二次創作小説(新・総合)
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- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜
- 日時: 2022/11/15 22:17
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
注意!!!
読むのが最初の方へ
ページが増えています。このままだといきなり1話のあと6話になるので、最後のページに移動してから読み始めてください。
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はちょっとお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「―――また、行くんだね。あの“仮想世界”に。」
《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》。それは、フルダイブ型のVRMMOである。
フルダイブ型VRMMOの祖、《ソード・アート・オンライン》、《SAO》。
私は、そのデスゲームに閉じ込められたプレイヤーの中で、生き残って帰ってきた、《SAO帰還者》である。
《SAO》から帰還して以来、私はVRMMOとは距離をおいていたが。
『ねえ、《GGO》って知ってる?』
私、神名 凛世は、幼馴染の高峰 紅葉の一言によって、ログインすることになった。
幼い頃に紅葉が引っ越してから、疎遠になっていた私達。その紅葉から、毎日のようにVRで会えるから、と誘われたVRMMO。行かないわけにはいかないだろう。大好きな紅葉の誘いとあらば。
ベッドに寝転がって、アミュスフィアを被る。
さあ、行こう。
“仮想世界”…………もう一つの現実に。
「―――リンク・スタート」
コンソールが真っ白な視界に映る。
【ユーザーネームを設定してください。尚、後から変更はできません】
迷いなく、私はユーザーネームを【Linose】……【リノセ】にした。
どんなアカウントでも、私は大抵、ユーザーネームを【リノセ】にしている。
最初にゲームをしようとした時、ユーザーネームが思いつかなくて悩んでたら、紅葉が提案してくれたユーザーネームである。気に入っているのだ。
―――でも、《SAO》では違った。
あの時、【リノセ】にしたくなかった理由があり、《SAO》では【リナ】にしていた。
凛世のりと、神名のなを反対に読んで、リナ。それが、あそこでの私だった。
でも、もういいんだ。私は【リノセ】。
コンソールがアバター設定に切り替わった。
普通の人なら誰?ってほど変えるところだけど、私は《SAO》以来、自分を偽るのはやめにしていた。とは言っても、現実とちょっとは変えるけど。
黒髪を白銀の髪に変え、褐色の瞳を紺色にする。おろしていた髪を編み込んで後ろに持っていった髪型にした。
とまあ、こんな感じで私のアバターを設定した。顔と体型はそのままね。
…まあ、《GGO》に《SAO帰還者》がいたらバレるかもしれないけど…そこはまあ大丈夫でしょ。私は、PKギルドを片っ端から潰してただけだし。まあ、キリトがまだ血盟騎士団にいない頃、血盟騎士団の一軍にいたりはしたけれども。名前は違うからセーフだセーフ。
ああ、そういえば…《SAO》といえば…懐かしいな。
―――霧散
それが、《SAO》時代に私につけられていた肩書だった。
それについてはまた今度。…もうすぐ、SBCグロッケンに着く。
足が地面に付く感覚がした。
ゆっくり、目を開く。
手のひらを見て、手を閉じたり開いたりした後、ぐっと握りしめた。
帰ってきたんだ。ここに。
「―――ただいま。…“仮想世界”。」
「お待たせっ。」
前方から声をかけられた。
「イベントの参加登録が混んでて、参っちゃった。」
ピンクの髪に、ピンクの目。見るからに元気っ子っぽい見た目の少女。
その声は、ついこの前聞いた、あの大好きな幼馴染のものだった。
「問題なくログインできたみたいね。待った?」
返事のために急いでユーザーネームを確認すると、少女の上に【Kureha】と表示されているのがわかった。
―――クレハ。紅葉の別の読みだね。
紅葉らしいと思いつつ、「待ってないよ、今来たとこ。」と答えた。
「ふふ、そう。…あんた、またその名前なわけ?あたしは使ってくれてるから嬉しいけど、別に全部それ使ってとは言ってないわよ?」
クレハは、私の表示を見てそう言った。
「気に入ってるの。」
《GGO》のあれこれを教えてもらいながら、私達は総督府に向かった。
戦闘についても戦闘の前に大体教えてもらい、イベントの目玉、“ArFA system tipe-x"についても聞いた。
久しぶりのVRMMO…ワクワクする。
「あ!イツキさんだ!」
転送ポート近くにできている人だかりの中心を見て、クレハが言った。
「知ってるの?」
あの人、《GGO》では珍しいイケメンアバターじゃん。
「知ってるっていうもんじゃないわよ!イツキさんはトッププレイヤーの一員なのよ!イツキさん率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ!」
「…すこーど…?」
「スコードロン。ギルドみたいなものね。」
「あー、なるほど。」
イツキさんは、すごいらしい。トッププレイヤーなんだから、まあそうだろうけど。すごいスコードロンのリーダーでもあったんだね。
「やあ、君たちも大会に参加するの?」
「え?」
なんか、この人話しかけてきたよ⁉大丈夫なの、あの取り巻き達に恨まれたりしません?
「はい!」
クレハ気にしてないし。
「クレハくんだよね。噂は聞いているよ。」
「へっ?」
おー…。トッププレイヤーだもんなあ…。クレハは準トッププレイヤーだから、クレハくらいの情報は持っておかないと地位を保てないよねえ…。
「複数のスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判いいよね。」
「あ、ありがとうございます!」
うわー、クレハが敬語だとなんか新鮮というか、違和感というか…。
トッププレイヤーの威厳ってものかね。
「そこの君は…初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あ、はい。私はリノセ!よろしくです!」
「リノセ、ゲームはめちゃくちゃ上手いけど、《GGO》は初めてなんです。」
「へえ、ログイン初日にイベントに参加するとは、冒険好きなんだね。そういうの、嫌いじゃないな。」
うーん。冒険好き、というよりは、取り敢えずやってみよー!タイプの気がする。
「銃の戦いは、レベルやステータスが全てではない。面白い戦いを―――期待しているよ。それじゃあ、失礼。」
そう言って、イツキさんは去っていった。
「イツキさんはすごいけど、私だってもうすぐでトッププレイヤー入りの腕前なんだから、そう簡単に負けないわ!」
クレハはやる気が燃えまくっている様子。
「ふふ、流石。」
クレハ、ゲーム好きだもんなあ。
「さあ、行くわよ。準備ができたらあの転送ポートに入ってね。会場に転送されるから。」
―――始めよう。
私の物語を。
大会開始後、20分くらい。
「リノセ、相変わらず飲み込みが早いわね。上達が著しいわ!」
ロケランでエネミーを蹂躙しながらクレハが言った。
「うん!クレハのおかげだよ!」
私も、ニコニコしながらエネミーの頭をぶち抜いて言った。
うん、もうこれリアルだったら犯罪者予備軍の光景だね。
あ、銃を扱ってる時点で犯罪者か。
リロードして、どんどん進んでいく。
そうしたら、今回は運が悪いのか、起きて欲しくないことが起きた。
「おや、君たち。」
「……イツキさん。」
一番…いや、二番?くらいに会いたくなかったよ。なんで会っちゃうかな。
…まあ、それでも一応、持ち前のリアルラックが発動してくれたようで、その先にいたネームドエネミーを倒すことで見逃してくれることになった。ラッキー。
「いくわよ、リノセ!」
「うん!」
そのネームドエネミーは、そんなにレベルが高くなく、私達2人だったら余裕だった。
うーん…ニュービーが思うことじゃないかもしれないけど、ちょっとこのネームド弱い。
私、《SAO》時代は血盟騎士団の一軍にも入ってたし。オレンジギルド潰しまくってたし。まあ、PKは一回しかしてないけど。それでも、ちょっとパターンがわかりやすすぎ。
「…終わったわね。」
「うん。意外と早かったね?」
「ええ。」
呆気なく倒してしまったと苦笑していると、後ろから、イツキさんが拍手をしてきた。
「見事だ。」
本当に見事だったかなあ。すぐ倒れちゃったし。
「約束通り、君たちは見逃そう。この先は分かれ道だから、君たちが選んで進むといい。」
え?それはいくらなんでも譲り過ぎじゃないかな。
「いいんですか?」
「生憎、僕は運がなくてね。この間、《無冠の女王》にレアアイテムを奪われたばかりなんだ。だから君たちが選ぶといい。」
僕が選んでもどうせ外れるし。という副音声が聞こえた気がした。
「そういうことなら、わかりました!」
クレハが了承したので、まあいいということにしておくけど、後で後悔しても知らないよ。
「じゃあリノセ、あんたが選んでね。」
「うん。私のリアルラックを見せてあげないと。」
そして私は、なんとなく左にした。なんとなく、これ大事。
道の先は、小さな部屋だった。
奥に、ハイテクそうな機械が並んでいる。
「こういうのを操作したりすると、何かしら先に進めたりするのよ。」
クレハが機械をポチポチ。
「…え?」
すると、床が光り出した。出ようにも、半透明の壁のせいで出れない。
「クレハ―――!」
「落ち着いて!ワープポータルよ!すぐ追いかけるから動かないでー!」
そして、私の視界は切り替わった。
着いたのは、開けた場所。戦うために広くなっているのだろうか。
「………あ。」
部屋を見回すと、なにかカプセルのようなものを見つけた。
「これは…」
よく見ようとして近づく。
すると。
「―――っ」
後ろから狙われている気がしてバッと振り返り、後ろに飛び退く。
その予感は的中したようで、さっきまで私がいたところには弾丸が舞っていた。
近くのカプセルを掴んで体勢を立て直す。
【プレイヤーの接触を確認。プレイヤー認証開始…ユーザーネーム、Linose。マスター登録 完了。】
なんか聞こえてきた気がした機械音声を無視し、思考する。
やっぱり誰かいるようだ。
となると、これはタッグ制だから、もうひとりいるはず。そう思ってキョロキョロすると、私めがけて突っ込んでくる見知った人物が見えた。
キリト⁉まさか、この《GGO》にもいたの…⁉ガンゲーだから来ないと思ってたのに。まあ、誰かが気分転換に誘ったんだろうけど。ってことは、ペア相手はアスナ?
うっわ、最悪!
そう思っていると、カプセルから人が出てきた。
青みがかった銀髪の女の子で、顔は整っている。その着ている服は、まるでアファシスの―――
観察していると、その子がドサッと崩れ落ちた。
「えっ?」
もうすぐそこまでキリトは迫っているし、ハンドガンで攻撃してもどうせ弾丸を斬られるだろうし、斬られなくてもキリトをダウンさせることは難しい。
私は無理でも、この子だけは守らなきゃ!
そう考える前に、もう私の体は女の子を守っていた。
「マスター…?」
「―――っ!」
その女の子が何かを呟くと、キリトは急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「…?」
何この状況?
よくわからずにキリトを見上げると、どこからか足音が聞こえた。
「…っ!ちょっと待ちなさい!」
クレハだ。
照準をキリトに合わせてそう言う。
「あなたこそ、銃を降ろして。」
そして、そんなクレハの背後を取ったアスナ。
やっぱり、アスナだったんだね、私を撃とうとしたのは。
一人で納得していると、キリトが何故か光剣をしまった。
「やめよう。もう俺たちは、君たちと戦うつもりはないんだ。残念だけど、間に合わなかったからな。」
「間に合わなかった?何を言っているの?」
クレハが、私の気持ちを代弁する。
「既にそこのアファシスは、彼女をマスターと認めたようなんだ。」
………あ、もしかして。
アファシスの服みたいなものを着ているなーと思ったら、この子アファシスだったの?
というか、マスターと認めた…私を?
あー…そういえば、マスター登録がなんとかって聞こえたような気がしなくもない。
うん、聞こえたね。
あちゃー。
「ええええ⁉」
この子がアファシス⁉と驚いて近づいてきたクレハ。
「ねっ、マスターは誰?」
「マスターユーザーネームは【Linose】です。現在、システムを50%起動中。暫くお待ち下さい。」
どうやら、さっきカプセルに触れてしまったことで、私がマスター登録されてしまったようだ。やっちゃった。……いや、私だってアファシスのマスターになる、ということに対して興味がなかったといえば嘘になるが。クレハのお手伝いのために来たので、私がマスターとなることは、今回は諦めようと思っていたのだ。
―――だが。
「あんたのものはあたしのもの!ってことで許してあげるわ。」
クレハは、からかい気味の口調で言って、許してくれた。
やっぱ、私はクレハがいないとだめだね。
私は改めてそう思った。
クレハに嫌われたらどうしよう、大丈夫だと思うけど万が一…と、さっきまでずっと考えていたからだ。
だから、クレハ。自分を嫌わないで。
クレハもいなくなったら、私―――
ううん。今はそんな事考えずに楽しまなきゃ。クレハが誘ってくれたんだから。
「私はクレハ。よろしくです!」
「リノセ。クレハの幼馴染です!」
「俺はキリト。よろしくな、リノセ、クレハ!」
「アスナよ。ふたりとも、よろしくね。」
自己紹介を交わした後、2人は優勝を目指して去っていった。
きっと優勝できるだろう。あの《SAO》をクリアした2人ならば。
私はその前に最前線から離脱しちゃったわけだし、今はリナじゃないし、2人にバレなくて当然というか、半分嬉しくて半分寂しい。
誰も私の《SAO》時代を知らないから、気付いてほしかったのかもしれない―――
「メインシステム、80…90…100%起動、システムチェック、オールグリーン。起動完了しました。」
アファシスの、そんな機械的な声で私ははっと我に返った。
「マ、マスター!私に名前をつけてくださいっ。」
「あれ?なんか元気になった?」
「えっと…ごめんなさい、そういう仕様なんです。tipe-xにはそれぞれ人格が設定されていて、私はそれに沿った性格なんです。」
「あ、そうなんだ。すごいね、アファシスって。」
じゃあ、このアファシスはこういう人格なんだね。
「名前、つけてあげなさいよ。これからずっと連れ歩くんだから。」
「うん。」
名前…どうしようかな。
この子、すごく綺麗だよね…綺麗…キレイ…レイ。レイ…いいじゃん。
「レイ。君はレイだよ。」
「レイ...!登録完了です。えへへ、素敵な名前をありがとうございます、マスター。」
アファシス改め、レイは嬉しそうに笑った。
「…リノセ、あんた中々センスあるじゃん。あのときはずっっと悩んでたっていうのに。」
クレハが呆れたように言った。まあ、いいでしょ。成長したってことで。
「えと、マスター。名前のお礼です。どうぞ。」
レイは、私に見たことのない銃を差し出した。
「ありがとう。これは何?」
受け取って訊いてみると、レイはニコッとして答えた。
「《アルティメットファイバーガン》です。長いので、《UFG》って呼んでください。」
《UFG》……何かレアそう。
また、大きな波乱の予感がした。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.32 )
- 日時: 2023/05/28 22:59
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
ID変わっていますが同一人物です。
「―――ふうん。なるほどね〜。」
銃士Xがうんうんと頷いた。
「それで、クレハのコピーは昔のクレハだったと。」
「はい。剣のエネミーが苦手って言ってたから。私、昔そうだったの。」
「じゃあ、やっぱり、イツキのもコピーだったんじゃないの〜?」
ツェリスカの言葉に、イツキが憎々しそうに吐き捨てた。
「だから、僕のは偽物だったって言っているだろう!」
「……。」
その様子を、私はじっと見つめていた。
「それは流石に苦しいんじゃないかしら?」
「は?」
「イツキ、あなた、何を恐れているの?」
「……。」
すると、私達の後ろ―――丁度ダンジョンの先に、一人のエネミーアファシスが現れた。
赤い衣装をまとった、ツェリスカである。
「あれは!」
「さあ!ぜーんぶぶっ飛ばしてやるわ!ストレス発散よー!」
「…ぷっ」
いつかに聞いたことのあるセリフだな。
そう、それはSBCフリューゲル攻略前半だったっけ。
『リノセ!今すぐ狩りにでも生きましょう!マガジンを持てるだけ持って!ぜーんぶぶっ飛ばしたい気分なの!』
このまま仕事に行ったら1+1も50と言ってしまいそうなくらいに投げやりになっているツェリスカ。
『お、おぉ…。なんか、随分と鬱憤が溜まってるみたいだね?』
『大人の女性は大変なんだもの〜』
そんなツェリスカを見て、レイは少し縮こまる。
『うぅ…今日のツェリスカはちょっと怖いです…。』
『マスターは、ストレスを溜められているのです。』
デイジーは、ツェリスカを心配そうに見やる。
『すとれす…?』
復唱するレイ。
『ストレスは、適宜発散する必要があります。』
『そうなんですね。ストレス…とても危機的な状況です。』
『ストレスの意味わかる?』
そんな天然なレイと冷静なデイジー。
『はあ〜、癒やされるわ〜。かわいいレイちゃんとデイジーちゃんの冷静なツッコミ。世の中があなた達のような人間ばかりならよかったのに〜。』
『マスターのストレス発散のお手伝いをすることができているのなら嬉しいです。』
『ええ、お手伝いしてもらっていますとも。』
まあ、たしかに、レイは癒やされるよね。
『はあ、建設的な意見を言うことができないイヤミ上司なんか燃やしてしまいたいわ〜。そんな上司をいつまでものさばらせておく会社には、グレネードをお見舞いしたいわね〜。』
『あ、あはは…』
『折角いいアップデートを思いついたのに…』
アップデート?もしかして、ゲーム関係の仕事なのかな。
『まあまあ。』
『あ…っと、リアルの話はマナー違反だったわね、ごめんなさい。』
『大丈夫です。何かあれば、私に遠慮せずお話ください。』
『デイジーちゃんはいい子ね〜。』
『よし、狩りに行こう。私が狩られる前に。』
『冷静な判断ね〜。じゃあ、行きましょうか。』
…とまあ、ストレスで相当荒れていた記憶がある。
「あれは…昔、相当荒れていた頃のツェリスカだな。」
ダインが言った。
「うん。あの装備、あのセリフ…間違いないね。」
そして、当人ツェリスカは…
「確かに…こうして見せられると、結構来るものがあるわね…」
とてもやりづらそうだ。
まあ、私としても、昔の自分は見たくないな。はずい。
「先手必勝よー!!」
なんて、談笑している間に、偽ツェリスカは武器を持ってしまった。
「まずい!」
すると、ツェリスカが前に出る。
「おい、ツェリスカ!」
「大丈夫よ。…この距離なら」
ツェリスカと偽ツェリスカがショットガンを構える。そして―――
「おい、肝が冷えたぞ、ツェリスカ。」
「あの頃のステータスと装備のNPCに負ける気はないわ。」
そう言ってツェリスカは肩をすくめた。
「…と、いうことで。」
ツェリスカはイツキをチラ見する。
「私のコピーも昔のものだったわ。イツキも本当は…」
「時間が惜しい。逃げられたら困るんだ。早くしてくれないか。」
焦っているイツキ。これだけ怒りを露にするのは些か珍しい。
「……。」
すると、またエネミーアファシスが現れた。
闇風にとても良く似ている。
「あれは…闇風のコピー?」
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.33 )
- 日時: 2023/07/02 10:04
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
ID違いますが同一人物です。
遅くなりました。
「ああ、間違いなく昔の俺だな。まったく、どこから湧いてきたんだか」
そう言って闇風が肩をすくめる。
「やった、昔の闇風と戦えるってこと⁉大チャンス!」
「昔の俺とはいえ、自分のデータを晒すわけにはいかないな。ここで倒させてもらおう。」
「おい、待てよ二人共!」
何しに来たんだか。
ダイン、闇風、銃士Xの三人は、早々に駆けていってしまった。
「じゃあ、私は行くわね〜。」
ツェリスカは、そんな3人を見て言った。
「ツェリスカ、もう行ってしまうのですか…?」
「もともと、やることが残ってたしね〜。デイジーちゃんも待ってるし。…イツキ。たまには、素直になりなさいよ。」
「…ちっ」
そうして、ツェリスカも行ってしまった。
…結局、情報交換しただけか。
「早く行こう。随分時間を無駄にした。」
「うん。まだ間に合う、急ごう。」
私たちも、出発した。
―――《SAO》時代
とある一件で自分のことが嫌いになっていた。
自暴自棄になって、泣いて泣いて、その間は、自分を消したくて仕方なかった。
そして、そのときからは変わった今…確かに、あのときの私は見たくない。ううん、そんな頃があったと認めたくないんだ。
でも、そのときの私も、今の私も、どっちも私自身。そんな複雑な気持ちは、誰かの言葉でしか救えないものだと思う。
多分、イツキも私と同じ。
だから、だからこそ、私にしか言えないことがある―――
「マスター、ボスエリアです。偽物のイツキ、出てきませんね…?」
「ボスエリアの向こうにいるかも知れないし、一回行ってみよう。」
「はい!」
ボスは、手のひらに弱点っぽいものを持つ機械エネミーだった。
右手で炎を放ち、左手で麻痺属性の雷撃を落としてくる。ヘイトでだいたいのターゲットが決まるので、タンクのクレハがスタンばかりだ。
「こいつ、ウッザ…!」
「ちっ、仕方ない…!クレハ、あともうちょっとの辛抱だよ。」
「早くしなさいよ?」
「わかってる!」
頷くと、クレハはヘイトを集めるスキルを使い、またボスの攻撃に対応し始めた。
その間、イツキはデバフやスタンを撃ち込む。
そして、ボスがちょうどいい位置でスタンした。
「ナイス、イツキ!」
スコープを覗いて手のひらを覗く。
黄色い弱点に照準を合わせて…撃つ。
「グオォォォォッ!」
「あともうひと押し!」
もう一回撃とうとするも、スタンから回復してしまった。
まあいい。隙はいくらでもある。
「今だ、リノセ!」
「うん!」
イツキがつくってくれた隙に、今度は反対の手、赤い弱点に瞬間的に照準を合わせ、撃つ。
「ガアアアアアァァァァァ!」
「よし!」
思ったより低いレベルのダンジョンだったからか、死ぬほど苦労して手に入れたこの愛銃、AMRDestroyGateの火力に圧倒されたボス。
ドロップを回収して、またすぐに駆け出した。
次の部屋に入ると、そこにはイツキのコピーがいた。
「いました!イツキのコピー…ではなく、イツキの顔だけコピーです!」
「みんなと一緒なら頑張れるよ!」
「クソッ…」
いつになく不機嫌そうなイツキ。
「……。」
「強くても、協力すれば倒せるんだ!」
「……ねえ、イツキ。」
「?」
私は、イツキをじっと見つめた。
「本当に、あれはイツキとは違うの?」
「!」
「ちょっ、リノセ⁉」
「…本当のことが、知りたい。」
イツキは、自嘲するように軽く笑った。
「…そうさ。あれは昔の僕だ。滑稽だよね。」
「…」
「あんな自分を、もう思い出したくなかった…っ」
わかる。わかるよ。
私も、思い出したくないって思ってた。だから、こいつを倒して、お話しよう。
「さあ、ご希望通り白状したよ。アイツを倒そう。」
「うん。」
2人で並んで、銃を構える。
好きな人のためなら、頑張れる。
それだけは、綺麗事じゃない、本心だからね。
そうして、私たちは偽イツキを倒すために飛び出したのだった。
「でも…また、みんなと一緒に…っ」
偽イツキは、息が詰まりそうな声でそう言って消えた。
倒した。本来なら情報も得て噂の前に倒せて喜ぶべきだが…
「最後まで、反吐の出るようなセリフだったな。」
そんな余裕はなさそうだ。
悔しそうに顔を歪めるイツキ。
そんなイツキに、クレハとレイは話しかけた。
「あの、イツキさん。確かに、自分のコピーを見るのは恥ずかしいですけど、よかったんじゃないですか。あのイツキさん、すごく楽しそうでしたし。」
「残念ながら、僕はもう変わったんだ。あの頃の僕はもう捨てた。」
「あの、変わってないと思います。イツキは、《GGO》で共に楽しんでいる。それは、揺るぎのない事実です。それに、イツキには《アルファルド》のみなさんがいらっしゃいます。」
「あのメンバーは仲間じゃない。」
「そ、そうですか…では、私やクレハや、みんなはどうですか?」
「そ、そうですよ!あたし、イツキさんのこと仲間だと思ってます!」
頑張って慰め…いや、元気づけようとしている2人。
イツキは、そんな二人を眩しそうに見た。
「ありがとう、優しいんだね。‥‥リノセ、そこで見てないで、2人を止めてくれないか。」
イツキは寂しいのだろうか。悲しいのだろうか。それとも怒っているのだろうか。
私が何かしたところで、イツキのこれまでが変わることはない。変えることはできない。だけど、これだけは知っておいてほしい。
「イツキは、ただの仲間じゃないよ。」
言ったじゃない、弓道場で師匠と話したときに。
友達だ、って。
私にとっては友達どころじゃないんだけど、少なくとも、ただの付き合いでも、実力故の利害関係でもないんだよ。
すると、イツキははっと目を見開いた。
「きみと…もっと早くに出会えていたらなあ。」
ボソッとつぶやいた言葉は、私は聞き取れない。
聞き返そうとする前に、イツキは踵を返してドアに向かった。
「あの、どこに行くのですか…?」
レイが慌てた様に聞く。
「帰るよ。目的は達成したしね。それに…」
イツキの声は、心なしか少し、震えていた。
「少し、一人になりたいんだ。」
イツキが去って行ったあと、しばらく私たちは立ち尽くしていたが、やがて我に返って、私たちも《SBCグロッケン》に帰ったのだった。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.34 )
- 日時: 2023/07/03 18:01
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
《お知らせ》
pixivにて「水城イナ」として改稿版をアップしています。よければそちらも御覧ください。
それではどうぞ!
グロッケンに戻ってから、私たちはキリトたちと合流して成果を報告し合った。
「そっちもそこまで掴んでたのか。俺たちも同じところまで掴んだぞ。」
「なるほど。今の所プレイ歴が長いプレイヤーの過去がエネミーアファシスになったみたいだけど…。レイは違うよね?というか、レイのそっくりさんは敵対しなかったんでしょ?それとこれとは話が違うのかなー…」
「どうだろうな…。名前でも聞いておくんだったか。」
「あのときはレイちゃんだとばかり思っていたけれど、レイちゃんにしては変な服を着るなあと思ったのよね。」
変な服?なるほど、私やレイの趣味じゃない服を着てたんだね。じゃあ、そこが見分けるポイントかな。全く同じじゃなくて助かった。
「とりあえずは、引き続き情報を―――…」
「リノセたち、大変よ!」
ツェリスカが走ってきた。相当急いでいるようだ。その後ろにはデイジー。
「どうしたの、ツェリスカ、デイジー。そんなに急いで…」
「キリトくんとアスナちゃんのエネミーアファシスが出たみたい!」
「えっ!」
デイジーによると、《砂に覆われた孤島》にあるダンジョン《魔窟》に現れたという報告があったそうだ。
はあ、参った。キリトとアスナはそんなにプレイ歴が長くないのだ。これでいよいよわからなくなった。
とりあえず、エネミーアファシスのもとに向かわなきゃ。
「行くよ、レイ。」
「はい!」
「あたしも行くわ!」
クレハとレイとパーティを再編成。
「キリト、キリトたちは情報収集をお願い。」
「了解。」
「じゃ、行ってくる!」
そうして、私たちは《魔窟》に向かった。
《魔窟》は《忘却の神殿》よりいくらかレベルが高かった。というか、トッププレイヤーでも結構の腕前がないと攻略できないくらいだ。
内装は普通のダンジョンだけど…。ところどころにSBCフリューゲルの面影がある。
「わっ、闇風です!」
「違う、コピーだ!」
コピーって一体じゃないんだ。それならキリトやアスナのエネミーアファシスもここだけとは限らない…。
待てよ、でも確か、ユイちゃんはエネミーアファシスの出現場所に集中している場所があるって連絡してきたよね。それってどこだっけ…。
ああ、《砂に覆われた孤島》の東北東…ここあたりか。じゃあ、エネミーアファシスの拠点が《魔窟》にあると思っていいかも。
「急ぐよ、二人共。」
「わかったわ。」
「はい!」
拠点に2人のエネミーアファシス、ってことは、エネミーアファシスに関係している人もまだダンジョンを出ていないはず。
急いで行けば、まだ間に合う。
「うわっ、また私とイツキさんのコピーだわ!」
クレハが心底嫌そうな顔をする。流石に何回も見ると苛立ってくるものだ。
「大好きだね、作った人」
「いらない好感度よ!」
まったく、意味わからないよ。何が条件なんだろう?
もしくは…キリトとアスナも例外?いや…
「行ってみなきゃわかんない、か。」
私は、そう呟いてトリガーを引いた。
「あっ、いた!」
白い髪のキリト…うん、偽物だ。
「さっさと倒すよ!」
「ええ!」
「わかりました!」
炸裂弾で偽キリトに攻撃するのとともに、戦いの火蓋は切って落とされた。
戦いの癖はキリトそのものだし、戦術の奇抜さや剣技の鋭さは流石はコピー、忠実に再現されている。だけど、エネミーアファシスはいくらコピーとは言ってもAIだから、本物より少々融通が効かないようだ。
「いける!」
そして、私が弾をわざと斬らせて―――
「…!剣が…」
剣が壊れて、キリトは奥へ逃げ込んでいった。
「あっ!待て!逃げるな!」
さっきのイツキのように叫んでから、クレハは顔を歪ませた。
「ちぇっ。もっと奥に行かなきゃいけないじゃない。さっさと片付けてあたしたちも情報を集めたいのに…」
「まあ、ちょうどいいんじゃない。多分、このダンジョンの奥にエネミーアファシスへの鍵がある。」
「マスター、アスナのコピーがまだいません。早く見つけましょう!」
レイに頷いたときだった。
ガシャッ、と音がしてエネミーが倒れる。一体、隠れていたエネミーがいたようだ。
「みなさん、大丈夫ですか⁉」
後ろから、レイの声が聞こえた。ううん、違う。目の前のレイは口を動かしてなかった。
ということは…
「こ、こんにちは…です。」
黒いピタッとしたスーツを来たレイ…のそっくりさん。
なるほど、確かに私やレイの趣味ではない。
「えっ…!ま、マスター!私が二人います!」
「レイ、あれがそっくりさんだよ。」
「なんと!」
驚くレイもかわいい。だけど…レイのそっくりさんの瞳には、レイとは違う…見極める視線がこもっている。
うーん…これは、厄介なことになりそう。
「私はリエーブルといいます。プレイヤーのみなさんに、ムフフなお得情報をお伝えしているんです!よ、よろしくおねがいします!」
「ムフフなお得情報…」
「はい!」
ほんとに、仕草も似てるなんてすごい。だけど、今までのコピーとは違って名前が違う。
「リ、リエーブル!なんで私とそっくりなのですか…?私は、とても迷惑していたのですよ!」
「うぅ…それについては…ごめんなさい。」
「まあまあ、レイちゃん。リエーブルに悪気はないみたいだし。仲良くしましょう?」
「そ、そうですね…!私はレイです。よろしくおねがいします、リエーブル!」
「はい!」
レイとニコニコしたあと、リエーブルは私の方向を見てもじもじし始めた。
「あの、名前、教えてもらっていいですか?」
「リノセだよ。」
「リノセ、いい名前ですね!握手をお願いしてもいいですか?」
リエーブルの瞳の奥が怪しい光を帯びた。
そう、まるで嘲笑しているかのような…。
「っ、待って!」
首元に殺気を感じて思考を中止する。
狙撃?なら高台を取っているだろうし…それなら…
「後ろだ!避けて!」
飛び退いて高台を見やる。そこには、黒髪の…男?と、緑髪の女。
あの人たちは見たことがある。この前私が一人でフィールドをほっつき歩いているときに喧嘩を売ってきた、シャーリーとクラレンスだ。
「あーあ、なんでいつもリノセちゃんは気付いちゃうんだか。」
「…リーダーの名は伊達じゃない。悔しいけど」
2人はそう言って高台から飛び降りた。
「で?リノセちゃんが連れてるってことは、そこのおじょーちゃんはエネミーアファシスじゃないのかぁ、残念残念。」
「…エネミーアファシスは賞金高値」
「はあ…もう、驚かさないでよね。2人に構ってる暇ないんだけど」
「つれないな〜。ま、でもどうせ会ったんだから…」
「リベンジ」
カチャ、と銃を構えた2人。
「リエーブルは見てて。私たちの戦いだから」
「は、はい…」
これは建前で、なんとなく怪しいから、疑いが晴れるまで接触を避けたいだけ。
でも、知り合ったばかりのリエーブルの戦闘での癖を知らないからやりずらいのは確かだし。
「ちょうどいいし、サクッと勝って情報をもらいますかね!」
「いーじゃん!望むところだっ!」
そうして、血の気の多い戦いが始まった。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.35 )
- 日時: 2023/07/06 21:21
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「―――うー、負けちゃったっ」
クラレンスが悔しそうに歯噛みする。
「…NPCばかり狩ってたから、腕が鈍ったか。」
シャーリーも舌打ちしてきた。
舌打ちはちょっと悲しいよ。
「で?クレハの偽物を知ってるってことは、エネミーアファシスについても知ってる?」
「え、リノセちゃん、そこのかわい子ちゃんから話聞いてないの?」
クラレンスは驚いたように目を見開く。
そのクラレンスに答えたのは―――
「ふふっ。まだこの人たちには、ムフフなお得情報をお渡ししていないのです。」
「そーなんだ。あ、その節はどーもね!俺たちは、その子から情報をもらってエネミーアファシス狩りをしてたわけよ!」
「…正確な情報は助かる」
ふーん…ってことは、何のエネミーアファシスがどのダンジョンにいる、とかわかるのかな。それがムフフなお得情報?
ますます怪しいよね。でも、これ疑ってるとバレたら…面倒だ。とりあえずはダンジョン攻略を進めなきゃ。
「ま、いいや。じゃあ、私たちは行くから。今日はもう喧嘩売ってこないでよー。」
「へいへい!またねー!」
「…次は勝つ」
無口だと思ったらシャーリーも《GGO》プレイヤー特有の性格だね。人って見かけじゃないんだなあ。
「じゃあ、行こうか。」
「私もお供します!」
そうして、リエーブルが加わり、私たちは《魔窟》の更に奥に進んでいったのだった。
リエーブルはガトリングだった。タンクロールらしい。今のところはレイと仕草が似ていて有効的…だけど、今までのエネミーアファシスとは少し違う…。
「あっという間にボスエリアね。」
ボスエリアに繋がる転送装置を見てクレハが言った。
そのとき、後ろから足音が。
「おーい、リノセ、クレハ、アファシス。」
「見つけた!」
アスナとキリトだ。
「あえっ⁉」
「レイ、これは本物。」
「あっ、本当ですね!」
レイかわいい。
そんな様子を見ながら、アスナが言った。
「シノのんのエネミーアファシスも出たみたいで。私たちはそっちへ向かうわ。」
「了解、気をつけてね。」
「そっちはどうだ?」
聞いたキリトに答えたのは、リエーブルだった。
「今のうちに奥に進めば間に合うと思います。今、キリトのコピーは剣が壊れているみたいですから。《魔窟》のボスエリアにいますよ。」
「だって。今から奥に行くところよ。」
「わかった、健闘を祈る。」
「そっちもね。」
そうして、キリトとアスナは去っていった。
「先にカードキーを集めておいて正解だったよ。さあ、ボスを倒そう。」
「はい!行きましょう、マスター!」
ボスは2人の人型エネミーだった。銃と剣。スキルフリーズ弾が有用だ。ただ、銃のほう…シアンの個体が炸裂弾を多用するから面倒だ。
でもゴリ押しで行けた。ラッキー。
そして倒し終わって―――
「あ、そうでした。リノセ、握手がまだでしたね。握手をお願いしてもいいですか?」
「いいよ―――と、言いたいところだけど。」
「?」
「ごめんねリエーブル。私って面倒くさい人だからさ。疑問を解消したくてたまらないんだよね。」
「どういうことですか…?」
私は、リエーブルを正面から見つめた。
「エネミーアファシスが出現したのは《魔窟》周辺、つまり、《魔窟》にエネミーアファシス生産の拠点があるのは間違いない。」
これは、来る前にも思っていたこと。
「そして、過去のプレイヤーデータを具現化したり、現在のプレイヤーデータを具現化したり…。過去のデータはともかく、キリト、アスナ、シノンの共通点は、レイのそっくりさん…つまり、リエーブルに会って、握手をしたこと。」
これは、キリトとアスナが来たところでわかった。
「となると、残るコピーで謎があるのははリエーブル、きみだけ。しかも、きみはエネミーアファシスの情報を持っている。エネミーアファシスと繋がっていないと、きみはキリトの剣が折れたことを知らないはずだし」
「……」
「怪しすぎるんだよ。ねえリエーブル。きみさ、握手した相手のデータを読み取ってアファシスに投影、エネミーアファシスを生産してるんじゃない?」
「…そんな、私は…」
「ちょ、リノセ?何を言ってるの?そんなにまくし立てるとかわいそうよ!」
「ううん、クレハ。私は真実を知りたいだけ。」
NPCに込められたプログラムだから、私がリエーブルを責める資格はないけれど、だからといって見過ごしていいわけじゃない。
目的までちゃんと吐かせないと、大変なことになる気がする。嫌な予感がするんだ。
「エネミーアファシスを生産して強力化、そしてばらまく…それは強力なプレイヤーの戦力分散にもなる。何が目的?」
鋭く見据えると、リエーブルはため息をついた。
「…流石は、私が見込んだだけありますね。洞察力や推理力はキリトさんやアスナさん以上ですか。あのお二人はここまで情報を与えても気付かなかったのに。」
リエーブルはボロを出し、うーんと伸びをした。
「やーめたやめた!」
そうして、ふわっと浮かび上がる。光がリエーブルを包み、姿が変わっていく。
「………」
奇抜なアファシススーツを着た女性がそこにいた。
「ほえー。魔法少女顔負けの変身だね、リエーブル。」
「え、リエーブル…なの?」
「はあ、目の前で変身を解いてあげたのにクレハさんはわからないのですね。そう、リノセさんが言うように、私がリエーブルですよ。」
声もガラッと変わっている。
そして、ニヤリと笑って私に答えた。
「私の目的は、古くにアファシスに課された使命を果たすことです。」
アファシスはプレイヤーをサポートするAI…だけど、その前に、昔は《SBCグロッケン》勢力と《SBCフリューゲル》勢力は敵対していた。
だからこそのエネミーであり、その敵対の中で、フリューゲルの主であるマザーコンピュータが作った最大戦力が、アファシス。となると…
「《SBCグロッケン》を滅ぼすこと?」
「ピンポンピンポーン!大正解!流石です!じゃあ、どうやって滅ぼすかもわかりますね?」
「…《非戦闘区域》の消失?」
「またまた大正解!」
《非戦闘区域》…《SBCグロッケン》の東西南北に展開されている機械によって保たれている、《SBCグロッケン》を拠点たらしめるもの。
それを壊せば、グロッケンは拠点としての機能を果たせなくなる。
まさか、それで強いプレイヤーのデータを集めてエネミーアファシスを生産、そしてグロッケンの四方に向かわせて攻撃させる…?
やばい、ここにいる場合じゃない。
「そのためとはいえ、アホシスになりきるなんて苦痛でした。でもあなたは周りに強い人がたくさんいたので収益は大きかったです。キリトさんとアスナさん、そしてリノセさん…あなたの能力が最も高いと見込んでいたんです。残念残念!」
「なっ、ななっ…」
うーんともう一度伸びをするリエーブルに、クレハが声を荒げる。
「エネミーアファシスの生産なんて、アファシスにそんな権限があるの⁉」
「いいですかクレハさん。そこの旧型アファシスと一緒にしないでください。私はAfasystem Tipe-zですから!」
「Tipe-z、ね。」
ふんぞりかえるリエーブルを見つめる。
彼女の戦闘の癖は覚えたけど…。ちぇっ、面倒なことになった。ここで倒してもエネミーアファシスは消えないだろうし、逆に暴走するかもしれないし…
目の前の彼女の最高命令は終焉への導き…なんとかして止めないと。
私はそう思って目を細めた。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.36 )
- 日時: 2023/07/07 19:04
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「リノセさんの仰る通り、ここはエネミーアファシスを生産する拠点です。そして、ここでリノセさんのデータを取ってエネミーアファシスにする予定だったのですよ。」
リエーブルがパチンと指を鳴らすと、キリトとアスナのコピーが現れた。
「足止め頼みました!」
「わかったわ。リエーブルちゃんは早く行って。」
「剣も無事治ったしな。ここは任せろ!」
私はチッと舌打ちしてハンドガンに切り替えてスキルフリーズ弾を込める。
このままじゃ、リエーブルにグロッケンを破壊させちゃう。なんとしても阻止しないと。
「早く片付けるよ!グロッケンが危ない!」
「はい!」
「ええ!」
そうして、私たちはまた戦火を交え始めた。
「―――なんとか倒せたわね。どうする?リエーブルを見失ったわ…」
「いるメンバー全員に集合のメールをかけたから、一回私のホームに戻ろう。」
「了解、じゃあ行きましょうか。」
「はい!」
《魔窟》ダンジョンから出ると、そこには大量のエネミーとエネミーアファシスが待ち構えていた。
「姑息だね。どうしても足止めしたいってか!」
無視して駆け上がる。上空からのビームを間一髪で避けて、込めておいた炸裂弾で落とす。
ネームド……かつて戦ったハチミツメイカー…じゃなくて、ハニカムメイカーだ。
「悪いけど、《魔窟》のおかげで結構レベル上がったんだよ。」
ハニカムメイカーはすぐに片付いた。問題は弱いけれどたくさんいるエネミーたちだ。
「船の墓場まで行けば、デスポーンしてくれるかも。HPが尽きないように、行くよ!」
「ええ!」
船の墓場まで走ってきて振り返ると、もう来た方向にエネミーはいなかった。
ほっと胸をなでおろすもつかの間、足音が近づいてくる。
警戒して振り返ると、見慣れた黒が目に飛び込んできた。
「なんだ、キリトか…」
「なんだってなんだよ。って、それより、緊急事態らしいな?」
「リエーブル…あのレイのそっくりさんは、キリトたちのデータを握手で取ってコピーを作成して、最終的にはグロッケンを滅ぼす気らしい。」
「えっ⁉」
「こりゃ思った以上にまずいな…早く戻ろう!」
ここならヘイトが向いてきていないので、一気に戻れる。
帰ろうとコンソールを呼び出したとき。
シュン…と、何かが現れた音がした。
敵⁉…かと思ったら。
「⁉」
「ここは…」
本人たちも動揺している、プレイヤーだった。
キリトたちの知り合いらしかったので、私のホームに連れ帰った。
金髪の美女はアリス・シンセシス・サーティー。亜麻色の髪のイケメンはユージオ。二人共、別のゲームから来たらしいが、ここに来ようとしてきたわけではない…らしい。
システムのお導き?不正外部ログインができそうな人でも、しそうな人でもないしなあ。カーディナルシステムにも引っかからないままのバグ?いや…
だいぶ個性のある人だし、アリスとユージオの名字が引っかかる。
まるで、違う世界から来たみたいな―――
いや、今はこんな事考えてる場合じゃない。早く行動しないと。
「―――うわあ。面倒なことになったね〜。」
「それにしても、クエスト…というか、イベントが高難易度すぎませんか?グロッケンプレイヤーの実力が追いついてない気がします。」
リーファとシリカは不安そうに眉をひそめた。
みんな賛同なのか、黙りこくっている。
「状況はあまり芳しくありません。グロッケンの四方にエネミーアファシスが集中しており、一部のプレイヤーが対応しておりますが、負けイベントではないかとの声もあり…」
「はい。現在は《非戦闘区域》展開装置の防衛はギリギリの状態です。」
デイジーとユイちゃんの報告に頭が痛い。
負けイベント…は、グロッケンがかかってるからありえないにしろ、難易度が全体的に高すぎるのは事実。早い時期にイベントフラグが立ちすぎた…?
それなら、そのイベントフラグは…そうか!
「リエーブルがアファシスなら、マスターがいるよね。リエーブルを、誰かが起こしちゃったんだ。それがイベントフラグだったんだよ。」
「…ッ、そうか!本来もっと遅くクリアされるはずだったダンジョンが攻略されてしまって、その最奥にいた彼女が…」
「このゲームは半分以上はプレイヤースキルでまかなえるものね〜」
じゃあ、まだ勝機はある。完全に負けイベントではないってことだ。
「リエーブルを止める方法はあるわ。だいぶ賭けだけど…いい?」
「うん。勿論だよ、ツェリスカ。」
ツェリスカの真面目な瞳を見て、頷いた。
少しでも可能性があるのなら。
「じゃあ、リノセとレイちゃんは私と一緒に。」
「あ、あたし、知り合いに声をかけてみます!」
「私も知り合いを当たって協力を要請してみるわ。」
クレハとシノンは人員増加をしてくれるそうだ。
「了解、じゃあ、残りのみんなはなんとか防衛してて!」
私も、気を引き締めないと。
「―――すぐ終わらせる。」
「実行にはいくつかの素材が必要なの。半分ずつ担当しましょう。」
「ううん、ツェリスカ。ツェリスカは何か他にやることがあるみたいだし、私が全部集めてくるよ。」
「あら…あなたにはお見通しみたいね。じゃあ、お願いするわ。必要なものはメールで送っておくから〜。」
「わかった。行くよ、レイ!」
「はい!」
―――《SAO》時代
誰がどこに行ってどこにいったからボスがどうで…という情報に随分踊らされたものだ。
勿論その情報は正確だった。驚くほど、その人の―――唯葉、いや、ユラの情報は正確なのだ。だが、それ故に。
それを、使われたわけだ。それを信用してその場所に向かって、それは実はおびき寄せるためだった。正確に情報を掴ませて追わせる作戦だったのだ。
あれで私という重要戦力が抜けた血盟騎士団は一時危うくなったとか。
それから、私は行動の裏を読むことを重く見据えた―――
リエーブルの目的は《SBCグロッケン》を滅ぼすこと。《魔窟》に行くのはエネミーアファシスを生産するためだったからわかるけど、デイジーからのメールによると、リエーブルは《ロストゲート》に入っていったそうで……。
あのダンジョンはエネミーばかりで、《魔窟》のようなエネミーアファシスを生産する機構はなかったはずだ。それでも行く、ということは…
いや、待て。
【《魔窟》ダンジョンから出ると、そこには大量のエネミーとエネミーアファシスが待ち構えていた。
『姑息だね。どうしても足止めしたいってか!』】
エネミーアファシスはともかく、入る前はいなかった大量のエネミーが不自然に湧いていた。
本来ならそんなことはありえない…そう、エネミーすら操れる権限さえなければ。その権限があるとすれば、リエーブルは《ロストゲート》の強力なエネミーを連れ出せることになる。
と、いうことは。
リエーブルが《ロストゲート》に行ったのは、ただ戦力を補充するため…
もうすぐクライマックスってことかね。
急がなきゃ。
「ふう、これで最後?」
「はい。ツェリスカたちが集めてくれた情報によると、《ロストゲート》に入るには鍵が必要だそうです。マスターが持ってる5つの星図は、更に進むために必要な鍵だと…」
「なるほど。今度はそれを集めるわけだね。」
「はい。アルゴが情報を提供してくれているそうなので、アルゴの情報の裏取りを兼ねて収集をお願いしたいそうです。」
「おっけー。じゃあ、サクッと集めちゃいますか!」
そうして、私たちはまた移動を始めた。
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