複雑・ファジー小説

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ルージュファイター
日時: 2017/04/19 14:38
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)  

あらすじ

髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。

Re: ルージュファイター ( No.9 )
日時: 2017/06/14 01:19
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「女の傷」

…男は普通の地方サラリーマン。と言っても営業課で課長職を手に入れ、姉妹の子供達二人を大学にやり、長女は大手電気メーカーの社員と結婚し、末娘は大学卒業後、大手広告代理店電光の社員となった。順風満帆な親子に傍目には見えるだろう。しかしこの男は今、外回り中に路上で自身のスマホを握りしめて震えている。電話口の相手は末娘の真由美だった。「お父さんゴメン。私ダメかもしれない。死にたい…」「真由美…そんなこと言うな。父さんだって辛い。まさかお前がそんな目に遭ってたなんて…悔しいよ。死んだ母さんに誓ったのに。二人とも必ず幸せにすると。なのに、レイプされただなんて…」こらえていた涙が溢れ出てしまう。彼の名は春日泰造。一目散に東京へ向かった。その頃人気のない高台の公園で真由美は東京の街を見下ろして首を吊りたいと、既にロープを木にかけていた。「お母さん、ムシャヒリ、ゴメン。」木陰に待機していた桜は無線で万屋に伝える。「危ない。…万屋ゴメン、計画変更。」「待て桃瀬。行ったらダメ。」彼女は制止を振り切り真由美に向かった。「やめてっ、バカな真似はダメ。死んで解決にはならない。早まるなっ。」「いやーっ、死なせて死なせてっお願いっああっ…」桜の怪力に叶うはずもなく、彼女は芝生の上に倒れこんだ。「どんな事情があるかしらないけど、こんなのダメよ。これも何かの縁。私に事情を話してみない。」「すみません私…あなたは。」「私、私の名は桃瀬桜。」…続く。

Re: ルージュファイター ( No.10 )
日時: 2017/06/17 01:53
名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)  

…真由美の両肩を持つものの、真由美は泣き出す一方だった。次第に心を落ち着かせてきて事情を話し始めた。勿論その内容は桜も知ってはいたが、ここは初対面の知らない人間を装うしかない。広告代理店電光の営業部は仕事は苛烈だった。24時間が仕事と言っても過言ではなく、仕事を取るためにはクライアントのご機嫌取りに奔走し、飲めない酒を大量に飲めと言われれば飲み、裸踊りしろと言われれば裸踊りもする有り様だ。しかも終われば夜12時。社に戻って翌日の資料作り。仮眠は会社のトイレの中。しかもそれで朝8時キッカリの朝礼に遅れたり、身嗜みや臭いがきつかったら理不尽に怒鳴りつけられる。そんな時出会ったのが中古車販売業のパキスタン人、アリ・ムシャヒリだ。28の聡明な男性で、クライアントの趣味に叶う外車を見つけようと訪ねたのが恋の始まりだった。やがてプライベートでも会うようになったが…そんな矢先自宅マンション駐車場で何者かに拉致され、今に至ったわけだ。幸か不幸か、彼女をR・D・Aがマークしだしたのはレイプ後だった。「だから私、アリにもお母さんにも合わせる顔がなくてつい。」「ついなんてダメよ。絶対に自殺しないって約束よ。いい。」「はい。」「ところで奇遇ね。私も電光の社員なのよ。」「え、あなたが…でも営業部で見かけたことは…」言われてしまったと一瞬目が泳いだが、ごまかす桜。「え、あ、いや、その、奥の部署で地方担当部だからかな…アハハ。」それを見ていた万屋は宇佐美に再度無線する。「いいんですか本当に。協力者獲得に首吊るからって接触しても。」「いいわ。怪我の功名よ。早い段階で彼女を味方にできるかも知れないから、引き続き監視して。」「了解しました。」万屋は不満げに無線を切った。…続く。

Re: ルージュファイター ( No.11 )
日時: 2017/06/26 20:56
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

…翌日、日産マーチで電光近くの駐車場に入る桜。白い日産スカイラインの横に停める。「やぁ、オシャレさん。そのジャケット似合ってるよ。できればこのままドライブしない。桃瀬となら首都高速抜けて湘南の海まで飛ばせる気分だ。知ってるか。湘南はこれからがいい季節だってこと。」スカイラインの主は電子技術担当の桂正則だ。「ちょっと、やめてくださいよ。それ口説いてるんですか。」「どうかな。半分はそうかも。何てね。なんせナデシコピンクなんて目立つマーチに乗ってりゃ口説きたくもなる。だから気をつけろ。電光の社員は女に手が早いからな。」「 その前に私の拳が早いと思いますが…」「おお、言うね。ま、与田話はこの辺にして、君に社員証IDとファイル渡しとく。電光に協力者がいるから架空の部署を用意してる。またには出社しないと怪しまれるからな。でもまさか灯台もと暗しで、春日真由美が電光とはね。…とりあえず俺が先導する。君は前から部下で、何度も電光には出社してるふりをするんだ。何かあったら上司役の俺が全て対応する。オフィスまでが勝負だ。大丈夫か…」「はい勿論。」考え事してた桜に問いかける桂。「それじゃ、行こうか桃瀬君。」「はい、桂課長。」少しにやつきながら車から歩き出した二人。…続く。

Re: ルージュファイター ( No.12 )
日時: 2017/06/30 20:29
名前: 梶原明生 (ID: u7d.QD9m)  

…「ワオッここってカルト教団の建物…」開口一番にロビーに入って、放った桜の言葉に桂は我が耳を疑った。「おいおいどういうつもりだ。君は口が軽いのか、それとも何かの策略か…いずれにしてもそんな言葉は問題発言だろ。ここでの隠れ蓑を台無しにする気か。」桜は口を抑えてキョトンとした。「す、すみません。つい私としたことが…以後気をつけます。」「ああ、そうしてくれ。何百万もかけた工作費用が無駄になるところだった。しかし君は人を怒らせない天才だ。普通ならもっと怒ってる。」「それは誉め言葉と取ってよろしいので…」「言ってろ。さぁついた、ここがオフィスだ。と言っても見た目だけ。ここでは常に仕事してるダミーの資料やデスクトップがあるだけ。しかしよほどのプロでないかぎり、ここがダミーとは気づかない。常駐してるうちのスタッフがいるから日中は出入り自由だ。ただしコーヒーはクソ不味いから気をつけろ。」「またスターバックスにお世話になりそう。」「ああそうだな。さてまずは春日の盗聴だ。一応彼女が行きそうな各フロアには盗聴器が仕掛けてあるから君はここで春日真由美の声と電話を聞いて張り込みしてくれ。俺はべつな用事がある。」「別と言うと…」「アリ・ムシャヒリに張り込みだ。」桂はウィンクしながらジャケットを肩にかけてオフィスを出た。「よーし、お仕事お仕事。」桜はパソコンを前に、イヤホンを耳にかける。「保護者と同伴。お前は幼稚園児かっ。」いきなりの怒号にさすがに桜も首をすぼめた。「春日っ、昨日は1日どこほっつき歩いてた。おかげでクライアントの苦情に奔走するは、他の連中は徹夜しても仕事の穴埋めにならないわで散々だった。」どうやら上司に真由美が怒られている様子。しかし保護者同伴とは…「あんた、酷過ぎじゃないか。この子は…この子は男達に乱暴されたんですよ。なのにあんまりじゃないですか。」父親の悲痛な叫びに桜も苦痛を感じた。「乱暴…本人ピンピンしてるじゃないか。例えレイプでも、うちは日本の広告の看板背負ってるんだ。たかがレイプぐらいで休むやつが悪い。」「何だって…」父親が飛びかかって行こうとしたら真由美が何と父親を掴んで制した。「やめてお父さん。やっぱり私がいけなかったの。そうよ、私が不甲斐ないからよ。それで社に迷惑をかけた。私がどうかしてたのよ。」「な…何言ってるんだお前。気は確かか。」言う間もなく真由美は深々と頭を下げた。「申し訳ありません課長。」…続く。

Re: ルージュファイター ( No.13 )
日時: 2017/07/05 00:48
名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)  

…もう少しで土下座寸前だった。「なら誠意を見せろ。今日中に断ったクライアントをもう一度振り向かせろ。あのシャンプーのCMは我が社の命運がかかってたんだ。わかったらさっさと取りかかれ。」「はっ、はい。」父親そっちのけでデスクに戻る真由美。そんな娘に言い寄ろうとしたら、誰かに腕を掴まれた。桜である。「春日さんのお父さんですね。事情については私が説明を…」「え、あなたは。」課長が気がついた。「おい、見かけない社員だな。君はどこの部署だ。」不審に思われた桜は毅然と答える。「地方係です。連絡が来ると思いますが私が家族のクレーム担当です。」「なるほど、丁度良かった。あの訳分からん窓際部署か。暇人には持ってこいだ。ハハハッ」ムカついた桜は他の社員が見てない隙をついてわからないよう、瞬速のパンチを課長の横顎に当てた。「大変、皆さん来てください。課長が滑って頭を打ったみたいなんです。」わざとらしく叫ぶ桜。「あ、あなた…」「しーっ。内緒ですよ。」ウィンクした彼女は、混乱の隙に春日を連れて地方係オフィスに行く。その頃桂は、アリ・ムシャヒリを車から監視していた。「あれは、弟のハッサン・ムシャヒリ。」渦中の兄弟は再会を喜ぶように笑顔で抱き合っていた。「奴は確か最近ムスリム過激派に傾倒して要注意人物に指定されてた弟だ。やはりテロリストと繋がっていたんだな。」カメラ越しに覗きながら桂は呟いていた。桜はと言うと、春日泰造にできる限りの事情を話、警察への対応や今後のケアについて話した。「そうでしたか。桃瀬さん…でしたね。娘をよろしくお願いします。」「いえ、お手を上げてください。社員ですから。」力無く立ち去る父親の姿に、すまない気持ちと、かつての自分の父親の姿に重ねて見ていた。「ごめんなさい春日さん。私。…」察したR・D・Aスタッフが声をかける。「罪悪感感じてたらこの仕事はできないよ。大事なのは任務だ、忘れるな。」「は、はい。」…続く。


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