二次創作小説(新・総合)

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フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜
日時: 2022/11/15 22:17
名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)


注意!!!
読むのが最初の方へ
ページが増えています。このままだといきなり1話のあと6話になるので、最後のページに移動してから読み始めてください。



※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はちょっとお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。


「―――また、行くんだね。あの“仮想世界”に。」

《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》。それは、フルダイブ型のVRMMOである。
フルダイブ型VRMMOの祖、《ソード・アート・オンライン》、《SAO》。
私は、そのデスゲームに閉じ込められたプレイヤーの中で、生き残って帰ってきた、《SAO帰還者サバイバー》である。
《SAO》から帰還して以来、私はVRMMOとは距離をおいていたが。

『ねえ、《GGO》って知ってる?』

私、神名かみな 凛世りせは、幼馴染の高峰たかみね 紅葉もみじの一言によって、ログインすることになった。
幼い頃に紅葉が引っ越してから、疎遠になっていた私達。その紅葉から、毎日のようにVRで会えるから、と誘われたVRMMO。行かないわけにはいかないだろう。大好きな紅葉の誘いとあらば。
ベッドに寝転がって、アミュスフィアを被る。
さあ、行こう。
“仮想世界”…………もう一つの現実に。

「―――リンク・スタート」

コンソールが真っ白な視界に映る。
【ユーザーネームを設定してください。尚、後から変更はできません】
迷いなく、私はユーザーネームを【Linose】……【リノセ】にした。
どんなアカウントでも、私は大抵、ユーザーネームを【リノセ】にしている。
最初にゲームをしようとした時、ユーザーネームが思いつかなくて悩んでたら、紅葉が提案してくれたユーザーネームである。気に入っているのだ。
―――でも、《SAO》では違った。
あの時、【リノセ】にしたくなかった理由があり、《SAO》では【リナ】にしていた。
凛世のりと、神名のなを反対に読んで、リナ。それが、あそこでの私だった。
でも、もういいんだ。私は【リノセ】。

コンソールがアバター設定に切り替わった。
普通の人なら誰?ってほど変えるところだけど、私は《SAO》以来、自分を偽るのはやめにしていた。とは言っても、現実とちょっとは変えるけど。
黒髪を白銀の髪に変え、褐色の瞳を紺色にする。おろしていた髪を編み込んで後ろに持っていった髪型にした。
とまあ、こんな感じで私のアバターを設定した。顔と体型はそのままね。
…まあ、《GGO》に《SAO帰還者サバイバー》がいたらバレるかもしれないけど…そこはまあ大丈夫でしょ。私は、PKギルドを片っ端から潰してただけだし。まあ、キリトがまだ血盟騎士団にいない頃、血盟騎士団の一軍にいたりはしたけれども。名前は違うからセーフだセーフ。
ああ、そういえば…《SAO》といえば…懐かしいな。

     
―――霧散むさん

それが、《SAO》時代に私につけられていた肩書だった。
それについてはまた今度。…もうすぐ、SBCグロッケンに着く。
足が地面に付く感覚がした。
ゆっくり、目を開く。
手のひらを見て、手を閉じたり開いたりした後、ぐっと握りしめた。
帰ってきたんだ。ここに。
「―――ただいま。…“仮想世界”。」

「お待たせっ。」
前方から声をかけられた。
「イベントの参加登録が混んでて、参っちゃった。」
ピンクの髪に、ピンクの目。見るからに元気っ子っぽい見た目の少女。
その声は、ついこの前聞いた、あの大好きな幼馴染のものだった。
「問題なくログインできたみたいね。待った?」
返事のために急いでユーザーネームを確認すると、少女の上に【Kureha】と表示されているのがわかった。
―――クレハ。紅葉の別の読みだね。
紅葉らしいと思いつつ、「待ってないよ、今来たとこ。」と答えた。
「ふふ、そう。…あんた、またその名前なわけ?あたしは使ってくれてるから嬉しいけど、別に全部それ使ってとは言ってないわよ?」
クレハは、私の表示を見てそう言った。
「気に入ってるの。」
《GGO》のあれこれを教えてもらいながら、私達は総督府に向かった。
戦闘についても戦闘の前に大体教えてもらい、イベントの目玉、“ArFA system tipe-x"についても聞いた。
久しぶりのVRMMO…ワクワクする。
「あ!イツキさんだ!」
転送ポート近くにできている人だかりの中心を見て、クレハが言った。
「知ってるの?」
あの人、《GGO》では珍しいイケメンアバターじゃん。
「知ってるっていうもんじゃないわよ!イツキさんはトッププレイヤーの一員なのよ!イツキさん率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ!」
「…すこーど…?」
「スコードロン。ギルドみたいなものね。」
「あー、なるほど。」
イツキさんは、すごいらしい。トッププレイヤーなんだから、まあそうだろうけど。すごいスコードロンのリーダーでもあったんだね。
「やあ、君たちも大会に参加するの?」
「え?」
なんか、この人話しかけてきたよ⁉大丈夫なの、あの取り巻き達に恨まれたりしません?
「はい!」
クレハ気にしてないし。
「クレハくんだよね。噂は聞いているよ。」
「へっ?」
おー…。トッププレイヤーだもんなあ…。クレハは準トッププレイヤーだから、クレハくらいの情報は持っておかないと地位を保てないよねえ…。
「複数のスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判いいよね。」
「あ、ありがとうございます!」
うわー、クレハが敬語だとなんか新鮮というか、違和感というか…。
トッププレイヤーの威厳ってものかね。
「そこの君は…初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あ、はい。私はリノセ!よろしくです!」
「リノセ、ゲームはめちゃくちゃ上手いけど、《GGO》は初めてなんです。」
「へえ、ログイン初日にイベントに参加するとは、冒険好きなんだね。そういうの、嫌いじゃないな。」
うーん。冒険好き、というよりは、取り敢えずやってみよー!タイプの気がする。
「銃の戦いは、レベルやステータスが全てではない。面白い戦いを―――期待しているよ。それじゃあ、失礼。」
そう言って、イツキさんは去っていった。
「イツキさんはすごいけど、私だってもうすぐでトッププレイヤー入りの腕前なんだから、そう簡単に負けないわ!」
クレハはやる気が燃えまくっている様子。
「ふふ、流石。」
クレハ、ゲーム好きだもんなあ。
「さあ、行くわよ。準備ができたらあの転送ポートに入ってね。会場に転送されるから。」
―――始めよう。
私の物語を。

大会開始後、20分くらい。
「リノセ、相変わらず飲み込みが早いわね。上達が著しいわ!」
ロケランでエネミーを蹂躙しながらクレハが言った。
「うん!クレハのおかげだよ!」
私も、ニコニコしながらエネミーの頭をぶち抜いて言った。
うん、もうこれリアルだったら犯罪者予備軍の光景だね。
あ、銃を扱ってる時点で犯罪者か。
リロードして、どんどん進んでいく。
そうしたら、今回は運が悪いのか、起きて欲しくないことが起きた。
「おや、君たち。」
「……イツキさん。」
一番…いや、二番?くらいに会いたくなかったよ。なんで会っちゃうかな。
…まあ、それでも一応、持ち前のリアルラックが発動してくれたようで、その先にいたネームドエネミーを倒すことで見逃してくれることになった。ラッキー。
「いくわよ、リノセ!」
「うん!」
そのネームドエネミーは、そんなにレベルが高くなく、私達2人だったら余裕だった。
うーん…ニュービーが思うことじゃないかもしれないけど、ちょっとこのネームド弱い。
私、《SAO》時代は血盟騎士団の一軍にも入ってたし。オレンジギルド潰しまくってたし。まあ、PKは一回しかしてないけど。それでも、ちょっとパターンがわかりやすすぎ。
「…終わったわね。」
「うん。意外と早かったね?」
「ええ。」
呆気なく倒してしまったと苦笑していると、後ろから、イツキさんが拍手をしてきた。
「見事だ。」
本当に見事だったかなあ。すぐ倒れちゃったし。
「約束通り、君たちは見逃そう。この先は分かれ道だから、君たちが選んで進むといい。」
え?それはいくらなんでも譲り過ぎじゃないかな。
「いいんですか?」
「生憎、僕は運がなくてね。この間、《無冠の女王》にレアアイテムを奪われたばかりなんだ。だから君たちが選ぶといい。」
僕が選んでもどうせ外れるし。という副音声が聞こえた気がした。
「そういうことなら、わかりました!」
クレハが了承したので、まあいいということにしておくけど、後で後悔しても知らないよ。
「じゃあリノセ、あんたが選んでね。」
「うん。私のリアルラックを見せてあげないと。」
そして私は、なんとなく左にした。なんとなく、これ大事。

道の先は、小さな部屋だった。
奥に、ハイテクそうな機械が並んでいる。
「こういうのを操作したりすると、何かしら先に進めたりするのよ。」
クレハが機械をポチポチ。
「…え?」
すると、床が光り出した。出ようにも、半透明の壁のせいで出れない。
「クレハ―――!」
「落ち着いて!ワープポータルよ!すぐ追いかけるから動かないでー!」
そして、私の視界は切り替わった。

着いたのは、開けた場所。戦うために広くなっているのだろうか。
「………あ。」
部屋を見回すと、なにかカプセルのようなものを見つけた。
「これは…」
よく見ようとして近づく。
すると。
「―――っ」
後ろから狙われている気がしてバッと振り返り、後ろに飛び退く。
その予感は的中したようで、さっきまで私がいたところには弾丸が舞っていた。
近くのカプセルを掴んで体勢を立て直す。

【プレイヤーの接触を確認。プレイヤー認証開始…ユーザーネーム、Linose。マスター登録 完了。】

なんか聞こえてきた気がした機械音声を無視し、思考する。
やっぱり誰かいるようだ。
となると、これはタッグ制だから、もうひとりいるはず。そう思ってキョロキョロすると、私めがけて突っ込んでくる見知った人物が見えた。
キリト⁉まさか、この《GGO》にもいたの…⁉ガンゲーだから来ないと思ってたのに。まあ、誰かが気分転換に誘ったんだろうけど。ってことは、ペア相手はアスナ?
うっわ、最悪!
そう思っていると、カプセルから人が出てきた。
青みがかった銀髪の女の子で、顔は整っている。その着ている服は、まるでアファシスの―――
観察していると、その子がドサッと崩れ落ちた。
「えっ?」
もうすぐそこまでキリトは迫っているし、ハンドガンで攻撃してもどうせ弾丸を斬られるだろうし、斬られなくてもキリトをダウンさせることは難しい。
私は無理でも、この子だけは守らなきゃ!
そう考える前に、もう私の体は女の子を守っていた。
「マスター…?」
「―――っ!」
その女の子が何かを呟くと、キリトは急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「…?」
何この状況?
よくわからずにキリトを見上げると、どこからか足音が聞こえた。
「…っ!ちょっと待ちなさい!」
クレハだ。
照準をキリトに合わせてそう言う。
「あなたこそ、銃を降ろして。」
そして、そんなクレハの背後を取ったアスナ。
やっぱり、アスナだったんだね、私を撃とうとしたのは。
一人で納得していると、キリトが何故か光剣をしまった。
「やめよう。もう俺たちは、君たちと戦うつもりはないんだ。残念だけど、間に合わなかったからな。」
「間に合わなかった?何を言っているの?」
クレハが、私の気持ちを代弁する。
「既にそこのアファシスは、彼女をマスターと認めたようなんだ。」
………あ、もしかして。
アファシスの服みたいなものを着ているなーと思ったら、この子アファシスだったの?
というか、マスターと認めた…私を?
あー…そういえば、マスター登録がなんとかって聞こえたような気がしなくもない。
うん、聞こえたね。
あちゃー。

「ええええ⁉」
この子がアファシス⁉と驚いて近づいてきたクレハ。
「ねっ、マスターは誰?」
「マスターユーザーネームは【Linose】です。現在、システムを50%起動中。暫くお待ち下さい。」
どうやら、さっきカプセルに触れてしまったことで、私がマスター登録されてしまったようだ。やっちゃった。……いや、私だってアファシスのマスターになる、ということに対して興味がなかったといえば嘘になるが。クレハのお手伝いのために来たので、私がマスターとなることは、今回は諦めようと思っていたのだ。
―――だが。
「あんたのものはあたしのもの!ってことで許してあげるわ。」
クレハは、からかい気味の口調で言って、許してくれた。
やっぱ、私はクレハがいないとだめだね。
私は改めてそう思った。
クレハに嫌われたらどうしよう、大丈夫だと思うけど万が一…と、さっきまでずっと考えていたからだ。
だから、クレハ。自分を嫌わないで。
クレハもいなくなったら、私―――
ううん。今はそんな事考えずに楽しまなきゃ。クレハが誘ってくれたんだから。
「私はクレハ。よろしくです!」
「リノセ。クレハの幼馴染です!」
「俺はキリト。よろしくな、リノセ、クレハ!」
「アスナよ。ふたりとも、よろしくね。」
自己紹介を交わした後、2人は優勝を目指して去っていった。
きっと優勝できるだろう。あの《SAO》をクリアした2人ならば。
私はその前に最前線から離脱しちゃったわけだし、今はリナじゃないし、2人にバレなくて当然というか、半分嬉しくて半分寂しい。
誰も私の《SAO》時代を知らないから、気付いてほしかったのかもしれない―――
「メインシステム、80…90…100%起動、システムチェック、オールグリーン。起動完了しました。」
アファシスの、そんな機械的な声で私ははっと我に返った。
「マ、マスター!私に名前をつけてくださいっ。」
「あれ?なんか元気になった?」
「えっと…ごめんなさい、そういう仕様なんです。tipe-xにはそれぞれ人格が設定されていて、私はそれに沿った性格なんです。」
「あ、そうなんだ。すごいね、アファシスって。」
じゃあ、このアファシスはこういう人格なんだね。
「名前、つけてあげなさいよ。これからずっと連れ歩くんだから。」
「うん。」
名前…どうしようかな。
この子、すごく綺麗だよね…綺麗…キレイ…レイ。レイ…いいじゃん。
「レイ。君はレイだよ。」
「レイ...!登録完了です。えへへ、素敵な名前をありがとうございます、マスター。」
アファシス改め、レイは嬉しそうに笑った。
「…リノセ、あんた中々センスあるじゃん。あのときはずっっと悩んでたっていうのに。」
クレハが呆れたように言った。まあ、いいでしょ。成長したってことで。
「えと、マスター。名前のお礼です。どうぞ。」
レイは、私に見たことのない銃を差し出した。
「ありがとう。これは何?」
受け取って訊いてみると、レイはニコッとして答えた。
「《アルティメットファイバーガン》です。長いので、《UFG》って呼んでください。」
《UFG》……何かレアそう。
また、大きな波乱の予感がした。

次へ続く

Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.17 )
日時: 2022/12/08 17:07
名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)

キャラ募集も、人数制限なくしました!みなさんどしどしお願いします!
(流石に多すぎたら選びたいと思います)
では、本編どうぞ!

「…ふう…」
《砂に覆われた孤島》にて。
私は、1人で狩りをしていた。
全く…インしてる仲間は少ないし、いるからいいやと思ったらみんな揃ってフィールドに出掛けてるし、レイはアスナ達とお茶会に行くって置き手紙あったし。
今日はいつものリアルラックさえないなんてね。
まあいいや。レベル上げてみんなをびっくりさせちゃお。

流石に1人でフリューゲル攻略はやめておこうかな、と思って来たのだが。
みんなフリューゲルに行っているからか、ものの見事に誰もいない。閑散としている。おかげでエネミーが湧きまくり。
あっという間に3つも上がってしまった。
「あれ…?こんなとこあったっけ…?」
見逃していたのだろうか。見たことのないダンジョンを見つけた。
「……行くか。」
《砂に覆われた孤島》は結構序盤のフィールドだし、1人でもなんとかなるだろう。ヤバそうだったら剣を使えばいいし。そう思い、私はそのダンジョンに入った。
「あれ…?」
と思ったら、造りがフリューゲルと似ている。デザインは同じだ。ということは…
あちゃー。フリューゲル攻略の途中で入ってくる、あのよくある“キーアイテム”系だな。
そう直感した。
「うん、行こう!」
戻るのもちょっとシャクだし。こうなったら1人で攻略してやる!
そう思い、私はそのまま突き進んだ。
「ボス部屋…?かな…?」
ここまで剣を使わずに来たのは自分でもよくやったなあと思った。
まあ、スナイパーの意地、というやつだろうか。
でも、ボスでは流石に、無理だと思ったら剣を使おう!
決意して、ワープゲートに身を投じた。

「うっわ!」
ボスは、あの懐かしの目玉ボスだった。炸裂弾3と4で敵を一気に一掃し、このあと敵が出てくるであろう場所に電磁スタントラップと近接地雷。
固定砲台にHPを削られていたので、壁に隠れて目玉からのビームを避けつつ弱点攻撃。
ヘイトが全向きだから少しやりにくかったが、なんとか凌げた。
そして、炸裂弾を装填、スキルのリキャストが回復したのを確認して飛び出す。
「…ッ!」
案の定、ビーム発射体勢に入った目玉君。私はそのタイミングを狙って目玉君に炸裂弾を2発直撃させると、なんとか目玉ボスは倒れてくれた。
「あー…なんとかなった…」
はああ…と大きなため息をつき、壁に背中を預ける。
スナイパーである分、今まで仲間にいっぱい頼ってきた。勿論それは大事だが、ちゃんと実力も磨かないとな…。
絶対、慢心は駄目だ。
………いや、命が関わってるわけじゃないよ?でも、私ってガチ勢だし。
「あ、レイからメールだ。」
どうやら、お茶会が終わったようで、私を探す内容のメールだった。
「…帰るか。」
ファストトラベルでホームへと帰る。
まあ、「マスター!心配しましたあああ!」とレイが抱きついてきたのは…うん、いつものことだ。

「―――ん…」
レイと2人でセンターストリートを歩いていると、1人で近くをあるく女の子を見つけた。
その子はそう、唯葉に似ていて、ユーザーネームは【Yuuha】…ユーハだ。
あー…唯葉。今ダイブしてたんだ。
まあでも、ちょっと距離おいて見てるーって言ってたし。
目配せして微笑み合うだけで済ませ、また私はレイに意識を向けた。
「なるほどね…。確かにツケられてるわね、凛s…リノセ。」
その唯葉の呟きも、しっかり耳に入れながら。

ツケられてる。うん、そのとおりだ。
私は、シュピーゲルにツケられている。被害妄想とかじゃなくて、本気ガチ
正直怖いけど、だからと言ってやめてと言いに行くわけにもいかないし。撒こうにも、この前AGIステータスに馬鹿ふりしたって愚痴をキリトたちに言っていたから無理だろうし。
唯葉にちょっと頑張ってもらわないといけないかもしれない。
でも、一応シュピーゲルはまだ何もしていないからこちらも情報収集くらいだけど…。
唯葉、ごめんねマジで。色々手伝わせちゃって。
今度唯葉の好きなコーヒー奢る…と思いながら、ケーキ屋のチーズタルトに目を輝かせるレイと共にケーキ屋に入った。
………イツキ好きそうだし、ビターケーキにしよ。

この前、イツキへの恋心を自覚したばかりの私。
なんか…なんか、《GGO》だけの気がしなくてあれ、なんだっけ…?と悩んでいる今日この頃だが。
《GGO》だけの気がしない…つまり、他のゲームまたは現実リアルで会ってるってことかな…?
最近は、香住に時々やらせられるオフラインゲームと《GGO》くらいしかやっていない。ゲーム説はなし。となると、現実リアル説だけど…誰だろ?
まず、啓治は何もかも違うから論外。
口調とかなら変えられるかもしれないけど、啓治とか絶対アサルトライフルかガトリング…あとはぶっ放す系のランチャーとかやってるよね。スナイパーライフルとか「装填が面倒い」とか「遅い」とかの理由で嫌ってそうである。
それに、唯葉からのメールからも、多分啓治ではないだろう。
となると…?誰だ?現実リアルの知り合いで、《GGO》をやってそうな人…?
漣くん…はゲーム苦手って香住言ってたし、そもそもソード選びそうだし…。僕呼びじゃないし。
はっ、もしかして、香住の消しゴム踏んでたサヌキくん…?うん、今のは絶対違うね。
もっとスラッとしてて、頼りがいがあって、人気者で、口調がああいうタイプの人…。
1人だけ、思い当たる人がいた。

……雪嗣さん…?
イケメンだし、イメージ合ってるし、やってるならスナイパーライフル持ってそうだし、人望あるし、頼りがいあるし、なんか声似てるし。
まあ、お偉いさん…だから、やってるのかな…?っていうのはあったけど。
うー……どうなんだろう。でも、そんな気がする。
雪嗣さんである気がする。
でもまあ、雪嗣さんに直接訊くわけにもいかないしなあ。
あっちから言ってくるのを待つか…。
雪嗣さんであるなら、あっちはもう気付いてるだろうし。
なんてったって、色と顔のほくろ変えただけだからね。絶対気づく。
まあ、そんなこんなで、私はその思考に区切りをつけ、ケーキの会計をして店を出る。
わざと、今回はケーキの中身がわからないようにしてみた。
この前、「この紅茶いいね、買おう!」ってシュピーゲルの監視下で言ったら、なんかこの前その紅茶をシュピーゲルが買い溜めしてたから。
ストーカーはご遠慮くださいと張り紙を付けておきたいくらいである。
「マスター。イツキがいますよ。沢山の女の子に囲まれています!」
レイが私の肩を叩いて指さした。その方向には、確かに、女子軍団に埋もれたイツキがいる。今日もアイドル顔負けの人気さで大変そうである。
笑ってるけど…そんなに、楽しそうじゃない…?のかな…?
まあでも…邪魔するわけにもいかないし。
「今は取り込み中みたいだし、後で声掛けよっか。ホームに帰ろう、レイ。」
「そうなんですね。わかりました!」
ホームに帰ったらお茶をして、その後フリューゲルに行こうと話をしながら、ホームの建物に向かう。
建物に入る前に、後ろから声をかけられた。
「「やあ、リノセ。」」
「ッ⁉」
イツキ…もまあまあびっくりしたけど、一番ビックリしたのは近付いてきていたシュピーゲルが話しかけてきたことだ。
じりじり近付いてきていたことはわかってたけど、遠回りしてたから用事でもできたかなあと思ってた。
「イツキ………と、シュピーゲル。」
「酷いなあ。僕と彼で温度差がないかい?」
わかっているならお引取り願えないだろうか。メダルぽいっとしてイツキと帰りたい。
シュピーゲルの薄い笑みと滲む狂気に、体が緊張して冷や汗が出る。
私は、「そうだ。」と言ってコンソールを操作した。
「はい、シュピーゲル。ずっと持っててごめんね。」
「……?あっ…!君が持ってたんだね。そうか、ドロップしちゃってたのか、ありがとう。」
「ごめんね。」
メダルだ。メダルを渡してぎこちなく笑うと、シュピーゲルもにこにこと笑った。
上手く笑えているだろうか。ちょっと引き攣っているだろうか。表情を貼り付けるのは結構やっていたのに、こういうときだけ上手くできない。
「リノセ、これから攻略に行く約束だよね。そろそろ行こうか。」
咄嗟にイツキがそう言う。
それがシュピーゲルから離れるための凌ぎだと察した私は、「そうだね。」と頷いてシュピーゲルを見た。
「じゃあ、他の仲間も迎えに行かなきゃだから。じゃあね。」
「ああ。」
またね…と小さく笑ったシュピーゲル。その声を無視して、シュピーゲルのその向こうにいる唯h…いや、ユーハに目配せして、イツキ達とホームに入っていった。
「あの…シュピーゲルだっけ?は…色々としつこいプレイヤーだね…。」
ホームに入ると、イツキがそう呟いた。
「うん…。中々癖が強いプレイヤーだよね…。」
癖が強いで収まるのか謎なところだが。シュピーゲルなら胴体くらいは飛び出てそうである。
「ところで、君がインして暫くは見なかったけど、何処に行っていたんだい?」
イツキが訊いてきた。
「ん…なんか、一緒に行く人いなかったから、《砂に覆われた孤島》のダンジョン行ってた。」
「そうなのかい?」
私はうんうんと頷いて肩をすくめた。
「珍しく、インも少ないし他の人はどっか行ってるしで誰もいなかった。」
「うぅ…すみませんっ…」
「別にいいんだよ。レイは自由なんだから。」
お茶会に行っていなければ…と悔しがるレイを宥めて、私は笑った。
「なーんにもなかったから。だいじょーぶ。ね?」
「…はい。」
もう、レイったら…と苦笑していると、イツキが話を変えた。
「…で、その手荷物は?」
「ああ、ケーキだよ。イツキもよかったらどうぞ。その後、空いてたらフリューゲルもどう?」
「じゃあ、いただくよ。フリューゲルも一緒に行こう。」
「了解です!」
レイが珍しくコーヒーを淹れた。最近秋が近づいてきて寒いという情報をどこからか仕入れてきたのだろうか。
「ありがとう、気が利くね、レイ。」
「えへへ、ありがとうございます、マスター。」
いつものように3人でテーブルを囲み、雑談を始めた。

「―――ケイ?そんなプレイヤーいるんだ。」
「ああ。君が《GGO》に来るちょっと前までしょっちゅうインしていたそこそこ上手いプレイヤーでね。最近戻ってきたらしいんだ。」
「へえ?…武器は?」
「ガトリング。時々ランチャー姿も見るけどね。」
…“ケイ”でガトリング…ふふ、なんか啓治みたい。世界は広いし、ユーザーネームと使う武器が似てる人なんてごまんといるだろうけど。
「誰かを探してるみたいだったよ。」
「そうなんだ?誰だろうなあ…。」
今度会ったら手伝ってあげようかな…?急用とかなければ。
…ふたりきりはご遠慮させていただくとして。理由は…まあ…うん。わかるよね。
そういうことで、その後、私達3人は、ノリノリでSBCフリューゲル攻略に向かったのだった。
まあ、その後にキリトやクレハ達と狩りにも行ったんだけど。

✦✧✦

《GGO》に来ると、少し懐かしい鋼鉄の街が視界に広がった。
俺は啓治だから、ユーザーネームは“ケイ”。スコードロンには入っていない、まあまあのランカーだ。
「ふう…」
まあ、ここには凛世を探しに来たが…この世界には沢山のユーザーがいるから、見つけ出すのは難しいという人もいるだろう。
まあだが、凛世がいるなら、あいつはすぐトッププレイヤーになるだろう。だから…
「トップから炙り出すか…。」
凛世がいるなら、トップさえ見れば見つかるはず。

―――そして、ソレは急に起こった。
やはり、俺は運がいい。
気晴らしに、前一緒に攻略などをしていた仲間とフィールドに出る。
「おい…やべえ、《デファイ・フェイト》がいるぞ」
「《デファイ・フェイト》?」
仲間に、《デファイ・フェイト》とは何か訊く。仲間が言うには、トッププレイヤー揃いのスコードロンだそうだ。
始めて数ヶ月のニュービーがリーダーらしいが、その実力はキリトやアスナに勝り、更にはトップ入りも一ヶ月に満たないとかなんとか。
しかも《アルファルド》のリーダー、一部のプレイヤーには“孤高”と崇拝されるイツキさえそいつを気に入り、自身が作ったスコードロンの《アルファルド》を自ら脱退してまで《デファイ・フェイト》に入ったそうだ。だというのに、本人は人たらしであることを自覚していないんだと。
しかも、そいつは初日でアファシスを手に入れたリアルラックの持ち主でもあるそうだ。
うわあ…なんかすげぇやつだな。しかも、リアルラックがすげぇところとか、無自覚人たらしなところとか、ゲーム上手いところとか、凛世に似まくりだな。もしかして…凛世?
そう思い、仲間が指さした《デファイ・フェイト》の奴らを見る。

偵察担当の仲間によると、奴らは7人で、メンバーは、キリト、アスナ、シノン、イツキ、クレハ、アファシス、そしてリーダー、“リノセ”。
確信した。
リノセが、凛世だ。

次へ続く

Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.18 )
日時: 2023/02/15 08:09
名前: イナ (ID: F5B8s22.)

※注意
本来のゲームでは、スキルフリーズ弾もAMRグリムリーパー(GleamReaper)もDLCで追加されます。この話ではソレをすっ飛ばしてゲットしています。ご容赦ください。


✦✧✦

俺、坂本 啓治は、ケイというユーザーネームで《GGO》に来ていた。
そして―――凛世の《GGO》での姿、“リノセ“を目の当たりにしている。
彼等は、俺たちを見つけた。だが、警戒しているだけで何もしてこない。
どうやら、俺たちが仕掛けない限り戦おうとはしないようだ。
凛世―――いや、リノセは、俺たちを暫く見つめた後、手に持っていたAMRブレイクスルーをしまい、仲間たちに声をかけて、自分が登っていた大岩から飛び降りて、どこかへファストトラベルしていった。ソレを追うように、仲間たちも次々にファストトラベルしていく。
―――リノセは、スナイパーライフルを使うのか…。
そう思いながら、俺は狩りを再開する。
ただ、リノセの周りに男がたくさんいるのを知り、少し不機嫌にはなっていた。
その憂さ晴らしにぶっ放したら、いつもの1.5倍近くはエネミーを狩っていたが。

とあるトーナメント制の大会が行われ、その大会にリノセが参加すると聞いて、俺はその大会を見ることにした。リノセは、最近アップデートで追加されたSBCフリューゲルの攻略も行いながら、しっかりと大会参加やスコードロンの管理、仲間たちとの狩りやクエストに行くという、大変器用で他人を贔屓しないプレイを続けているそうだった。
凛世らしいな。この世界でも…《GGO》でも、お前はちっとも変わってねえ。
嬉しく思い少し顔を綻ばせながら、俺は今回彼女が参加する大会が映るモニターに目を向ける。
もうすぐ彼女の番だ。誰と戦うのかは知らないが…。リノセの今の実力に興味があった。
『次の対戦ユーザーは準備を行ってください』
その電子音とともに、画面が戦いが行われるフィールドに切り替わる。
そして、解説が口を開いた。

『さて、今回の対戦は、最近話題の《デファイ・フェイト》、そしてPK集団として有名な《ヘヴィ・
 マッサークル》のトップ争いです。しかも今回、《デファイ・フェイト》は、2人ともスナイパーと
 いう驚きの人選。どのような戦いを見せるのか楽しみです。』

何…⁉1人は凛世だと知っているが…もう1人、スナイパー⁉凛世がその人選ってことは…それでも勝てるって自信があるってことかよ。それとも蛮勇?いや、凛世に限ってそんなことはない。
なら…凛世には、リノセには、その実力があるってことなのか…⁉
俺と同じく驚愕していたもう1人が声を上げる。

『それは…いくらトッププレイヤー揃いだからといって、少々舐めてかかっているのではないです
 か?相手は有名な実力もあるPK集団で、対プレイヤーも慣れているのに…』

ごもっともだ、と俺は誰もいないホームでウンウン頷く。
そうすると、解説はふっと笑って意味深な一言を発した。

『おそらく…大体の方は、戦いをご覧になれば理由がわかると思いますよ。』

そうして、間もなく、《デファイ・フェイト》対《ヘヴィ・マッサークル》のトップ同士の対戦が始まった。

『さあ、始まりました。《ヘヴィ・マッサークル》、どんどん動き、罠を仕掛けながら《デファイ・
 フェイト》を探していますね。あれ…《デファイ・フェイト》が見当たりませんね?』

1人が言った。それに、解説が答える。

『いや…あそこにいますね。画面の端っこ。ビルの屋上に1人…《ヘヴィ・マッサークル》のリンジさ
 んとスーレンさんからは死角ですね。しかも、モニターだからいいものの、実際の戦場では『メタ
 マテリアル光歪曲迷彩』によって完全に不可視化しています。誰でしょうか…あの黒の衣装は…リ
 ーダーのリノセさんのようですね。』

解説の説明でやっと気付いた。リノセは、普通なら登れないようなビルの屋上で身を潜め、しっかりとアンチマテリアルライフルを覗いて照準を定めていた。
しかも、スキルの効果かわからないが、バレットラインは出ていない。

『本当だ…!気づきませんでした!もうお一方はどこでしょうか…?』
『わかりません。まだ姿は見えていな―――ッ⁉』

解説は、途中で言葉を失った。
それはそうだ。俺も、息を呑んだ。リノセは、5000メートルは軽く超える距離の中、見事、片方のプレイヤー…スーレンを頭抜撃ヘッドショットしたのだ。
そして、攻撃によって光歪曲迷彩がとれたリノセは、すぐに屋上から飛び降りて場所を移動する。
狙撃手を探しながらも慌てて蘇生しようとするリンジ。
そこに、ズガアアアンと地雷の音が響いた。
さっきの頭抜撃ヘッドショットによって吹き飛んだ死体。死体に地雷は反応しないが、そこに駆け寄った敵プレイヤーには反応する。
リノセは、ソレを計算して撃ったということだ。
そして―――リノセがさっきまでいたビルとは反対側に映ったカメラ。

『いました…!《デファイ・フェイト》側の2人めです…!』
『はい。上手い位置取りですね。単純と見せかけて、こちらも死角だし、何よりも、リノセさんと連
 携しやすい位置取りをしています。』

《デファイ・フェイト》…リノセのスコードロンの2人め、リノセのパートナーは…。

『2人めは、《アルファルド》の元リーダー、《デファイ・フェイト》のメンバーであるイツキさんで
 すね。』

同じくスナイパーライフルのAMRグリムリーパーを構えた男だった。

『ユーザーの小話メモによると、彼のAMRグリムリーパーは、以前リノセさんとイツキさんがフィール
 ドを攻略したときにドロップしたものをリノセさんがカスタマイズしてイツキさんにプレゼントし
 たものだそうです。逆にリノセさんの付けるピアスは、イツキさんから贈られたものだとか。』
『そうなんですか?相棒のようでいいですね!』

そのクソいらねえ小話メモで、俺はイツキに嫉妬する。
―――そのAMRグリムリーパーを奪いたいくらいに。
勿論そんなことをしたらリノセが傷つくし、悲しむからそんなことはしない。だけど…
やっぱり俺は男だから、苛立ってしまった。
嫌、本当は…羨ましかった。

戦いに視線を戻した解説達。俺も気持ちをなんとか落ち着かせてモニターを見る。
イツキは、そのまま通話機に手を当てて通話体勢に移った。

『おっと、ここで隙の多い通話を使うんですね…?少し聞いてみましょう。』

観覧者は、ユーザー同士の会話や通話も盗み聞きすることができる。俺も内容は気になったので、耳を傾けていた。

《リノセ、奴らは地雷に引っかかったよ。予想通り回復に手間取ってる。地雷に仕掛けたスキルフリ
 ーズに気付いたみたいだね。》

スキルフリーズ⁉入手が困難のはずの弾丸系スキルか…。地雷が爆発すると、爆発に巻き込まれたプレイヤーに地雷の爆発で発動された弾丸、スキルフリーズ弾が当たるという仕組みらしい。このスキルは、当たった相手のスキルが一定時間使えなくなるらしい。そうなると、リンジはガジェットのリジェネ増加を待つしかなくなる。
そういうことだ。

《あっちも焦って正常な判断ができないみたいだね。スーレンを全く蘇生しようとしないよ。》
《そう?あれま、意外と単純?了解、私は作戦通り出るから。支援は任せたよ。》
《任せてくれ。君も、無茶はするなよ。》
《あはは、善処しまーす。そっちもねー!》

そんな軽い会話を重ねて、2人は通信を切った。
リノセ…いつもより声が弾んでた。しかも、あんなに信頼し合って…。
リノセ、お前に…俺の知らない間に、一体何があったんだよ…。
そう心のなかで嘆く俺に構わず、戦いは進んでいく。
解説たちは視点をリンジに移した。

『《ヘヴィ・マッサークル》の生き残り、リンジですが…』

「なんでっ、俺がっ………こんな目にっ…!!」
息を切らしながら、涙目でリノセやイツキを探すリンジ。その姿に最早冷静の「れ」の字もなく、ただただ銃弾を無駄にしていた。
うわ…だめだこりゃ。

『冷静さを失っていますね…』
『仕方がないでしょうね。スナイパー2人は前代未聞な分、経験がなくて焦っていたのでしょう。しか
 も、リノセさんとイツキさんの連携とプレイヤースキルが高いんですよ。』
『そうですね〜…』

解説達もリノセ達は異常な強さだと認めた。
そして…慌てていたリンジの真正面に、影が降りてくる。
「やっほ!リンジさんっ。」
スナイパーライフルを右手に、空いている方の手で手を振る、リノセだった。
アップのモニターだからわかる。改めて、リノセのアバターは現実リアルの姿をちょっと変えただけだ。リノセらしいし…そうだと思ってたが。
スナイパーなのに…何で出てきてんだよ⁉

『リノセさんが出てきた…⁉スナイパーライフルを手に持ったままですね…。一体何故でしょうか』
『……ちょっと意図が読めませんねえ…』

これには、解説もお手上げのようだ。
「リノセッ…⁉」
リンジも驚愕のご様子。
しかし、流石PK集団のスコードロンリーダー。すぐアサルトライフルを構える。
「ぶぁあか!ここに来たが運の尽き―――ッ⁉」
撃とうとしたその瞬間。
「あれれ、当たんないね?バレットサークル使ってないのー??」
挑発気味に笑ったリノセが、見たことのない光学銃で移動を始めた。
ヒュン…と移動していくリノセ。俺は、あんな武器あったか…?と首を傾げていた。
その俺の疑問に答えるように、解説が言う。

『あれは、彼女のアファシスが彼女にプレゼントした彼女専用の武器ですね。確か、《UFG》でした
 か。元々はこの後実装される予定でしたが、ザスカーはその取りやめを発表しています。』
『アファシスのプレゼント機能の調整でしょうね。なるほど…移動系の《UFG》を使って、囮となって
 いるわけですね。』

挑発に見事乗ったリンジは、イツキの存在も忘れてリノセを追い続ける。リノセは、ビルを生かしてリンジの狙撃を巧みに躱していく。それにまたまた焦っていくリンジ。
遠くから―――リンジを、赤いバレットラインが刺す。リンジはそうして、漸くイツキの存在を思い出した。

『いや…囮、というのは語弊があるかもしれませんね。』
『え…?』

焦っていた状態で頭にバレットラインを突きつけられたリンジ。リンジは、今度はそっちに慌てて、リノセを狙うのをやめて一生懸命に前後左右上下に動き始めた。
そう、本当は…………イツキは、スナイパーライフルで撃とうとしているわけではなかったのだ。カメラに映る彼は、それこそ照準はリンジから外さんとしているものの、トリガーに指は置いておらず、バレットラインを表示することだけに集中しているように見えた。
彼の狙いは、リンジの意識をイツキに向け、更にリノセが一番撃ちやすい環境を作ること。
さっきでもできなくはなかったかもしれないが、リンジが冷静さを取り戻してスーレンを蘇生しようとする可能性があったので、なんとかしてリンジを、スーレンから遠いところに移動させたかったのだ。それを上手く活用して心境の操作までも行った、ということ。

『真の囮はイツキさんの放つバレットラインです。そして…』

本当にリンジにとどめを刺すのは―――
「すぅ……」
ザッと壁を蹴って飛び上がり、宙返りしながらリンジの頭上の空中で愛銃を構え、一発撃ったリノセ。
その弾丸は、リンジを脳天から貫いた。
リンジはダウン状態に。2人がそうなったので、勝負がついた。

『はい。勝者―――』
『勝者、リノセ&イツキ ペア。』

解説の言葉に続いて、勝利を告げる電子音が響いた。
「…強いな、リノセ…」
凛世が、元々ゲーム好きで、プレイヤースキルも高いのは知ってた。だけど…ここまでとはな。

「ナイス、イツキ。囮ありがとね!」
「リノセもね。やりやすかったよ。無事で良かった。安心したよ」
「もう、いっつも大袈裟なんだから…」
2人は、お互いに駆け寄ってパチン!とハイタッチをし、言葉を掛け合った。
何ヶ月か開けてたせいでの腕の訛と、それからコイツらの成長と…それが重なって重なって、俺はもう、俺ではもう、アイツらに敵わないほどの実力差が、いつの間にかできていた。
そして。
イツキ…俺はあの男の足元にも及ばない男だと、なぜだかわからないが、半分直感的に、感じた。
リノセ…凛世。
お前の心は、今、あいつに向いている…のか?

次へ続く
次は多分、リノセSideか凛世SideかイツキSideになると思います。

Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.19 )
日時: 2022/12/12 21:31
名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)

「今日は目一杯楽しんでよ、凛世!」
「はいはい。早く行きなよ。漣くん、待ってるよ。」
「ありがとう凛世!あ、聖夜、お待たせっ!」
嵐のような人だ…と思いながら、香住を見送った。
今日は文化祭。今日と明日に分かれていて、私が歌いながら踊るステージ発表は明日。今日は、全校のクラスが出し物をする日だ。
まあ、ということで、香住は彼氏の漣くんと文化祭デートでございますけれども。
私達のクラスは王国喫茶。王国の宮殿みたいな内装で、ウエイトレスはメイドと執事。料理は結構豪華で、お客様は、呼び方を指定した、お洒落な名札をつけてもらう。
呼び方は、男性用で「陛下」と「殿下」、女性用で「お嬢様」と「姫様」。その他で「ご主人様」だ。
私は…うん、満場一致で接客だった。解せない。何故だ。
まあ、接客だけだし、何ということもないけれども。
私は午前中のシフト。午後は空いている。香住は10時〜14時、漣くんもその時間。
「さ、凛世ちゃんも着替えて着替えて!」
そんなこんなで、私達の王国喫茶は開店したのだった。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、お嬢様、姫様。御案内致します。」
名札を付けた他校の女の子2人を案内する。
途中、「え、かわい!」とか、「この子特に本格的…」とか呟いていたのは気付かずに。
「こちらになります。」
執事くん達が「どうぞ、お嬢様」「どうぞ、姫様」と椅子を引いて座らせる。
「こちら、メニューです。お決まりになりましたらお知らせください。失礼します。」
丁寧にペコリとお辞儀して、私達は下がった。
「いやあ、凛世ちゃん!もう完全にメイドさんだねぇ!何ならもう王家とかに仕えちゃいなよ!」
「え、やだ……」
友達のアスカちゃんに言われたけど、流石に仕えるのは嫌だ。演技は楽しいけど、毎日は疲れそうだし。
「今日は頼むよ〜!」
「はいはい。じゃ。」
入り口の人が案内に向かったので、私が入り口へと向かう。
中々楽しいものだね。去年は私、なんとか厨房になってたから経験できなかったけど。
接客も楽しい。
カランカラン、とウェルカムベルが鳴り、またお客様が入ってくる。
どうやらカップルのようで、「殿下」と「姫様」の名札を付けている。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、殿下、姫様。2名様ですか?」
「えっ、は、はいっ!」
姫様が狼狽えつつもこくこくと頷いたので、「御案内致します」と言って席に案内する。
さっきのように接客すると、さっきの女の子二人組から「決まりましたー」と言われたので、そっちに向かう。
「ご注文をお聞きします。」
「えっと、アイスコーヒー1つ、アイスココア1つ、あとチョコマフィン2つ、チーズタルト2つでお願いします。」
チーズタルト2つにレイのことを思い出してくすっと笑いながらも接客を続ける。
「ご注文をご確認します。アイスコーヒー、アイスココア一点ずつ、チョコマフィンとチーズタルトを2点ずつでよろしいですか?」
「ダイジョブです!」
「畏まりました。少々お待ち下さい。」
早足で厨房に向かい、メモの紙を渡して、また入り口へ。
あー忙しい、忙しい。
「凛世ー!来たわよっ!」
「やっほ、神名さん。2人でいいかな?」
「畏まりました、陛下、お嬢様。お席へご案内します。」
香住と漣くんも来た。いいコンビだなあと思いつつも席へ案内し、注文確認は他の執事くんやメイドちゃんたちにおまかせして、入口へ向かう。
「あ、神名さん。接客中ですか?」
そこへ、場に似つかない制服姿の生徒会長の杉原ちゃん。後ろにスーツや制服が見えるので、あの話にあったお偉いさんの御案内だろう。
「はい。そうです。私のクラスは王国喫茶なので。空いた時間に是非いらしてくださいね。」
ニコっと笑ってそう言うと、杉原ちゃんは
「ありがとう、そうさせてもらおうかな。」
と言って、お偉いさんを連れて去っていった。
私はちょうど来たお客様の接客に。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、お嬢様。」
全体的に女の子が多いけど、まあ王国喫茶っていかにも女の子が好きそうなもんなあ…とか思った。
そういえば…

『偉い方が、この学校を案内ではなく、まわることがあるから。もしかしたらこのクラスにも来ることがあるかもしれないので、失礼のないようにね。』

先生がそう言ってたけど…。案内の後…なのかな?午後かな?
まあいいや。忙しい忙しい。

それは、本当に突然だった。
「―――ッ⁉」
お客様の御案内をしようとすると、スーツ姿の雪嗣さんが現れ、目を見開く。
…うん。完全なるフラグ回収…。
「やあ、また会ったね、凛世ちゃん。この高校だったんだ。」
「雪嗣さん…。おっと、いらっしゃいませ、お待ちしておりました。“陛下”」
うわ……なんか、香住や漣くんをそんなふうに呼ぶのは何も感じなかったのに、雪嗣さんだとなんか…なんかっ………なんかだ!!
恥ずかしい…のかな。雪嗣さんがイツキじゃないかって感じてる分、変に身構えちゃう…。
そう……私は、イツキが、好きだから。
「っはは、君にそう呼ばれるとなんだかむず痒いね。」
「ふふ…私もです。さあ、お席にご案内します。こちらへどうぞ。」
でも…会えてよかった。ラッキーだな、雪嗣さんがここに来てくれて。さすが私のリアルラック。
「ご注文はお決まりですか?」
案内の後に雪嗣さんに呼ばれた私は、メモを持って雪嗣さんに訊いた。
「ブラックのアイスコーヒーとモンブラン1つ頼むよ。」
「畏まりました。」
「ああ、あと……」
雪嗣さんは、私にしか聞こえないような声で言ってきた。
「その姿、似合ってるよ。かわいい。」
「…ッ……ふー…ありがとうございますっ。」
よし。よく悶えなかった、私。よく耐えた。
そうして、私は雪嗣さんの接客を最後に、シフトを終えた。
「楽しみ〜!」
制服に着替え、早速、最後の文化祭をまわり始めた。

「―――フォトスタジオ?」
「はいっ。是非撮って行ってくださいっ、神名先輩!」
2-3にて。
私は、フォトスタジオと書かれたところに来ていた。
衣装も着れて、撮影は父がプロのカメラマンの人だそう。メイクもしてくれるって。
無料でいいから撮って、宣伝のために公表したいとかなんとか。
「別にいいけど…本当に無料でいいの?」
「宣伝に使わせていただくんですから、当然ですよ!」
まあ、後輩のそんな頼みを断れるはずもなく。
私は、写真を撮ることに。

「うわー!すっごく綺麗です、先輩!」
「ありがとう。なんか恥ずかしいね…」
最初に着たのは、桔梗柄の浴衣。桜が描かれた芸術並みに上手い背景をバックにポーズして微笑む。
「いいですぅ!ああ、美しい!いいですっ!!」
大丈夫か、この子…と思いつつ、笑みを深める。
案外、楽しいかも。
そう思いながら、「次はこっちです!」と目を輝かせる後輩のもとに足を進めた。

✦✧✦

ざわざわ、とやけに人が集まっている2-3を見つけた。
その中には、さっきまで案内してくれていた生徒会長もいたので、話しかけてみる。
「何かざわついているようだけど、何かあったのかな?」
「ああ、学習委員長が宣伝用の撮影を頼まれてまして。学習委員長って可愛いから、めちゃくちゃモデルみたいなんですよ。ほら、あそこ。」
「―――ッ⁉」
生徒会長が指さした先には、水色と白の間くらいの薄い色の、プリンセスラインドレスを着て髪を緩く結い上げ、ナチュラルなメイクをし、水色の菫の髪飾りを付け、ブーケを持って微笑む天使のような凛世がいた。
ドレスは、レースとフリルが大人しめの印象をキープしつつ穏やかに付けられていて、袖はベル型に開いており、凛世にとても似合っている。
カメラマンの女の子は鼻血を出しそうになりながら目をギラギラさせて「いいですぅぅぅぅっ!」っと叫んでいた。少し心配になる。
「……いいなあ、いいですねえっ…!ふむ…」
カメラマンの女の子は、ふと考えるような仕草をして、僕達ギャラリーを一瞥した。
そして、スタスタと僕のもとに歩み寄ってくる。
「………すいません、ちょっとお願いしてもいいですか?」

「え、雪嗣さん⁉」
「やあ、凛世ちゃん。」
お願い…それは、凛世の相手役になることだった。
凛世のドレスに合わせたタキシードを着て、髪も固めた状態で凛世のもとに歩み寄る。
「うわ……なんか、結婚式みたい…」
小さく呟いた凛世の言葉を、僕は聞き逃しはしない。
「まあ、そのテーマで撮ってるみたいだしね。」
「うう…聞こえてたんですかっ。」
恥ずかしそうにブーケで顔を隠している凛世。残念なことに、真っ赤な耳が隠せていない。
「さあ、撮影するみたいだよ。」
「ふうー…よしっ。」
カメラマンの子の指示で、僕と凛世は近付く。
「新婚っぽく!」
という指示の下、凛世は、顔を赤くしながら、僕の腕にそっと手を添えた。
―――かわいい。
その姿がこの上なく愛らしくて、愛おしくて、思わずその赤い唇を塞ぎたくなる。
だが、ここは公衆の面前だし、凛世の嫌がることはしたくないのでなんとか抑えた。
「笑ってー!」
その声にはっとした凛世は、僕の腕に添える手にきゅっと力を入れて幸せそうに微笑んだ。
そして、僕も、今日はラッキーだな…と思いながらカメラに向かって微笑んだ。

「次、新婚ぽいポーズなんかお願いします!」
なんかもう雑誌撮影のスタジオになっていないか?と思う。
まあいいだろう。利益を得ているからセーフだ。凛世とこんなことができるなんて、結婚したときぐらいしかないだろう。楽しむ他ない。なんてったって、凛世は…僕の好きな人だからだ。
「新婚ぽい…?」
ふむ…いい口実ができたと言えるだろう。
僕は、そう思って、口で弧を描いた。

✦✧✦

「次、新婚ぽいポーズなんかお願いします!」
え、ここって撮影スタジオだっけ?と思いながら新婚ぽいポーズを考える。
もう、カメラマンの後ろにいるギャラリーたちは有名人を目の前にした一般人みたいな目をしていて…そうだろうな。雪嗣さんってイケメンだもん。私は自信ないけど。
「新婚ぽい…?」
呟きながら考える私の横で、雪嗣さんは、静かに、悪戯な笑みを浮かべた。

「凛世」

「なんですか…って、きゃっ⁉」
えっ、私の名前…と考える暇もなく、私の体はふわっと浮いた。
そう、お姫様抱っこだ。
「軽いね。ちゃんと食べているかい?」
「た、たたた、食べてましゅっ!!」
噛んだっっっっっっっっっ!
頭から湯気を出して赤くなっていると、雪嗣さんはくつくつと笑った。
「もう…びっくりしましたっ…」
「ごめんごめん。」
傍から見ると、身長低い女の子を兄が抱き上げてるように見えるかな。でも、この前知ったんだけど、私の周りが異常なだけで、155センチって低くはなく、平均的であるらしい。よかった。安心。
「おおおおおおう!いいですぅぅぅ!いいですっっっっっっっ!笑ってえええ!」
ほぼ発狂状態のカメラマンちゃんに、恥ずかしいけど微笑む。
作り笑顔ではなく、心から笑えた。
きっと、雪嗣さんとだからだと思う。

「―――今日は、会えてよかったです!」
あの後、私達は十分ほど撮影して2-3を去った。その後、まあ案の定2-3は栄えに栄えたらしいけど。
「ああ。まさか、僕の仕事の管理内に2つも君との接点があったなんてね。」
「ふふ、びっくりですねっ。」
今は、7時くらい。2人で夕ごはんを食べている。
雪嗣さんが連れてきてくれるレストランはどこも美味しくて、なんだか申し訳なくなってしまう。
だけど、いくら押しても払わせはしないの一点張りで、いつも奢ってもらっているのだ。
「あ、そう言えば…今日、始めて私を呼び捨てで呼んでくれましたよね。」
「ああ。これからはそうしようと思ってね。いいだろう?」
「はい。大歓迎です。」
なんか嬉しいし。2回目に会ったとき、「雪嗣って呼んでくれると嬉しいな」って言ってたのは、こういう気持ちだったのかな…?
そう思いながら、肉の切れ端を口に入れる。
咀嚼すると、ジュワアっと肉汁が広がった。
うま…。
「美味しいですっ、今日もありがとうございますね!」
ああ……なんだろ、幸せだな。
これが、香住と漣くんが感じていることなんだろうか。
ちょっと、大人の階段を0.5段くらい進んだ気がした。

次に続く

Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.20 )
日時: 2022/12/21 12:28
名前: イナ (ID: F5B8s22.)

閲覧数が300を超えました!感激です。これからもよろしくおねがいします!
では、本編続き、どうぞ!

文化祭二日目。
今日は、体育館でのステージ発表がまとめて行われる日だ。
そう……私の、例のダンス&カラオケもその1つ。でも…

『凛世の、楽しみにしているよ。』

なんて、雪嗣さんに言われちゃったら張り切るんだよなあ。
昨日、凛世って呼び捨てにされたとき、嬉しかった。うーん、多分、私が心の底から、“イツキは雪嗣さんだ”って思ってるからだと思う。
イツキといるときと同じで、ドキドキして、胸がキュってなるから。
「凛世!ちゃーんと見てるから!張り切ってブレイクダンスしてきなさい!」
「ブレイクダンスじゃないからね…⁉」
しっかりとボケる香住に呆れつつも、私は出演者控えのスペースに移動した。
私は学習委員長。勿論、ダンスの他にもやるべきことはある。
今日は、二日目開会宣言担当が私なのだ。一日目は杉原ちゃんだったんだけどね。どうやら、副会長は2年生なので今回はやらないようだ。私達3年生は今年最後だから、かな…?うん、多分そう。
「絶対噛まないっ。生麦生米生なまご…あっ…生麦生もめ…ままむぎ…生麦生米生たまも…生麦生米生卵!言えた…」
などと、早口言葉の練習をしながら、ヘッドホンで今回の3曲を聞いてイメージトレーニング。
ダンス…弓道の師匠曰く、リズムの感性もすごい…らしい。
あんまりダンスとか見てこなかったから、どれくらいがすごいのかイマイチわかんないんだけどね。
まあ、雪嗣さんにいいなって思ってもらえれば及第点かな。
中央光星高等学校ちゅうおうこうせいこうとうがっこう文化祭二日目、プログラム一番、開会宣言。学習委員長、神名 凛世さん、お願いします。』
「はい。」
放送の進行に従って、私はマイクに近寄る。
「全校の皆さん、今日は文化祭二日目です。私達3年生は、本当に最後の文化祭となります。目一杯楽しみましょう!中央光星高等学校、文化祭の開催を宣言します!」
「「「イエエエエエエイ!!」」」
雄叫びを合図に、二日目が始まった。

最初は、生徒会企画。全校参加の謎解きだ。
「凛世!行くのよ!問題なんか蹴散らしてらっしゃいっ!」
「え?あ、ハイ、リョウカイシマシタ魔女様ー」
「誰が魔女よっ。しかも棒読みっ!」
魔女香住から下僕のように派遣されつつも、謎解きを解く。
因みに、雪嗣さんは来賓席で謎解きだ。
「解けたっ。持ってくね―」
「よくやったわ、凛世!」
「アリガトウゴザイマス、魔女様ー」
「魔女じゃないって!」
生徒会役員の人が待つテーブルまでダッシュして提出する。
「流石学習委員長!正解です!」
「よっしゃ!やったよみんなっ!」
ピースしながらみんなのもとに駆け寄る。
次の謎解きの紙を私達のテーブルにバシッと叩きつけて、すぐさま次の謎解きメンバーと交代した。
…交代…した…
「神名さん!交代!」
「頼んだよ我らが一位!」
交代……した…はず、なんだけど。
いつの間にか、クラスの人達に下僕とされて全謎解き派遣員と化してしまった。
まあ、楽しいから許すよ。
さて、次、次。
合計8問の謎解きタイムアタック競争の結果は、雪嗣さんと同率一位。全問一発正解、提出も同時。
最後の論理クイズは中々面白かったね。
雪嗣さんと目が合って、お互いふっと微笑んだ。
『さ・す・が・だ・ね』と口パクされて、私は更にくすっと微笑む。
そして、私からは『そ・ち・ら・も・ね』と返しておいた。

次は、教諭企画。先生たちが企画したものだ。今年の教諭企画は、《対決!教諭VS生徒&来賓!》である。あ、来賓には許可取ってるってさ。
内容は、それぞれの先生の専門科目で先生と勝負する。勿論、ハンデ有りでね。で、勝利したら生徒側に1ポイント。
各学級1教科1人ずつで、国語、数学、理科、社会、英語、体育、家庭科、技術、美術、音楽の10科目。1人2教科までで、最大各学級10人。
今回、私達のクラスは、国語と社会がアスカちゃん、理科がケンタくん、英語がユウスケくん、体育と音楽が私、家庭科がホナミちゃん、技術と美術が香住。
アスカちゃんは学年でも有名なバリバリ文系で、理系教科は赤点周辺だけど、国語と社会だけで比べるなら私の少し下くらいまで上がってくる子。
ケンタくんは、両親が研究者だけあって、昔から理科オンリーの英才教育を受けてきた理科特化の男の子。科学部所属。
ユウスケくんは、父方がイギリス人のハーフ。フルネーム、ユウスケ・ジョーンズ。
体育と音楽は私の実技得意教科。
ホナミちゃんは超家庭的でモテている子。この前の家庭科で夕食フルコース作ってて本当にビビった。
香住は、技術は超評価されてて、美術はクラスで一二を争うくらいの腕前。因みに、私、美術苦手。
まあそんな感じで構成されている。
来賓者は、好きな教科を好きなだけ選んで対戦できる。
雪嗣さんはというと、五教科全部と体育、家庭科、美術。技術と音楽だけ出ない。なんとハイスペック。モッテモテ…。
何でそんなにできるのかな。ちょっと体と脳のつくりを国で調べたらとても有益な遺伝子情報の記録が出るんじゃないかね。
そんなちょっと危ないことを頭の隅で考えつつ、アスカちゃんの対戦を観戦する。
「アスカちゃーん!頑張れーっ!」
「ありがとーー!」
今日だけは、ちょっと年齢的に退化した気がする。
でもいいや。高校最後だしね。そう吹っ切れて、意外と大きな声が出た。
なんだろう。文化祭のノリというやつだろうか。いつもは自分のやりたいことでも引っ込みがちのアスカちゃんもメラメラ燃えている。まあ、昨日もだったけど。
そして。
雪嗣さんも、こちらを見ていた。
流石に、いくら仲良しでも来賓の方を名指しは駄目かなあ、と思い、名指しは避けつつも、雪嗣さんだけを見つめて叫んだ。
「頑張れーーッ!」
多分、私史上一番大きい声だったと思う。
運動会の宣誓でも、悲しくて泣き叫んだときでも、劇の盛り上がるシーンでも。

すると、雪嗣さんは、確かに私を見て、満面の笑みを見せてくれた。
―――わあ……なんか、やばい。
初めて、雪嗣さんの満面の笑みを見た。本当に雪嗣さんがイツキなのかは知らないけど、《GGO》でもイツキは満面の笑みではなく、穏やかな微笑み程度だった。
それが、歯を出してにっと、幸せそうに笑っているのを見ると。
「…なんか、調子狂うな………」
色々やばい。心臓が鐘となって世界中に響き渡りそう。顔もなんか熱いし…。
いけない。見られちゃう。
深呼吸して、一回頬をぺちっと叩き、平常心に戻った。………多分、戻った。
とにかく…やる気出た。さっきの笑顔でやる気がいっぱい出た。
頑張ろ。…その前に、みんなの対戦だけど。

「んー…ちょっとイマイチって感じかなあ。」
スクリーンに映し出される点数を見て唸る。
私の番、体育科目。教諭側2162ポイント、生徒&来賓側2334、4回引き分け。
このまま行けば勝てるっちゃ勝てるけど、差がイマイチ開いていないので、ここから巻き返される可能性は十分あるわけで。なら、敗北は許されない。まあ、負ける気は微塵もないけど。
相手は、運動狂鬼と生徒の間で密かに呼ばれているスキンヘッドのカワタ先生。
ハンデがあるとは言え、この学校の体育教師の中で最もデキる人だ。油断はできない。
「まさか、神名と戦うことになるとはなあ。」
「私もびっくりですよ。」
カワタ先生は、かつて私に武術を教えてくれた、第二の師匠でもある。
バク転とか宙返りとかできるようになったのは、紛れもなくこの先生のおかげだ。
なんか、この展開いいな。
『さあ、次は3-2の対決です!教諭側は、カワタ ゴウザブロウ先生。生徒側は、我らが学習委員長
、神名 凛世さんです!』
アナウンスが告げる。
…ゴウザブロウって、何回耳にしてもゴンザブロウにしか聞こえないのは何故だろうか。
『勝負内容は、 1 on 1 のバスケットボールです!先に3点入れたほうが勝ちとなります!』
「え⁉」
アナウンスとともに、カワタ先生が奇声を発した。
対して私はニヤリと笑う。
カワタ先生は、バスケが苦手だ。
同時に私も、バスケは苦手だ。
「まさか、本当にバスケを選ぶとは…」と呟くカワタ先生。
今回のハンデ、それは、対戦種目を選べるということ。
だが、私は事前にカワタ先生に、「バスケにしますから。」と宣言しておいた。
自分の師匠との対戦だ。ハンデ有りで勝っても嬉しくないから。
これは―――どっちがより苦手を克服したかの競争でもある。
「さあ…見せてもらおうじゃないですか。…カワタせーんせ。」

そのとき。
「凛世ーッ!体育狂鬼なんかぶっ飛ばしちゃうのよー!」
香住が言ってきた。
「香住…。」
ご愁傷さま。忘れてるよね。ここに―――
「体育狂鬼…?俺か…⁉俺なのか…⁉」
カワタ先生いるの。
あははと苦笑いしていると、ふと、こっちをじっと見る視線を感じた。
……?
視線は、雪嗣さんのものだった。
雪嗣さんと目が合うと、私は、さっきの雪嗣さんのように、満面の笑みを返した。
「―――ッ……これは…破壊力がすごいね…」
なんて、雪嗣さんが呟いていたとは知らずに。
そして、師弟関係の私達の戦いが始まった。

ダスダスダス、とドリブルする私。
「おっと、見え見えだぜっ!」
そう言った先生が私の持つボールに手を伸ばした。
―――今だっ。
「ほっ。どいてくれてありがとーございますねっ、せんせっ!」
実は、さっきまでの先生の位置は、ちょうど私がスリーポイントシュートをするのに邪魔な位置だったのだ。
だから、私はフェイクをかけて先生をどかしたわけだ。
ピーッ!とホイッスルが鳴り、勝負の終了を告げた。
私が決めたのはスリーポイントシュート。ルールは、先に三点決めたほうが勝ちだからね。
つまんない、って言うかもしれないけど。長々と張り合ってるより、こうして圧勝して、師匠であるカワタ先生に成長を見て欲しかった。それに、私が求めているのはハラハラ展開じゃないから。
「―――強くなったな、凛世。」
「はい。頑張りました。」
お互いに近づき、にこっと笑う。
そして、ガシッと握手を交わした。
そう、私、こういう清々しい展開が好き。
それで、認めてもらいたかったし。
ということで、私は、体育狂鬼のカワタ先生に勝利したのだった。

体育科終了後。教諭側は3ポイント、生徒&来賓側は5ポイント、1引き分けとなった。
雪嗣さんは勿論どれも勝利。なんてハイスペック。恐ろしいね。
ということで、次の教科に移ったのだった。

「―――かーすーみ!頑張れーッ!!」
家庭科のホナミちゃんは圧勝に終わり、技術にて。
昨日の文化祭で漣くんに胸キュンな応援をされたらしい香住は、いつになくやる気に満ちた、頼れる顔で技術の先生と対峙していた。
「ふっ…。先生、私、ここでやられるわけにはいかないんですよ。悪いですが、勝たせていただきます。」
なんかの戦闘漫画の見過ぎではないだろうか。それとも、見ていなくても自然にそのセリフが口から滑り出ているのか?いやいやそんなはずは―――
「香住、スペイン系の本ばっか見てるのによくそんなセリフ出たなあ」
近くの漣くんの呟きで思い出した。そういえばそうだった。
香住は、今年初夏くらいまでスペインにホームステイしていたほどのスペイン好き。
スペインの本ぐらいしか置いていないんだった。
え、じゃあ、あのセリフって…。
いや、この後は考えないでおこう。
そう思って、思考を打ち切った。
結果は勝ち。漣くんの声援による、香住の背後の炎が凄まじい熱血試合となった。

―――そして。
『3-2の音楽科対決!教諭側は、なんと、音楽科専攻の校長先生!生徒側は、我らが学習委員長、我らが歌姫、神名 凛世さんです!』
おい。ちゃっかりハードル上げないでもらっていいかなあ?
何、『我らが歌姫』って。そんなこと誰が言ったわけ?
「歌姫ちゃーん、頑張ってねーッ!ふふふ…」
そう叫んできて堪えきれないと言わんばかりの笑みを見せた香住。
香住かいっ。
やれやれと思いつつ、何故か、教諭側の『校長先生』という肩書だけで、少し緊張してきた。
というか、校長先生は教諭側なんだ。中立だと思ってた。
『対戦内容は、複数の歌唱曲候補から歌う曲を選び、カラオケで歌った点数を競うという内容です!より難易度が高い曲で、より高い点数を取った方が勝ちとなります!』
ふー、と深呼吸をして校長先生を見据える。
折角だから…楽しんで、ついでに校長先生のお手並み拝見?かな。
雪嗣さんにも、私の歌聞いてもらいたいし、頑張ろう。
そう思って、私は微笑んだ。

次へ続く

Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.21 )
日時: 2023/01/23 11:03
名前: イナ (ID: F5B8s22.)

遅くなりました。文化祭続きです。リノセとイツキの《GGO》の大会は文化祭の後になります。
では、どうぞ。

先行は校長先生。今回のハンデは、先生のカラオケの点マイナス1.5点、だ。
私としてはなくてもよかったというか、ないほうがいいというか……。
カワタ先生との試合の時もだけど、平等に戦いたいのだ。
というか、私の番の前に訊いたんだけど、カワタ先生って、河田 豪三郎って書くらしい。面倒そうだ。
『教師側の校長先生は、津軽海峡冬景色をチョイス!さあ、点はどうなるのかっ⁉』
いや選択渋っ。まさかの演歌。
心のなかで突っ込んでいると、早速再生。校長先生の、津軽海峡冬景色が始まった。
「上野発のよくぉおう列車降りたときかrrrrrrらぁぁぁ」
上手いのか下手なのかわからない。いや、多分上手いんだろうけど、発音が発音だし巻き舌凄い。ビブラートもめちゃかかってるし。
まあ…でも、ビブラートって素人がかけると音が上下してるだけの下手っぴなビブラートもどきになるから上手いって証拠になるんだけど。
校長先生のドヤ視線を受けながら、もう少しで剥がれそうな校長先生の鬘をヒヤヒヤ見守る。
校長先生、この前も鬘剥がれてたから心配でならない。こんな時に申し訳ないけど。
そして、鬘が剥がれないまま最後へ。
「つがぁああるかぁあいきょう、ふゆげええええすぃきいいいい〜〜〜!」
………っ……待って………。
「っく…ふう…」
よし、よく笑わなかった私。褒めてほしいくらいだ。
校長先生、絶対私舐めてかかってるよね。それでいい点がとれる、と…?
『おおっと!点数が出ました!96点!これは高いっ!』
いい点とれてるし。マジか。
「ふっ」
いや、鼻で笑われたんですけど。なんか、あれだね。笑われたからには、ちゃんと報わないとね。
―――私の歌を、聴かせてあげよう。

『さて!対する生徒側の歌姫、凛世さんは何を選ぶのかっ…⁉』
そんなアナウンスを右耳から左耳に流しながら、私は予約ボタンを押した。
『凛世さんの選んだ曲は……えっと、“牡丹雪”?では、スタートですっ!』
知らなそうだな、この曲。結構有名になったかと思ったんだけどなあ。
あ、でも、ざわざわしてる人いるな。香住と漣くんは笑ってる。
そう、“牡丹雪”は、私が作曲して投稿した曲である。
もうすぐ冬だし。丁度いいよね。
イントロがすぎ、歌詞が入ってくるところで口を開いた。

「凍えた指先に息をかけて 上を向いて目を細める
 灰色の空の上から降ってきた 白い牡丹雪
 靴の中で混ざる冷たい氷 足を縮めて小走りする
 そんな靴に踏まれる 平らになった牡丹雪

 桜でもなく 紅葉でもなく 青々しい若葉でもなく
 ただ見慣れた白い雪でも
 いくら汚れた色の雪でも 君はいつも
 『綺麗』と言った

 空が青くなくても 花がまだ蕾でも
 全てを愛している君
 完璧じゃなくても 笑っていなくても
 希望を与えてくれた君
 だから ほら 今度は僕が
 君に頼られる番なんだ
 降りしきる牡丹雪
 手を伸ばそう 空へ

 手袋2人で片っぽずつ 寒いと弱音を吐く
 笑顔に似つかない冷たい空気 降る牡丹雪
 そう 笑ってばかりじゃない だけど それでもいい

 クリスマス 年末 誕生日 そんなものではなくて
 ただ普通の日だとしても
 いくら不運な日でも 君はいつも
 『大切な日』と言った

 葉が落ちた後でも 肌寒い日々でも
 全てを慈しむ君
 欠けたとこばかりで 揃いなんてしていない僕でも
 君が温めてくれた
 だから さあ 今度は君が
 僕に頼る番なんだ
 降り積もる牡丹雪
 手を繋ごう ずっと

 空が青くなくても 花がまだ蕾でも
 全てを愛している君
 完璧じゃなくても 笑っていなくても
 希望をくれたんだ
 だから ほら さあ だから
 手を取り合おう 僕と君で
 牡丹雪はいつも 身を包む
 それさえも君はいつも
 『素敵だ』と言った」

最後のAhーと高音でのばすところを歌い終え、曲も終了すると、拍手が沸き起こった。
『素晴らしい歌でした!点数は…………えっ…な、なんと、100点ですっ!これは完璧!非の打ち所がない100点ですっ!』
おー…まあ、そうだよね。私が作った曲なんだから、100点じゃないとおかしいというか。危うく案件と化すところだった。
“牡丹雪“知ってる人は気付いただろうか。“牡丹雪”原曲歌ってるの、私だって。
これ、大分ハンデだよなあ…。別の曲にすればよかったかな。
ちょっと後悔しつつ、私はみんなに「ありがとー」と言いながら席に戻った。

「流石だったわね、歌姫ちゃんっ。」
「あのさあ。変にハードル上げるのやめてよね。激辛ガムの刑だよ?」
「え、それは勘弁。」
香住と会話しながら、次の番を待つ。
チラっと雪嗣さんを見ると、あっちも私を見ていたのか、目があった。
ニコッと微笑まれたので、私も微笑み返す。
香住は、気付いていなかった。
気付いてほしくなかったから、ちょうどよかったけどね。

✧✦✧

耳に、頭に響く、愛しい歌声。
凛世の、“牡丹雪”。
ああ、やっぱり、この声は“リノセ”だ。そう思った。
君が歌う「君」が誰なのかはわからないけど、それでも、凛世の歌声に、癒やされていく。
どうしようもなく胸の中が疼いて、胸が熱くて、僕は本当に彼女を愛しているのだなと感じる。
小説みたいに純愛じみた、綺麗な「愛」じゃないんだろう。でも、リノセに、凛世に抱いた気持ちなら、綺麗じゃなくても、どんな想いでも悪くない。
べた惚れって、このことなんだろう。
「…ははっ」
どんなに孤高でいようと思っても、どんなに人を拒絶しても、僕はやっぱり人間だから。人間を愛す心は持っていた。
おかしいな。仕事場で色々な人に付き合ってほしいと言われた。色々な人に言い寄られた。それでも動じなかった僕が、一緒に《GGO》をプレイしただけで好きになるなんて。
でも、多分、凛世じゃなきゃ、“リノセ”じゃなきゃ、僕は惚れなかっただろう。
僕は、リノセの中身に惚れたのだから。
もう、僕の心に嘘はつけない。
僕は、人を愛しているのだ。あんなに嫌ったはずの、人間という存在を。
凛世が歌い終わって、自席に戻ってくる。
隣にいる、凛世を「歌姫」と呼んだ女子と話し、やがて前を見た。
ふと、凛世がこっちを見てくる。
微笑むと、凛世も微笑んだ。
この、何気ない動作にも胸を動かされてしまう。
純愛?狂愛?偏愛?歪愛?
どれでもいい。
僕は、君が好きだよ。
伝えたくて、伝えたくて―――
伝えるには、どうすればいい?

全種目が終わり、結果が出た。
『……結果!来賓&生徒陣営が、僅差で勝利!おめでとうございますっ!』
なんとか勝ったみたいだ。
リノセ及び凛世は結構な負けず嫌いなので、結構喜んでいる。
他生徒も声とともに喜んでいる。
それを、僕は微笑ましい目で見ていた。

『続いての企画はっ。皆さんおまたせしました!会長メンバーの歌って踊る!トップ発表です!』
「「「おおおおおお!」」」
さっきよりも盛り上がっているのはなぜなのだろうか。会長メンバー?トップ?
『発表メンバーは、風紀委員長、学習委員長、美化委員長、放送委員長、図書委員長、生徒会長です!さあどんなものを見せてくれるのかっ⁉スタートですっ!!』
学習委員長。その単語に反応した。
そう言えば昨日、凛世は会長に「学習委員長」と呼ばれていた。
もしかして…凛世、これでも発表するのか?
好きな人の歌う姿をまた見られることに喜びを感じるが、同時に他の人も見る嫉妬も感じる。
落ち着かない。僕しか知らない凛世を知りたい。
凛世がほしい…んだと思う、とどのつまり。
はあ…今まで振ってきたきた人の「恋」という感情がやっとわかった。
もうすぐ、《GGO》で、リノセと参加するタッグ大会がある。
そこで……見せてやろう。凛世がリノセだと知っている人に、見せる。八つ当たりでも。
僕が、リノセに近い人だと。リノセは、僕のであると。

✧✦✧

「歌姫にダンスが加わるとどうなると思う?」
香住がニヤニヤしながら訊いてくる。
「歌が崩れて結局口パクか歌だけになる」
ふざけて回答すると、香住がブッブー!と効果音を上げた。
「不正解!素晴らしい曲芸と化す、でしたー」
「何のクイズなの?私を煽ってるの?喧嘩売ってるの?買うよ?」
「やだこわーい」
漣くん、微笑んでないで香住止めて。というかこの会話してる香住すら可愛いって顔で見ないでこっちが恥ずかしいから。
あー熱い熱い。
「そういえば、凛世って、いつだかドイツ行ったんだっけ?」
「うん。高2のときに3週間ね。香住がスペイン好きみたいに、私はドイツ好きだから。」
「あー。そういえばドイツ語完璧だったわね、この前。」
「うん。」
ドイツ人が道に迷っていたのを見つけて、ドイツ語で案内したときのことだろうか。そのとき香住いたし。
「ドイツ語の歌でも歌えば?」
「ドイツの国歌は迷ったんだけどね。さっき歌った曲の事も考えて、J-POPにすることにしたよ。」
「そなの?へー、珍しいわね。」
果たして珍しいだろうか。カラオケで歌う8割がドイツ語であるだけで後は日本語なんだけど。
…………はっ、だからか!
やばい、香住に染まってきてる。正常に、正常に。私日本人。アイアムじゃぱにーず。Ich bin Japaner.
あ、またドイツ語に…。
ごほん。
とにかく、香住が言っている曲芸には私はならない。他の委員長達もそうだろうけど、全校の前で醜態は晒したくないから。
晒したら恥ずかしくて死ねる。恥ずか死できる。だから、杉原ちゃんも他の委員長も、みんな必死になって練習したものだ。
そのうち、この企画に出る人たちでそれぞれの発表を見て話し合って、恥の無いようにするためにアドバイスし合う同盟みたいなものできたし。
もしかして、それが目的…?と思ったりして。
今回は雪嗣さんいるし、私はどうしても失敗できないから、今もイヤホンで曲聴きながらイメトレですよ。
忙しい忙しい。

さあ、そしてついに、私の番だ。
というか、風紀委員長もすごかったからなんか嫌だな。プレッシャーだな。
「曲芸やってこい!」
「曲芸だけはやってこないからね。あと売られた喧嘩、後で買うからね。」
「100万円になりまーす」
「高いわっ」
香住になんだかんだ応援されながら、ステージに向かう。
『さあ次は、またやってきました、歌姫でございますっ』
またハードル上げないで放送。香住の手下か?
そう思いながら、深呼吸。
「みんなーっ!楽しもーねーっ!」
行こう。最後の文化祭だ。

次へ続く


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