二次創作小説(新・総合)
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- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜
- 日時: 2022/11/15 22:17
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
注意!!!
読むのが最初の方へ
ページが増えています。このままだといきなり1話のあと6話になるので、最後のページに移動してから読み始めてください。
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はちょっとお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「―――また、行くんだね。あの“仮想世界”に。」
《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》。それは、フルダイブ型のVRMMOである。
フルダイブ型VRMMOの祖、《ソード・アート・オンライン》、《SAO》。
私は、そのデスゲームに閉じ込められたプレイヤーの中で、生き残って帰ってきた、《SAO帰還者》である。
《SAO》から帰還して以来、私はVRMMOとは距離をおいていたが。
『ねえ、《GGO》って知ってる?』
私、神名 凛世は、幼馴染の高峰 紅葉の一言によって、ログインすることになった。
幼い頃に紅葉が引っ越してから、疎遠になっていた私達。その紅葉から、毎日のようにVRで会えるから、と誘われたVRMMO。行かないわけにはいかないだろう。大好きな紅葉の誘いとあらば。
ベッドに寝転がって、アミュスフィアを被る。
さあ、行こう。
“仮想世界”…………もう一つの現実に。
「―――リンク・スタート」
コンソールが真っ白な視界に映る。
【ユーザーネームを設定してください。尚、後から変更はできません】
迷いなく、私はユーザーネームを【Linose】……【リノセ】にした。
どんなアカウントでも、私は大抵、ユーザーネームを【リノセ】にしている。
最初にゲームをしようとした時、ユーザーネームが思いつかなくて悩んでたら、紅葉が提案してくれたユーザーネームである。気に入っているのだ。
―――でも、《SAO》では違った。
あの時、【リノセ】にしたくなかった理由があり、《SAO》では【リナ】にしていた。
凛世のりと、神名のなを反対に読んで、リナ。それが、あそこでの私だった。
でも、もういいんだ。私は【リノセ】。
コンソールがアバター設定に切り替わった。
普通の人なら誰?ってほど変えるところだけど、私は《SAO》以来、自分を偽るのはやめにしていた。とは言っても、現実とちょっとは変えるけど。
黒髪を白銀の髪に変え、褐色の瞳を紺色にする。おろしていた髪を編み込んで後ろに持っていった髪型にした。
とまあ、こんな感じで私のアバターを設定した。顔と体型はそのままね。
…まあ、《GGO》に《SAO帰還者》がいたらバレるかもしれないけど…そこはまあ大丈夫でしょ。私は、PKギルドを片っ端から潰してただけだし。まあ、キリトがまだ血盟騎士団にいない頃、血盟騎士団の一軍にいたりはしたけれども。名前は違うからセーフだセーフ。
ああ、そういえば…《SAO》といえば…懐かしいな。
―――霧散
それが、《SAO》時代に私につけられていた肩書だった。
それについてはまた今度。…もうすぐ、SBCグロッケンに着く。
足が地面に付く感覚がした。
ゆっくり、目を開く。
手のひらを見て、手を閉じたり開いたりした後、ぐっと握りしめた。
帰ってきたんだ。ここに。
「―――ただいま。…“仮想世界”。」
「お待たせっ。」
前方から声をかけられた。
「イベントの参加登録が混んでて、参っちゃった。」
ピンクの髪に、ピンクの目。見るからに元気っ子っぽい見た目の少女。
その声は、ついこの前聞いた、あの大好きな幼馴染のものだった。
「問題なくログインできたみたいね。待った?」
返事のために急いでユーザーネームを確認すると、少女の上に【Kureha】と表示されているのがわかった。
―――クレハ。紅葉の別の読みだね。
紅葉らしいと思いつつ、「待ってないよ、今来たとこ。」と答えた。
「ふふ、そう。…あんた、またその名前なわけ?あたしは使ってくれてるから嬉しいけど、別に全部それ使ってとは言ってないわよ?」
クレハは、私の表示を見てそう言った。
「気に入ってるの。」
《GGO》のあれこれを教えてもらいながら、私達は総督府に向かった。
戦闘についても戦闘の前に大体教えてもらい、イベントの目玉、“ArFA system tipe-x"についても聞いた。
久しぶりのVRMMO…ワクワクする。
「あ!イツキさんだ!」
転送ポート近くにできている人だかりの中心を見て、クレハが言った。
「知ってるの?」
あの人、《GGO》では珍しいイケメンアバターじゃん。
「知ってるっていうもんじゃないわよ!イツキさんはトッププレイヤーの一員なのよ!イツキさん率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ!」
「…すこーど…?」
「スコードロン。ギルドみたいなものね。」
「あー、なるほど。」
イツキさんは、すごいらしい。トッププレイヤーなんだから、まあそうだろうけど。すごいスコードロンのリーダーでもあったんだね。
「やあ、君たちも大会に参加するの?」
「え?」
なんか、この人話しかけてきたよ⁉大丈夫なの、あの取り巻き達に恨まれたりしません?
「はい!」
クレハ気にしてないし。
「クレハくんだよね。噂は聞いているよ。」
「へっ?」
おー…。トッププレイヤーだもんなあ…。クレハは準トッププレイヤーだから、クレハくらいの情報は持っておかないと地位を保てないよねえ…。
「複数のスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判いいよね。」
「あ、ありがとうございます!」
うわー、クレハが敬語だとなんか新鮮というか、違和感というか…。
トッププレイヤーの威厳ってものかね。
「そこの君は…初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あ、はい。私はリノセ!よろしくです!」
「リノセ、ゲームはめちゃくちゃ上手いけど、《GGO》は初めてなんです。」
「へえ、ログイン初日にイベントに参加するとは、冒険好きなんだね。そういうの、嫌いじゃないな。」
うーん。冒険好き、というよりは、取り敢えずやってみよー!タイプの気がする。
「銃の戦いは、レベルやステータスが全てではない。面白い戦いを―――期待しているよ。それじゃあ、失礼。」
そう言って、イツキさんは去っていった。
「イツキさんはすごいけど、私だってもうすぐでトッププレイヤー入りの腕前なんだから、そう簡単に負けないわ!」
クレハはやる気が燃えまくっている様子。
「ふふ、流石。」
クレハ、ゲーム好きだもんなあ。
「さあ、行くわよ。準備ができたらあの転送ポートに入ってね。会場に転送されるから。」
―――始めよう。
私の物語を。
大会開始後、20分くらい。
「リノセ、相変わらず飲み込みが早いわね。上達が著しいわ!」
ロケランでエネミーを蹂躙しながらクレハが言った。
「うん!クレハのおかげだよ!」
私も、ニコニコしながらエネミーの頭をぶち抜いて言った。
うん、もうこれリアルだったら犯罪者予備軍の光景だね。
あ、銃を扱ってる時点で犯罪者か。
リロードして、どんどん進んでいく。
そうしたら、今回は運が悪いのか、起きて欲しくないことが起きた。
「おや、君たち。」
「……イツキさん。」
一番…いや、二番?くらいに会いたくなかったよ。なんで会っちゃうかな。
…まあ、それでも一応、持ち前のリアルラックが発動してくれたようで、その先にいたネームドエネミーを倒すことで見逃してくれることになった。ラッキー。
「いくわよ、リノセ!」
「うん!」
そのネームドエネミーは、そんなにレベルが高くなく、私達2人だったら余裕だった。
うーん…ニュービーが思うことじゃないかもしれないけど、ちょっとこのネームド弱い。
私、《SAO》時代は血盟騎士団の一軍にも入ってたし。オレンジギルド潰しまくってたし。まあ、PKは一回しかしてないけど。それでも、ちょっとパターンがわかりやすすぎ。
「…終わったわね。」
「うん。意外と早かったね?」
「ええ。」
呆気なく倒してしまったと苦笑していると、後ろから、イツキさんが拍手をしてきた。
「見事だ。」
本当に見事だったかなあ。すぐ倒れちゃったし。
「約束通り、君たちは見逃そう。この先は分かれ道だから、君たちが選んで進むといい。」
え?それはいくらなんでも譲り過ぎじゃないかな。
「いいんですか?」
「生憎、僕は運がなくてね。この間、《無冠の女王》にレアアイテムを奪われたばかりなんだ。だから君たちが選ぶといい。」
僕が選んでもどうせ外れるし。という副音声が聞こえた気がした。
「そういうことなら、わかりました!」
クレハが了承したので、まあいいということにしておくけど、後で後悔しても知らないよ。
「じゃあリノセ、あんたが選んでね。」
「うん。私のリアルラックを見せてあげないと。」
そして私は、なんとなく左にした。なんとなく、これ大事。
道の先は、小さな部屋だった。
奥に、ハイテクそうな機械が並んでいる。
「こういうのを操作したりすると、何かしら先に進めたりするのよ。」
クレハが機械をポチポチ。
「…え?」
すると、床が光り出した。出ようにも、半透明の壁のせいで出れない。
「クレハ―――!」
「落ち着いて!ワープポータルよ!すぐ追いかけるから動かないでー!」
そして、私の視界は切り替わった。
着いたのは、開けた場所。戦うために広くなっているのだろうか。
「………あ。」
部屋を見回すと、なにかカプセルのようなものを見つけた。
「これは…」
よく見ようとして近づく。
すると。
「―――っ」
後ろから狙われている気がしてバッと振り返り、後ろに飛び退く。
その予感は的中したようで、さっきまで私がいたところには弾丸が舞っていた。
近くのカプセルを掴んで体勢を立て直す。
【プレイヤーの接触を確認。プレイヤー認証開始…ユーザーネーム、Linose。マスター登録 完了。】
なんか聞こえてきた気がした機械音声を無視し、思考する。
やっぱり誰かいるようだ。
となると、これはタッグ制だから、もうひとりいるはず。そう思ってキョロキョロすると、私めがけて突っ込んでくる見知った人物が見えた。
キリト⁉まさか、この《GGO》にもいたの…⁉ガンゲーだから来ないと思ってたのに。まあ、誰かが気分転換に誘ったんだろうけど。ってことは、ペア相手はアスナ?
うっわ、最悪!
そう思っていると、カプセルから人が出てきた。
青みがかった銀髪の女の子で、顔は整っている。その着ている服は、まるでアファシスの―――
観察していると、その子がドサッと崩れ落ちた。
「えっ?」
もうすぐそこまでキリトは迫っているし、ハンドガンで攻撃してもどうせ弾丸を斬られるだろうし、斬られなくてもキリトをダウンさせることは難しい。
私は無理でも、この子だけは守らなきゃ!
そう考える前に、もう私の体は女の子を守っていた。
「マスター…?」
「―――っ!」
その女の子が何かを呟くと、キリトは急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「…?」
何この状況?
よくわからずにキリトを見上げると、どこからか足音が聞こえた。
「…っ!ちょっと待ちなさい!」
クレハだ。
照準をキリトに合わせてそう言う。
「あなたこそ、銃を降ろして。」
そして、そんなクレハの背後を取ったアスナ。
やっぱり、アスナだったんだね、私を撃とうとしたのは。
一人で納得していると、キリトが何故か光剣をしまった。
「やめよう。もう俺たちは、君たちと戦うつもりはないんだ。残念だけど、間に合わなかったからな。」
「間に合わなかった?何を言っているの?」
クレハが、私の気持ちを代弁する。
「既にそこのアファシスは、彼女をマスターと認めたようなんだ。」
………あ、もしかして。
アファシスの服みたいなものを着ているなーと思ったら、この子アファシスだったの?
というか、マスターと認めた…私を?
あー…そういえば、マスター登録がなんとかって聞こえたような気がしなくもない。
うん、聞こえたね。
あちゃー。
「ええええ⁉」
この子がアファシス⁉と驚いて近づいてきたクレハ。
「ねっ、マスターは誰?」
「マスターユーザーネームは【Linose】です。現在、システムを50%起動中。暫くお待ち下さい。」
どうやら、さっきカプセルに触れてしまったことで、私がマスター登録されてしまったようだ。やっちゃった。……いや、私だってアファシスのマスターになる、ということに対して興味がなかったといえば嘘になるが。クレハのお手伝いのために来たので、私がマスターとなることは、今回は諦めようと思っていたのだ。
―――だが。
「あんたのものはあたしのもの!ってことで許してあげるわ。」
クレハは、からかい気味の口調で言って、許してくれた。
やっぱ、私はクレハがいないとだめだね。
私は改めてそう思った。
クレハに嫌われたらどうしよう、大丈夫だと思うけど万が一…と、さっきまでずっと考えていたからだ。
だから、クレハ。自分を嫌わないで。
クレハもいなくなったら、私―――
ううん。今はそんな事考えずに楽しまなきゃ。クレハが誘ってくれたんだから。
「私はクレハ。よろしくです!」
「リノセ。クレハの幼馴染です!」
「俺はキリト。よろしくな、リノセ、クレハ!」
「アスナよ。ふたりとも、よろしくね。」
自己紹介を交わした後、2人は優勝を目指して去っていった。
きっと優勝できるだろう。あの《SAO》をクリアした2人ならば。
私はその前に最前線から離脱しちゃったわけだし、今はリナじゃないし、2人にバレなくて当然というか、半分嬉しくて半分寂しい。
誰も私の《SAO》時代を知らないから、気付いてほしかったのかもしれない―――
「メインシステム、80…90…100%起動、システムチェック、オールグリーン。起動完了しました。」
アファシスの、そんな機械的な声で私ははっと我に返った。
「マ、マスター!私に名前をつけてくださいっ。」
「あれ?なんか元気になった?」
「えっと…ごめんなさい、そういう仕様なんです。tipe-xにはそれぞれ人格が設定されていて、私はそれに沿った性格なんです。」
「あ、そうなんだ。すごいね、アファシスって。」
じゃあ、このアファシスはこういう人格なんだね。
「名前、つけてあげなさいよ。これからずっと連れ歩くんだから。」
「うん。」
名前…どうしようかな。
この子、すごく綺麗だよね…綺麗…キレイ…レイ。レイ…いいじゃん。
「レイ。君はレイだよ。」
「レイ...!登録完了です。えへへ、素敵な名前をありがとうございます、マスター。」
アファシス改め、レイは嬉しそうに笑った。
「…リノセ、あんた中々センスあるじゃん。あのときはずっっと悩んでたっていうのに。」
クレハが呆れたように言った。まあ、いいでしょ。成長したってことで。
「えと、マスター。名前のお礼です。どうぞ。」
レイは、私に見たことのない銃を差し出した。
「ありがとう。これは何?」
受け取って訊いてみると、レイはニコッとして答えた。
「《アルティメットファイバーガン》です。長いので、《UFG》って呼んでください。」
《UFG》……何かレアそう。
また、大きな波乱の予感がした。
次へ続く
- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜2 ( No.1 )
- 日時: 2022/11/16 16:05
- 名前: イナ (ID: F5B8s22.)
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
《UFG》の説明が終わったところで、大会は終了。予想通り、キリトたちが優勝したようだった。流石は《黒の剣士》と《閃光》。…いや、2人はこの通り名は嫌いかな。
総督府に戻ってきた。
なんか、長かった。色々ありすぎてちょっと長く感じる。
そんなことを思っていると。
「やあ、君たちも生き残っていたんだね。」
イツキさんに声をかけられた。
「はい。」
クレハが返事し、視線で私に続きを促した。続きを言えってことだろう。
「私達の行った先にはワープポータルがあって、その先に…」
私は、レイを見てニコッと笑い、イツキさんにレイを紹介した。
「アファシス…レイがいたんです。」
イツキさんは、クレハがアファシスと知った時くらいに目を開いて言った。
「まさか…それが、アファシス⁉」
「は、はい!私はArFA system A290-00、レイです!」
あ、個体番号ってそんな感じだったんだ。初めて知った。長いね。アファシステムエーツーナインゼロゼロ。正式名称、アーティーファイナンシャルアドバイザーシステム、だっけ。ってことは、本当はアーティーファイナンシャルアドバイザーシステムエーツーナインゼロゼロ?だったら短い方なのか。
「ああ…何故僕の落としたパンはいつもバターを塗ったほうが下になるんだろうか。」
イツキさんは心底残念そうにそう言った。やけに具体的な比喩だな、経験済みか?と思っていると、また誰かから後ろから声をかけられた。
「おーい、3人とも!」
「リノセちゃん、クレハちゃん、アファシスちゃん!」
キリトとアスナだ。……あれ、私一応さん付けしたほうがいいのかな?いらないかな?自己紹介したし、いいよね、もう。
「あれ、あんたは…」
「さっきはどうも。時間切れになってなければやられてたよ。僕はイツキ。よろしく。」
へー。2人とも、最後まで戦ってたんだ。
「俺たち、これから仲間とパーティーを開くんだ。よかったら君たちもどうかなと思って。」
キリトの誘いに、すぐクレハが目を輝かせた。
「行きたい!ねっ、リノセもいいわよね!」
「レイがいいなら、喜んで。」
「はい、私も行きたいです!パーティーは初めてなので、楽しみです!」
2人とも楽しそうで何より何より。
「そうか。イツキはどうだ?」
「悪いけど、遠慮しておくよ。スコードロンの仲間に奢る約束をしているんだ。」
「そうか、わかった。」
そうして、私達は、キリトの仲間たちのところに行くことになったのであった。
キリトの仲間たち………キリト達がいるなら、当然いるよね。
かつての戦友たちが―――
キリトたちが借りて使っているというホームのアドレスをもとに、キリトたちのホームに着いた。そこには、沢山の料理が並んでいる。
「キリト、アスナ!大会優勝…」
「「「おめでとー!!」」」
パーティーが始まった。
「ありがとう。でも、今日は俺たちが主役じゃないんだ。今日の主役は…」
キリトが私を見る。
「ゲーム初日でアファシスを手に入れた、幸運なニュービー、リノセが主役だ!」
「「「おめでとー!!」」」
やっぱり、この人達は、平等に人の幸せを喜んでくれる。
優しいね。そして、暖かいね。
クレハも楽しそうに話している。レイも早速打ち解けたみたいでよかった。
自己紹介を交わして、《GGO》に来ているメンバーを把握した。
キリト、アスナ、クライン、シリカ、リズベット、エギル、ユイちゃん。
この7人は、私のかつての戦友だ。
ユイちゃん以外はそれぞれ、何回かは同じボスやダンジョンに挑んだことがある。と言っても、接点とか話す機会とかは滅多になかったけど。
まあ、一緒に戦ったことがないユイちゃんのことも、噂で耳にしたり、キリトたちと一緒にいるのを見たりして知ってたから。
そして、リーファ、シノン、フィリア、ストレア、プレミア、レイン、ユウキ。
この7人は、今回知った、新しい仲間。
リーファはキリトの妹らしい。で、ストレア・プレミアはAIだそうだ。
AI仲間的な感じで、レイ、ユイちゃん、ストレア、プレミアが和気あいあいと話してたから、仲良さそうで良かったなーと4人を眺めていた。
―――気付かないんだね、やっぱり。
安心したけど、どこか寂しい。
あの事件のことをクレハ達、《SAO》部外者たちに知られたくない。けど、一人で抱えたくない。
どっちを優先すればいいかわからないから、あっち側から《SAO》の話のトリガーを引いてほしかったんだと思う。
でも、気付かないならいいや。私からは話せない。
それが、自分の中で出した結論だった。
それに、私は決めたんだ。
《SAO帰還者》リナとしての自分ではなく、《GGO》のニュービー、リノセとしての自分でキリトやVRMMO、そして《GGO》と向き合うと。
だから、いいんだ。
…久しぶり、キリト、アスナ、クライン、シリカ、リズ、エギル、ユイちゃん。
心の中で、呟いた。
「―――あのとき、なんでアファシスを庇ったんだ?」
キリトが、訊いてきた。
それと同時に、私は、《SAO》での恩師が言った言葉を思い出した。
『―――助けるのに、理由なんて無いの。本当に助けようと思ったなら、体が自然と動いているものなのよ。それが私達なんだよ』
ああ。確かにそうだった。理由を訊かれても私はわからない。助けなきゃと思ったから体が自然に動いたし、それに理由なんてなかった。
「…理由なんて無いよ。心から助けなきゃと思ったら、体が自然に動いてた。…それだけ。」
私がそう言うと、キリトは頬を緩めた。
「やっぱり。君は、俺と同じタイプの人間だ。あの時、そんな匂いというか…雰囲気を感じたんだよ。君と俺は似ている。」
キリトに似ているなら光栄だよ、と心の中で言っておく。超人の《黒の剣士》様に似ているなら嬉しい限りというか、なんというか。
…でも。仮にも、私達が似ているとしたら。
―――私は、キリトみたいに、誰かの救いになることができるのだろうか。
英雄となることが、できるのだろうか。
翌日、私はリアルで、授業を受けていた。
私は《SAO帰還者》。《帰還者学校》の生徒になるべき人だが、《霧散》として顔が知られているので、他の《SAO帰還者》に会いたくなくて、解放された中3のとき、死ぬ気で勉強を進めて普通の公立高校に入学した。幸い、家庭教師を雇いながら生活もできるくらいのお金は、毎月、家族から口座に振り込まれる。まあ、訳あって一人暮らしだからね。
「気を付けて帰れよー」
「はーい。」
学校があっという間に終わり、なんとなく空を見上げながら家に帰った。
「……はあ。」
―――《GGO》に行くか。ずっとこうしてるよりずっといい。レベリングとかしたいし。
「リンク・スタート」
ホームに来た。そこにはもうレイがいて、「あ、マスター!おかえりなさい!」と笑顔で言ってきた。
…おかえりなさい…ああ、何年ぶりに言われただろうか。
「…ただいま、レイ。」
この、おかえりなさいという言葉は、なんて温かい言葉なんだろうか。
「今日は何をしましょうか?」
「うーん…みんなログインしてないみたいだし、みんな来るまで2人でレベリングでもしよっか!」
「レベリングですね!わかりました、早速向かいましょう!」
《GGO》はガンゲーだ。銃で戦う物騒なゲームと非難する人もいる。でも、多くの人々にとって自分をやり直せる数少ない場であることは、もう一日目である昨日の時点で気付いていた。
物騒かもしれない。偽りの現実かもしれない。でも、私にとっては暖かくて楽しい、よいゲームだ。
レイも可愛いし。
「レイ、今!」
「はい、いきます!」
レイも背中を預けることを覚え、レベルも大分上がり、残影の荒野のエネミーたちが物足りなくてレベルが上がりにくくなってきた。
「よし、レイ、このダンジョンに入ろうか!」
「はい!入りましょう入りましょう!」
2人で目をキラキラさせて入ると、そこは残影の荒野のボスダンジョンだった。
あれま、と言いつつ攻略すると、あっさり撃破。
次のフィールドの、砂に覆われた孤島に進んだのだった。
残影の荒野と砂に覆われた孤島にあるアファシスパーツを回収してから一回攻略を切り上げ、センターストリートでレイと歩いていると。
「やあ、ログインしてたんだね。」
イツキさんが話しかけてきた。
「イツキさん。」
「イツキでいいし、敬語もいらないよ。多分、年もそんなに変わらないしね。」
「あ…わかった。」
改めて、「イツキ、どうしたの?」と訊いてみると、イツキは質問してきた。
「昨日の大会の録画映像を見て、君に訊きたいことがあるんだ。」
訊かれたのは、キリトと同じ質問だった。
何?そんなに不可解な行動だった?私は咄嗟にその行動をしただけだ。それなら、キリト以外にも同じ人が結構いておかしくないと思うのに。
助けたいっていうのは、当然じゃないのかな…?
それとも、当然だけどできない、ってやつかな…?
まあいいか。私は正しいと思ってるからやってるわけだし。
「ああ、それと。君と友達になりたいんだが、いいかな?」
唐突に、イツキがお友達に勧誘してきた。
「あ、是非!じゃあ、フレンド登録しよっか!……あ、でもイツキのファン軍団には入んないよ?」
「ははっ。勿論、そうしてくれ。」
そして、お互いフレンドとなり、この前大会でイツキと一緒にいた人―――パイソンというらしい―――に連れ戻されていったイツキ。その2人を見送って、また私達はレベリングを再開したのだった。
二時間後にログインしたクレハが私達のレベルを見て、「あんたたち不正した…?」と小声で言ってきたのは、また別の話。
ちょっと…いや大分規格外のレベリングをしてたみたいだけど、過ぎたことなので気にしない気にしない。
そう自分に言い聞かせながら、クレハとメインアームとサブアームの武器を決める。
サブアームは一人で決めた。
「マスター!見てください、クレハに手伝ってもらって、ステータス振りと武器設定が終わりました!」
「おー、いいじゃん。よくできました!」
「えへへ…」
レイはメインアームがアサルトライフル、サブアームがサブマシンガン。支援特化で、回復スキルやバフスキルが多め。アサルトライフルはロバスト。そのうちMk4とかLupsとかにしたいけど、まあ武器はこれから要厳選かな。
私はメインアームがスナイパーライフル。サブアームがガン&ソード。
スナイパーライフルはAMRブレイクスルー2。3,4もあるけどまだステータスが足りない。
チップには爆風、装弾数、オートリロードなど各種。
ガン&ソードのソードはまだ強いものは無く、今はドウジギリヤスツナかな。
ガン…ハンドガンはロングストローク3。まだ4は獲得していない。
スナイパーライフルのスキルにはヒーリングエリア弾2、炸裂弾3、AED弾にアーマーブレイク弾3。まだそれぞれ熟練度が少ない。
ガン&ソードにはタクティカルロール、ダブルサーキュラー、ヴォーパル・ストライク。ソードのときはタクティカルロールがホリゾンタル・スクエアになる。
以上、こんな感じだ。
私は、まあサブアームはいざという時にしか使わないつもりだ。もしかしたら、剣を扱っているところを見せたらバレるかもしれないし。
スナイパーライフルで凌げるかなあと。
「じゃあ、一回戻って休憩しましょ?」
「わかった、そうしよう。」
「はいっ。おやつタイムですっ。」
なんか、レイ、私に似てきた?と思いつつ、レイやクレハとSBCグロッケンに帰還。
カフェでおやつタイム。
なんと、私がカフェオレばっかり飲んでたおかげでレイもカフェオレを飲むようになり、そしてレイもカフェオレ好きになったのである。
「カフェオレ2つ。紅茶1つ。あと、ミルクチョコケーキ2つ、チーズタルトも1つ。」
「かしこまりました。」
チョコケーキは私とクレハ、チーズタルトはレイ。レイ、チーズタルト気に入ったんだって。この前は「美味しすぎてほっぺたが爆発しそうです!」とかちょっとズレたこと言ってたし。あの時は笑ったなあ。
まあとにかく、そうして、私達は規格外のレベリングと武器決めを行ったのだった。
「……え?」
そして、また。
波乱の予感。
下にまだあります。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.2 )
- 日時: 2022/11/11 19:50
- 名前: 謎の女剣士 ◆7W9NT64xD6 (ID: b.1Ikr33)
初めまして、女剣士と言います。
キリト、アスナ! この2キャラは知ってます。
以前アニメ版で見ていました。
これからも、こちらに顔を出しますね。
あ、「女剣士」で構いませんので…お互いに
更新を続けて行きましょう。
それでは、失礼しますね。
P.S:訳あって新スレになってしまいましたが、こちらはONE PIECEなどのキャラが出ています。
小説のタイトルは、「光と闇の戦士たちの闘争物語」です。
現在私が執筆している小説の題名です、宜しくお願いします。
- 女剣士様へ ( No.3 )
- 日時: 2022/11/12 00:00
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
見づらいかも知れませんが、ご了承ください。下に物語は続いています。
御迷惑をおかけします。
さて、返信ありがとうございました。
知り合いに私の趣味の同士はいないので、女剣士さんのような方がいらっしゃるととても嬉しいです。ありがとうございます。
女剣士さんの作品を拝見しました。参考になる表現やセリフがたくさんあり、とても面白かったです!更新をお待ちしております。頑張ってください!
これからもちょくちょく更新していこうと思います。短いときもありますが、皆様よろしくお願い致します。
感想などもお待ちしております。
イナ
- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜3 ( No.4 )
- 日時: 2022/11/12 00:01
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願いします。
原作を知らない方はお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「…クレハと2人きりで話したいことがあるから、席を外してほしい?」
急に、レイがそんなことを言ってきたからびっくりした。
「ええ。お金は私達が払うから!お願い。」
クレハも言った。
「いいけど…。じゃあ、私フィールド行ってくるねー。」
「わかったわ。気をつけるのよ?」
「うん。終わったらメッセ飛ばしてねー」
なんとなくパーティーを組まないでソロでやってみようかな、とか考えて、私はそのままフィールドに飛び出した。
「んー。久しぶりにマップ埋めでもするかねえ。」
《USB》もあるし、詳しくマップ全体を見てみようかな、と思って、オールドサウスを駆け回る。すると、廃坑の隅に絶好の狙撃ポイントを発見した。
私のAMRブレイクスルー4++なら、射程的にも問題ないし。見つかりにくいし。
「……ん?あれは…」
他のプレイヤーを、狂ったように笑いながら倒しまくる男を見つけた。そういえば、この前シノンと一緒にいたような…名前は忘れたけど。
「…やる…?シノンのお友達をやるのは心苦しいけど…」
なんかヤバそうだし、やってもいいかな…。一回グロッケンに戻って頭を冷やしていただきましょうかね。今はソロだけど、まあなんとかなるでしょう。
「…すう…」
炸裂弾を込め、バレットラインが表示される前に撃つ。
そして、すぐにメタマテリアル光歪曲迷彩を発動して隠れた。
「うっ⁉」
見事、彼のHPを赤ゲージにまで下げることができた。
「…すう…」
そして、回復される前にもう一度。
急所を外したが、回復は防げた。
「あっ…あいつかっ…」
「あ、気付かれた。」
気付かれたけど、まあいいや。あと一発。
「…すう…」
ドンッ。
あ…勝った。最後、驚いてただけで逃げてなかったな。あの人、ソロなんだ…。仲間がいるのかと思ったんだけど…。そういえば、シノンに“孤高の存在”を押し付けてたよね。
狂ってる…一時的にじゃなくて、この人は狂ってる。そして…似てる。
「…ラフィン・コフィンに、似てる……」
ラフィン・コフィンとは限らないし、人違いかもしれないけれど…ラフィン・コフィンか、その血族のような気がする。今は先に勝てたからよかったけど、下手したら…っ。
「顔を見られたのは失敗だったかな…?」
アミュスフィアは安全のはずだけど、ラフィン・コフィンならそれを掻い潜っても不思議じゃないし…警戒はしておきますか。
まさか…キリトたちだけじゃなく、会いたくなかったPKさんたちとは…会わない、よね?
こういうときに、自分の幸運に頼りたくなるよ…。
うん、まあ、今じゃどうしようもないし。様子見かなあ。キリトたちに相談したらバレるし、そもそもこれ以上キリトたちを巻き込みたくないし。
「…さあ。続きだね。」
オールドサウスのマップ埋めに来たんだった。
そう思い、私は《UFG》でまた移動を開始した。
―――シュピーゲル Said―――
この日、僕は、ソロでオールドサウスへと来ていた。
あの、おかしくなる前のシノンと同じで、ソロ活動ばかりしている僕。
シノンとだけだよ、共に攻略をするのはね。
「っはははははははっ!」
強いだろう。僕は強い。シノンはもっと強い。シノンは孤高なんだ。強者なんだ。かっこいいんだ。そうだそうだそうだそうだそうだ。シノンは強い。孤高で、強くて―――
「うっ⁉」
そう考えていたら、急にどこからか炸裂弾で狙撃された。
この僕がバレットラインや気配に気が付かずに狙撃されるなんて…どこの集団だ?
が、あたりにそんな人物は見当たらない。
取り敢えず回復しようと、ヒーリングエリア弾を使おうとして。
「っ⁉」
それをさせまいというかの如く、ちょうどいいタイミングで防がれた。
慌てて視界を上に移すと、見えづらいビルの屋上に、AMRブレイクスルーを持ったスナイパー一人が目に入る。
「あっ…あいつかっ…」
その銃口は、確かに僕に向いていた。
「あ、気付かれた。」
そのつぶやきがかろうじて聞こえた後、その女スナイパーは再びスコープを覗いてトリガーを引いた。
その姿に、僕は、シノンのような孤高さと強さを覚えた。
「…っ」
そして次の瞬間には、僕の視界は赤く染まり、【GAME OVER】の文字が表示された。
「……孤高だ…格好いい…強い…っ!!!」
僕は叫び、SBCグロッケンへと戻った。
「見つけた…シノンの他にも、孤高の存在を…!シノンと一緒にいたニュービーだったはずだ。シノンを惑わすうちの一人かとも思ったが、あの子にも孤高さがあった…っ。あれは、あの子は。あの子はきっとっ…!」
息も切れるくらいペラペラと独り言をつぶやき、僕はいつの間にか、拳をこれでもかと握っていた。
「ははっ…素晴らしいよ、君たち…。朝田さんも、それから、あの子もね…」
絶対に…今度こそ惑わせないよ…。君はきっと、とても強い、孤高のスナイパーになれる!
思えば、さっきのビルから僕までは、軽く4000メートルは会ったはずだ。シノンもそれくらいまで当てるが、あの子もその距離で確実に僕に頭抜撃した。
あの子のスナイプスキルは、孤高の存在に申し分ない。
あの子とシノンこそ、僕の憧れる孤高にふさわしい。
「あはは、あははは…あははははははははははっ!!」
両手を天に向け、僕は笑った。
幸せを感じ、笑った。
待ってるといいよ…。
今すぐ、君を見つけるからさ。
―――シュピーゲル Said End―――
「ふう…まあひとまず、これくらいかな…。」
私は、そう言ってスナイパーライフルに弾を込めた。
大体のマップの詳細は埋め終えた。
有利になれる狙撃ポイントとか、知らなかったトレジャーボックスの場所とかも知れたし…今日は帰ろっかな。
そう思い、ホームへと帰還した。
「あ、マスター!おかえりなさい!今メッセージをお送りしようと思っていたところですっ。」
ホームには、コンソールに向かっているレイがいた。
「あ、そうだったの?ありがとう。ただいま。」
「はい!クレハはキリトたちの部屋に行きました。」
「そう。わかった。」
レイににこっと笑顔を向け、2人でアイテムボックスとストレージの整理を始めた。
途中、思わぬ大量のエネミーとの交戦があり、やむなく剣を使うことになったが、誰にも見られずに終えることができた。その結果、素材も集まって何より何より。
「マスター…これはなんでしょう?」
「え?」
レイがストレージのアイテム一覧の隅にあった【メダル】を指さした。
「なんだろ?」
具現化しようとしても、【このアイテムは創造者のみ具現化が可能です】と表示される。
こんなものがトレジャーボックスに入ってた覚えはないし、そもそもそれはおかしいから…PKで出てきたアイテムかな?……あっ、あの怖い人…かな。
「あー…さっきキルしちゃったプレイヤーが落としたメダル…かな?後で届けてあげないと。」
怖いけど…だからといって届けない理由にはならないし。うん、多分大丈夫!
「そうなのですか?わかりました。」
大体の整理を終え、エギルに鑑定を頼みにキリトたちの部屋に向かう。
「マスター。そういえば、キリトが今度一緒にクエストに行きたいと言っていました。えーと…なんでしたっけ。確か、バーサー毛?の討伐とかなんとか…」
「レイ、それバーサーカーね…」
ほっぺた爆発事件といい、バーサー毛といい、間違え方が幼い私と似ているレイ。
まあ私も私でちょっと間違え方がおかしいんだけど、そこばかり似ていて心配になる。
「こんにちはー」
「あ、リノセ。おかえりー」
「いらっしゃい、リノセちゃん。」
「おう、よう!2人とも。」
キリトたちの部屋にいたのは、クレハ、キリト、アスナ、シリカ、リズ、エギル、クライン、そしてユイちゃん。
全員に笑顔で挨拶をし、エギルに鑑定を依頼した。
「リノセ、鑑定終わったら、みんなでバーサーカー討伐に行こうぜ。報酬がうまいクエストでな!」
目を輝かせてキリトが言った。その後ろで、アスナが「もう、キリトくんったら…」と笑みをこぼしているが、苦笑ではないあたり、アスナも少しは戦いたくてうずうずしているのだろう。
「うん、勿論いいよ。」
頷いて了承すると、「よっしゃ、準備するぞー!」とみんなは張り切って準備をしだした。
変わってないな…そう思いつつ、エギルから鑑定が終わった物を受け取り、アイテムボックスに収納して、キリトたちとテンションアゲアゲで準備を始めた。
「ん、あれ…これって……」
マップ埋めでレベルが上がったので、ステータス振りとスキル取得をしていると、とあるソードスキルを見つけた。そして、私は逡巡しつつそれを取得、スキルパレットにセットした。
なんでこれがあるのかは知らないけど、もしものために…。
「よーし、じゃ、張り切ってくぞー!」
「「「おー!」」」
まるで大型アップデートの後のような勢いでフィールドに飛び出した私達。
お目当てのバーサーカーは、《残影の荒野》の奥のダンジョン前に出現する。他にもいるが、レベルは高いほうがいいよね?ということで、こっちに来た。
「ありがとリノセ!助かったわっ。」
「気を付けてね、クレハ!」
クレハたちのサポートをしつつ、司令塔としてみんなに指示を出す。
「キリトッ、今!隙あるよ!」
「了解っ!はあああっ!!」
「アスナ、リズの回復お願い!」
「わかったわ!」
そうして、意外とあっさりと、バーサーカーは撃破されたのだった。
「ふー…倒し終わったねー、お疲れ様ー!」
立ち上がってそう言うと、みんなも笑った。
「いやー、やっぱ動くのって楽しいわねえっ!」
「ねー!気持ちいいな。」
「マスター、みなさんっ。お疲れさまでした!」
みんなで一度集まって回復やバフなどを掛け合った。
「次、どうする?」
「うーん。折角フィールドに来たしなあ。そういえば、このあたりに賞金首いなかったっけ?」
「あー。この時間帯にいるって話だったかも。」
「倒してみたいな!」
「マスターに同感です!」
私とレイが目をキラキラさせて言うと、みんなは快く頷いた。
「あはは…誰かさんみたい。」
「ほんとね。そこらへんの興味と熱意を普段の生活環境にも割いてほしいといつも感じる誰かさんに。」
「……なんかとてつもなく視線を感じるんだが。俺じゃないよな?」
「「「キリトです。」」」
……快く…?の、はず。
「ふー、狩った狩ったー。」
数刻後、私達はフィールドから帰還した。
あの後、みんなやりたいことが出てきたりして、結構やり込んだ。
Resultの表示がすごい桁になっててびっくりしたけど、まあそれはそれでよかったということで。
みんなはそろそろ帰るそうで、残ったのはAIメンバーと私。
「んー…私とレイ、ちょっとSBCグロッケンでお散歩してくるね。」
「はい、わかりました。」
「おさんぽ、ですね。はい。楽しんできてください。」
「わかったよーっ、楽しんできてねっ!」
3人に送り出され、センターストリートに出た。
そういえば、キリトとクレハが、やけに迷路になってるとことか、裏道がいっぱいあるって言ってたな…。
「ねえレイ、いざ迷子!ってなったらファストトラベルできるし…。探検しようよ。」
「探検っ⁉行きたいのです!行きましょう、マスター!」
探検、というワードに反応するところも実に私に似ている。
もしかしたら期間限定の文字に弱いところまで似てくるんじゃ…ということを考えつつ、レイと探検を始めた。
「あ、マスター。こんなところに美味しそうな喫茶店が現れました!」
「うーん、現れた、ではないかな…?あと、その言い方、喫茶店が美味しそうになっちゃわない…?…まあでも、行ってみようか。」
シックな雰囲気の喫茶店を見つけたので、入ってみるウェルカムベルのカランカラン、という音とともに、笑顔でスタッフNPCが出てきた。
「じゃあ、注文しようか。」
「はいっ。カフェオレが楽しみですっ。」
「え、それ限定?」
「あ、チーズタルトも付け足しますね。」
「あ、だからそれ限定?」
やっぱり、私のアファシスのレイは、唯一無二のある意味高性能(?)のAIだと思う。
次へ続く
- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜4 ( No.5 )
- 日時: 2022/11/15 22:21
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
※これは《ソードアート・オンラインフェイタル・バレット》の二次創作になります。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願いします。
原作を知らない方はお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
実際のゲームでは起こらないことがこの物語では発生することがあります。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「あ、マスター!おかえりなさい!」
「ただいま、レイ。」
《GGO》にも馴染み、アファシスパーツの収集が終わって、そろそろ《オールドサウス》のボスダンジョンに行こうかと考えていた頃。
私は、いつもどおり、学校終わりに《GGO》にログインした。
「失礼するよ」
すると、イツキがホームにやってきた。イツキは、最近、同じスナイパーとしてアドバイスをしてくれたり、同じ時間帯によくインするフレンドとしてレイと3人でフィールド攻略に出たりもする。だから、多分最近、クレハよりも一緒にいる時間が長い仲間だ。
「イツキ、こんにちは。」
「こんにちは、イツキ。マスターは今ログインして来たところです。」
「そうかい、丁度いいね。面白そうな討伐クエを見つけてね。一緒にどうかなと思ったんだ。」
最近はずっと一緒にいるので、時々《アルファルド》のパイソンさんに怒られる。けど、まあ、渋い顔をしてもなんだかんだイツキさんには甘いのでイツキさんは毎回パイソンガードをすり抜けて私のところにやってくるのだ。
どうしてそんなに構ってくれるのかはわからないけど、強いし、優しくて頼りになるイツキと行けるのはこっちとしても嬉しいし、イツキと冒険するのは楽しいからこちらも万々歳なのだ。
「行きたいけど…《アルファルド》は大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫さ。《アルファルド》をまとめているのは、ほぼパイソンくんなんだ。僕はお飾りみたいなものでね。だから心配はいらないよ。」
「はあ…なら、いい…のかな?多分。じゃ、準備するから、行こっか。」
「はい!楽しみです!」
目を輝かせて瞬速で準備すると、私達は《砂に覆われた孤島》に飛び出した。
「へー…こんなところがあったんだねー!」
「ああ。知らなかっただろう。《ワームの砂遊び場》は他のワームよりもレベルが高いワームが集まっているんだ。今回は、そのワームの討伐だよ。」
「オッケー!」
「了解です!」
イツキが教えてくれた《ワームの砂遊び場》で、早速討伐を開始した。
「レイ、回復お願い!」
「はいっ、応援してます!」
「ありがとう。いくよ、イツキッ!」
「派手にいくよ。」
私は、今回もスナイパーライフル。レイは回復と前・中衛ってとこかな。レイが回復さえしてくれれば、攻撃は私達がやれるから、レイは回復に専念してもらっていた。
「―――ッ⁉」
すると、突然イツキと私の足元がゴゴゴゴ、と上に上昇し、丘のような形になった。
「何があったの⁉」
「形状変化…フィールドのギミックかな。」
「そうか…。警戒しつつ、攻撃は続けよっか。」
「そうだね、そうしよう。」
レイにも大丈夫であることを伝え、残りのワームたちを一掃した。
なんで砂遊び場の一部が丘になるのかな…。砂遊び場じゃないじゃん。とか思いつつ、スコープを覗く。ワームの口の中にある弱点を撃って、レイを襲おうとしたワームに炸裂弾をボン。
「レイ、気を付けて!」
「はい、ありがとうございます!」
無意識に、頬が緩む。
ああ、やっぱり、この世界っていいな。楽しいし。
そして、だいたい20体ほどのワームを倒し終えることができた。
「ふう…お疲れ様。」
「はい!お疲れさまでした。」
「スナイパーの動きも板についてきたね。上手いよ、リノセ。」
「そう、ありがと―――って、え?」
「ッ⁉」
急に、イツキが虚空に押された。
何もない空間がイツキの背中を押した、といえばわかるだろうか。
つまり、なにかによって、イツキは丘の下へと真っ逆さまである。丘から落ちたら、落下ダメージで一発ダウンだろう。いつ敵が来るかもわからない状況だし、それに、イツキにダウンしてほしくない。
「イツキッ!」
私は、イツキの腕を引っ張ってイツキを救出した。
だが、当然のように、その反動で今度は私が丘から落ちそうになる。
「ほっ」
だがまあ、私には《UFG》があった。
《UFG》で地面に転がり込むようにしてダメージが少なくなる降り方にした。
「…いって…びっくりした…。大丈夫、イツキ?」
「マスター!」
「リノセ!僕は大丈夫だけど…君は…」
「あー。私は全然大丈夫。」
HPは黄色ゲージまで削れてしまったが、ダウンはしてないので結果オーライだろう。
すぐにレイが回復をしてくれた。
「…ありがとう。」
「いーえ。イツキが無事で良かったよ。」
「……あれ?マスター。トレジャーボックスですよ。」
「え?」
レイが指さした方向を見てみる。丘の下…そこに小さな空間があり、そこにはトレジャーボックスがあった。
「さっきまでなかったよね?」
「ああ…なかったはずだ。」
どうして今見つけられたんだろう…?
「まあいっか、ラッキー!」
「はい、ですね!」
考えるの面倒だし。見つけられてよかった、ってことで。
「おー!ネックレス!男女兼用だってー。」
イツキやレイにかざしてみると、2人とも似合う。中々おしゃれなデザインだし、それに男がつけても女がつけてもおかしくないので、とてもいい。
イツキがつけるか、レイがつけるか…迷うなあ…。
「マスター。私はマスターのこの前頂いたネックレスがあります。それはイツキかマスターがつけてください。」
「え?レイはいいの?」
「はい!これ、お気に入りなんですっ。」
この前偶然出てきたチップ多めのネックレス、そんなに気に入ってくれるとは。
「なら、イツキに決定だね!」
「「え?」」
「え?」
イツキかレイかが悩みどころだったから、イツキに決定だと思って言ったら、イツキとレイに目を丸くされた。解せぬ。
「マスターはいいんですか?」
「え?私は別にいいかな。私は今、イツキかレイかで悩んでたんだよ。そしたら、レイはいいって言ってくれたから、じゃあイツキだね、っていうこと。」
「あ、もとから君は選択肢に入ってなかったんだね…」
それはおかしいだろ…という呟きはニコニコとイツキにネックレスを差し出す私の耳に入ることはなかった。入ってても反対の耳に抜けていると思うけど。
その後、暫く狩りをしてから帰ってきた私達。カフェでお茶を頂いていた。
「あ、チーズタルト一つ。」
勿論、チーズタルトも忘れずにね。
「次はどこに行こうか?」
「そうだなあ…そろそろ《オールドサウス》のボス討伐に行きたいなあ。アップデートももうすぐだろうしねえ。」
「なるほど。そうだね、《忘却の森》を開放しておかないとね。行くときは声をかけてくれ。お供するよ。」
「ありがとう。」
ニコッと笑顔を向けた。
「―――ああ、やっと見つけたよ。」
「え?」
「ちょっといいかな―――リノセ。」
背後からヌッと現れて話しかけてきた、一人の男。
「あ、この前の。」
「はじめまして、僕はシュピーゲル。よろしくね。」
狂ったように笑っていた、あのラフィン・コフィンのような雰囲気の怖い人―――もとい、シュピーゲルだった。
―――イツキ Side―――
最初は、退屈しのぎのつもりだったのに。
いつの間に、こんなにハマっていたんだろうか。君は面白くて、どれだけ一緒にいても、飽きないね。
それだけじゃない。君は、鋭いと思ったら鈍感だし、人をすぐ信じるくせに、流されづらくて頑固だし、お人好しだし、正義感あふれる人だと思ったら醜い人間とも仲良くなって、いつの間にか醜い人間が君色に染まってるし、カリスマ性があるし、明るくて元気だと思ったら仲間の問題ですごく真剣に悩むし、自分より仲間を優先するし。そして、誰かが雨に濡れてたら、無理に傘に入れようとはせず、一緒に濡れてくれるタイプだし。
ああ…なんだろうか、この感情は。わからない。不快だけど、嫌いじゃないんだ。
ずっとそばにいたい。離れたくない。なんだろう、笑顔を見ると嬉しくなる。それ以外にも…正体はわからないが、胸の奥から何かが溢れてくる気がするんだ。
いつの間にか。本当に、気付かないうちに。僕は、君のそばにいて共に《GGO》をプレイするのが、楽しみになっていた。
この《GGO》を始めた頃のような、胸のざわつきが、戻ってきたような感覚なんだ。
僕が誘った、《砂に覆われた孤島》でのワーム討伐。
終わったと気を抜いた瞬間、僕は、何かに背中を押された。
それは、トンッとかいう軽い感じではなく、ぐっと押されるような、急にだと抵抗できない強い力で。それに押されたせいで、僕は丘から落ちる。
やばい。これは、流石に―――
「イツキッ!」
ダウン必至かと思ったそのとき、くんっと腕を引かれた。咄嗟に受け身を取って、丘に着地。
すぐにリノセの方を見ると、代わりに、リノセが丘から落ちるところだった。
それを見た瞬間、僕の体の中を「嫌だ」という感情が駆け巡った。
嫌だ。リノセにダウンしてほしくない。それは―――嫌だ。
「ほっ」
リノセは、《UFG》を駆使してなんとか着地。彼女の削られたHPを見て、僕は無意識のまま小さく舌打ちをし、丘を駆け下りてリノセのもとに駆けつけた。
「…いって…びっくりした…。大丈夫、イツキ?」
それでも、君がまず心配したのは、僕のことだった。
ああ、まただ。また、僕の胸の奥から、何かが溢れそうになってくる。
「マスター!」
「リノセ!僕は大丈夫だけど…君は…」
君は、どうしてこんなことを。
成長したとはいえ、まだレベルは僕のほうが上だ。まあ、あの場合は僕もダウンは免れなかっただろうが、それでもリノセが庇う理由にはなりにくい。
そういえば、前にも同じ疑問を持ったことがあった。
『何故君は、アファシスを庇ったんだい?君がダウンすれば、アファシスは君のものにはならなかっただろう?』
『え?…うーん…守らなきゃ、って思ったときには、もう体は動いててさ。私にとって、当たり前なんだよね…おかしいかなあ。』
『そうなのか、君は理屈を考えずに行動できるんだね。教えてくれてありがとう。』
君は、これが当たり前だったんだっけ。
「っはは」
思わず、小さく笑みがこぼれた。
アファシスに回復してもらうリノセを見て、口角が自然に上がった。
やっぱり、君は面白い人だ。飽きない人だ。楽しい人だ。
この、感情は―――
一体、なんだろう。
「あ、チーズタルト一つ。」
アファシスの分のチーズタルトを注文したリノセは、優雅に紅茶を一口飲んだ。
「次はどこに行こうか?」
僕が問うと、リノセは首をこてんと傾けて答える。
「そうだなあ…そろそろ《オールドサウス》のボス討伐に行きたいなあ。アップデートももうすぐだろうしねえ。」
「なるほど。そうだね、《忘却の森》を開放しておかないとね。行くときは声をかけてくれ。お供するよ。」
何故だろう。わからないけど。うん、一緒にいたい。僕は、片時も君から離れたくない。
「ありがとう。」
僕にニコッと笑顔を向けたリノセに僕も微笑みながら紅茶を飲むと、リノセの背後から、一人の細身の男が現れた。
「―――ああ、やっと見つけたよ。」
「え?」
「ちょっといいかな―――リノセ。」
ヌッと現れてリノセに話しかけてきた、一人の男。
「あ、この前の。」
「はじめまして、僕はシュピーゲル。よろしくね。」
むくむくと、僕の中に、何か黒い感情が生まれた。
やっと見つけた、とはなんだ。
君は、リノセの何だ。
お前は、誰だ。
今すぐ炸裂弾とグレネードで骨の髄まで粉々にしたいくらいの嫌悪感を感じた。
リノセは、シュピーゲルとやらを少し怖がっている様子だ。
アファシスもそれに気付いてオドオドしているが、シュピーゲルはそれに構わず、リノセに不気味な笑みを向けた。
「ごめんよ。今は僕とティータイム中なんだ。邪魔しないでくれるかな?」
「ははっ。大丈夫だよ。ちょっとしか掛からないからさ。リノセを貸してくれよ。」
「それはできないね。今、いいところなんだ。また別のときに来てくれ。」
一昨日来やがれ…と言いたいところを我慢した僕はとても偉いと思う。
バチバチと火花を散らせる僕達。リノセは、怯えた表情で僕の袖をそっと掴んだ。
「ごめんなさい、また今度でいい?」
その手は、震えていた。
「おや?席を外せないのか?…じゃあ、まあ。今日はお暇するよ。またね、リノセ。」
「えっと…ごめんなさいね。」
ふう…と、リノセは静かにため息をついた。
僕は、その弱った姿を見ていられなくて―――
会計を瞬速で済ませ、アファシスに「マスターを借りるよ」と言って、リノセを横抱きにした。
次へ続く
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