複雑・ファジー小説

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ルージュファイター
日時: 2017/04/19 14:38
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)  

あらすじ

髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。

Re: ルージュファイター ( No.49 )
日時: 2018/05/10 14:15
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「愛した男の子供」

秘書課の岸部由衣。IT企業ユメコーポレーション、通称YC取締役社長猪狩克の愛人でもある。二人の関係は清廉潔白なものだと誰もが疑わなかった。夏の終わりは恋の終わりと言うが、まさに由衣にとってそんな出来事があった。8月31日。…イタズラ気分で彼の尾行をしてサプライズしようとタクシーに乗り込んだ。しかし彼の向かった先は郊外のマンション前。待ちきれなかったのか、マンションの外で女性と小さな女の子の子供が待ち構えていた。…「パパーっ。」もの影でその声を聞いた由衣はショックで口を抑えた。「そんな…彼に隠し子。」名実共に独身を貫いてる38歳バリバリのIT社長として名高い猪狩に、結婚の二文字はありえない。彼女はそれから血眼になって、その女性を調べあげた。するとYC設立時に秘書課にいた倖瑞穂30歳とわかった。同社を二年後に退職していた。寿退社のわりに結婚の事実がないことから、結婚してくれない猪狩に失望し、社を去ったのではないかと予測した。秋風が差した9月中旬。彼女はイチョウ並木の道を歩いていた。するとある男がすれ違い様に声をかける。「あれ、由衣じゃねーか。」「て、テル…」それはかつて未成年の時に悪いホストから救ってくれた正木輝男だった。昔テルという源氏名でホストをしていた。「久しぶりだな。すっかり見違えてさ、あん時はまだ女子高生だったよな。また悪いホストに捕まってないか。」「ううん。もうホストは懲り懲り。あなたにも。」「おい、せっかく再会してそれはないだろ。まぁモテる男の性ってやつよ。なんてな。ハハハハ。」「自分で言う。そういうとこも昔と変わってない。」「再会ついでに何だ。俺の名刺渡しとくよ。」「宇佐美派遣会社…」「ああ、俺もいっぱしの営業マンよ。ホストからは足洗ったんだ。」「へー、あのテルがね。」「ああ、仕事に困ったらいつでも来な。じゃあな。」木陰のベンチで立ち去る二人をチラ見しながらスマホ操作のふりで耳の無線機に応答する桜。「こちらファイター。プレイが接触完了。」「了解。後は魚を待つのみ。」スカイラインで待機中の桂が応えた。…続く。

Re: ルージュファイター ( No.50 )
日時: 2018/05/13 23:49
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

…暗号解読によれば、猪狩がテロリスト養成の隠れ蓑であることを示唆している。しかし下手に接触すれば、捜査の手が迫ったと感ずかれることから、先ず由衣に接触を試みた。ましてや彼女が正木のホスト時代の彼女だったとは。しかし好都合だった。時を待たずして魚は餌に食いついた。「もしもし、テル…例の件だけど、転職考えようかなって思うんだけど。」「由衣、うれしいぜ。考えてくれたか。よし、事務所案内するから待ち合わせ場所指定してくれ。思い出のジャガーで迎えに行くからさ。」「やだ、まだ乗ってんの。」「当たり前よ、お前との大切な思い出が詰まってんだぜ。愛してるぜベイベー。」脇で聞いている桜が嫌悪感を示す。「気持ち悪…」「何か言ったか。」「いえ、何でも。では事務所で待機しますね。」「ああ、そうしてくれ。」早速動き出した。六本木で待ち合わせた由衣と正木は、宇佐美派遣会社の架空の事務所に入る。「ようこそおいで下さいました。宇佐美スタッフサービスの私、桃山桜ともうします。どうぞおかけ下さい。」開口一番桜が出迎えたが、万屋に桂もいた。「早速お話を進めたいと思います。あなたはYCコーポレーション社長、猪狩克氏のお気に入りだったそうですね。しかし彼には倖瑞穂という内縁の妻がいた。彼女は昔秘書課にいた時、猪狩社長の子供を身ごもり退社。あなたはそれを突き止めて今会社を辞めて彼を忘れようとしている。こんなところかしら。」「な、何これ。何なんですかそれ。どうしてそれを…」「色々調べさせてもらってた、あなたのこと。ここは派遣会社じゃないわ岸部さん。」「どういうこと…ねぇテル、これは一体…」「悪い。俺達は警視庁のとある部署の人間でね。」「け、警察…」「岸部さん、あなたの協力が必要なの。猪狩社長は北のテロリストに加担している疑いがあるの。私達に協力して、お願い。」「か、彼がテロリスト、ありえない。テル、あなた騙したのね。協力なんかしたくない。」由衣はその後頑なに協力を拒むばかりだった。「仕方ないわね。どうあっても断るなら。」桜は徐に一冊のファイルをテーブルに置いた。「見てくれる。」「え、…こ、これ…」それはヤクの売人から薬を買っている写真と捜査資料だった。「不定期で今みたいな状況になった時に手を出していたみたいね。これは厚生省から差し押さえた資料よ。もし差し止めを解けばいつでもあなた逮捕されるわね。そうなれば秘書課の仕事をなくすばかりか、社会的に職を失う。」…続く

Re: ルージュファイター ( No.51 )
日時: 2018/05/17 17:22
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)

…目を皿にする由衣。「正直、俺はショックだったぜ。まさかお前がヤクに手を出してただなんて。」「テル…ごめんなさい。私ついこんなことに染まってた。」「女子高生の頃のあの悪いホストに引っかかってた頃か。」「うん。でも、なかなかヤクが抜けられなくて…因果応報ね。わかりました。協力します。」「そう、これで契約完了ね。」「ただしっ。」桜が言い終える直前に叫んだ。「猪狩社長は傷つけないと約束して。それが条件。」言われて桜は美智子へのトラウマがぶり返していた。「わかったわ。約束する。」こうして由衣をオフィスから帰した。翌日、仕事が終わると猪狩からのいつものサインが現れた。今夜は泊まりでデートだと。それは桜達にとってもチャンスだった。肌身離さないUSBメモリーのペンダントは、彼女との逢瀬の時だけは外してクローゼットの引き出しに入れるのがクセだったからだ。盗聴器を由衣に仕掛け、準備は万端。二人はレストランで食事をした後、六本木の高層マンションに入っていった。桂のスカイラインで待機する桜。ヘッドホンをつけて聞き逃さないよう意識を集中する。…続く。

Re: ルージュファイター ( No.52 )
日時: 2018/05/22 17:00
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)

…音からしていつも通り、USBメモリーをクローゼットの引き出しにしまう。やがて逢瀬は始まり、一時の愛する人に抱かれる由衣の吐息が辺りに充満した。それも終わりに来た時、由衣は動き出した。猪狩が眠っている隙にクローゼットから例のUSBメモリーを取り出し、スマホ端末を使ってコピーを取っていた。しかし完全にコピーできるまで一分。由衣には100時間に感じた。後10秒という時に唸り声で寝返りを打つ猪狩。心拍数がマックスになるが、気づいていない様子。ほっと一息ついた時には100%コピーできていた。端末をしまうと、クローゼットにUSBメモリーを戻す。と、同時に彼女の手首が何者かにより握られた。「はっ…」それは裸で睨む猪狩だった。「やはりお前そうだったか。公安から協力要請があったんだな。由衣…」恐怖におののく由衣。「いけない、救出に向かわないと…」「よせ、ファイター。助けない規則だろ、忘れたか。」「でも…」躊躇している時、ヘッドホンから猪狩の意外な声が聞こえてきた。「なぁ、公安さん。盗聴してるんだろ。なら聞いてくれ。私は彼女を傷つけるつもりはないし、あなた方と対立しようとも考えてない。ある条件さえ呑んでくれれば協力する。今すぐ会えないか。」スカイラインの桂と桜が互いに目を合わせた。「罠かもな。」「いえ、彼は本気です。私には分かるんです。」「どうして。桜、君はちょいちょいそんなことを言うが、根拠はなんだ。もしかしたら…」「とにかく行きます。バックアップお願いします。」遮るようにP8拳銃のスライドを引きながら車を出た。「おい、ファイター。」…続く。

Re: ルージュファイター ( No.53 )
日時: 2018/06/08 18:15
名前: 梶原明生 (ID: wh1ndSCQ)  

…言った時には走り出していた桜。招かれるままマンションのエレベーターに乗る。やがて猪狩の部屋に到着。ハンドバッグに拳銃を忍ばせたまま中に入った。「ほう、君が公安か。てっきりゴツいスーツ姿の男を想像していたが。…さぁ入って。」言われるまま部屋に入る桜。「桃山さん…」ガウン姿の由衣がベッドに座っていた。「大丈夫、落ち着いて。それで、話とは。」猪狩に向き直る。「うむ。君達の目的はこのUSBだね。渡しても構わないし、奴らのことを話してもいい。その代わり身柄の保証と妻と娘の命の保証をしてもらいたい。それが条件だ。」チラッと由衣を見る猪狩。落ち着いているのが不思議だった。「驚かないのか。」「うん…以前から知ってた。瑞穂さんでしょ。」「そうだったのか。すまない隠していて。でも君に対する愛は変わりない。どうかわかってほしい。」無言になる由衣。桜は桂と田川主任に確認を取った。「今連絡しました。内縁のあなたと奥さんと娘さんを保護対象にすると。勿論由衣さんもね。それじゃ今すぐ支度してください。ここへは戻れないですよ。」「わかった。最後に聞かせてくれ。何故協力するって信じてくれたんだ。場合によっては罠かもしれなかったのに。」「まぁ、長年の勘ってやつです。」「ぷっ…」ドア外で待機していた桂が思わず吹き出した。「本当に…てっきり新人さんかと。」「え、あ、その、10代からやってますからハ、八年…かな。」思わずごまかす桜。「それより早く用意を。」「ああ、そうだった。」慌てる猪狩。やがてマンションの裏口から桂、今田の車に分乗してセイフハウスを目指した。…続く。


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