二次創作小説(新・総合)
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- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜
- 日時: 2022/11/15 22:17
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
注意!!!
読むのが最初の方へ
ページが増えています。このままだといきなり1話のあと6話になるので、最後のページに移動してから読み始めてください。
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はちょっとお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「―――また、行くんだね。あの“仮想世界”に。」
《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》。それは、フルダイブ型のVRMMOである。
フルダイブ型VRMMOの祖、《ソード・アート・オンライン》、《SAO》。
私は、そのデスゲームに閉じ込められたプレイヤーの中で、生き残って帰ってきた、《SAO帰還者》である。
《SAO》から帰還して以来、私はVRMMOとは距離をおいていたが。
『ねえ、《GGO》って知ってる?』
私、神名 凛世は、幼馴染の高峰 紅葉の一言によって、ログインすることになった。
幼い頃に紅葉が引っ越してから、疎遠になっていた私達。その紅葉から、毎日のようにVRで会えるから、と誘われたVRMMO。行かないわけにはいかないだろう。大好きな紅葉の誘いとあらば。
ベッドに寝転がって、アミュスフィアを被る。
さあ、行こう。
“仮想世界”…………もう一つの現実に。
「―――リンク・スタート」
コンソールが真っ白な視界に映る。
【ユーザーネームを設定してください。尚、後から変更はできません】
迷いなく、私はユーザーネームを【Linose】……【リノセ】にした。
どんなアカウントでも、私は大抵、ユーザーネームを【リノセ】にしている。
最初にゲームをしようとした時、ユーザーネームが思いつかなくて悩んでたら、紅葉が提案してくれたユーザーネームである。気に入っているのだ。
―――でも、《SAO》では違った。
あの時、【リノセ】にしたくなかった理由があり、《SAO》では【リナ】にしていた。
凛世のりと、神名のなを反対に読んで、リナ。それが、あそこでの私だった。
でも、もういいんだ。私は【リノセ】。
コンソールがアバター設定に切り替わった。
普通の人なら誰?ってほど変えるところだけど、私は《SAO》以来、自分を偽るのはやめにしていた。とは言っても、現実とちょっとは変えるけど。
黒髪を白銀の髪に変え、褐色の瞳を紺色にする。おろしていた髪を編み込んで後ろに持っていった髪型にした。
とまあ、こんな感じで私のアバターを設定した。顔と体型はそのままね。
…まあ、《GGO》に《SAO帰還者》がいたらバレるかもしれないけど…そこはまあ大丈夫でしょ。私は、PKギルドを片っ端から潰してただけだし。まあ、キリトがまだ血盟騎士団にいない頃、血盟騎士団の一軍にいたりはしたけれども。名前は違うからセーフだセーフ。
ああ、そういえば…《SAO》といえば…懐かしいな。
―――霧散
それが、《SAO》時代に私につけられていた肩書だった。
それについてはまた今度。…もうすぐ、SBCグロッケンに着く。
足が地面に付く感覚がした。
ゆっくり、目を開く。
手のひらを見て、手を閉じたり開いたりした後、ぐっと握りしめた。
帰ってきたんだ。ここに。
「―――ただいま。…“仮想世界”。」
「お待たせっ。」
前方から声をかけられた。
「イベントの参加登録が混んでて、参っちゃった。」
ピンクの髪に、ピンクの目。見るからに元気っ子っぽい見た目の少女。
その声は、ついこの前聞いた、あの大好きな幼馴染のものだった。
「問題なくログインできたみたいね。待った?」
返事のために急いでユーザーネームを確認すると、少女の上に【Kureha】と表示されているのがわかった。
―――クレハ。紅葉の別の読みだね。
紅葉らしいと思いつつ、「待ってないよ、今来たとこ。」と答えた。
「ふふ、そう。…あんた、またその名前なわけ?あたしは使ってくれてるから嬉しいけど、別に全部それ使ってとは言ってないわよ?」
クレハは、私の表示を見てそう言った。
「気に入ってるの。」
《GGO》のあれこれを教えてもらいながら、私達は総督府に向かった。
戦闘についても戦闘の前に大体教えてもらい、イベントの目玉、“ArFA system tipe-x"についても聞いた。
久しぶりのVRMMO…ワクワクする。
「あ!イツキさんだ!」
転送ポート近くにできている人だかりの中心を見て、クレハが言った。
「知ってるの?」
あの人、《GGO》では珍しいイケメンアバターじゃん。
「知ってるっていうもんじゃないわよ!イツキさんはトッププレイヤーの一員なのよ!イツキさん率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ!」
「…すこーど…?」
「スコードロン。ギルドみたいなものね。」
「あー、なるほど。」
イツキさんは、すごいらしい。トッププレイヤーなんだから、まあそうだろうけど。すごいスコードロンのリーダーでもあったんだね。
「やあ、君たちも大会に参加するの?」
「え?」
なんか、この人話しかけてきたよ⁉大丈夫なの、あの取り巻き達に恨まれたりしません?
「はい!」
クレハ気にしてないし。
「クレハくんだよね。噂は聞いているよ。」
「へっ?」
おー…。トッププレイヤーだもんなあ…。クレハは準トッププレイヤーだから、クレハくらいの情報は持っておかないと地位を保てないよねえ…。
「複数のスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判いいよね。」
「あ、ありがとうございます!」
うわー、クレハが敬語だとなんか新鮮というか、違和感というか…。
トッププレイヤーの威厳ってものかね。
「そこの君は…初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あ、はい。私はリノセ!よろしくです!」
「リノセ、ゲームはめちゃくちゃ上手いけど、《GGO》は初めてなんです。」
「へえ、ログイン初日にイベントに参加するとは、冒険好きなんだね。そういうの、嫌いじゃないな。」
うーん。冒険好き、というよりは、取り敢えずやってみよー!タイプの気がする。
「銃の戦いは、レベルやステータスが全てではない。面白い戦いを―――期待しているよ。それじゃあ、失礼。」
そう言って、イツキさんは去っていった。
「イツキさんはすごいけど、私だってもうすぐでトッププレイヤー入りの腕前なんだから、そう簡単に負けないわ!」
クレハはやる気が燃えまくっている様子。
「ふふ、流石。」
クレハ、ゲーム好きだもんなあ。
「さあ、行くわよ。準備ができたらあの転送ポートに入ってね。会場に転送されるから。」
―――始めよう。
私の物語を。
大会開始後、20分くらい。
「リノセ、相変わらず飲み込みが早いわね。上達が著しいわ!」
ロケランでエネミーを蹂躙しながらクレハが言った。
「うん!クレハのおかげだよ!」
私も、ニコニコしながらエネミーの頭をぶち抜いて言った。
うん、もうこれリアルだったら犯罪者予備軍の光景だね。
あ、銃を扱ってる時点で犯罪者か。
リロードして、どんどん進んでいく。
そうしたら、今回は運が悪いのか、起きて欲しくないことが起きた。
「おや、君たち。」
「……イツキさん。」
一番…いや、二番?くらいに会いたくなかったよ。なんで会っちゃうかな。
…まあ、それでも一応、持ち前のリアルラックが発動してくれたようで、その先にいたネームドエネミーを倒すことで見逃してくれることになった。ラッキー。
「いくわよ、リノセ!」
「うん!」
そのネームドエネミーは、そんなにレベルが高くなく、私達2人だったら余裕だった。
うーん…ニュービーが思うことじゃないかもしれないけど、ちょっとこのネームド弱い。
私、《SAO》時代は血盟騎士団の一軍にも入ってたし。オレンジギルド潰しまくってたし。まあ、PKは一回しかしてないけど。それでも、ちょっとパターンがわかりやすすぎ。
「…終わったわね。」
「うん。意外と早かったね?」
「ええ。」
呆気なく倒してしまったと苦笑していると、後ろから、イツキさんが拍手をしてきた。
「見事だ。」
本当に見事だったかなあ。すぐ倒れちゃったし。
「約束通り、君たちは見逃そう。この先は分かれ道だから、君たちが選んで進むといい。」
え?それはいくらなんでも譲り過ぎじゃないかな。
「いいんですか?」
「生憎、僕は運がなくてね。この間、《無冠の女王》にレアアイテムを奪われたばかりなんだ。だから君たちが選ぶといい。」
僕が選んでもどうせ外れるし。という副音声が聞こえた気がした。
「そういうことなら、わかりました!」
クレハが了承したので、まあいいということにしておくけど、後で後悔しても知らないよ。
「じゃあリノセ、あんたが選んでね。」
「うん。私のリアルラックを見せてあげないと。」
そして私は、なんとなく左にした。なんとなく、これ大事。
道の先は、小さな部屋だった。
奥に、ハイテクそうな機械が並んでいる。
「こういうのを操作したりすると、何かしら先に進めたりするのよ。」
クレハが機械をポチポチ。
「…え?」
すると、床が光り出した。出ようにも、半透明の壁のせいで出れない。
「クレハ―――!」
「落ち着いて!ワープポータルよ!すぐ追いかけるから動かないでー!」
そして、私の視界は切り替わった。
着いたのは、開けた場所。戦うために広くなっているのだろうか。
「………あ。」
部屋を見回すと、なにかカプセルのようなものを見つけた。
「これは…」
よく見ようとして近づく。
すると。
「―――っ」
後ろから狙われている気がしてバッと振り返り、後ろに飛び退く。
その予感は的中したようで、さっきまで私がいたところには弾丸が舞っていた。
近くのカプセルを掴んで体勢を立て直す。
【プレイヤーの接触を確認。プレイヤー認証開始…ユーザーネーム、Linose。マスター登録 完了。】
なんか聞こえてきた気がした機械音声を無視し、思考する。
やっぱり誰かいるようだ。
となると、これはタッグ制だから、もうひとりいるはず。そう思ってキョロキョロすると、私めがけて突っ込んでくる見知った人物が見えた。
キリト⁉まさか、この《GGO》にもいたの…⁉ガンゲーだから来ないと思ってたのに。まあ、誰かが気分転換に誘ったんだろうけど。ってことは、ペア相手はアスナ?
うっわ、最悪!
そう思っていると、カプセルから人が出てきた。
青みがかった銀髪の女の子で、顔は整っている。その着ている服は、まるでアファシスの―――
観察していると、その子がドサッと崩れ落ちた。
「えっ?」
もうすぐそこまでキリトは迫っているし、ハンドガンで攻撃してもどうせ弾丸を斬られるだろうし、斬られなくてもキリトをダウンさせることは難しい。
私は無理でも、この子だけは守らなきゃ!
そう考える前に、もう私の体は女の子を守っていた。
「マスター…?」
「―――っ!」
その女の子が何かを呟くと、キリトは急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「…?」
何この状況?
よくわからずにキリトを見上げると、どこからか足音が聞こえた。
「…っ!ちょっと待ちなさい!」
クレハだ。
照準をキリトに合わせてそう言う。
「あなたこそ、銃を降ろして。」
そして、そんなクレハの背後を取ったアスナ。
やっぱり、アスナだったんだね、私を撃とうとしたのは。
一人で納得していると、キリトが何故か光剣をしまった。
「やめよう。もう俺たちは、君たちと戦うつもりはないんだ。残念だけど、間に合わなかったからな。」
「間に合わなかった?何を言っているの?」
クレハが、私の気持ちを代弁する。
「既にそこのアファシスは、彼女をマスターと認めたようなんだ。」
………あ、もしかして。
アファシスの服みたいなものを着ているなーと思ったら、この子アファシスだったの?
というか、マスターと認めた…私を?
あー…そういえば、マスター登録がなんとかって聞こえたような気がしなくもない。
うん、聞こえたね。
あちゃー。
「ええええ⁉」
この子がアファシス⁉と驚いて近づいてきたクレハ。
「ねっ、マスターは誰?」
「マスターユーザーネームは【Linose】です。現在、システムを50%起動中。暫くお待ち下さい。」
どうやら、さっきカプセルに触れてしまったことで、私がマスター登録されてしまったようだ。やっちゃった。……いや、私だってアファシスのマスターになる、ということに対して興味がなかったといえば嘘になるが。クレハのお手伝いのために来たので、私がマスターとなることは、今回は諦めようと思っていたのだ。
―――だが。
「あんたのものはあたしのもの!ってことで許してあげるわ。」
クレハは、からかい気味の口調で言って、許してくれた。
やっぱ、私はクレハがいないとだめだね。
私は改めてそう思った。
クレハに嫌われたらどうしよう、大丈夫だと思うけど万が一…と、さっきまでずっと考えていたからだ。
だから、クレハ。自分を嫌わないで。
クレハもいなくなったら、私―――
ううん。今はそんな事考えずに楽しまなきゃ。クレハが誘ってくれたんだから。
「私はクレハ。よろしくです!」
「リノセ。クレハの幼馴染です!」
「俺はキリト。よろしくな、リノセ、クレハ!」
「アスナよ。ふたりとも、よろしくね。」
自己紹介を交わした後、2人は優勝を目指して去っていった。
きっと優勝できるだろう。あの《SAO》をクリアした2人ならば。
私はその前に最前線から離脱しちゃったわけだし、今はリナじゃないし、2人にバレなくて当然というか、半分嬉しくて半分寂しい。
誰も私の《SAO》時代を知らないから、気付いてほしかったのかもしれない―――
「メインシステム、80…90…100%起動、システムチェック、オールグリーン。起動完了しました。」
アファシスの、そんな機械的な声で私ははっと我に返った。
「マ、マスター!私に名前をつけてくださいっ。」
「あれ?なんか元気になった?」
「えっと…ごめんなさい、そういう仕様なんです。tipe-xにはそれぞれ人格が設定されていて、私はそれに沿った性格なんです。」
「あ、そうなんだ。すごいね、アファシスって。」
じゃあ、このアファシスはこういう人格なんだね。
「名前、つけてあげなさいよ。これからずっと連れ歩くんだから。」
「うん。」
名前…どうしようかな。
この子、すごく綺麗だよね…綺麗…キレイ…レイ。レイ…いいじゃん。
「レイ。君はレイだよ。」
「レイ...!登録完了です。えへへ、素敵な名前をありがとうございます、マスター。」
アファシス改め、レイは嬉しそうに笑った。
「…リノセ、あんた中々センスあるじゃん。あのときはずっっと悩んでたっていうのに。」
クレハが呆れたように言った。まあ、いいでしょ。成長したってことで。
「えと、マスター。名前のお礼です。どうぞ。」
レイは、私に見たことのない銃を差し出した。
「ありがとう。これは何?」
受け取って訊いてみると、レイはニコッとして答えた。
「《アルティメットファイバーガン》です。長いので、《UFG》って呼んでください。」
《UFG》……何かレアそう。
また、大きな波乱の予感がした。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.53 )
- 日時: 2023/10/01 15:05
- 名前: siyaruden (ID: BLmVP1GO)
お久しぶりです!
リクエスト板にて色々とキャラのプロフの変更をしていますので確認の方をお願いします
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.54 )
- 日時: 2023/10/07 14:06
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
了解しました!
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.55 )
- 日時: 2023/10/07 14:17
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
一気に3人見るのは大変なので、一人につき一人のマンツーマンで一緒にフィールドに出かけることになった。
私と一緒なのはアカ。
《ロストゲート》で一緒に戦う。
「……アカ。やっぱりきみだよね」
「そうだよ。いつになっても変わんないんだな、お前」
「まあね」
静かにFetal Bulletを構えてエネミーを一掃していく。
アカも次々と剣で敵を薙ぎ払っていて、その戦闘センスは流石と言ったところだ。
「…まだ引きずってるの?」
「引きずってんじゃねぇ!俺は償いたいだけだ!」
「それを引きずってるって言うんだよ」
アカ、きみは私に似てるよ。
エシュリオを失ったときの、お父さんを失ったときの私に似てる。
同じだとは言わない。けど、多分思っていたことは同じ。
「あの人は、きみを恨んでないよ」
「知ってるよ!でも……それでも、全部俺のせいなんだよ…っ」
あのとき目の前で散った星の欠片。
残酷な世界で、いったいいくつの欠片が散っただろう。
そこで心に刻まれた悲愴と恐怖はそう簡単に拭えるものではない。
それは私だってわかっている。
「アカ、ううん、ユト。逃げないで。あのとき、あの人がきみを守ったのは、ユトに幸せになってほしかったからだよ。」
「その名で呼ぶな。」
「呼ぶよ、何度でも。今のきみはアカツキかもしれないけど、アカの中にユトは残ってるんだから。」
「ユトはもう死んでんだよ!ユトの代わりに俺が!アカツキが生きてるだけだ!」
そう、私のかつての仲間―――ユト。
《SAO》で生きた、一人の少女。
彼女は私と「アカツキ」という《SAO》プレイヤーとパーティーを組んでいた。
だが《SAO》がデスゲームになって……その中で必死にもがいていた二年間、730日間のたった一日での出来事で、彼女は自分を責め始めた。
そう、私と似ているのは…。彼女の兄である「アカツキ」は、当時の彼女「ユト」を庇って命を散らしたからだ。
とあるボスに偶然出くわしたときのことだった。
その後彼女は自責の念に駆られて苦しみ、やがて私との関係も断った。
―――これは、4年ぶりの再会なのである。
私も同じ経験をしたのだから、少しはアドバイス…できるのかもしれないが、それは特効薬ではないと私は知っている。私だから知っている。
こういうのは、私のエシュリオのときみたいに本人登場してくれたらいいんだけど、そう簡単にはいかないだろう。
茅場晶彦に頼めばいいのかもしれないけど、それはちょっと違う気もするしなぁ……。
やっぱり、彼女が自分で決めるしかない。
ユト。ううん、アカ。やっぱり、きみは何も変わってない。
何もかも背負うところも、必死に守ろうとするところも。
だって、ほら、今だって私にヘイトが向かないように必死にタゲを取ってる。
きみのロールがタンク寄りだったのも、みう誰も失いたくないから。あの悲劇がもう二度と訪れないように。
今はそれでいい。
キリトたちや私たちといれば、きっと大切なことは見えてくるだろう。
イツキだって優しいし、キリトたちもなんだかんだそういうとこあるからね。
こういうのは、言葉少しかけるだけですぐにわかるような簡単なものじゃない。
それは、知ってるから。
「…アカ、強いね」
「お前もな。……リノセ」
…呼び慣れないな。
互いに違和感を感じつつも、今の名前を呼んでみた。
…そう。この世界ではユトとリナじゃない。アカツキとリノセだから。
アカの言っていたのとはニュアンスが違うけど、確かにもう《SAO》で必死に戦っていた私たちではない。
…それでも、《リナ》と《ユト》は死んでない。
―――そう、私たちが死ぬことはない。
「お疲れ!どうだった?」
「おう、お疲れリノセ。」
戻って、私はイツキとキリトと合流した。
「俺はヤエとフィールドに出たけど、スナイパーとしての実力は結構なものだった。エイムはもう少し鍛えれば十分な戦力になると思う。咄嗟の判断がいいところだな。」
キリトの評価はいい感じ。イツキは、うーんと考えてから口を開いた。
「僕が担当したカンナも実力はよかったよ。…でも少し遠慮深い。迷惑をかけないために頑張っている気がするよ。少し心配だね。…アカはどうだった?」
「ああ…まあ、実力はこっちもオッケー。タンクとしての性能はストレア級だとは思うけど…」
少し、臆病だ。
仲間が傷つくことを恐れていて、つまりはヒーリングまでやろうとする。
そういえば、レイも似たような時期が合った気がする。
マスターを守るのが私の役目、そう言って私を散々庇っていた時期。
あれからは、「背中を任せる」ということを覚えたから、レイはそれをやめた。だけど…
今回は、そういうわけにはいかないか。
カンナについては…うーん…実際見てないからわかんないけど…。
「ま、人の性格に首突っ込むわけにもいかないし、様子見じゃない?」
「そうだな。」
「ああ、じゃあ戻ろうか。みんなが待っているんだろう?」
「うん、帰ろう。」
一回大きくのびて、私たちは歩き出した。
「マスター、おかえりなさい!」
「ただいま、レイ。」
キリトたちの部屋にて、私たちは集まっていた。
顔合わせもだいたい終了し、なにか大きなクエストでもやろうかと話し合うのだ。
そのとき。
ピロリン!と一斉に全員にメールが届いた。
「………これは」
「間違いない、運営からのメールだ」
この一斉に届く届き方、絶対運営からのお知らせだ。
前回はフリューゲル出現の大型アップデートのときに鳴ったっけ。
開いてみると、中身は…
「―――え?アップデート?」
「なになに?……新フィールドを開放する⁉」
アップデートのお知らせだった。
新フィールド開放とともに、新大型クエストも始動するようだ。
……なんというか、忙しいな。
「やるしかないよね、こんなの。」
「ああ、やるしかないな。」
やれやれと肩をすくめると、メラメラ燃えているキリトが頷いた。
「まったく、私が休まるときは来ないのかな?」
「癒やしてあげようか、リノセ?」
「イツキ、近い近い近い」
顔を近付けてきたイツキとの顔の間に手を差し込む。
慣れない。慣れるはずがない。
かっこよすぎて死ぬ。
「なぜだい?」
「み、みんないるって」
「…ふっ、了解」
色っぽく微笑んでイツキは離れた。
その顔は「みんながいないときに楽しもう」と言わんばかりだ。
…いけないスイッチを押した気がするが、そんなの知らん知らん。
頑張れ、後の私。
新フィールド諸々は、来週の連休に開始するようだ。
連休開始、つまり土曜の午前0時から…うん、金曜日の夜は大変だな、私。
帰ったらすぐ寝よう、とひそかに不健康な決意を固めたのだった。
****
翌日、学校にて。
「神名さん、少しいいかしら。」
「はい?」
担任の先生に呼び出され、私は廊下へと出た。
「どうかしましたか?」
「あのね、とても急なんだけど、ウチのクラスに転入生が来たのよ。」
「えっ?」
二学期がもうすぐ終わろうとしている時期。中途半端すぎる。
「もうすぐ冬休みだし、粘ろうとしたらしいんだけど。親がどうしても遠い地方からこっちに来なくちゃいけないみたいで。」
「ああ…なるほど?」
「その子、少し引っ込み思案だから、神名さんに任せたいんだけど、いいかしら?」
「そういうことでしたら、わかりました。」
「ありがとう、助かるわ。」
一礼して教室に戻りながら、この前イツキに「君は断るということを知ったほうがいいよ。」と言われたのを思い出す。
でも、頼まれごとは断れないのが私の性であった。どうしても引き受けてしまう。
諦めてくれイツキ。
ということで。
「香住ー」
「んー?」
「あのさ、ちょっと声のボリュームを落として聞いて欲しいんだけど。」
香住に転校生の件を話すと、香住は何とも言えない顔で「あー」と言ってうんうんと頷いた。
「あんた、また面倒ごと引き受けたわね?」
「面倒ごとって、失礼な…」
転入生に失礼すぎる。
「でも、そうでしょ。初対面のおどおどする人に学校案内やらなにやらするわけでしょ?受験も迫ったこの時期だし、相手の精神だって不安定だろうし。」
「え、あー」
「あんたくらいよ、この時期にいつも通りに明るいの」
香住にギロッとにらまれる。
「と・に・か・く。楽な仕事じゃないとは思っときなさい。まあ、あたしも凛世のそばにいるわけだし付き合うけど。」
「ありがと、よろしく。」
まあ、今考えてみればその系統の対応は確かに反応に困るところがあるかもしれないが、それでも仲良くなれればいいなと思う。
もしかしたら転勤族なのかもしれないその子。卒業までの三か月、もしくはそれより短い期間でも、楽しい思い出を作って欲しい。
このメンバーでの高校三年生は、もう二度とやってこないのだから。
「なんかしみじみするね」
「何よ急に」
「だってさ、あの三か月で私たち卒業なんだよ?大学生だよ?このメンバーでこの制服を着て、この教室で授業を受けて、一緒に笑う日はもうすぐ終わるんだよ?」
「…そうね。」
唐突に、漣くんからもらった香住の消しゴムを踏んでしまって地獄を見たクラスメイトの男子を思い出す。
最終的に香住も許して話のネタと化して終わってたし、あれも今となってはいい思い出だ。
「聖夜や凛世との高校生活も終わりかー」
「うん。ってことで、受験勉強頑張んないとね。」
「確かあんたって、あの有名私立大学の推薦もらうんだっけ?」
「そーそー。最近は《GGO》で勉強してる。」
イツキやクレハがいるからわかんないところ教えてもらえるし。
っていうか、今更だけど雪嗣さんってどこの大学卒業したんだろう。めちゃめちゃ頭いいけど。
今度聞いてみよう。
「いいわね…。あたしもそうしようかしら。ゲーム内だと空調いらないのよね。いつも快適」
「そうすれば?漣くんともいつでも会えるし」
「よし行くわ」
苦笑いしながら、漣くんとの《GGO》ライフを妄想する香住を見つめる。
…そうだった。《GGO》があった。
このクラスのほとんどが《GGO》をやっていて…そこで会えるんだった。
縁は切れたりなんかしないだろう。
「…また、《GGO》にお世話になるかも」
小さく呟いた。
「えー、突然だけど。今日からクラスメイトになる転入生がいるので、紹介するわね。」
ホームルームにて。そんな先生の言葉に、案の定みんながざわざわと沸いた。
「突然すぎね?」
「それよりも性別!男子ですか、女子ですか!」
そういえば、性別聞いてなかったな。
まあでも、男子についてをいちいち女子の私に頼んだりはしないか。
「静粛に。入って頂戴」
先生の言葉で入ってきたのは、やっぱり女の子。
黒髪の腰までのロングで2本の三つ編みおさげ。瞳は茶色。眼鏡と白のカチューシャを付けていて、少し居心地が悪そうに視線をさまよわせている。
「わ、私は、山本 弥恵子と言います……」
どもりながら自己紹介した山本さんに、クラスメイトは軽く「よろしくー」とか「はーい」とか返事をしていた。
いじめとかがない優しいクラスなのでよかったが、他のクラスだったら「うわ地味ー」くらい言われていたかもしれない。
あれ、でも眼鏡の下はかわいいかも。
…って、そうじゃなくて。
「…あの子」
前の席の香住にも聞こえない小さな声で呟いた。
…嘘。こんな偶然ある?いや、あるわけないよね?でも、他人の空似じゃないよね?
あれは…。
―――ヤエ?
確か、昨日の顔合わせで《デファイ・フェイト》に来た子。
上級者向けの高額フォトンソードを押し売りされて、「クーリングオフが効かない」と嘆いていた…。
顔も面影があるし、身長も同じだし、なにより…。
声が、同じだ。
知り合いで良かったと安堵するとともに、私は少し困惑した。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.56 )
- 日時: 2023/10/11 22:40
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
リクエスト掲示板にリノセのアンダーワールドでの姿を募集する旨のスレッドを設けました。リノセのアンダーワールドでの制服姿じゃない姿を募集します。
詳細はスレッドにてご確認ください。
また、気に入った場合は別キャラにて採用するかもしれないので、どんどん応募してください。
今のところ締め切りは未定です。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.57 )
- 日時: 2024/02/03 11:29
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「八重子ちゃん」
「は、はぃっ!」
ホームルーム終わり、私が話しかけると、ヤエこと八重子ちゃんは飛び上がった。
大げさではなく、本当に飛び上がった。びくぅっ、と。
「な、なんでしょうか…?」
「私、神名 凛世。よろしくね」
「え、あ、え…⁉」
八重子ちゃんは私をじっと見つめて、一回ゴシゴシと目を擦った。
そしてまた私を凝視する。
「え…⁉リ、リノセさん…⁉」
「あ、やっぱりヤエだった」
お互いバレるの早かったな。
まあ不利益はないだろうし、私だって学校中にバレてるからいいけどさ。
「これからよろしくね!」
「は、はい…!知り合いがいて安心しました…!」
八重子ちゃんは安心したように笑った。
…よかった。「知り合い⁉気まず!」みたいな反応されるかと思った。
私も、転入生が八重子ちゃんでちょっとびっくりしたけど、内心安心してるんだよね。
「昼休み、校舎案内するね。」
「はい、あ、ありがとうございます…!」
八重子ちゃんはニコッと笑った。
すると、私の背後からひょこっと香住が出てきた。
「あたしは飯田 香住。凛世の親友。よろしくねー」
「は、はは、はいっ。八重子ですっ」
知らない相手にはまだダメそうだった。
「香住は《GGO》にもいるから。フレイヤっていう名前で。見かけたらお互いよろしくね」
「は、はい」
「はーい」
じゃ、またあとで。と言って微笑みかけると、私たちは席に戻った。
「……ほら、面倒事」
「そう言いつつ気にかけてるみたいだけど?」
ツンデレも困ったものだが、香住はこれでも八重子ちゃんを気にかけている。
ただ、初対面だから警戒しているのかも。
…馴染むのには時間がかかりそうかなあ。
そう思い、私は密かにため息をついた。
「……………あの子凛世に似てるわよね」
「え、どこが?」
「…うーん……なんとなく?雰囲気かしら」
「だから気にかけたくなるのよね。どこが似てるのかしら?」と香住は首を傾げた。
「…ここ?」
「ここだね。」
放課後。
雪嗣さんと、シックなカフェを見つめる。
デスゲーム事件後、私たちは総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室に勤めているらしい、菊岡誠二郎とやらから取り調べを受けた。
飄々としながらも油断できないその男は、デスゲーム事件について、雪嗣さんの罪状を帳消しにする代わりに、私と雪嗣さんに、諜報活動に向いているとかなんとかで手伝いを頼んできた。
といってもそれはれっきとしたバイトで、ちゃんと給料も出る。
今回は、それの話があるとやらで呼び出されたのである。
「いらっしゃいませ〜」
カフェに入って店内を見回す。
すると、一番奥に菊岡さんが手招きしているのが見えて、席に向かった。
「やあ、よく来たね、ふたりとも。」
「こんにちは、菊岡さん。」
胡散臭い顔で手を降ってくる菊岡さん。
「まあ座りたまえ。何を注文する?」
「私は紅茶で」
「僕も紅茶にするよ」
「お菓子は?」
「「結構です」」
微笑みをたたえたまま、菊岡さんはやれやれと首を振った。
「そんなに警戒しなくとも、別に銃で撃ち殺そうとか思ってないよ?」
「いや、そう思ってるとは考えてませんけど…。」
キラリ、と菊岡さんの眼鏡が光を反射する。
…そういうわりには、雰囲気が危ない人なんだよなあ…。
信用できないよ、全く。
「それで、話なんだけど。最近ね?」
菊岡さんが軽々と放った言葉に、私は眉をひそめた。
「―――《ザ・シード》の干渉が増えている?」
「そう。きみたちが事件を起こしたその日から、《SAO》基盤のVRシステム《ザ・シード》からの干渉が増えているんだ、《GGO》にね。」
…私たちが、事件を起こした日。
心当たりがないわけではない。
…そう、茅場晶彦の電子意識。あのとき、《GGO》データでその空間にログインしてきた私に、彼は干渉して、ソードスキルを与えた。
それに、そのとき私と雪嗣さんはナーヴギアを被っていたのだ。
ナーヴギアは本来、《SAO》をプレイするために作られたもの。それで《GGO》データを読み込んだんだから、《SAO》基盤の《ザ・シード》と《GGO》が繋がって干渉が増えてしまうのは必然的だろう。
…そもそも、《ザ・シード》は茅場晶彦の電子意識が作ってキリトが配布したものだ。
それを菊岡さんが知っているのだとしたら今頃彼と話しているのは私たちではなくキリトだろうからまあ、知らないんだろうけど…。
とにかく、《ザ・シード》を使用している時点で《GGO》は茅場晶彦の干渉を受けられるという点は確定している。遅かれ早かれ起きていたことだろう。
それがまあ、私たちに流れ込んでくるとは…。
「きみたちには、その調査と、状況の確認を行ってもらいたい。あと…AIユナは知っているね?」
菊岡さんはまた眼鏡をキラリと光らせた。
私は顔を強張らせる。
ユナ―――《SAO》で血盟騎士団にいたとき…少し関わったときがあった。
一般には巨大ARゲーム《オーディナル・スケール》で出現した超自然に歌うオリジナルAIだけど、あれは本来はユナだ。ともに戦った、ユナ。
「ユナ?《オーディナル・スケール》の?」
イツキはそう言って眉をひそめる。
菊岡さんは静かに頷いた。
「ユナがいろいろなところでコピーされているせいでエラーが続出、不具合の影響で精神が不安定なんだ。それで…」
「…もしかして、《世界でただ一人のユナ》が保てる世界に移したい、っていう話かい?」
「その通りだ。」
あちゃー。
まあ、コピーでエラーが出るんだったら、唯一のユナだったら大丈夫だよね。
面倒事一回に2つって厄介すぎるよ。
「それってつまり、《GGO》にコンバートさせるってことですよね?」
そう問うと、菊岡さんは再度頷いた。
「来週、《GGO》は大型アップデートでフィールドと大規模クエストを追加するだろう?そのときに合わせてユナをコンバートさせる。ユナは今不具合の兆候を抱えているからエラーが残るかもしれないが…とにかく経過観察を頼むよ。」
「はい。」
まあ…ユナが来たという情報さえ流れれば…「あの人」が姿を現すだろう。
そして、きっと彼が修復の手立てを持っている。
「給料はこれでどうだね?」
「…うわぁ」
菊岡さんが提示した金額を見て思わず声が出てしまった。
この人金銭感覚おかしくない?ぶっちゃけゲームしてるだけの仕事でこんなにもらっていいの?
それとも、これくらい難しいお仕事なの?
…まあ、いいけど。お兄ちゃんだって帰ってきてからバイトはやってるけど、まだ大学受験の受験費とか、大学の入学金と授業料もあるし。
あ、でも大学の授業料は特待制度でなんとかなるか。
とにかく、給料が美味しすぎ。ありがたい。
…ということで、私たちはみんなに秘密で、菊岡さんの依頼のもとに《GGO》をすることになったのであった。
「はあ、全く…、あの菊岡とか言う男は人使いが荒いね。」
「うーん…自分でやれとは思ったけど、まあ頼まれちゃったし。」
「君って本当断れないよね。」
「これも性分でして」
話が終わると、私たちは店を出て話しながら歩いた。
最近は二人とも忙しく、なかなか雪嗣さんと話せてなかったので、丁度いい機会ということで、そのままデートすることになった。
…することに…することに…
「ねえ雪嗣さん、どこ行くの?」
「ん?秘密だよ」
「……。」
雪嗣さんの車に乗せられてかれこれ15分。
楽しそうに運転する雪嗣さんのかっこいい姿をしっかり目に焼き付けながら、私は首を傾げる。
デート…行き先不明の状態でどこかへ連れて行かれることだっけ?
それとも、お楽しみにってことかな?
「そういえば、凛世はもうすぐ受験だったかな?」
「あー、うん。志望は聖光大学だけど。」
「聖光か。それはまた随分すごいところにいくね?」
「そうかなー、照れる」
でも、雪嗣さんにすごいって言われても、雪嗣さんのほうがすごそうだ。
「そういえば、雪嗣さん、どこの大学で出たの?」
「雪嗣」
「え?」
「雪嗣さんじゃ他人行儀だろう?もう少し親しみのある呼び方がいいな」
そう呼ばないと教えないぞということだろうか。
気になるけど、でも…それもハードルが高すぎではないだろうか。
「ゆ、ゆ…ゆき、つぐ…?…ちょ、待って」
赤くなる頬を隠したくて顔をそらす。
雪嗣…なんなんだ。啓治呼ぶときはこんなふうにならないのに。
雪嗣くん…もなんか変…。
「凛世」
そっと顔に長い指が触れ、雪嗣さんの方を向かされる。
いつの間にか車は停まっていて、乗り出してきた雪嗣さんが助手席の私に近づいてくる。
「呼んで」
「え…」
「雪嗣、と」
「……っ」
ふ、と優しく微笑んで私の頬を撫でる。
「ゆ、ゆき…」
「うん」
「…………雪嗣」
「よくできました」
「!」
ちゅっ、と軽いキスが落とされて、雪嗣さん…いや、雪嗣の顔が離れていく。
「出身はきみの志望と同じ、聖光さ。…さあ、着いたよ。僕の家だ」
にこっ、と雪嗣は笑った。
「…え」
いろいろな困惑が詰まった「え」だった。
どこまでも、私は雪嗣に縁のある人間だと思う。
志望大学まで雪嗣が行ったところと同じだなんてね。
そして、それよりも…。
神名 凛世、高校三年生。
ついに、恋人の家に連れてこられてしまいました。
…といえど、相手は社会人。この前一人暮らしだと言っていたし、少女漫画や小説であるあるなご両親へのあいさつはないだろう。
それにしても…。
こんなにドキドキするのものだろうか、好きな人の家というのは。
車が止まっていたのは神社の裏にある駐車場。落ち着いたウッドテイストだ。
「さあ、入ってくれ」
そして、大きくてきれいな神社の裏から生活スペースに案内された。
神社と繋がっているらしいそこは、思ったよりも新しくて新鮮だった。
そこはまるで豪華な日本旅館のようなつくりで、少しワクワクする。
「神社みたいだね」
「神社だからね」
「ふふ、そうだよね」
優しく微笑んだ雪嗣は、そのまま私を部屋に通した。
「どうぞ、上がって」
「ありがとう。…うわあ、ここは洋風なんだね」
「まあね。すべて和風でも使いにくいのもあるし」
雰囲気がガラッと変わったシックな私室。
雪嗣の落ち着いたナチュラルな部屋に、私はドキドキしてしまう。
だめだ。部屋を見るだけでやばい。
というか、雪嗣って慣れない!
「ね、みんなは…雪嗣?…のことをなんて呼んでるの?」
そう聞くと、雪嗣はうーんと悩む。
「そうだなあ…仕事関係では親しい人はいないから狭井さん、かな。神社に来る人たちはみんな僕を神主さんって呼んでる。家族は普通に雪嗣呼びだね」
「……そっか」
仕事関係で、というのはまあ神主じゃないほうだろうけど、親しい人はいないって聞いてちょっと安心しちゃった。
それにしても、密かに狭井神社の神主さんファンクラブできてそう。
絶対かっこいいって言われてる。絶対モテてる。
…でも、そっか。家族は雪嗣呼びか…。
いや……
「じゃあ、私はゆき、とかどう?」
「ゆき?」
「そう、それならあだ名っぽくて呼びやすいし…」
私はチラッと「ゆき」を見てから少し赤くなって呟いた。
「……私だけ、ゆき」
「!」
…特別がいいなぁと、思いまして。
そう付け足すと、「ゆき」は私の額に唇を落とした。
「返事はこれで。」
「……ゆきの馬鹿」
ということで、私は雪嗣さん及び雪嗣呼びを卒業し、「ゆき」と呼ぶことにしたのだった。
「っていうか、ゆきってキス好き?」
言いながら大胆だなと思って後悔した。後から羞恥心が押し寄せてくる。
「なぜだい?」
「いや、よ、よくちゅってしてくるじゃん。キス魔だよ絶対」
「んー…そんなつもりはなかったけど…そうだな、君相手だとそうなるかもしれないね」
「……私相手」
「そう、きみだけ」
そう言って、早速ゆきは私の顎をくいっと持ち上げて唇を重ねてきた。
味わうようなキスに私はされるがままになってしまう。
「君相手だと、甘すぎて止まらなくなる」
低くてどろりと甘い声で囁いたゆきは、そのまま、照れまくる私を撫でた。
……しばらく、辛い物が好きになるかも。
辛いのばっかりでも、糖分は十分です。だいぶ。
次へ続く
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