複雑・ファジー小説

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逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】
日時: 2019/04/03 16:38
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

どうも、いつもお世話になっております。マルキ・ド・サドです。
前々から創作を練っていたどうしても書きたかった新たな小説を書こうと思っています。
ローファンタジー小説『ジャンヌ・ダルクの晩餐』をご覧になって下さりありがとうございます!
皆様のご愛読により私の小説はとても大きな作品となりました。
この感謝を忘れずこれからも努力に励もうと思います(*^_^*)

コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、誹謗中傷、不正な工作などは絶対にやめて下さい。

今回のテーマは妖怪が蔓延る暗黒時代を舞台として描かれる戦国ダークファンタジーであり残酷でグロテスクな表現が含まれています。この小説を読んで気分を害した場合はすぐにページを閉じる事をお勧めします。



【ストーリー】

 天正10年(1582年)。謀反を起こした明智光秀の軍が織田信長を襲撃、3万の兵が本能寺に攻めかかる。しかし、突如現れた妖怪の群れが明智軍に襲い掛かり兵達を惨殺、優勢だった軍勢は瞬く間に総崩れとなる。決死の抵抗も虚しく光秀は戦死、本能寺の変は失敗に終わるのだった・・・・・・

 その後、信長は妖怪を操り数々の戦を勝利を収めついに天下を統一、戦乱の世に終止符が打たれ人々は太平の訪れを期待する。しかし、冷酷な魔王の手により治められた大和ノ国は第二の暗黒時代が幕を開ける。そして、とある日の逢魔時の空に響き始めた謎の聲、人々はこの異変を妖怪の巣の叫び、地獄の唸り、神々の呪いであるという噂が流布されるのであった・・・・・・

 天正12年(1584年)。徳川家康の家臣にして『不知火』の一員である若武者『本多忠勝』は奈良の支部にて『柳生石舟斎』と共に武術の修行に明け暮れていた。ある日、そんな彼らの元に真田氏の武将『真田昌幸』が訪れる。妖怪が溢れた天下の事態を重く見た昌幸は不知火の復旧を訴え信長打倒を依頼する。要望を聞き入れ忠勝は日本各地へ出向き織田政権を陰から崩そうとするがその時は誰も知る由もなかった。妖怪に溢れた天下の闇の奥に更なる魔の手が潜んでいる事を・・・・・・


【主な登場人物】

 本多忠勝

 物語の主人公である若き武将。猛将に似合わず白い長髪でおっとりとした面持ちのため一見すると少女にも見えなくない。不知火の復旧、そして太平の世を取り戻すため妖怪を操る信長や七天狗を倒す旅に出る。桶狭間の合戦を戦い抜いた若き日に闇鵺の宝刀である『殉聖の太刀』に触れ呪縛の呪いにかかり手にした時点で当時の年齢が固定され成長が止まっている。髪が白く容姿が幼いのはそのため。


 柳生宗厳(石舟斎)

 柳生一族の長にして剣術『新陰流』の継承者。号は石舟斎。柳生家厳の子。新陰流第2世。妖の討伐の際に踏み入った妖魔の森で忠勝と出会い以後、弟子として彼を育て上げた。彼も不知火に所属する精鋭であり、真田昌幸の訴えにより勢力の復旧を決意、忠勝を日本各地に派遣する。


 織田信長

 第六天魔王と恐れられる尾張国の戦国大名。本能寺の包囲網を際には妖怪を使い明智光秀の軍勢を返り討ちにし、その後も幾度もの戦に勝利を収めついには天下人となる。妖怪による統治を始め人々を恐怖で支配、高等な妖の一族である七天狗を従え多くの配下を大和ノ国各地に配置させている。人ならざる者の力に魅了された彼は自身も魔の血を取り込み半人半魔と化した。


紅葉

信長の側近である妖。武器は妖刀。
両親が第六天魔王に祈った結果で生まれた絶世の美女の鬼女。
源経基に寵愛され一子を宿していたが戸隠山に流された挙句、最後に降魔の剣を手にした平維茂に首を斬られ掛けるなどと痛い仕打ちを受けた為に人間が苦手になった。
信長が第六天魔王と名乗った事で信長の行く末を見届けようと信長の側にいる。息子の経若丸には結構甘いところがある。


 七天狗

 信長に忠を尽くす高等な妖の一族。妖怪である自分達を迫害した人間達を憎悪している。日本各地で暗躍しているがその存在を知る者はなく目的すらも不明。全員が天狗の仮面を身に着けており烏、狼、山猫、猿、狐、狸、熊の計7人で構成されいる。


【不知火の一員】

鈴音

不知火の一員である楽器の付喪神。武器は笛。
300年以上も大切に扱われた笛が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
人当たりの良い性格から小さい子供達からは慕われている。
争い事を激しく嫌悪するため自ら前線に赴くよりどちらかと言うとサポートに徹する為、戦闘能力はあまり高くない。


海李

不知火の一員である楽器の付喪神。武器は太鼓。
300歳以上も大切に扱われた太鼓が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
面倒見の良い性格から子供達からは慕われている。
また、鈴音とは元の持ち主が同じで同時期に実体化した為、鈴音とは幼馴染でお互いに好意を寄せている


杉谷 千夜

不知火の一員である人間の忍び。武器は銃器、短刀、焙烙玉。
甲賀で織田信長の支配に異を唱える勢力の所属であり魔王信長を討ち取るべく日々、命懸けの戦いを繰り広げている。
実は甲賀出身ではなく戦で村を追われ生き倒れていた所を甲賀の忍者に保護され杉谷家に養子になる形でくノ一になった。
杉谷善住坊とは兄の様に慕っていたが信長の暗殺未遂で酷い方法で処刑された事により信長に対して恨みを持っている。


滓雅 美智子(おりが みちこ)

不知火の一員である人間の忍び。武器は妖刀。
信長に反旗を翻す反乱軍の一員で甲賀の勢力と同盟を結んでいる。
その為、千夜とは面識があり彼女の事を『千夜ちゃん』と呼んでいるが本人からはあまり受け入れられていない。
忍者ではあるが無用な争いは好まない平和主義者であらゆる物事をスマートに済ませたがる。


ファゼラル・マーシャ

不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の青年で、常に敬語で話す。敬語を使わないのはカード達くらい。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を非常に大切にしている。
鈴音達と仲が良くメロディのカードで伴奏を流して上げる事も。


ライゼル・マーシャ

不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の少女でファゼラルの双子の妹。常に敬語で話すファゼラルに対しライゼルはタメ口で話す。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を大切に思っている。兄ぐるみで鈴音達とも仲が良い。


ゼイル・フリード

不知火の一員である人間の騎士。武器は剣と斧。
よく女の子と間違われやすく女と間違われたり子供だと馬鹿にされるのが極度に嫌う。
英雄のジーク・フリードの子孫にあたり体格に合わずかなりの食欲の持ち主。


蒼月 蒼真(そうつき そうま)

不知火の一員である半人半獣。武器は刀。
父親は人間、母親は妖狐の間に生まれた青年。
不正や悪を嫌う為、信長の政権に嫌悪感を抱いている。
人間妖怪関係なく平等に接しているため子供達からも慕われている。


箕六 夕日(みろく ゆうひ)

不知火の一員である人間。武器は大鎌。
物語を書く事が大好きな文系の青年。端麗な容姿から女性に間違えられる事が悩み。
幼い頃に霧隠の山奥に迷い込み狼の守護霊を拾い家族のように親しくなった。
以後、頼れるパートナーとして常に行動を共にしている。


【用語】

 殉聖の太刀

 忠勝が使用する聖の力が秘められた太刀。かつて室町時代の大和ノ国に訪れた異国の聖女の剣を刀へと打ち直した物。斬った人間や妖怪の霊気を吸収する事で刃の強化、『神力覚醒』が可能。異国の聖女だけが完璧に扱うことができそれ以外の者が触れると呪縛の呪いを受ける。不知火の秘宝でもあり神器の1つとして崇められている。


 不知火

 忠勝が所属している義の名のもとに戦う兵団。日本各地に支部を持ち人々の太平を尊重し民の平穏、調和の安定を目的とする。室町時代に『異国の聖女』、『陸奥重盛(むつ しげもり)』により結成され足利将軍家の影の軍隊として活躍していた。主に妖怪討伐や国の平穏と調和の安定を保たせる事を生業としており1世紀以上も前から大和ノ国の民を守ってきた。室町幕府が滅んだ本作では主君を失い衰退の一途を辿っている。


 夜鴉

 不知火同様、表では知られない秘密の組織。太古から存在しており人と妖怪の調和を目的とする。人が立ち入らない群馬の山奥に拠点を構え結界で身を固めている。戦いを好まず社交的な存在だが妖怪を不当に扱う不知火や織田政権の事はよく思っていない。


 妖怪

 日本の民を恐怖に陥れている人ならざぬ者。原住する者と魔瘴石で生まれた者の2つのタイプが存在する。また、下等、中等、高等の階級があり骸武者や鰐河童、妖蟷螂などの下等妖怪は知能が低く本能のまま人を襲う。鬼や大百足の中等妖怪は強力な力を持ち言葉を話す事も可能。高等妖怪は姿形は人間に酷似しており超人的な頭脳と戦闘能力を備えている。


 大和ノ国

 物語の舞台である妖怪に支配された列島大陸。日本、妖都島、ジパングとも呼ばれる。戦が絶えない戦国の世だったが信長の天下を手中に納めた事によりかつての面影を失い、政は一層に腐敗した。八百万の神々が住む神秘的な国でもあり、不思議な魔力を持つ霊石や宝玉が大量に眠っている。


・・・・・・オリキャラの提供者・・・・・・

桜木 霊歌様
妖様
siyaruden様
シャドー様
挿し絵(少し修正しました)は道化ウサギ様からの提供です。皆様のご協力に心から感謝いたします。



以上です。それでは物語の幕を開けようと思います。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.61 )
日時: 2021/07/11 19:05
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

 月が闇夜を照らし、茂みで虫が鳴く夜。不知火の精鋭全員が道場へと集結した。彼らに悠々とした休息を与えれらる暇はない。ここにいるのも、不知火の復旧を目的とした次なる計画を練るためだ。

 廊下を渡り、石舟斎が姿を現した。剣聖の背中を追って、真田昌幸も集団の内に加わる。忠勝達は正座し、正面に座る師に深く頭を下げた。

「全員、揃っているな?九州での活躍は見事だった。お前らのお陰で不知火は多大な復旧を遂げた。日ノ本の民草を守るきっかけを作った功績は雲をも貫く山よりも高い」

 石舟斎は初めに、精鋭達の活躍を褒め称える。しかし、彼は決して慢心を許さず、厳しさを緩める事はなかった。

「しかし、多大な戦力を得たとはいえ、今の俺達の力は、一国とまともに争える程までの戦力はない。故にこれからも、お前らには組織復旧のための任に就いてもらいたい」

「はっ!泰平の世のためなら、骨身を惜しまぬ故。我々に何なりとお申し付け下さい」

 前列にいる蒼真は額を床につけたまま、組織への忠義を示す。次に石舟斎の隣にいた昌幸が、この場を仕切る役目に回った。

「堅苦しい振る舞いは、疲れるであろう。皆の衆、面を上げて楽にしても構わぬぞ。某からも、礼を言わせてくれ。誠に大義であった。お主らは、見事に泰平の礎を築いたな」

「勿体なきお言葉でございます。されど、大義を得るに値するお方は紛れもなく、昌幸様の方。昌幸様の義を重んじる願望こそが、理想を実現したのです。真田の揺るぎなき仁のお心・・・・・・我々にとって、良き手本となりました」

 忠勝は、歓喜を露にしたい衝動を抑え、逆に謝意を表した。 

「ふっ、無理に畏まりおって。だがまあ、この年になって褒められるのも、悪い気はせぬな・・・・・・して、次の計画についてなのだが・・・・・・」

 昌幸は改めて、次の任務の詳細を述べる。

「石舟斎が申したように、島津領から多くの兵を与えられ、不知火の力は大幅に拡大した。しかし、今のままでは、組織は成り立たぬ。まずは、あらゆる設備を整える事で、組織の内側を豊かにし、順風満帆な環境を築く事から、始めるべきであろう。まあ、そのような役割は、武士や民に任せておけばよい。お主ら、精鋭には別の仕事を頼みたい。故に、ここに呼び集めたのだ」

「・・・・・・して、別の仕事とは?」

 美智子が肝心な本筋について伺うと、今度は石舟斎が詳細を述べる。

「今朝、蒼真の部屋に1通の文が置いてあったんだが、読んでみると、不知火に対して、友好的かつ、協力的な内容が記されてあった。差出人は、奇妙な名を名乗り、本名すらも定かではない・・・・・・が、そいつは、九州の地でお前らと会いたいそうだ」

「また、九州ですか?」

 かつて、出向いた地域の名前を耳にし、ファゼラルが、いつもと変わらない口調で言った。

「差出人が、不明なんだろ?普通に考えて、怪しくねえか?無暗に信用しない方がいいと思うぜ?」

 海李は、謎めいた文に対し、半信半疑な意見を述べた。

「罠だという線も否定できませんしね」

 夕日も訝しげになって、最悪な事態を想定した仮説を頭の片隅に置く。

「忠勝。とにかく、この文に書かれた内容をここにいる皆に読み聞かせてやってくれないか?」

「はい」

 忠勝は、間を開けず肯定し、懐から届けられた文を取り出す。何層にも重ね折りされた薄い白紙を広げ、書かれた文章を声に出して読んだ。


 (文の内容)

『"自らの足で出向かず、文を届ける形になってしまった非礼をお許し下さいませ。あなた方、不知火の勇敢なる猛者達が、九州の金鉱山にて、天狗を討った活躍は、私も耳にしました。世の理を正そうとする不知火の信念に、私も泰平の世のための戦いに加わるべきであると、決心がついたのです。聞けば、不知火は復旧の途中にあり、かつて、室町の影の軍隊と呼ばれた全盛期の頃には、遠く及ばずにいるとか。私でしたら、微力ながらも助力をお与えできるやも知れません。不知火のお役に立ちそうな"秘宝"をご提供致します。

しかし、私はとある厄介な問題を抱えており、故郷から遠ざかれない身・・・・・・無礼は承知でお頼み申し上げますが・・・・・・もし、よろしければ、こちらの方へお越し頂いて、私の苦悩を晴らす手伝いをして頂けないでしょうか? 場所は豊後(現在の大分県の大半)の千燈岳(せんどうだけ)です。山道の途中に位置する場所に私の住む庵(いおり)がございます。詳しい内容は全て、直接、対面を果たした上で説明致します故。日ノ本の命運を背負う勇士達に茶をもてなす日を、心より楽しみにしております"』


              ・・・・・・"千利休の子"より・・・・・・


「・・・・・・はあ?千利休の子だぁ?」

 ゼイルが嘘臭いと言わんばかりに、より信用を薄れさせる。

「秘宝が、何を意味してるのか気になるけど・・・・・・ますます、怪しくなってきたわね・・・・・・」

 千夜も、呆れずとも苦笑し、一方的な疑いをかける。

「千利休と言えば、この日ノ本で最も名の知られた茶人だよね?」

「ええ、千利休は多くの大名を魅了した茶人の鑑。わび茶(草庵の茶)の完成者として知られ、茶聖とも称せられるほどの有能な人材です。大勢の弟子を取っており、大和ノ国を支配している魔王信長にも一目置かれている存在だとか・・・・・・」

 あまりよく知らないライゼルに対し、ファゼラルは知っている限りの知識を説示する。

「その千利休の子って、何者なのかな?」

 鈴音は、誰もが知りたいであろう謎に人物の正体について指摘すると

「さあな。だが、その文を書いた奴は、敵側の機密事項であるはずの天狗の事も知ってやがる。ただ者じゃねえのは、確実だな。伊達に偉人の血縁者を名乗ってやがるわけじゃ、なさそうだぞ?」

 海李は、これまでの証言を手掛かりとし、独自に人物像を想像する。

「・・・・・・で、お前らはどうしたいんだ?利休の子と名乗る人物に会いに、再び、九州に渡るのか?」

 石舟斎は精鋭達に判断を委ねる。しかし、これは安直に答えを出せるようなものではない難問。葛藤に囚われ、即座に返事を返せる者はいなかった。1人の若武者が決断を下すまでは。

「僕は、千利休の子と名乗る人に会いに行きます」

 忠勝の場の雰囲気を変える堂々とした一言に、その場にいる全員の視線が集う。

「忠勝くん。簡単に決めず、冷静になった方がいいかと。さっきも言いましたが、罠である可能性は捨てきれませんよ?」

 夕日は再度、忠告を促すが、対して忠勝は真逆の説を唱えた。

「罠じゃない線だって考えられる。ここで、ずっと頭を悩ませていても仕方ないよ。嘘か真実かは、行ってこの目で確かめよう」

 すると、忠勝のやる気がゼイルにうつり、闘志と意欲を掻き立てる。

「忠勝だけに、いい格好はさせねえよ。仮に敵の罠だったとしても、これまでのように返り討ちにすればいい。真っ向勝負から逃げたんじゃ、フリートの名が廃る」

「私も行くわ。結局は、不知火やこの国の未来のために命を懸けなきゃいけないんだもの。私達に立ち止まってる暇はない。こうして、時間を無駄にしている間にも、信長や妖達は日ノ本を破滅の危機へと追いやっている」

 千夜が覚悟を決めた事をきっかけに、他の精鋭達も次々と賛成の枠に加わった。二の足を踏んでいた群集は、賑やかに戦意とやる気に満ち溢れさせる。

「利休の子による茶会の誘いか・・・・・・よくよく考えりゃ、面白そうじゃねえか!」

「決まりだな。忠勝のお陰で、満場一致だ。偉大な茶人を待たせるのも失礼に値する。明日の早朝、隠れ家を発とう」

 蒼真が出発の予定を告げ、忠勝が大きく頷く。

「うん。行こう。いざ、再び九州へ」

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.62 )
日時: 2021/08/15 20:35
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
参照: https://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=2309.jpg

 不知火の精鋭達は組織に協力を申し出た"利休の子"に会うため、再び、九州の地へ足を運んだ。前回の舞台となった大都市の薩摩とは異なり、豊後は小さな集落をたまに目にするくらいの、田舎の地であった。山々が聳え、緑豊かな自然が大半を占めており、未開の風景が広がる。その、のどかな自然に溶け込んだ千燈岳。誰も立ち入らないだろう山奥に何が待ち受けているのか・・・・・・?


 豊後国 千燈岳


 不知火の精鋭達は千燈岳の山道を進む。草木が複雑に生い茂っている森に挟まれた狭いとも広いとも言い難い一直線の道を通り抜けていく。途中で休憩を挟んでは、自生していた実を食べ、滝の水で喉を潤し、目的地を目指す。時刻は真昼をとうに過ぎ、空を見上げれば、太陽は橙に色づき、夕暮れに近づきつつあった。

 辺りが薄暗く、ひんやりとした空気が漂い始めた頃、やがて、忠勝達は山道の途中で自然の創造とは異なる場所へと行き着く。 そこは、湧き水が溢れる小さな水源で、水辺には水芭蕉や茎の長い紫色の花が咲き乱れ、繊細な手入れが施された庭園だった。更に先には、竹を一部として作られた階段があり、上には1軒の草ぶきの小屋が建つ。

「あれが、差出人が住んでいる"庵"なのかな?」

「らしいな。あそこに利休の子と名乗る人物が、俺達のために茶を沸かしているんだろう」

 忠勝の独り言の問いに、蒼真が大体確信しながら、この先に待つ展開を予想する。

「しかし、日ノ本の自然は 西洋にはない美しさを感じますね。こういった場所いると、瞑想にふけたくなります」

 ファゼラルが、自然を生かした美しい芸術に酔いしれる。 その感想には、ライゼルも深く共感し

「和風の作り物って、どれも心が洗われるのよね。この国を故郷に育ったけど、まだまだ知りたい事だらけだわ」

「それにしても、妙ね。敵が現れて襲って来るどころか、妖の気配すらしないわ」

 千夜は、落ち着けなかった。山奥に足を踏み入れてから、いくつかの時が経つが、何かが突然に襲って来るような兆しはない。念のために辺りを見渡しても、動物すら1匹も姿を現さない。

「ああ、さっきから、俺も違和感を感じてた。人が滅多に立ち入らねえだろう場所にしちゃ、獣の殺気すら漂って来ねえんだ」

 心地いい環境がゼイルにとって、逆に不可思議な感覚を生んだ。妙な感覚は、やがて、嫌な予感へと変貌を遂げていく。

「千夜ちゃんもゼイルも、心配する事はないわ。私の式神である折り鶴を先に偵察に向かわせておいたから。敵が出てきたら、すぐに私の耳に入るよ」

 美智子は、式神を頼った手際の良さを告げ、2人を安堵させる。

「立派と言えば立派だが、わざわざ、庭園に見惚れるために来たわけじゃねえんだろ?早く、利休の子とかいう奴の顔を拝んでやろうぜ」

 海李が、ここに来た本来の目的を優先し、一足先に水源へと足を運んだ。

「そうですね。夜になる前に用事を済ませましょう」

 夕日も大いに賛成し、彼の後に続く。


 忠勝達は、庵の前で立ち尽くした。近くで見れば見るほど、構造が古臭く、1本の柱が折れれば、瞬く間に全壊してしまいそうなほどだ。人が住むには、あまりにも不便な箇所が目立つ。

「この中に、本当に人がいるのかな?」

 鈴音が少し心配になって、誰に聞くわけでもなく聞く。

「忠勝。誰かいるかと、呼んでみれば?」

 ライゼルの案に忠勝は頷いて、隊の先頭に行く。辺りに気を配り、人影さえも映らぬ障子に無効に向かって

「すみません。どなたかいらっしゃいますでしょうか?」

 と、やや大き目な声で家主の在宅を尋ねた。すると


『"どなたでしょうか"?』


 すぐさま、返事が返り、精鋭達は目を丸くした。声の主は男性だが、口ぶりが優しく穏やかな性格を思わせる。まるで、幼い少年のような・・・・・・

(いるのは、子供か・・・・・・?)

 意外な住人に蒼真は言わずと、心内で囁く。

「あの・・・・・・僕達は、利休の子という人物へ会いに来たのですが・・・・・・」

 すると、再び、障子を隔てて礼儀正しい返事が返される。

『"どうぞ。中へお入り下さいませ"』

 障子を開け、内側を除いた途端、忠勝達は目を奪われた。庵の内部は外側の朽ちかけた外見とは異なり、清潔で広い立派な茶室となっていた。まるで、上級の武士の住まいのような、一面が豪華な部屋だ。茶釜のすぐ隣に声の主と思われる1人の少年が、足元に茶器を置き、正座の姿勢で出迎える。

 少年はボサボサの短い黒髪を生やし、目の大きい和やかな顔立ち。体格は小柄で服装に乱れがなく、落ち着いた色の着物を完璧なまでに着こなしていた。手を床につけ、一礼すると、明るい面持ちを上げ名を名乗る。

「お待ちしておりました。私が千利休の子、"千唖休(せんの あきゅう)"と申します」

「あなたが・・・・・・」

 目の前にいる人物は、茶道を心得ているようでも、やはり子供だ。忠勝は、認識はしているものの、無意識に再度確認する。

「如何にも。私があなた方の元へ、文をお送りした差出人でございます」

 唖休と名乗った少年は肯定し、不気味なほどに 晴れやかな表情を絶やさない。すると、美智子はある事に気がつき、指を指した。

「あっ!あれは、私の式神!」

 庵の隅にある鳥籠に、美智子が偵察に向かわせていた折り鶴が閉じ込められていた。唖休は静かに笑うと、籠の檻を開けて、自由を与える。

「外にいたら、庵のまわりを飛び回っておりました。あまりにも珍しかったので捕まえて、飼おうと思ったのですが・・・・・・残念な事に、飼い主がいたのですね」

 思考が読めない性格に言葉が出ない美智子。蒼真は忠勝の隣を過ぎて前に出ると、警戒心が浮き出た威嚇的な態度で

「不知火に提供したい物があると言っていたな?こっちは、早々に本題に入りたいのだが?俺達が、わざわざ出向かなきゃ、解決できない悩みとは何だ?」

「ご質問の連鎖は、当然の事と承知しております。ですが、まずは私のお茶で心身を清めて頂きたいのです。詳しい説明は、その後に致します故」

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.63 )
日時: 2021/09/05 17:50
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

 唖休は、文に書いてあった文字通り、精鋭達に茶をもてなす。出された茶は緑茶のようだが、普通の物とは色も香りも異なる。灰色に近い濃い緑の液体に、蜜のような甘い匂いが漂うのだ。

 唖休という人柄も、異様な茶にも深い怪しさが渦巻いているように感じてしまう。友好的な少年に敵意は感じないが、味方という線を信用するには、早過ぎる。精鋭達は茶器を口には寄せられず、誰一人、振舞われた物の中身を啜ろうとしなかった。

「御心配には及びませんよ。茶に毒を盛ろうなど、利休の名と名誉に傷がつきます故」

 相変わらず、心内がはっきりと覗けない唖休。彼と一緒にいる事で、気の迷いが生じてくる。

「海李。ちょっとだけ、味見してくれない?」

 ライゼルが苦笑し、恐縮しながら頼んで

「はっ?ふざけんな!毒味役なんてまっぴらごめんだ!」

 返事は勿論、否定そのものだった。

「やめなさい。人様の家で、みっともない」

 千夜が、礼儀作法に反した2人を睨んで、居住まいを正す。忠勝も夕日も、遠慮がちに躊躇っていた時だった。

 突如、鈴音が茶器の口縁をくわえ、唖休の茶を一気の飲み干したのだ。その行為には、その場にいた精鋭達の驚愕の視線を集めた。

「え。ちょ・・・・・・鈴音さん!?」

 ファゼラルは、焦ったあまり、台詞をあやふやにして止めに入る仕草を取る。最初の一服を味わった鈴音は、茶器を膝の手間に置き、咳き込む事も苦しむ事もなく

「美味しい」

 と、素直な感想を述べた。

「う、美味いのか?じゃあ、俺も飲むわ」

 脅威の皆無を認識したゼイルもあっさりと、恐れを剥がし、茶を飲んだ。ひとまずは安堵し、全員が茶を口に含む。1人が1人が、味にお気に召した感想を述べる。

「味は、確かに緑茶ですが、明らかに茶葉以外に他にも、別の何かが加えられています」

 夕日の舌は誤魔化しが効かず、即座に悟った。唖休は"よくぞ、見抜いてくれた"と言わんばかりの実に嬉しそうな表情で

「あなたは、味覚が鋭いのですね。仰る通り、このお茶に含まれる物こそ、是非ともあなた方、不知火にご提供したい"秘宝"なのです」

「「「・・・・・・え?」」」

 精鋭達は息を合わせ、同じ声を上げる。想像の産物とは、大きく異なっていた秘宝の意外性に驚きを隠せなかった。

「私がお出しした茶には、千燈岳でしか生えていない"千燈のオトギリソウ"が含まれています。知る者が限られている貴重な秘薬であり、服用すれば心身の傷や万病を立ちどころに癒す奇跡の薬草。また、その心地よい香りには、視界に映る真実を歪ませる効力があり、幻覚剤の原料にもなるのです」

 唖休は、薬草の説明を滑らかに教え、自身も茶を静かに啜る。

「なるほどね。秘宝については、はっきりしたわ。唖休と言ったわね?次はあなたが何者かを知っておきたい。 私達の存在や敵の情報を正確に把握していている上、性格の読めない怪しい人物を容易に信用するわけにはいかないの」

「・・・・・・と、言いますと?」

 いくら、疑いをかけられても、唖休は動揺の兆しすら見せなかった。

「初めて目にした時から、あなたからは、"ただの人間"としての気配が感じ取れなかった。他にも、何か隠してるわね?」

 千夜が、数々の不審な点を指摘しようとした矢先、蒼真が横槍を入れ、代わりに言った。

「何故、俺達が九州の金鉱で天狗を討った事を知っている?ましてや、天狗の存在は、敵側の重要機密のはずだ。しかも、人が立ち入らない山奥で独り身で住み着くただの子供の耳に届く報とは思えん。何故、そんなに詳しいんだ?」

「そうだぜ。お前、随分と物知りじゃねえか。俺達より遥かに知識が豊富過ぎる気がするんだが?気のせいか?」

 ゼイルも心を許せず、疑いを敵意に置き換える。右手は万が一の事態に備え、剣のグリップを強く握っていた。

「唖休さん。あなた一体、何者なんですか?」

 鈴音は、早く教えてほしいと言わんばかりに、単純な質問を投げかける。精鋭達の晴れ晴れとしない曇った視線を浴びせられる唖休は茶器をゆっくりと膝の前に置く。

「私の正体につきましては、とある事情故に滅多に他者には明かさないのです。ですが、ここで信頼を得ない事には、お互いに有益な結果は生まれないでしょう。幾度もお伝えさせて頂きますが、私はあなた方の敵ではありません。むしろ、不知火とは友好な関係を築き、組織に貢献する事がこの上ない名誉だと考えております」

「そこまで宣告できるなら、正直に打ち明けても大丈夫なはずよ?早く、教えなさい」

 ライゼルが目蓋を細く、尋問に近い言い方で告白を促す。唖休は苦笑を浮かべ、躊躇いのある小さな声で

「・・・・・・私が天狗に詳しいのは、当然の事でございます。何故なら、私は信長公に仕える"七天狗の血縁者"なのですから」

 下手をしても聞き流せない発言を耳にした途端、不知火達は茶器を捨て、それぞれの武器を取って構える。大勢から敵を向けられても、唖休はその場を動かず、姿勢を崩さなかった。

「七天狗の血縁者だと・・・・・・!?」

「しまった・・・・・・!さては、僕達が飲んだのは毒・・・・・・!」

 海李は聞かされた台詞の一部を真似、ファゼラルがこちらに害を成す企みであると予期する。その時、初めて唖休の笑みが曇り、シュンとした顔を俯かせる。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.64 )
日時: 2021/10/26 18:50
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

「やはり、かような反応をなさるのですね。無理もございません。ですが、御安心下さいませ。私は誓って茶に毒など微塵も盛ってはおりませぬ故。あなた方が死に至る事はないでしょう」

 迂闊だった事を後悔したが既に遅く、直に起こるであろう苦痛の症状を覚悟する。しかし、いくら時間が経っても、特にこれといった異常は起きなかった。

「・・・・・・どうやら、彼の証言は正しいみたいですね?この通り、僕達の身に何も変化はありません。お茶に毒が仕込まれていたのが事実なら、とっくに死んでるはず」

 やがて、夕日は冷静に言って、大鎌を降ろした。彼の説得力のある言葉に安堵したのか、精鋭達は戦に出向く際の緊張を緩ませ、武装を解く。

「唖休殿。無作法な形で証明される事になりましたが、あなたは信頼に値する人物であると認識しました。喜んで、話をお聞きしましょう。その前に、あなたと天狗達の関係を詳しく話しては頂けませんか?より、互いの信用を深めるために」

 精鋭達は姿勢を改めると、ひとまずは敵意を鎮める。殺気が漂わなくなった事に唖休も心を許し、続きを語り出した。

「私は七天狗の兄弟ではございますが、実質的な兄弟ではないのです。私の父は嘘偽りなく、茶聖である千利休です。母は妖であって、他の兄弟とは異なり、人間と契りを結んで私を生んだのです」

「他の天狗達とは違って、あなたは異父兄弟というわけね。つまり、"半人半妖"ってとこかしら?」

 美智子は唖休が混血である事を理解し、種族を類を分析する。

「でもよ、結局は天狗の一員なんだろ?どうして、お前は他の天狗達と一緒になって、信長の野望に加担しなかったんだ?」

 海李が、誰もが知りたがるだろう質問を投げかけると

「私は他の兄弟から忌み嫌われていたのです。純血の妖である彼らは、自分達を迫害した人間を、この上ないほどに憎悪しておりました故。そんな人の血を引く私を一族の一員とは認められなかったのでしょう。半妖の私は強力な力はなく、信長公の重臣になれる器ではなかったのです。不幸はそれだけに留まらず、妖の掟を破り、人に恋した母上は妖の掟を破った罰として、処刑されました」

「酷い話ね・・・・・・」

 千夜は、素直に哀れんだ想いを相手に送る。

「私を庇ってくれた唯一の存在は、父上だけでした。父上は、私を人として対等に扱ってくれただけではなく、人の世の様々な文化や習わしを学ばせてくれました。そんな、優雅な日々を過ごしているうちに、人間という優しい種族に好意が芽生え、反対に暴虐や支配で泰平の世を乱す信長公や兄弟達のやり方に反感を覚え始めたのです。父上も私と、全く同じ考えでした。父上は密かに、私を兄弟の元から連れ出し、人里から離れたこの山奥に住まわせたのです。この山にしか自生していない秘草を守護する役目を任せる事を理由の1つとして・・・・・・」

 自身の詳細や、今に至る経緯を一通り話し終えた唖休は、晴れやかな気分になれたのか、微かに笑みを取り戻す。その様子を精鋭達は、目を逸らさずに眺めていた。

「なるほど、色々と教えてくれてありがとう。お陰で君という人物を知る事ができた。でも、こっちとしては、そろそろ本題に入りたいんだけど?君はある悩みを抱えていて、解決するためには、僕達が必要なんだとか?」

 忠勝は精鋭達の長として、それらしく振舞う。時間を無駄しようとはせず、本来の目的である任務を優先する。

「これは失礼致しました。少し、長話が過ぎたようです」

 唖休は簡単な謝罪の直後、再び真剣な表情に切り替えると、その内容を告げる。

「実は、この千燈岳に強力な妖が侵入し、秘草のある山地を支配したのです。更に悪い事に、その際に父上に譲り受けた"鶯巣の桜"をも奪われてしまいまして・・・・・・」

「鶯巣の桜?それは一体?」

 聞いた事がない名前の品にファゼラルが眉をひそめて、詳しく聞こうとすると

「霊石を削り、丁寧に磨き上げて作られた茶器でございます。茶人としても名高い、かの有名な松永久秀公も欲していたこの世に2つとない品であり、私の家宝でもあるのです」

「なるほど、ようは秘草の生えた山地の奪還と同時に家宝である茶器を取り戻してほしい・・・・・・それが私達、不知火を呼んだ理由ね?」

 美智子の確信に唖休は、はっきりと頷く。

「あなたの仰る通りでございます。他者の命を危険に晒させるのは良心が痛みますが、頼みの綱はあなた方だけなのです。どうか何卒、私の抱えた難題を解決に導いて下さいませ」

「でも、唖休さんは、この千燈岳の守護者なんでしょ?どうして、君自身の力で取り返さないの?」

 畏まって頭を下げる妖に、忠勝が不意に思った事を問いかける。

「先ほども申し上げましたが、私は所詮、半人半妖。恥ずかしながら、争い事は得意としない小心者でして・・・・・・」

「・・・・・・どうやら、ここに来てから胸につかえていた悪い予感が当たりそうだな」

 蒼真が発した意味深な言葉に、全員の視線が彼に向けられる。彼は先ほどから胸騒ぎを感じていて、それが的中したのだと悟った時、ある推測を口にする。

「いくら、人間の血が混ざった不完全な妖とはいえども、多彩な知識と強力な高等妖怪の血を引くあんたが並みの妖怪に恐れを成すとは思えん。事実、美智子の折り鶴を恐れもせず、籠に捕えてしまうくらいだからな。誤魔化さずに答えろ。千燈岳を乗っ取った妖怪の正体は唖休。お前の兄弟だな?」

 敵の詳細を指摘した内容に不知火達は落ち着きを失い、ざわめき始める。

「はい。千燈岳を襲撃し、秘草の自生地を占領したのは紛れもなく、私の兄です。兄上は今でも、秘草の回収に着手し、織田政権の領土へと運び出そうとしている頃合いかと」

「七天狗が、こんな所にまで・・・・・・!」

「先に立ちはだかる敵は七天狗の1人と来たか・・・・・・道理で俺達という戦力が頼られるわけだ」

 鈴音が不安に煽られる一方、ゼイルも解けない緊張に縛られる。

「お前、一族に仲間外れにされていたとはいえ、一時的にあいつらと生活を共にしていたんだよな?だったら、七天狗の奴らについて色々知っているはずだ。お前の兄貴である天狗は、具体的にどんな奴でどういった能力を操るんだ?」

 海李ができる限り、敵の詳しい情報を聞こうとするが、判明したのは名前だけで最も重要な点については不明のまま、真相は明かされず終いに。

「名は"闇千代(やみちよ)"。七天狗の中では三男に当たり、あなた方が菱刈の金鉱山で殺めた紬の次に最年少の高等妖怪でございます。しかし、話せる事は容姿くらいで、どのような能力を秘めているかまでは、私にも知り得ない謎なのです」

「え?謎って・・・・・・ずっと、一緒に過ごしてたんじゃなかったの?だったら、どんな能力を使うくらい、知ってるんじゃ・・・・・・」

 失望を隠せないライゼルに、唖休は申し訳なさそうに

「兄上は普段、物静かで表情すら滅多に変える事はありません。口数も少なく、掴み所のない性格故に他の兄弟達からも変わり者扱いされていたのです。唯一、特徴を挙げられるとすれば・・・・・・私同様に茶道と薬草学の心得があるというくらいでしょうか・・・・・・」

「弱点を探すには、有力になり得ない情報ね」

 望みが叶わなかった千夜も、やる気のないため息をつく。

「どれだけ、弱みが把握できない敵を相手にしようと、不知火に仇名す者は斬らねばならない。泰平の世を築くためには必ずや滅せねばならない相手です」

 夕日の奮起が不知火達の命を懸ける覚悟を定め、戦意を高めさせる。忠勝が皆を代表し、承諾を告げた。

「唖休さん。あなたの頼みは、不知火がしかと聞き届けた。僕達は、これから闇千代を抹殺に出向く。事態が収まるまで、君にはここで待っててほしい」

「心から感謝申し上げます。兄上のいる秘草の山地は、庵の裏に伸びた坂道を登っていけば辿り着けるはず。どうか、私の代わりに兄上の凶行をお止め下さい。ご武運をお祈りしております」

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.65 )
日時: 2021/10/26 18:56
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)

 夕日色の空が夜に変わりつつある逢魔が時。千燈岳の奥地は、遠くの山の麓(ふもと)にある林に囲まれ、歩行に苦労しない平らに近い斜面が広がっていた。 中心には細い木が1本、祀られているように生えており、その下には古く小さい祠が建つ。辺りには、見知らぬ草花が一面に咲き乱れており、精神の高揚を鎮める甘い香りが空気中に漂っていた。

 不知火の精鋭達は、そんな草原の野草に囲まれながら、更に奥へと進んで行く。山地は静かで、そよ風で葉が揺れる音以外は聞こえない。興奮を忘れてしまうほど、安らぎを誘う空間が心地いい。

「いい香りを放つ野草がいっぱいあるわね。ここは、不思議と心が洗われるわ」

 美智子が無数に生えたそのうちの1つから花を摘み取り、鼻の元へ運んでじっくりと香りを味わう。

「恐らく、これこそが唖休さんが僕達に煎じて飲ませた秘草なのでしょう。不治の難病や怪我を癒す妙薬の材料が、これだけあるんです。道理で織田政権に狙われるわけですね」

 ファゼラルは秘草に構う事なく、淡々と述べる。

「え!?もしかして、これ全部がっ・・・・・・!?」

 信じられない光景に鈴音は瞳孔を細め、閉ざせない口を覆う。

「ここに生えるもん全部使ったら、かなりの量の薬の山が生産できる。確かに、これだけのもんを医療物資に活かせば、不知火復旧の大きな貢献になる事は確実だな」

 ゼイルも秘草の量から、想像と確信を膨らませ、やがては納得する。

「皆、油断しないで?ここは既に敵の領分だよ。このどこかに七天狗の1人である闇千代がいる・・・・・・敵はどんな卑劣な手段を取って来るか・・・・・・」

 先頭に立つ忠勝が、いつでも抜刀できる姿勢で、緊張が緩んだ仲間の気を引き締めさせた。

「忠勝の言う通りよ。ここに足を踏み入れた時点で監視されてるのかも知れない。いつ、襲撃に遭うか予測できないわ」

 千夜も余計な考えは捨て、辺りを厳しく警戒する。

「・・・・・・ねえ!あそこの祠!」

 ふと、ライゼルが指を差して叫んだ。その先にあったのは木の根元にある小さな祠。神棚には小さな光が宿り、美しい薄緑色の輝きを放っている。

「ひょっとして、あれが鶯巣の桜じゃ・・・・・・?」

「よく分かんねえけど、そうなんじゃねえのか?利休から貰った家宝の茶器って、霊石で作られたって唖休が言ってなかったか?」

 海李がいい加減な予想で、曖昧な記憶を遡る。

 その刹那、秘草の草原に異変が起こった。突如、どこからともなく黒い影が現れたか思うと妖怪の原型となり、忠勝達を取り囲んだ。予め、身を潜めていたらしい屍の武士の群れも秘草の茂みから次々と姿を晒す。そして、灰色の霧が唯一の帰り道である元来た山道を塞ぎ、逃げ場を遮る。

「ようやく、お出ましか・・・・・・」

 気配さえも感知できなかった伏兵に、蒼真が目と声を鋭く、冷静沈着に妖刀を抜く。他の精鋭達も武器を構え、八方から対抗できる円型の陣形を築いた。

「烏天狗が2匹、大蜘蛛が3匹・・・・・・後は骸兵が数十人ってとこかしらね」

 敵の詳細と数を迅速に計算する。

「随分と粗末な編成部隊だな?マジで俺達を殺す気あんのかよ?」

 期待外れの敵勢にゼイルは実につまらなそうに、大剣の刀身を肩に担ぐ。

「鈴音!俺が守ってやるから、俺達の武器の威力が増す音色を奏でてくれ!」

「う、うん!分かった!」


「キシャアアア!!」


 骸兵の群れが耳障りな奇声を上げて前方から襲い掛かる。肉の腐った顔から汚らしく、大半が抜け落ちた歯を剥き出しにし、刃先を向けて突進した。そして、不知火の精鋭達を八つ裂きに・・・・・・しなかった。

 彼らの胴体の位置に一線を光が横に過った。その直後、数人の骸兵の全身が半分に切断され、体内の臓器をさらけ出す。臭く汚れた血を撒き散らし、骸は二度目の死を迎えた。

 複数の遺体の前には殉聖の太刀を当てておらず、振るった仕草だけをしていた忠勝の威圧的な表情。敵を侮っていた慢心は砕かれ、並外れた剣技に妖怪達は人間相手に恐怖した。目の当たりにした脅威に無意識に後へと引き下がる。

 精鋭達はこの機を逃さず、先手を打った。少数の強者が大群に斬り込んだ時、鈴音の笛の音色が山地全域に響き渡る。

「うおりゃああ!!」

 戦の本能を燃やすゼイルは雄叫びを上げ、大剣を豪快に振るう。力任せの勢いで叩きつけた刀身は、鉄板の鎧などものともせず、紙を千切るかのように骸兵を容易く切り裂いた。更に全身の回転と共に剣を振り回し、近くにいた2体の首をまとめて刎ね飛ばす。

「火よ、全ての雪を溶かし尽くせ!『ファイア』!」

 ファゼラルも負けずと魔術で奮戦する。タロットカードが放った烈火の波が複数の妖怪を一気に飲み込み、火だるまの地獄絵図を描く。

「小癪ナ・・・・・・!」

 烏天狗は黒く禍々しい翼を広げ、羽を散らして空を舞う。錫杖を突き立て、目にもとまらぬ速度で横から回り込み、無防備な隙を突こうとした。

「我を守る盾となれ!『シールド』!」

 しかし、突如張られた結界に直撃間近だった錫杖を妨げられ、烏天狗は弾き返された。

「ギャアッ・・・・・・!?」

 何が起こったのか分からぬまま、地面に転げ落ちる妖。痛感に耐えながら首を起こすと、兄と同様、タロットカードを持つライゼルが勝ち誇った表情を浮かべていた。

「ライゼル!助かりました!」

「へへん、お互い様だよ!支援は任せて!」


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