ぶ杉山の声が聞こえるが、桜は過呼吸になっていてそれどころではない。「桜っ桜っ。しっかりしろ桜っ…」「ハグッ…グッ…ハァハァ、お…お父さん…」意識が薄らぐ中、磨り硝子のような視界になりながらも、確かに助け起こしたのは、死んだはずの父秀隆だったと認識した。次に意識を取り戻したのは、救急車の中だった。「おい、桜っ、わかるか。」「お父さん…」そう呼びたかったが、救急車の中にいるのは田川主任だった。「何のことだ。」「いえ、…夢を見てました。きっと、幻を…」「夢だと。」思い当たる節があるのか、田川主任らしくもなく押し黙った。「成山桜さんですね。大丈夫ですか、今話せますか。」救急隊員が彼女の仮名を呼んで意識チェックしている。やがて緊急入院となったものの、外傷と軽い脳震盪と過呼吸とわかり、治療後は退院できた。宇佐美主任が駆けつける。「田川主任、どういうことか説明してもらえます。」「イスラム戦士養成に関わる事件を捜査していたまでだ。」「にしても、私達を通さずに何勝手に捜査してたんですか。桃瀬をこんな目に合わせてまで。」「君はあくまで副主任だ。主任面してもらっては困る。それにこういう捜査には危険は常に付き物だろ。」宇佐美の目を背けるように窓外に目をやる田川。「まさか、桃瀬秀隆が…」「その通りだ。一応桃瀬には私が助けたんだ。錯覚でも見たんだろと言っておいた。」「やっぱり。しかし何故今更日本に帰国を…」「娘を助けにきたわけじゃなかろう。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.35 )
- 日時: 2017/11/21 15:54
- 名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)
…「すると、何か企みがあって…」「そこまではわからん。別のチームに探させてはいるが、未だに見当もつかん。とにかく、桃瀬には言うなよ。」「わかりました。」渋々納得する宇佐美。「お待たせしました。」頭に包帯した桜が治療室から出てきた。「ああ、桃瀬、大丈夫なの。」 「え、はい。MRI通しましたが、脳波にも異常はありませんと医師が言ってましたから。」あのクールビューティーを地でいく宇佐美のまるで母親のような気遣いに、桜はキョトンとして驚く。「で、宇佐美主任は何故ここへ…」「ああ、それは、あなたの上司だし、後見人がいるでしょ、その、色々。」「そうですか。ありがとうございます。で、田川主任。杉山達はどうなりました。」「真北も逮捕して今R・D・Aの取調室に移送した。中神は残念ながら助からなかったよ。」「主任も確かP8拳銃でしたね。」「そうだが、それがどうした。」「いえ、別に。」桜は押し黙った。あの銃声はP8ではない。シグP230のような銃声だった。ということは…「田川主任。本部に戻る前に寄りたい所があるんです。」空気を察した田川は眉上げて許可する。「あ、まぁな。わかった行ってこい。」「はい。」ハンドバッグを肩に掛けながら外に出る桜。タクシーを拾うと、菅谷のマンションに向かった。スマホを耳に押し当てる。「菅谷さん。あなたに話しておきたいことがあるの。…」やがてタクシーはマンション前に止まって桜を降ろした。対峙する桜と菅谷。遠くからでは何を話しているのかはわからないが、突然菅谷が桜の胸を借りて泣き叫ぶ。全てを知った時、その代償はあまりにも大きかった。「丸山教授…」セイフハウスが解除になったのか、教え子の様子を見にきていたのだが。「やはり浮気の代償はあまりに大きいものだな。明日、私は辞表を提出する。浮気相手に裏切られた者。愛した者から裏切られた者…か。」そう言い残し、二人の前から姿を消す丸山教授であった。巷ではニュースが流れる。「今日未明、大聖堂貿易ビルに警視庁の家宅捜索が入り、イスラム国入国を手助けしていた疑いがあるものと見て捜査しています。」やるせない思いを胸に、夜遅く我が家に帰る桜。「お帰り。遅かったわね…まぁ桜。どうしたのその頭。何があったの。」母の梅乃が駆け寄る。「へへ、私ドジよね。会社ビルの階段で転んじゃってさ。痛いのなんのって。あ、でも大丈夫。お医者さんが何ともないって。」「まぁ、ならいいけど…」「お母さん。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.36 )
- 日時: 2017/11/28 16:31
- 名前: 梶原明生 (ID: doo.G8T9)
…「何よ。」「もし、もしもだよ。お父さんがどこかで生きていたとしたら。どうする。」「急に改まって何。頭打って、少しおかしくなっちゃった。」「真面目に答えて。」「そりゃ…会いたいに決まってるじゃない。」「そうだよね。」物思いに耽る桜「ホットココア、作ったけどいる。」梅乃が脇に忘れてたマグカップを差し出す。「ありがとう、お母さん。」ココアの温かみ以上に母の温かみにしばし感謝していた桜だった。翌日R・D・A本部に出勤した彼女は、真北達への尋問と調書のまとめに忙しかった。昼食時に桜のブースに珍しく今田が現れる。「ちょっといいか桃瀬。」「はい何でしょう。」「昼食未だだろ。良かったら奢るよ。外に出ないか。」「ええ、今田さんもしかして私を誘ってます。」「そんなんじゃない。ここじゃ話せないことだ。」「付き合えとかいう告白でも構いませんが。」「バカ。とにかく出られるか。」「あーっ、はい大丈夫。」「よし、来い。」桜は今田とオフィスを出る。霞ヶ関の某レストランでまるでカップルみたいに座る二人。「で、話って何です。」「特戦群の一人がXの存在を見たと俺に言ってきた。」「待ってください。Xって何ですか。」「お前が撃たれた現場にいた男のことだ。田川主任は俺が中神を撃ったと言ってるが、車から出た形跡がない。なのにどうやって地下駐車場に行ける。だがお前を助けたのは田川主任じゃない。俺達が長年追い続けてる謎の男。通称X。テロやテロリストあるところ必ず現れる男だ。顔はわからないから誰かはわからん。だが俺達はそいつが一連のテロリストと関わりがあると睨んでる。」「そんなお父さんがテロリストだなんて…」「ん、お父さん。」「いや、その、誰かの父親ならテロなんてできないのになーなんて。ハハハッ…」つい出た本音を何とかごまかす桜。「そこでお前に聞きたい。この男を見なかったか。些細なことでもいい聞かせてくれ。」「いや、残念ながら撃たれたものでそれ以降の記憶は…」うまくごまかす桜。しかしあれは本当に父だったのか。未だに半信半疑の桜だった。…次回「女の友情は裏切りの始まり」に続く。
- Re: ルージュファイター ( No.37 )
- 日時: 2017/12/02 18:56
- 名前: 梶原明生 (ID: MqiTTCa3)
「女の友情は裏切りの始まり」
…愛情に満ち溢れた心には、悲しみもまた、多いものである。
恋ってのは、それはもう、溜め息と涙でできたもの。
船舶関連企業のOLとして働く美智子はタッチペンを片手で回しながらそんな詩をパソコンで検索していた。「最近の雅人。様子がおかしいな。」上司の目を盗んではそんなことばかり考えている。「ミッチ、どうしたの。処理が進んでないみたいだけど。」大学時代からの親友、心音が隣席から声をかける。「あ、ごめん。すぐ終わるから。」「何かあったんでしょ。わかるよ親友なんだもん。」「雅人がさ。」「雅人さんがどうしたの。」「他に女がいるみたいなの。」「え、あの出世株の成績トップの雅人さんが…気のせいじゃない。忙しいから会えないとか。」「うーん。」納得行かない美智子。上司の山岡課長が彼女達の前に来る。「桐谷君、佐川君。今日からこの部署に配属することになった、宇佐美派遣会社から来た桃園桜さんだ。」「桃園桜です。よろしくお願いします。」「こちらこそよろしく。」勿論それは桃瀬桜に間違いはなかった。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.38 )
- 日時: 2017/12/07 17:45
- 名前: 梶原明生 (ID: .2ijTo35)
…話は2日前に遡る。R・D・A本部のブリーフィングで田川班のメンバーが集まっていた。「本当ですか。あのXが。」今田が食い下がる。「本当だ。伊集院流通船舶の関連する港であのXが入港した可能性が高いという、たれ込みがあった。伊集院流通船舶は過去にも北朝鮮への支援をしていたのではないかという噂が立ったこともある。だが証拠不十分で結局無罪放免。が、しかしXが北朝鮮経由で入港したとなると話は胡散臭くなる。よって、派遣社員を装い、誰かに潜入捜査してもらうことになった。」視線が自然と桜に向く。「え、また私。」「お前に決まってるだろ。宇佐美派遣会社からだ。勿論架空の存在しない派遣会社だが。…」その宇佐美が吹き出す。「ふふっ。相変わらず代わり映えのない社名ね。桃瀬、ファイル渡すから流通船舶の事務についてしっかり頭に叩きこんどいて。」「了解しました。」こうして桃園桜としての潜入捜査が始まった。もし貨物船に乗船して密入国しているなら、手引きしている社員がいるはずだ。彼女はその人物を特定することが任務だった。やがて美智子達から仕事を教わり、桜の人格もあって次第に打ち解けていった。トイレに行くふりしたり資料を率先して取りに行ったり。片っ端からデスクを探ったり、怪しい行動の人物を探したりした。「鳥山雅人営業課長。アジア担当で…韓国への輸出入に精通か。ここ最近出張に外出が多く、残業も多いか。」「君、そこで何してる。」噂をすれば影か。その鳥山雅人がお昼休みから帰ってきた。「ああ、すみません。桐谷さんから三崎通運の資料持ってきてと言われてまして。この辺かなと。」「ああ、それならこの棚だよ。」「あ、そんな所に。あはっ、私としたことが。…」「君、派遣の桃園さんだよね。」「はい。」「良かったら、歓迎会もかねて一緒に食事でもどう。奢るよ。」セクハラとも取れるボディタッチで桜の肩に手を回す。「いえ、そんな。お気持ちだけで結構ですよ。ありがとうございます。」何とかやり過ごして美智子達の場所に戻った。「確かにイケメンでモテフェロモンガンガンだけど。危ない危ない。」桜は両手でパンパン顔を叩いた。…続く。
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