複雑・ファジー小説
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- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.59 )
- 日時: 2018/11/07 20:30
- 名前: 梶原明生 (ID: u7d.QD9m)
…その頃六本木ヒルズのアメリカン貿易というオフィスから防弾プレートを持って出るアメリカ人がいた。40代の白人男性二人とアジア系女性一人。そして20代の黒人一人。順にウィリアムス・ミラー、マーシュ・L・ムーア、ミア・ホワイト、マイケル・テイラーだ。車に乗り込みつつミラーがせわしくスマホに英語でまくし立てる。「わかってる。大使館を通じてたら間に合わない。我々だけで動く。日本のSOGと合流する。うむ、わかった。」業者に偽装したバンを急発進させる。一方その頃、今田の無線に特戦群群長から入電があった。「何ですって、アメリカのCIAテロ対策班が合流ですか。」「どうしました。」「うむ、Kクラブの標的はアメリカ人も視野に入ってるから、CIAが協力したいそうだ。」「それは心強い。」「それはどうかな。」「え…」曇り顔になる今田に防弾プレートの締め付けを直す桜が不思議がった。「奴らがここで出てくるなら、何か別の見返りを欲しがってるに違いない。」桜は同盟国とは言え、一枚岩でない両国の事情を思い出していた。「ま、とにかく上の命令ならやむを得んな。」窓外を見ながら呟く今田。やがて突き止めたKクラブのセイフハウス近くでCIA要員と合流した。「ミスターイマダ、久しぶりだな。」「ミラーさん、あんたとまた会うとはね。南スーダン以来か。」「あの時は助けてもらった。その恩返しも兼ねてね。我々はトモダチだろ。」「だといいがな。では早速突入する。準備はいいか。」「勿論だ。スタンバイ。」HK416ライフルを装備したミラー達は、特戦群に続いてセイフハウスに近づいた。「3、2、1、点火。」ドア枠チャージにコードの信管をつけたセムテックス爆薬を点火してドアを破壊した。「突入。」次々入っていく特戦群隊員。やはり中はビンゴ。Kクラブメンバーが数名AK47小銃を取って応戦した。今田がメンバーの一人を捕まえて座らせる。「この建物には11人。お前と射殺したやつ含めて8人。3人はどこいった。」「チョッパリ。」拘束された身で唾を吐きかける。「そうか。ファイター来てくれ。」P8拳銃を構えながら入ってくる桜。「拷問すると思ったか。甘いな。ファイター、こいつの考え読めるか。」今田の言葉に目を瞑って念じる。「ワッツ、まさかこの女…」ミラーが彼女の能力を察した。「大変。…」「どうした。」「東京スカイツリーで一般女性に爆弾を巻きつけて遠隔操作で爆破するつもりです。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.60 )
- 日時: 2018/11/09 15:32
- 名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)
…「なんだと、まだ30時間経ってないぞ。」「本気だと知らしめる見せしめのために。」「クソッマジか。ここから飛ばしても40分はかかるぞ。」ミラーが提案する。「心配ない。警視庁にもトモダチはいる。」彼は一台のパトカーを呼びつけた。「あまり気持ちいいトモダチじゃないな。」「ミスターイマダ。今はそんなことを言ってる場合じゃない。東京スカイツリーにはアメリカ人観光使節団も来ている。我々と志しは同じはず。」「わかった。チームを二分する。俺の班はスカイツリーへ。残りはこいつらの後始末だ。行くぞファイター。」「了解。」今田達は早速パトカーの先導で現場に急行した。その頃スカイツリーの展望台では手錠でバッグと繋がった女性が展望台にやってきた。顔は冷や汗ダラダラで異様な雰囲気。イヤホンからキムの声が聞こえる。「そうだ。そのままエレベーター近くに立ちたまえ。彼氏とこのまま逃避行したかったらな。松嶋未知君。安心したまえ、黒沢アルト君に現金と鍵を持たせている。バッグを置いたらそのままさようならだ。二人で新たな生活を始めればいい。」柱の影でパクと共に監視していた。「大佐、本当ですか。」「何を今更。あの世で結ばれてもらうさ。爆破すれば約束もへったくれも吹っ飛ぶからな。」リモコンを手にしたキムは不適な笑みを浮かべる。とそこへエレベーターから待ち合わせしていた黒沢アルトが現れた。彼とすれ違うキム達。入れ違いで下へ降りていった。「やっぱり待っててくれたんだ。俺、未知のためなら全て捨てられる。一緒に…何それ。」言いかけて黒沢は違和感に気づいた。バッグに手錠。そして様子のおかしい松嶋。「鍵と現金を渡されてないのアルト…」「一体、何のことだよ。何があったんだ。」肩を持つ彼が問い詰めた時、エレベーターから出たキムはリモコンのスイッチを押そうとした。「動くな。」「フリーズッ、ドンムーヴッ。」桜や今田、ミラー達が一斉に拳銃を向けた。「ふふ、これはミラーさん。間抜けな公安と何の真似ですかな。」「えっ…」桜はキムがミラーの事を知っていたことに違和感を感じた。「黙れキム大佐。爆弾のスイッチをこちらに渡してもらおう。そうすれば我々が身柄を保証して北に送り返す。」キムはあっさりリモコンを床に置こうとした。チョン・ウンジョンに何もするなと合図しながら。しかし。「パン、パン、」いきなりキムを撃ち殺すミラー。「ちょっと、どういう…」「今スイッチを押そうとした。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.61 )
- 日時: 2018/11/17 21:05
- 名前: 梶原明生 (ID: Q97r4MCO)
・・・ミラーは疑問を吹き消すように叫んだ。「リモコン確保。」今田が叫ぶとまわりの緊張感が一気に緩和した。「後は爆弾だ。パク・ジョンホ、どこにある、言え。」今田が彼の胸倉を掴む。「ムサシ、そんなことしなくてもわかります。展望台のカップルですよ。」「そうか。今すぐ向かおう。」そこへ田川班も情報を嗅ぎ付けて到着していた。「ファイター、これはどういうことだ。」「そうよ。わけを言いなさい。」宇佐美も詰め寄る。今田が立ちふさがった。「残念ですが、私もファイターも今は特戦群傘下の人員になりました。詳しくは森川群長に問い合わせてください。」「そんなバカな。彼女は警視庁公安部の・・・」「と同時に予備自衛官でもある。非常招集の法はご存知ですね。」「そ、それは知ってるが無茶な。」「無茶を承知で通してます。これが特戦群の流儀ですよ。とにかく、爆弾処理に向かいます。」「爆弾なら僕が・・・問題ないですよね協力なら。」桂が願い出る。「いいだろう、来い。」早速ミラー達とエレベーターに乗る。着いた矢先、異様に手を握り合い、座り込むカップルの姿が。「あいつらかファイター。」「間違いありません。ただ。」 心を読んだ桜が止まる。「あのカップル、23歳の女性と男子高校生ですよ。女性は霞が関事務所の事務員。厳格な家庭で育ったらしく、未成年との交際を反対されるのを苦にして今日駆け落ちする予定だったそうです。そこを奴らに目をつけられたらしく。」「そこから先は言わなくてもわかる。爆弾を回収しよう。桂、頼んだ。」「了解。」彼らは事情を説明して早速爆弾の解除を行った。「もう安心ですよ。思ったほどトラップもなく、単純な無線爆弾でした。これは我々が・・・」「ご苦労ミスター桂。あとは我々が処理する。君たちは帰りたまえ。追って外務省を通じて事後報告はする。」ミラーが割って入ってきた。「そんな、これは日本国内で起こったテロ事件です。我々警視庁関係者が処理する案件です。」「日本とアメリカはトモダチだろ、ミスター桂。」食ってかかろうとする桂を田川主任が抑える。「まあ待て。ミラーさん、一連の概要は把握しました。あなた方が北朝鮮とどんなやりとりがあったか知りません。が、それなりの見返りはいただけるんでしょうね。」「勿論だとも。ミスター田川。ミスター猪狩プレジデントの関係者、見逃すよう、北に圧力をかけてみるさ。それでオアイコだろ。」歯ぎしりしながら条件を呑む田川主任。やがて特戦群側と田川班とに別れて車に分乗する桜。「どうした、行くぞ。」「え、はい。」桂と目が合うものの、かつての仲間とは違う境遇に、しばしものさみしさを感じていた。・・・しばらくして猪狩夫妻達への危険度がないと判断され、警護班も解除された。・・・続く。
- Re: ルージュファイター ( No.62 )
- 日時: 2018/11/22 00:29
- 名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)
…その頃ロシア諜報局FSBのとあるデスクに一本の電話がかかっていた。「これはこれは我が良き友、ミラーさん。何のご用件ですかな。」「イワン・ブラメンコフ…久しぶりだ。Kクラブのことだが、奴ら少々せっかちでね。計画そのものを見直さざるおえなくなった。君からも是非圧力をかけてもらいたいと思ってね。」「ああ、その件ならご心配なく。朝鮮の委員長にKクラブの存在を教えましたよ。火炎放射器で粛正されたそうだ。相変わらず野蛮な国だな。ハハハ。が、しかしだ。…二人ほど行方不明との情報がある。ガセか知らんが。」「早いな。そんなことが。さすがはブラメンコフさん。仕事が早いな。ではまた追って計画の報告を。」「ああ、そうしてくれ同志。」「同志よ。」互いに電話を切った。桜の方では最後の1日をせめて共に過ごそうと今田と共に夕方別荘に訪れていた。猪狩夫妻と娘と由衣と、梅乃に紅葉、楓も含めてバーベキューを始める。挨拶もそこそこに梅乃達は色めき立った。「ちょっと、桜、あの背の高いイケメン、彼氏なんでしょう。このこの。」「違うって、同じ部署の同僚で…」「あん、もう、母親である私を誤魔化せないわよ。顔に書いてる、好きなんでしょ今田さんのこと。 」言われてしばし今田の方を見る桜。「ほら、やっぱり。で、付き合ってんの。」「いや、まだそこまでは…」「何よあなたらしくない。あんないい男、ぼさっとしてたら取られちゃうよ。アタックしなきゃ。」「もう、お母さん酔いすぎ。」ごまかしてはみたものの、揺れる気持ちは変わりなかった。こうして夜は更けていき、束の間の安らぎを満喫する桜だった。…次回「思惑」に続く。
- Re: ルージュファイター ( No.63 )
- 日時: 2018/12/07 13:48
- 名前: 梶原明生 (ID: Xc48IOdp)
「思惑」
…「松嶋さんて、あなたの親友よね。」「え…」桜はバーベキュー後の小休止に丸太の長椅子に座って酎ハイを飲んでいた由衣に声をかけた。「松嶋未知のことですか。」「ええ、そう。偶然かはわからないけど松嶋さん、Kクラブの事件に巻き込まれてね。あ、大丈夫。無事保護されたけど、あなた松嶋さんが駆け落ちするの知ってたでしょ。」「何故わかるんですか。」「ん、公安のその筋で調べたから…この後どうする気。猪狩さん夫妻は残りの資産持ってハワイに移住することになったけど、あなたは…」「何もないですよ。実家に帰って暮らすだけです。ただその前に…」「何となくその先わかる。松嶋さんをサポートしに行くんでしょ。」「不思議、桃瀬さんといると何もかもお見通しみたいで。…出来れば友達として会いたかったな。」「私も。」二人はその後他愛もない話で盛り上がっていた。その脇で何やらスマホ片手にほくそ笑んでいる楓に紅葉。「小山先輩ってやっぱり格好いいよね。」「あー、紅葉ズルい、私が先に目をつけたんだからね。」「いいじゃんいいじゃん、…ん、サアヤからメールだ。何々、あんたのお姉ちゃん本当に広告代理店勤務か、聞いたらそんな社員いないっていわれた…なにそれ。」不吉な予兆は双子の妹から始まろうとはまだこの時桜には知るよしもなかった。…続く。
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