複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ!
- 日時: 2020/09/14 01:49
- 名前: 牟川 (ID: 5yzH1Xyu)
知っている人は知っている牟川です!
小説カキコに戻ってきました。
・主人公サイドに立ったあらすじ
とある司祭のせいで、勇者ユミのパーティーメンバーに任命されてしまったカルロ。こんなくだらない旅に付き合っていられるものかと思うものの、渋々、勇者ユミの旅に同行するのであった。
そして、魔王軍による数々の嫌がらせを受けながらも、私用を優先するため旅を中断させたりする。
だが、次第にカルロも勇者ユミに対して愛着を持つようになるのであった。
・魔王軍のスパイサイドに立ったあらすじ
少し前に、魔王討伐に赴いた勇者が魔王軍のスパイに嵌められて捕まったというニュースは記憶に新しい。
そこで魔王討伐を掲げる【教会】は新たに、ユミと言う少女を勇者に任命したのであった。
魔王軍のスパイたちも、前の勇者を嵌めたように、今回も勇者ユミを嵌めようと画策するが、主人公カルロによって幾度も防がれてしまう。
幾度もなく妨害に遭う魔王軍のスパイたち。次第にこれら数々の妨害が、カルロの仕業であると確信するものの、そもそもカルロという人物が一体何者なのかという疑問も持つようになるのであった。
尚、それぞれ別タイトルで『小説家になろう』や、『エブリスタ』でも投稿しています。
最後に……
この小説は、次第に謎が深まりつつ、ちょっとずつ解明されていくように書いています。
主人公カルロ(偽名)の生い立ちなども、最初はよくわからないことでしょうが、ちょっとずつ判っていくように書いていきます。
最初は、なんかテキトウにぶらぶらしている奴が勇者パーティの一員になったものだと思って読んでみてください!
第9話あたりから、ちょっとずつおかしな物語になっていきます!
- Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.59 )
- 日時: 2020/11/22 22:49
- 名前: 牟川 (ID: KBFVK1Mo)
第55話 魔王軍スパイ、魔王軍四天王の側近と合流する 2
(魔王軍スパイ視点)
「ええ。俺はマリーアと一緒に天使複数の死体を発見いたしました」
俺はディアナにそう言った。
あの天使の死体は、思い出すだけで気分が悪くなる話である。できれば、その話はしてほしくないのが本心なのだが……。
「ティアレーヌ様は、天使の変死体と勇者一行が何らかの形で絡んでいるのではないかと考えたそうよ」
勇者一行が絡んでいるだと?
それもまさか、魔王ティアレーヌ様が御自らそう考えていらっしゃるとは。
そしてマリーアが口を開き、言った。
「まさか天使を殺したのが、勇者一行と言いたいのですか? 」
「あくまでも、何らかの形で絡んでいるのではないかという話。まあ確かにティアレーヌ様は、勇者一行が天使を殺したのだという意味で「絡んでいる」と、仰ったのかもしれないけれどね」
「……仮に絡んでいるとしたら、カルロという男が一番怪しいですね」
マリーアがそう言った。
俺もそう思う。
「そうそう。そのカルロという人物について、私の方で調べたのだけど経歴が一切謎なのよね。唯一判ったのはアリバナシティ大聖堂の事実上の責任者である司祭と深く繋がっているくらいね」
殆どの経歴が謎である上に、【教会】の人間と繋がっているだと?
しかし仮にカルロが【教会】の関係者だとして、どういう理由で殺したのだろうか。
「ディアナさん。俺もマリーアと同様に、カルロという男は色々と怪しいと感じておりますが。しかし仮に【教会】関係者となると……」
「仮に【教会】関係者であり、その上で天使を殺したとなると色々とおかしいと言いたいのかしら? 別におかしくはないわよ。【教会】や天使たちでも派閥ってものがあるでしょうし、派閥争いの結果起きた事件だとしたら納得いくでしょ」
「ええ」
なるほど。
派閥争いか。
「私は思うに【教会】の諜報機関みたいなのがあって、それの構成員の可能性があるのではないかと考えておりますが……」
マリーアがそう言った。
【教会】に諜報機関的なものがあるのかどうかは、俺はさっぱり判らない、奴の経歴は謎であると言われれば、そう思いたくもなるだろう。
しかもアリバナシテ大聖堂の司祭と、繋がっていると言っていたしな。
「マリーアの言うとおり、その可能性はあると思うわ。私はアリバナシティ大聖堂の事実上の責任者だった司祭についても調べたのよ。それで判ったのは名前はブルレッドで、3カ月前にアリバナシティ大聖堂の司祭に就任し、それ以外は経歴が不明なのよね」
おいおい。
司祭も司祭で経歴が謎なのか。
まさか本当に【教会】には諜報機関が存在し、そしてカルロとそのアリバナシティ大聖堂の司祭は諜報機関の構成員なのだろうか?
もし本当に存在するなら、目的のためなら何でもしそうな感じだ。
そう考えると怖くて堪らない。
「まあ仮に【教会】の諜報機関があったとしても、魔王軍なら木っ端みじんにできるけどね。アレックス! とても怯えているけど魔王軍を信頼できないのかしら? 」
ディアナよ。
ちょっと自信過剰が過ぎないか?
「ディアナさん。貴女は怖くないのですか? 未知数の敵という存在に」
俺はそう訊ねた。
「あのね。私の上司のレミリアの軍団だけでも教会騎士団を無力化できると言われているのよ? レミリア軍団がダメだったとしても他の四天王率いる部隊もある。心配することはないわ。それに、仮にいざ【魔王領】自体が危なくなれば≪あれ≫も動き出すだろうし」
なるほど。
確かに【魔王領】自体が危なくなれば、魔王軍以外の軍事組織も動き出すわけだ。そう考えればディアナの言うとおり、そこまで心配しなくても良いのかもしれない。
- Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.60 )
- 日時: 2020/11/23 15:25
- 名前: 牟川 (ID: KBFVK1Mo)
第56話 聞き込み開始
「では貴方は実際に、彼女が誘拐される現場を見たわけですね? 」
私はマリーアが誘拐された現場を見たという目撃者の男に、そう訊ねたのである。
「ええ。彼女は必死に抵抗していましたが、黒ずくめの連中には敵わなかったようでして。私も助けたかったのですが……」
まあ、誰かを助けようと思っても、実際に行動に移せる者はほとんどいないなろう。誰だって自分が可愛い。別にこれは悪いことじゃない。誰だって自分の命は大切なはずだ
「仕方ないですよ。誰だって自分は大切ですから」
私がそういうと、目撃者の男は泣き崩れたのである。
「も、申し訳ないです。本当に。本当に」
それを見て、私はこう思った。
――― なんとまあ、大げさでワザとらしい ―――
と。
もしかしたら、この目撃者とやらは『サクラ』なのではなかろうか……。もちろんマリーアの誘拐が狂言誘拐であることが前提になる話ではあるが。
「絶対にマリーアを助けないとね! 」
と、ユミが言ったのである。
どうやら、ユミのやつは何一つ疑っていないようだ。恐らく、こういうところが魔王軍に付け込まれるのではないだろうか。前の勇者もそうだったのだろう。こんにち至るまでの勇者たちは、純粋無垢な者たちだったのだと思う。
仕方がない。ユミについては私が責任を持って保護するとしようか。
そして……
「お、おう」
ダヴィドが言葉に詰まったのか、ユミに対してそう返答した。
「出来る限りはやってみるつもりだ」
私もとありあず、このように言っておいた。
「ってあれ? 剣がない。私の剣が! 」
不意にユミは慌てた様子でそう言ったのである。
私もユミの腰のあたりを確認したところ、確かにいつも腰にかけてある剣とその鞘がなかったのである。
「部屋に忘れて来たのではないか? 一度見てくると良い」
ダヴィドがそう言った。
「そうかも。ちょっと見てくるね」
ユミは自分の部屋へと戻った。
私も、念のためについていくことにしたのである。
「私も一緒に探すよ」
ユミの部屋に入った途端、私は事情を察した。
何せベッドの上に青い紙が置かれていたからだ。
「ねえ、カルロ。部屋にも剣がない。もしかして、魔王軍に盗まれてしまったのかな? ど、どうしよう。これじゃあ魔王なんて倒せないよ! 」
ユミはかなりパニックに陥っているようだ。
おいおい。
【教会】から与えられた剣がなければ戦う気力もなくなってしまうのかよ。ユミなら例の剣がなくても戦いを続けるんだと大声で言いそうなのに。なんとまあ、らしくもない言動だ。
「【教会】から与えられた剣が無いなら、別の剣を買うか魔法を習得すれば良いだろう。あの剣が無ければ何もできないのか? 勇者というのは」
私はちょっと偉そうにユミにそう言ってやった。
「もちろん戦うわ! 絶対に魔王を倒す。あの剣が無くても」
どうやら、ちょっと煽ればいつものユミに戻るようだ。
この具合だと心配もないだろう。
「そういえば、目が覚めた時に気づいて拾って机の上に置いたのだけど、この青い紙があったの。これって剣を盗んだ犯人の物なのかな? ただ何も書かれていないんだよね」
青い紙か。
これが一体何を意味するのか、私には判る。
この紙を置いた人物が具体的に誰なのかまでは判らないものの、恐らくはブルレッド君かその手下なのだろうと私は勝手に推測した。
因みにこの私の推測が正しければ、ユミが【教会】から貰った例の剣を盗んだのも、ブルレッド君かその部下ということになるのだ。
青い紙があるということは、ブルレッド君の所属する組織が、何かしら謀ったという印であるからである。
ブルレッド君は【教会】が勇者に任命した者に授ける剣のこと、散々言ってきたのだ。
ユミの持っていた剣が盗まれた上に、この青い紙が置かれているとなればそう推測できるはずである。
「マリーアをさらった挙句、剣までも盗むなんて! 絶対に魔王と魔王軍は許さない! 」
と、脇でユミが怒っていた。
おいおい。ユミさん。
マリーアが攫われたことも、剣が魔王軍に盗まれたということもまだ確定していないぞ?
確かに前者については、確かに私も魔王軍が関与している可能性は大いにあると思う。
一連のことについて、その仕業が魔王軍かもしれないと心の中で思う分にはともかく、まだ断定しわざわざ声をあげて怒る時ではないだろう。
「ユミ……」
私は、マリーアのことや剣のことについて、まだ魔王軍の仕業であると断定すべきでないとユミに指摘しようと思ったものの、わざわざ言う必要があるかと咄嗟に迷いが生じたために、はっきりと口には出せなかった。
「今は、剣のことは後回しにして今はマリーアのことを考えよう。マリーアという1人の命の方が大切よ」
と、ユミは発言しようと思いそして迷いが生じた私を差し置いて、そう言った。
もういいや。今のユミの発言に思ったことでも言おう。
「そうだな。マリーアが攫われたとなると、相手の目的次第で対応も変わってくるからな。まずは誘拐の目的を何とかして知りたいところだ」
「そうだね。でもどうやって誘拐犯の目的を確かめることができるのかな……」
「誘拐なら後で私たちに何かしらの方法で、情報を与えてくるはずだ。それを待つほかないだろう」
まあ、仮に人身売買目的の誘拐なら何の情報伝えず終わるわけだが……それは無いだろうと思う。
「ユミ。とりあえず、今日のところは休むことにしようか」
「そうだね。もう夜だし」
そして、私は自分が使っている部屋へと戻るのであった。
- Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.61 )
- 日時: 2020/11/25 16:11
- 名前: 牟川 (ID: w32H.V4h)
第57話 ブルレッドの報告1
私たち3人はそれぞれの部屋に戻ってから、10分程度が経過した。
私がこれからベッドで寝ようとしたその時になって、誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえてきたのである。
「なんでしょうか? 」
人がこれから寝ようと思ったのに。
誰だよ……こんな非常識な奴は。
「青い紙を、落とした人物です」
と、私にとっては聞き覚えのある男の声が聞こえてきたのであった。私は、知っている声だったので信頼し、部屋のドアを開けたのである。
ドアを開けると、やはりそこに立っていたのはブルレッド君だった。
「おお、お疲れさま。まさかプランツシティで会うことになるとはな。てっきり今頃は都市ラバノンを発った頃かと思っていたよ」
「実は魔法電話を持っていましてね。帝都の上司に電話して報告したので、【魔王領】まで戻る必要はなかったのですよ。しかし、これの性能は駄目でしてね。距離的には、帝都であればプランツシティまで来ないと繋がらないのが、残念です。新型の魔法電話もあるのですが、上がなかなか支給してくれないのですよ」
魔法電話か……。先の大戦時では、1キロ程度の距離でしか繋がらなかったのに、随分と向上されたようだな。因みに、帝都というのは今日でいうところの魔王の都を指す。
「それで、今日はどういう用件で来たんだ? 」
まあ、剣の回収の件だろうが、私は一応そう訊ねたのであった。
「4つの話があります。まず1つ目ですが、ユミさんの剣を回収しましたので、それの報告です」
やはりブルレッド君が、やったわけか。
私が回収せずにいたのを見て、嫌気がさしてしまったのかもしれない。
とは言え、私たちが泊まることになった宿屋をよく掴めたものだ。やはり、ブルレッド君の職業に関係しているのかもしれない。それに、ユミやダヴィドを眠らせたのも彼なのではなかろうか……。
「ユミたちを眠らせたのはブルレッド君なのか? 」
「ええ。剣を回収させてもらうため、眠ってもらいました。屋根裏に侵入しましてね」
なるほど。
これで、ユミとダヴィドの昏倒事件は幕引きだ。
「それで、2つめの話はどういったものだ? 」
「はい。【ロベステン鉱山】から産出された例の鉱石が、無事に帝都に届けられたそうで、元帥閣下が喜んでいたとか。西ムーシ商会の本店に確認したところ、今後も定期的に輸送されることになっております」
「そうか。これで軍もより強くなるわけだ。とはいえ、【天使領】と総力戦にでもなったら、こちらはじり貧のままだがな」
向こうは数が半端ない。
そして、その一部にはとてつもない強さを誇る連中もいるわけで……。そう考えると、やはり現魔王とその率いる魔王軍とも仲良くしておいた方が良いな。
「そうですね。増強できるといえども、敵の勢力範囲は広大です。大天使ドファンが率いる軍のように、今後も工作活動によって、現地に我々の同盟勢力を増強又は新たに設立し、敵地を混乱させる戦法が良いかと」
ブルレッド君らしい考え方だな。
大天使ドファンか。まあ、彼らのおかげてこちらは助かっているからな。
それに≪彼に翼が生えていて頭上に輪っかがあろうとも≫、私にとっては戦友と言えるだろう。
「続いて、ついに魔王軍四天王レミリア率いる軍団が動き出しましたので、それを伝えようと」
なるほど。
四天王レミリアもついに動いたか。いやあ、武器の方も高騰すると良いね。利鞘は一体どのくらいになるんだろう。私はとてもワクワクする。
「ワクワクしますか?」
ブルレッド君はニヤニヤしながらそう言った。
どうやら私の心の中を読まれたようだ。
「わかりますよ僕も。武器とか高騰すると良いですよね。利鞘はどのくらいになるんでしょうね? 」
と、ブルレッド君は続けていった。
こいつ、今私が思ったこと全部口にしやがって。
「ところで、ディアナという魔王軍の上級幹部がプランツシティに来ておりましてね。カルロさんたちを付けていた魔王軍幹部で魔物使いのアレックスと、そして同じく幹部のマリーアと接触したみたいです」
「ちょっと待て、マリーアだと? 」
私は驚いてそう叫んだ。
大声のあまり、もしかしたら隣の部屋にいるユミやダヴィドにも、聞こえてしまったかもしれない。
「ええ。マリーアさんは魔王軍の幹部だったわけです」
「そうか……」
マリーアめ。あいつ、魔王軍の幹部だったのか。
全く、魔王軍の幹部様が勇者パーティにいるとはね。驚きだ。
まあ本来は、私自身が勇者パーティに加わっているほうが驚きかもしれないが。
- Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.62 )
- 日時: 2020/11/27 23:36
- 名前: 牟川 (ID: Kot0lCt/)
第58話 ブルレッドの報告2
「それにしてもブルレッド君。マリーアを勇者パーティの一員として指名したのはキミのはずだ。まさか、それを知っていてわざと指名したのか? 」
まあ、仮にそうだとしても、ブルレッド君の本当の立場からすればあり得ないわけでもないのだがな。
「そうですね……。知らなかったと言っても嘘にはならないと、そう言っておきます」
何だか、おかしなな言い方だ。
ここはもっと追及してみよう。
「実際は知っていたのか? 」
「いえ。ですので知らなかったと言っても嘘にはなりません」
もういいや。
要は、ブルレッド君には答える気はないのだろう。
とても気になる言い回しだが、これ以上は、執拗に追及する気は私にはない。それよりも、ブルレッド君が口に出したもう1人の人物の名前が気になるのだ。
魔物使いのアレックスとかいう名前の人物のことである。
以前から、魔物使いに付けられていると私は思っていた。そうなると、付けていたのはそのアレックスと言う人物なのだろうか……。
「まあ良い。それで、その魔王軍上級幹部のディアナとやらがアレックスという魔物使いと、そしてマリーアに接触したのだな? 」
「はい。そのディアナという女子(おなご)は、勇者を嵌めるのが趣味のようでしてね。元勇者3名を戦力として引き連れているようなので、注意してください。ああ、その元勇者3名も、幸い例の剣は魔王軍に没収されて別の武器を支給されているみたいですけど」
「元勇者だと? どういうことだよそれ」
「勇者を嵌めて捕らえ、再教育を行った後に自分の部下にするみたいですよ? 」
ほう。
魔王を討伐することが目的であった勇者を捕らえて、魔王軍に入れるとはね。まあ、私もユミを別の道に引き込もうとしている時点で同類だろうけど。
「まあ、そのブルレッド君の言う元勇者3名に出くわしたら演技でもしてみるよ。格好つけてね」
「演技するとしたら、今日、吸血鬼みたいな女に言い放ったようにすると良いですよね」
お前さ、見てたのかよ。
こっちは暗殺されるのかと思って失禁しそうだったんだよ? なんで助けてくれなかったの? 助けてくれたっていいじゃん。
まあ、ブルレッド君はユミたちを眠らせて剣を回収してたらしいが……。
「見ていたのか? ずっと黙って」
「まあ……黙々とあの時の様子を見てました。面白かったですよ。まあ絶対に死なないとは思っていたのでね。ああそれとカルロさん。とりあえずマリーアさんはパーティから抜けたと思いますし、代わりに私が同行しますよ。いっそのこと、カルロさんが雇った傭兵団も、遠くから付けさせるのではなく一緒に同行させれば良いのでは? 」
「しかし、このタイミングで傭兵団と一緒に行動させるのもどうかと思う」
「考えすぎかと思いますよ? もし傭兵団を一緒に行動させることに、何か漠然と気になることがあるなら僕に任せてください。巧く演技して何とかしますから。ただ傭兵団と軽く打ち合わせをしたいので、ほんの数分だけお時間をいただきますけどね」
まあ、ここはブルレッド君に任せておくか。それにしてもブルレッド君が同行してくれるとは、とてもありがたい。
「わかった明朝、傭兵団が泊っている宿屋に連れていく。それにしてもブルレッド君ありがとう。助かるよ」
「当然ですよ。だってカルロさんは勇者ユミを魔王軍に奪われたくないでしょ? なら協力しますよ。次代候補を護る……それが我々にとって一番重要で尊い仕事ですから」
次代候補って、別にそういうつもりじゃないのだがな?
まあユミとは養子縁組をしようとは考えているが。
「ではとりあえず、アリバナシティ大聖堂の司祭ってことで同行してもらうか。その方が現時点ではユミにとっても納得できるだろうしな」
「ええ。そういう形で。ではよろしくお願いしますね」
とりあえず、これでブルレッド君が新たなパーティメンバーにはなる方向になった。
さてブルレッド君は話しが4つあると言っていた。残す話は、1つである。
「それで、最後の4つ目の話を聞きたいのだが? 」
「はい。最後の4つ目の話について申し上げます。2つ目の軍備の増強をすべきという話をしていた時に、一緒に話すべきかとも思ったのですが、あえて分けたのです」
不意にブルレッド君の顔は、とても真剣な表情になった。
どうやら軍備増強の話に関連しているらしいが、あえて分けた上で最後に持ってきたということは、これはとても重要な話なのだと思う。
「それで、どのような話なのだ? 」
「外地の国境にて、戦闘が発生したそうです。相手は天使共の同盟国で【ミハラン砂漠サソリ大王国】でございます」
国境紛争が発生したのか。
面倒なことが起きてしまったな。
最も重要な問題は、どちらが先に攻撃をしかけたのかだ。さらに、こちらの戦力が現地に於いて、どれほどあるのかも気になる。
「駐留している戦力はどのくらいだったかね。後、どちらが先に攻撃したのかだ」
「はい。ミハラン方面軍の構成は、通常の師団が1つ。現地人で構成されている師団が5つ。計6個師団の12万人です。その他、ゴブリン人連隊が3つ、オーク人連隊1つで、こちらも含めますと計14万人程度の戦力となりますね。また将兵の証言によりますと【ミハラン砂漠サソリ大王国】側の兵士が越境してきたことが原因で、戦闘が始まったとのことです」
「我が軍の戦力もそこそこあるみたいだが、確か【ミハラン砂漠サソリ大王国】の国土はかなり広大で、さらに100万近い兵士がいるとか聞いていたが……」
戦闘が拡大して泥沼になると面倒だ。戦闘が長引けば、必ず天使共が直接手を出してくるだろうからな。
巧い事、停戦に持って行って欲しいのだがな。
「既に停戦に向けて動いております。まずは賠償金をふっかけて交渉するとのことですけどね」
「そうか。とりあえず私からは何も意見はない。彼らに任せるだけだ。さて今日はもう休むとしよう」
最後の国境紛争の話で頭が痛くなってきたので、急激に休みたくなってきたのである。
「そうですね。僕も流石に眠くなってきました。あっ……もう1つお伝えすべきお話を忘れてました。エレドスという上級天使について調べるよう、僕の上司に伝えておきましたので。では失礼します」
ブルレッド君はそう言って部屋を出ていった。
- Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.63 )
- 日時: 2020/12/08 14:53
- 名前: 牟川 (ID: AUvINDIS)
第59話 ハインツの報告……そしてバルロンからもたらせる情報
(魔王視点)
ここはお馴染みの魔王城。
その主(あるじ)の執務室で、魔王軍四天王のハインツはティアレーヌに先程まで開かれていた四天王会議の結果を報告していた。
「魔王ティアレーヌ様。今回の四天王会議で、まず賭け事は中止とする旨、決定いたしました」
「良かったわ。では各四天王が協力し合って、プランツ進攻を有利に進めてちょうだい」
と、ティアレーヌが純粋に喜ぶ表情を浮かばせながら、に言った。
彼女は自身の要望がとおったことが、嬉しかったのだ。
とはいえ、ティアレーヌは魔王なわけであり、彼女の要望がとおらないことなど、少なくとも魔王軍では殆どないだろう。
「はい。早速ではありますが、四天王全員の協力の下、早急にマリーアを除く勇者ユミの一行を捕縛することが決定されました。既に、レミリアの部下であるディアナが、数名をを率いてマリーアの応援に向かっております」
「ディアナが向かったのであれば、心配なさそうね」
ティアレーヌはそれほど、ディアナを評価しているし、信頼しているのだ。
「俺もそう思います。ただ万が一にも捕縛に失敗した場合の話なのですが……」
「失敗した場合? 」
「はい。失敗した場合ですが、四天王会議でバルロンを除き、プランツ進攻の時期をズラす程度の問題ではないと判断いたしまた。よってレミリア軍団は、予定通り進攻することに変わりありません」
ティアレーヌやバルロンとは違い、レミリア、ルミーア、ハインツは楽観的だった。
たかが勇者1人がプランツ側の旗頭になったところで、レミリア軍団が困ることなどないと考えているわけである。
「確かに、捕縛に失敗したから進攻を遅らせるというも面倒ね。レミリアにはよろしく言っておいてちょうだい」
「畏まりました」
こうして、魔王軍四天王レミリア軍団がプランツ王国を攻め込むのは確実となった。
レミリア軍団の特色は、何と言っても騎兵が多くを占めているということだろう。そのために機動力が高いのだ。
もちろん、歩兵的な存在もある程度はいるのだが、それでも歩兵部隊は後方に下げて追えば、騎兵部隊を以てして、プランツ中を走り回り、大暴れができることだろう。
因みに、勇者ユミの姉であり【レミリア三騎】の1人であるディアナが、入隊時に希望していた軍団は、別名≪魔法士軍団≫とも呼ばれるルミーア軍団だったというのは魔王軍ではよく知られている話だ。
魔法を得意とするが乗馬の経験が一切ないディアナは、本来ルミーア軍団に入るのが妥当だろう。
しかしながら当時、魔法にも明るい者を自身の側近として強く欲していたレミリアから何度も勧誘を受けたがために、レミリア軍団に入隊したのであった。
レミリアの勧誘に応じた甲斐があったのか、ディアナは相変わらず乗馬の経験がないものの、今日ではレミリア三騎の1人なのである。
「では、そろそろ俺は失礼しますよ」
ハインツがそう言って一礼をしてから、ティアレーヌの執務室を後にした。
そして、1人になったティアレーヌが『魔法電話』の受話器をとり、ダイヤルをゆっくりと回す。
電話をかけた相手は、四天王の1人であるバルロンであった。
それから、20分が経った頃、バルロンがやって来たのである。
「俺を呼び出した理由はなんだ? 」
バルロンは執務室に入ってきて早々に、そう訊ねた。
彼は他の四天王たちと一緒にいる時とは、違う態度をとる。
「勇者一行の1人であるカルロ。この人物の正体に関する情報は、もう掴んでいるんでしょ? 教えてちょうだい」
ティアレーヌもまた、他の四天王がいる時とは違った態度をとっていることは明らかだろう。
「教えてやろう。カルロは、俺が個人的に雇入れた私兵隊の隊長だった。そして本名はカルダス・ロムネー。そう言えば、お前も判るだろう? 」
バルロンは特に気取ることなく、さらりとカルロの本名を述べたのである。そして、さらに言う。
「西ムーシの町の近くにある森で、天使共を殺したのもあいつだ。相変わらず天使共を憎んでいるようだな。お前の天使共に対する態度次第じゃ、対立する気は満々らしい。チラッとアリバナシティの酒場で、そう言ったそうだ」
「そう。カルダス・ロムネーが勇者一行の一員になるとはね。何か意図があってのことなのか、気になるわ」
当然、カルロの本名であるカルダス・ロムネーと言う名は、ティアレーヌも知っている。
「カルダス・ロムネーが勇者一行の一員になった理由だが、情報部の1人が関わっているようだ。奴本人の意図なのか、それとも情報部の意図なのか、そこのところはまだはっきりとはしていないがな」
「情報部が!? 」
ティアレーヌにとっては、思ってもいなかったキーワードをバルロンが口にしたため、驚いたのである。
「驚いたか? それとまた別の話だが、旅の最中に、ジョゼフの奴を喜ばしたりもしているな」
と、バルロンは次から次へとカルロに関する情報をティアレーヌに伝えるのであった。
「ジョゼフを喜ばした? しかも旅の途中って……まさかあのタヌキは【魔王領】を抜け出したとでも言うの!? 」
「いや。そういうわけではない。【アリバナ王国】の西、まあ西ムーシの町に近いところに【ロベステン鉱山】という鉱山があってな。そこには魔法を放つ際に、魔力の消費を抑える鉱石があることが発見されたのだ」
「【ロベステン鉱山】? 聞いたことがないわ。それに魔力の消費を抑える鉱石って、凄いじゃない! 」
ティアレーヌも、カルロと同じく特殊な鉱石の存在を知り、驚き喜んだ。
「そう思うだろう? それで、その【ロベステン鉱山】を、カルロは西ムーシ商会の取締役という立場で奴は競落したわけだ」
「そうだったのね。確かにジョゼフは喜ぶでしょうけど……」
ならば、その特殊な鉱石を魔王軍に供給して欲しかったと、ティアレーヌは思ったのである。しかし、カルロはジョゼフの繋がりを考えると仕方のないことなのだろうと、冷静に考えたのであった。
「後は……これは勇者一行になる前からの話だが、あちこちの【教会】の施設から本や試料を奪取しまくっている。どうやら本人は意味ある行動だと思っているようだな。まあ、確かにおかげで判ってきた情報もあるにはあるが……」
バルロンからすれば、カルロが【教会】の施設から本や資料を奪取するという行動は、アホらしく見えた。
数を打てば当たるにしても、やりすぎなのだ。
「そうなんだ……。彼は病んでいるのかな……」
と、ティアレーヌはカルロを心配するそぶりを見せたのであった。
「それとな……今の話の流れで思い出したのだが、レミリア軍団がプランツを占領しても困らないよう、色々と秘密裏に準備をしている。そのため勝手に予算を使う予定だが、その時になったら決裁書にサインと捺印をしてくれ」
「あっそ。わかったわ」
ティアレーヌは呆れた表情で、そう言った。
しかし、それでもバルロンのことは信頼しているので、特に返事を渋ることはしなかったのである。
「まあレミリア軍団を支援しようと、ジョゼフのところの連中も、下手にこそこそ動いているようだが…………。さて、そろそろ戻って良いか? 俺も忙しいものでね」
「ええ。今日はありがとう」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14