複雑・ファジー小説
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- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.14 )
- 日時: 2017/07/07 01:43
- 名前: 梶原明生 (ID: UvBorD81)
…応えたものの、視線は父親の背中に向いていた。それから時間はすぎ、夜7時を回った。慌ただしく電光を出ていく真由美に桜は近づく。「大変そうね春日さん。クライアントに会いに行くんでしょ。」「あ、桃瀬さん。でもどうしてそれを。」「あ、いや、その、さっき課長さんに聞いたから…」両手の人差し指を揃えて右に向ける桜。「そうでしたか。あ、タクシー拾うんで私はこれで…」「あ、待って。私も行く。助けは必要でしょ。」「桃瀬さん…ありがとうございます。」「いいのいいの。タクシー来たよ。」二人は同じタクシーに乗り込み、クライアントが立ち寄る高級クラブへと急いだ。「どうか、シャンプーのCMを電光でやらせてください。お願いします。」ホステスを侍らせてるクライアントの男。またもや頭を下げる真由美。「君もくどいね。もう決まったものは覆せないんだよ。それにここをどこだと思ってるんだね。恥をかかせにワザワザ来たのかね。」憮然とした態度で接するクライアント。「お願いします。でないと私、社に戻れないんです。お願いします、どうか…」土下座したところで桜は真由美を抱えあげた。「ちょっと、なにもそこまで…」「でも私、私…」「ここは私に任せて。社に戻って。」覚束ない足取りの彼女の肩を持ち、タクシーに乗せた。「よし、ここから私の交渉といきますか。」指をパキパキと鳴らしながら再びクライアントに向かう。「電光の桃瀬と申します。」「何だねまたか。」「いいえ、お願いに来たんじゃないんです。取引に来たんです。」「な、何を不躾な。」「不躾はそちらでしょ。クラブ シャンパーニュでの件、お忘れじゃないですよね。」「な、何故それを…」桜は田川主任の物まねよろしく、向かいの席に座る。「こっちはあんたを潰すネタ色々持ってんだよ。」先ほどの憮然としたクライアントが急にしおらしくなると、桜の悪い癖。微笑んで舌をちょろっと出す表情が現れる。「さてやっと交渉ができますね。」その頃、肩を落として社に戻る真由美。課長が剣幕振りかざし歩いてくる気がしたのだが…「春日やるじゃないか。クライアントがOKの電話くれたぞ。奇跡だよ」「へっ…」何を言われているのかわからなかったが安堵したのか、ついその場にへたり込んだ。「何してる、最終チェックがまだだ。油断するなよ、すぐ取りかかれ。」「は、はい。」何がどうなっているのか考えると急に桜の顔が浮かぶ。「桃瀬さん…」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.15 )
- 日時: 2017/07/13 00:48
- 名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)
…急に元気が湧いた真由美は早速仕事の仕上げに取りかかった。それからというもの翌日は順風満帆に仕事が運び、しばし久々の長い休憩に思いっきり羽を伸ばした。「どう、春日さん。良かったら昼食にイタリアン奢るけど、行かない。」桜が真由美を誘った。「そんな、桃瀬さんには昨日もお世話になったのに悪いわ。」「ううん、いいのいいの。おかげでうちの部署も活気づいたし。そのかわり今度は奢りで。どう。」片目瞑る仕草を見せながら彼女に迫る。「桃瀬さんがいいなら…」「なら決まり。行こ行こっ。」彼女の手を引っ張り出して桜はレストランに向かった。「へー、大学時代はミスキャンパス準優勝。すごーい。春日さん美人だもんね。」「そんな。桃瀬さんだってスタイルいいじゃないですか。…あ、あれ。」食事しながら話していたら真由美のスマホがマナーモードの振動を告げた。無論、桜の目つきが変わる。「ごめんなさい。クライアントからみたい。失礼します。…もしもし。」言いながらも真由美は席を立ってレストルームに歩きだした。桜は時間差で真由美の後をつける。「今夜。駄目よ、早く終わるかわからないもの。え、夜10時にいつものところで。わかった行けたら行く。…勿論私もアリに会いたいわよ。それから。話しておきたいことがあるの。その時にね。じゃ、切るね。」そう言ってスマホをポケットに入れて振り返った途端、真由美は驚いた。桜がいたからだ。「は…ああもう、桃瀬さん、脅かさないでくださいよ。どうしたんですか。」いつもと様子の違う桜に真由美は不思議な面持ちになった。「春日真由美さん。あなたに重大なことを話しておかなければならないの。いいかしら。」「え、…」終始理解できない言動に混乱する真由美。この後彼女は予想だにしなかった事実を告げられる。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.16 )
- 日時: 2017/07/14 17:47
- 名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)
…「え、そんな…じゃあアリに近付く協力者を得るためにワザと私を助けたんですか。酷い、酷すぎる。」席を立とうとした真由美の腕を掴む。「離してっ、あなたを恩人と信じた私がバカだった。」「待って、春日さん。話を聞いて。いい、本当はあの時私はあなたを助けてはいけなかったの。」「え…」神妙な面もちの桜を見て、一瞬絆される。「協力者との接触は用意周到でなければならないのが外事課の仕事。だからあの時点で助けてたら本当は規則違反なのよ。でも、あなたを助けたかった。同じ女としてあなたを救いたかった。それだけはわかってほしい。」一時は感情的になった彼女だが、桜の真摯な真心に、遂に理解した。「わかった。でも、アリを逮捕するんでしょ。」「それはわからない。5年前、彼は外事課のミスでイスラム教徒ってだけで拘束され、テロ予備罪に問われた過去がある。勿論対象者から外されたけど、弟の存在から最近日本でイスラム過激派によるテロ計画に関わっているのではないかと容疑がかかってるの。もし東京でテロが起これば死者数は数百以上に登るかもしれない。だから…」桜の口を止める真由美。「わかった。要は探って疑いが晴れればいいのね。協力する。」目をパチクリする桜。「え、ええ。ありがとう。なら話は早い。説明するね。」一方その頃、アリ・ムシャヒリは自動車販売店の事務所で弟のハッサンから怒り狂う事実を告げられる。「ハッサン、本当か。真由美がレイプされたって。」「ああ。兄貴残念だ。相手は日本の官僚の息子達だ。見たんだがまさか兄貴の彼女と知らず。…」怒りの拳を握るアリの後ろでニヤリと笑う弟ハッサン。「兄貴、これが日本人だ。俺達の計画に手を貸してくれ。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.17 )
- 日時: 2017/07/31 23:50
- 名前: 梶原明生 (ID: 99wOCoyc)
…「いや、それは…」「兄貴、何を迷う必要がある。奴らはやっぱりアメリカ帝国の犬だ。忘れたか、俺達の兄弟やいとこを殺された過去を。しかも五年前イスラム教徒ってだけで無実のまま投獄された。差別されたんだぞ、そんな国に情けはいらない。今こそ復讐する時だ。」「ハッサン…」アリは迷いある眼差しを弟に向けた。一方その頃桜はR・D・A本部のオフィスで田川達とブリーフィングしていた。「つまり間違いなくアリ・ムシャヒリはハッサンと繋がっていたんだな。」田川主任に答える桂。「間違いないです。この時期に二人が合流するなんて、どう考えても関与してるとしか。この1ヶ月ハッサンからの宅配便も多いですし。」「なるほどな。」桜は疑問を投げかける。「ちょっと待ってください。アリは日本女性と付き合って帰化までしようとするほど春日真由美を愛していました。なのに日本攻撃に加担しますか。」万屋が呆れ顔になる。「おやおや、まただよ。桃瀬、あんたね愛だの恋だのテロリストが考えると思う。カモフラージュだよ疑われないための。」「いや違う。」「何が、根拠は、あるの。」「それは…」行き詰まる桜。しかし今田が腕組みしながら助け船を出す。「確かに桃瀬の言うことにも一理あるな。もし関わってなければまた5年前の苦汁を飲まされることになる。」宇佐美が決断する。「とにかく折角協力者を得たんだから、もう少し探りをいれましょ。」「副主任っ、こんな意見真に受けるんですか。」万屋が宇佐美に食ってかかる。「いいから、指示にしたがって。…それじゃ各自配置に着いて。22:00はもうすぐよ。」「了解。」全員がオフィスから一斉に動き出す。「さっきはありがとうございます。」今田に対し歩きながら礼を言う桜。「別に気にするな。ただそう思えただけの意見だよ。頑張れよ新人。」「はい。」桜は黒の日産Xトレイルで走り去る今田を見送った。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.18 )
- 日時: 2017/08/10 01:43
- 名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)
…そして22:00。予定通り真由美はアリの待つレストランに現れた。「対象者春日真由美現れました。これより監視します。」「了解。」田川は駐車場でトヨタクラウンから無線で連絡を受けた。助手席には宇佐美も乗ってる。「ところで宇佐美。何故桃瀬の申し出を受けた。後は特戦群に引き継いでも良かったのに。」「女の勘…ですかね。」「以前ならそういうのが危険だとぬかしてなかったか。」「確かに。でも今回は桃瀬のせいで信じたくなった。…不思議な子です。」「かつての妹似か…」キッと睨む宇佐美。その頃アリは話の核心に入っていた。「ここは珍しくパキスタンと日本料理を混ぜた創作料理の店として最初にデートに選んだ場所だったね。…こんな所で君にこんな話をしなきゃいけないなんて…」「アリ、どうしたの。」眉間にしわ寄せ、額に手を当てる彼の姿に真由美は不審な面持ちになった。「あの夜やっぱりマンションまで送れば良かった。ゴメン真由美。話は聞いたよ。男達に…乱暴されたんだよな。悔しいよ俺は。」テーブルを思わず叩くアリ。「どうしてそれを…」「そんなのどうだっていい。やはり本当なんだな。よし、復讐してやるよ。思い知らせてやる。」「アリやめて。何をする気。」「任せろ真由美。官僚の馬鹿息子達に制裁するんだ。弟のハッサンは知ってるな。ハッサンが復讐に手を貸してくれる。爆弾を仕掛けるのさ。」「やめてそんなの。…」そこへ噂のハッサンが二人の前に仁王立ちで現れる。「そうだ間違いない。二人共一緒に来てくれないか。どうやら鼠が張り込んでるようだから裏口へ。」「そんな、あ…」真由美が抗議しようにも、更に二人の部下が現れて隠しながらコルト拳銃を二人に向ける。やむなく真由美とアリは裏口へハッサンと共に向かった。「ハッサンが現れました。気づかれたようです。」「わかってる私も聞いた。桃瀬、万屋、今田、桂はすぐに追って。」「了解。」四人して真由美を追う。だが途中、路地裏に入った所で金属バットに鉄パイプを持った愚連隊らしき男達に挟み撃ちに合う。「何だこいつらチーマーか。」「今田さん、もうその名前死語っすよ。」今田に桂が応えるものの、腰の特殊警棒に手をかける。「ハッサンが金で雇った愚連隊ですね。」「恐らくな。ルームサービス大歓迎だ。桃瀬、やれるか。」「誰に言ってます。」「だな。」四人は特殊警棒で身構えて愚連隊に立ち向かった。「ざけんなっー。」金属バット男が振りかぶってきた。…続く。
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