複雑・ファジー小説
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- ルージュファイター
- 日時: 2017/04/19 14:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
あらすじ
髪型はミディアムひし形カールボブ、時計はカルティエ、服はソア・リーク、コスメ口紅はシャネルを好み、バッグ小物はクロエにプラダ、靴はジミーチュウ。出没スポットは銀座、表参道、代官山、恵比寿。…そんな今時キレイめ女子な彼女の趣味は何と陸上自衛隊。中学時代にマニアとなり、高校時代におしゃれに目覚めても変わらなかった。そして大学時代には予備自衛官補となる。そんな彼女が卒業してスカウトされた職場は…警視庁公安部外事課新設班「R・D・A」だったのだ。「え、何で彼女が。」と思うのも無理はない。実は彼女には人に言えない秘密があり、また防衛省職員だった父の失踪の真実を聞かされた事も原因だった。若きやり手イケメン捜査員と老練な主任と共に外国人テロ事件などに立ち向かう。一方プライベートでは母と双子の妹には、大手広告代理店入社と偽る。恋に仕事に国家テロにと慌ただしい毎日。コードネーム「ルージュファイター」桃瀬桜の活躍は始まった。
- Re: ルージュファイター ( No.24 )
- 日時: 2017/09/07 01:59
- 名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)
…あっけらかんとした梅乃は話す。「ついさっき来られてね。あなたを待ってたのよ。なかなか気さくな方でいいじゃない。」「じゃあ何で白のガウン姿なのよ。」「ガウンって、私服らしいわよ。」「はぁ…」呆れ顔になる桜。向き直って言い出した。「正木さん、大事なお話なら外で聞きましょう。」「それもいいね。」正木はようやく腰を上げた。「あ、正木さん、もう帰っちゃうの。」「もう少し昨日の続き聞きたいな。」楓に紅葉が起きてきた。「はぁ、あんたたち昨日から知ってんの。」桜は驚愕する。「うん、だってお姉ちゃん訪ねて昨日も来てたから、ねぇ正木さん。」「うん、楓ちゃん紅葉ちゃん。相変わらず可愛い。」青ざめた桜は正木の腕を取り上げ、慌てて外に出る。「ちょっと正木さん。何してくれてるんですか。人の家に勝手に上がり込んで妹まで手懐けて…」「あ、メンゴメンゴ。ついホスト時代の癖がさ。」「何言ってんすか。家の妹に手出してみなさいよ。淫行罪ばかりじゃすみませんよ。」桜は睨みつけて拳を鳴らした。「ま、待てよ、まさかそんなことするはずが」「いや、噂じゃ処女の女子高生狙って公安の輩が捜査能力を悪用して家族を眠らした後に淫行に及ぶらしいじゃないですか。まさかあなたもそれなら容赦なく殺しますよ。」「おいおいおっかないなもう。そんな悪趣味ないって。それより俺がここに来たのは新たな指令があったからだ。」「指令…」キョトンと驚いた桜。「また新たなテロの脅威だ。明日動いてもらう。田川主任の伝言だ。」「でも何故わざわざあなたに…」「それは他のメンバーに言えないからだろ。俺と田川主任とあんたでやる仕事だ。しっかり頼むよ。じゃあ明日14:00に本部へ。いいな。」「りょ、了解しました。」意外な展開に不可解な気持ちになりながら、正木の立ち去る後ろ姿を見つめた。…次回「浮気」に続く。
- Re: ルージュファイター ( No.25 )
- 日時: 2017/10/09 00:59
- 名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)
「浮気」
…国習院大学の自由なキャンバスが懐かしい。解放感あふれる学問の砦と言うべきか。桜はバインダー片手に母校の空気を思いっきり吸った。「うーん、まるで10年ぶりに帰った気分。」お昼休みのせいか、せわしく歩く大学生にまみれても違和感ない桜。そこへ一人の青年が声をかける。「あ、あれ。桃瀬先輩…じゃないですか。お久しぶりです。相変わらずキレイですね。」「あら、真北じゃない。相変わらずお世辞はうまいのね。卒業以来だからそうね、5ヵ月ぶり。」「お世辞は余計でしょ。でも5ヵ月…そうなりますね。去年は我が日本拳法部の助っ人入部してもらったおかげで地区優勝果たせました。本当にありがとうございます。」「ああ、その話。いいのいいの。最後に思いっきり暴れたかったから。」「ところで…先輩は何故大学に。電光に就職したって。」「ああ、実はね。うちの広告代理店でね。ここの大学のテレビCM撮ることになったのよ。それで交渉とアイデア作りのため、しばらく通うことになってね。」「うわっ凄い。あの電光でテレビCM…あの是非俺も出させてくれませんか。」「う、うん。考えとくね。」「やった。」桜と会話していたのは偶然彼女の一年後輩の日本拳法部副将、真北裕也。しかしあまり偶然でもなかった。「あ、裕也さん。」真北に声をかけたのは今年新入生として入った菅谷琴美である。ポニーテールの似合う清純そうな女の子だ。「こ…ちらの方は…」「ああ、紹介するよ。こちら俺の一年先輩の桃瀬桜先輩。日本拳法部のエースだったんだぜ。」「嘘、そうなの。は、はじめまして。一年の菅谷琴美です。」「いえ、どういたしまして。」桜ははじめましてではなかったが。「先輩、それと…実は俺達付き合ってんすよ。彼女です。」「へーっ、あんたが…熱い熱い。」茶化そうとしたものの、ダンディーな紳士に止められた。「桃瀬。立ち話中すまんが私の部屋に来てくれんかね。」「丸山教授。お久しぶりです。」「挨拶はいいから早く。」桜は面食らいながらも二人に手を振りながら、かつての恩師にして国習院大学教授の丸山常吉の執務室に入る。「座りたまえ。…桃瀬。単刀直入に言う。テレビCMは嘘だな。しかもお前は電光の閑職についているそうじゃないか。そんな人間がテレビCMを任されるはずはない。いや、お前は電光社員じゃないな。どうだ図星だろ。」開いた口が塞がらない桜。「あ、いやあのその…たまたま卒業生でしたからその…」「公安か。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.26 )
- 日時: 2017/10/12 00:38
- 名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)
…「こ、公安…なんですかそれ。」桜は思いっきり惚けた。「嘘をつくな桃瀬。公安は公安だろ。警視庁警備局警備課傘下の公安調査庁のことだ。そこの捜査員なんだろ。」「と、とんでもない。私の性格はご存知のはずじゃないですか教授。あっけらかんとしてて酒好きオシャレ好きイケメン好きのただの女子大生だったんですよ。そんな大それた所に行けるわけないじゃないですか。」遮るように教授は続けた。「いいか聞け桃瀬。何を言っても無駄だから話を進める。公安なんかやめとけ。あそこはろくでもないところだから関わらないほうがいい。でないとお前の将来の為にならん。悪いことは言わないから直ぐにここから出ていけ。」丸山教授が真剣に話していた矢先にドアが開け放たれた。「すみません、何かうちの社員が失礼な態度をとりましたか。…丸山、いい加減にしろ。何勝手なゴシップを吹き込んでるんだ。」田川主任だったのだ。「田川、お前だったのか。」桜は混乱する。「え、え、どういうこと。なんで田川主任を…」「知ってるはずさ。私も元公安だからな。」「はぁ、嘘でしょ。丸山教授が公安だったなんて。」「当たり前だ。だからお前がいくら一般社員を装っても公安捜査官の臭いを嗅ぎ分けられたんだ。」田川主任もソファーに座り込んだ。「しかもこいつは昔俺と共に外事課にいた同期だ。話せば長くなるが今は辞めて苦労の末に大学教授になった。以来交流は一切絶ってたが。…こちらも単刀直入に行こう。丸山、お前を今すぐ逮捕して尋問もできるんだぞ。同期のよしみだ、今ここで正直に言えば自首扱いにしてやるから質問に答えろ。昨年イスラム国へ向かおうとした三人の大学生が俺達の水際作戦で逮捕された事件あったよな。あれ、募集斡旋に洗脳教育をしたのはお前だろ。」丸山教授は突然立ち上がって背を向けた。「バカなっ、そんなわけなかろう。それはお前がよく知っているはずだ。」「どうかな。最近お前はコーランを持ち歩き、熱心に読みふけってるそうじゃないか。オマケに断食や礼拝までする始末。それでも関わりないと…」「なるほど、よく調べたな。さすが外事課だと言いたいが、残念ながら私は関係ない。確かに、ムスリムの教えに目覚めたのは確かだ。しかし、私はむしろテロや無慈悲な暴力を憎んでいる敬虔なる信者だ。何でも十把一絡げに考えるな。」言われて立ち上がった桜は思案に暮れた顔で田川に訴える。「主任。教授の話は本当だと思います。」「桃瀬お前まで何だ。」…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.27 )
- 日時: 2017/10/20 16:46
- 名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)
…「丸山教授だからという訳ではありませんが、なんとなく。」「そうか。忘れてたよおまえのこと。確かにふにおちない点がなかったわけでもないが。…丸山。おまえの潔白が事実だとしても、まだこの大学の疑いが晴れたわけではないからな。もし捜査を妨害してみろ。おまえもただでは済まんぞ。」 「ああ、わかってる。だったら気の済むまで探ればいいさ。何も出てこんぞ。」「桃瀬、帰るぞ。」田川は桜を伴って出ようとしたが、最後に丸山教授が声をかけた。「おまえのこととは何だ田川。」「ん、何のことだ。」「桃瀬のことだ。さっきあれだけ私を疑ったのに、何故潔白とわかったんだ。」「答える義務はない。」「ならやはり…あのことか。」田川は無言のまま部屋を後にした。夕方、蒸し暑い部室で日本拳法着に着替えて防具も付けた真北が、スマホ片手に何やらにやついている。そこへ琴美が洗濯物を取り込んだカゴを持ってジャージ姿で現れた。「どうしたの。誰かからメールでも来たの。」「ああ、何だ琴美か。脅かすなよ。」「脅かすなんて。」「何でもないさ。それより他の部員ももうすぐ来るから準備急いで。」「うん、わかった。」何か疑わしい気持ちを残しながら準備にとりかかる琴美。「大丈夫だよ。今週末またおまえの部屋でラブラブしようぜ。」「裕也ったらもう。」琴美の背中からいきなり抱きつく真北。しかし彼のメールの相手は大学職員の杉山愛美からだった。25歳の妖艶な女性で、メガネ以外はグラビアアイドルですと言っても差し支えないほどスタイルのいい職員。大学生からも話題に挙がるほどだった。そんな彼女から何故メールが来たのか。琴美はまだ知るよしもなかった。そして週末。桜の張り込みで丸山教授がある女性と親密な関係にあることを突き止めた。日産マーチで尾行すると、丸山教授は途中その女性を乗せて走りだした。「杉山愛美。国習院大学事務職員が何故教授と。…」一人つぶやきながら車を走らせる桜。しかし途中で教授の車を見失う。「え、どこ、どこよ。もしかして感づかれた。」さすがは元公安。桜の尾行にいち早く気づいて巻いたのだった。「はーっ、仕方ない。真北の動向を探るか。」彼女はサービスエリア内に入ってUターンせざるおえなかった。…続く。
- Re: ルージュファイター ( No.28 )
- 日時: 2017/10/25 16:22
- 名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)
…一方真北はと言えば、菅谷とベッドでいちゃついていた。そこへ彼のスマホに電話が入る。「あ、いや、やめないで。出なくてもいいじゃん。」「バカ、これは出ないわけにはいかないんだよ。後で濡れさせてやるから待ってろ。」「んんっ、もう。」裸で仁王立ちになる真北にふてくされて枕に顔を埋める菅谷。「ああ、わかってる。後1時間かと思ってたらもう来たのか。普通メールだろ。…うん、うん、わかった直ぐに行く。」会話の内容から出掛ける雰囲気を感じた菅谷は乱れた髪を暖簾のようにして枕からそのまま振り向いた。「何よ、出掛ける気。ねぇちょっと。…」「ほんの2、30分だ。高校時代の後輩が上京してきたんだ。行かないわけにはいかないだろ。」「はぁ、こんな時間に…まさか女っ」「なわけないだろ。二人の野郎だよ。」言い訳しながら早々と服を着る真北。菅谷のマンションを出て来たところにタイミング良く桜の日産マーチが到着する。「どこ行くかお手並み拝見。」死角となる来客用スペースに車を止めて、彼女は急いで真北を尾行した。近くのコンビニ前に大学生くらいの青年二人が彼と合流する。「すみません真北さん、早めに来たくて。この日本を根底から変える仕事につけるんですよね。」「ああ。そのために活動してるんだ。お前達疲れたろ。ほら、ホテルのチケットだ。ゆっくり休め。明日9時に若い女性が迎えにくる。手付け金はその時支払われるから楽しみにしてろ。」「ありがとうございます。」桜は物陰から三人のやりとりを小型のビデオカメラと特殊集音機を使い、撮影していた。イヤホンを外しながら呟く。「ははんっ、そういうこと。てことは杉山ね。」言いつつもこちらに戻ってくる真北に慌ててビデオをしまい込む。素知らぬ顔で元来た道を歩き出すのだが。「あれ、先輩、桜先輩っすよね。こんな所一人歩きしてどうしたんです。」ギクッとなったが仕方ない。「アハハッ、あら、真北じゃない奇遇ね。でも何で私ってわかったの。」 「先輩の背中の特徴はすぐわかりますよ。毎日見てたから…あっ。」「こら、このストーカー。」「誤解しないでくださいよ。あくまで一先輩として見てただけですから。」桜は誤魔化すように、あくまで偶然を装って話しながら歩いた。すると。「祐也、これどういうこと。」軽装でマンションを出てた菅谷と鉢合わせになった。「え、どうって何。」「やっぱり二人、できてたんだ。どうりで最近の祐也おかしいと思ってた。」桜は慌て始める。…続く。
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