二次創作小説(新・総合)
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- フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜
- 日時: 2022/11/15 22:17
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
注意!!!
読むのが最初の方へ
ページが増えています。このままだといきなり1話のあと6話になるので、最後のページに移動してから読み始めてください。
※これは《ソードアート・オンライン フェイタル・バレット》の二次創作です。
イツキと主人公を恋愛でくっつけるつもりです。苦手な方はUターンお願い致します。
原作を知らない方はちょっとお楽しみづらいと思います。原作をプレイしてからがおすすめです。
どんとこい!というかたはどうぞ。
「―――また、行くんだね。あの“仮想世界”に。」
《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》。それは、フルダイブ型のVRMMOである。
フルダイブ型VRMMOの祖、《ソード・アート・オンライン》、《SAO》。
私は、そのデスゲームに閉じ込められたプレイヤーの中で、生き残って帰ってきた、《SAO帰還者》である。
《SAO》から帰還して以来、私はVRMMOとは距離をおいていたが。
『ねえ、《GGO》って知ってる?』
私、神名 凛世は、幼馴染の高峰 紅葉の一言によって、ログインすることになった。
幼い頃に紅葉が引っ越してから、疎遠になっていた私達。その紅葉から、毎日のようにVRで会えるから、と誘われたVRMMO。行かないわけにはいかないだろう。大好きな紅葉の誘いとあらば。
ベッドに寝転がって、アミュスフィアを被る。
さあ、行こう。
“仮想世界”…………もう一つの現実に。
「―――リンク・スタート」
コンソールが真っ白な視界に映る。
【ユーザーネームを設定してください。尚、後から変更はできません】
迷いなく、私はユーザーネームを【Linose】……【リノセ】にした。
どんなアカウントでも、私は大抵、ユーザーネームを【リノセ】にしている。
最初にゲームをしようとした時、ユーザーネームが思いつかなくて悩んでたら、紅葉が提案してくれたユーザーネームである。気に入っているのだ。
―――でも、《SAO》では違った。
あの時、【リノセ】にしたくなかった理由があり、《SAO》では【リナ】にしていた。
凛世のりと、神名のなを反対に読んで、リナ。それが、あそこでの私だった。
でも、もういいんだ。私は【リノセ】。
コンソールがアバター設定に切り替わった。
普通の人なら誰?ってほど変えるところだけど、私は《SAO》以来、自分を偽るのはやめにしていた。とは言っても、現実とちょっとは変えるけど。
黒髪を白銀の髪に変え、褐色の瞳を紺色にする。おろしていた髪を編み込んで後ろに持っていった髪型にした。
とまあ、こんな感じで私のアバターを設定した。顔と体型はそのままね。
…まあ、《GGO》に《SAO帰還者》がいたらバレるかもしれないけど…そこはまあ大丈夫でしょ。私は、PKギルドを片っ端から潰してただけだし。まあ、キリトがまだ血盟騎士団にいない頃、血盟騎士団の一軍にいたりはしたけれども。名前は違うからセーフだセーフ。
ああ、そういえば…《SAO》といえば…懐かしいな。
―――霧散
それが、《SAO》時代に私につけられていた肩書だった。
それについてはまた今度。…もうすぐ、SBCグロッケンに着く。
足が地面に付く感覚がした。
ゆっくり、目を開く。
手のひらを見て、手を閉じたり開いたりした後、ぐっと握りしめた。
帰ってきたんだ。ここに。
「―――ただいま。…“仮想世界”。」
「お待たせっ。」
前方から声をかけられた。
「イベントの参加登録が混んでて、参っちゃった。」
ピンクの髪に、ピンクの目。見るからに元気っ子っぽい見た目の少女。
その声は、ついこの前聞いた、あの大好きな幼馴染のものだった。
「問題なくログインできたみたいね。待った?」
返事のために急いでユーザーネームを確認すると、少女の上に【Kureha】と表示されているのがわかった。
―――クレハ。紅葉の別の読みだね。
紅葉らしいと思いつつ、「待ってないよ、今来たとこ。」と答えた。
「ふふ、そう。…あんた、またその名前なわけ?あたしは使ってくれてるから嬉しいけど、別に全部それ使ってとは言ってないわよ?」
クレハは、私の表示を見てそう言った。
「気に入ってるの。」
《GGO》のあれこれを教えてもらいながら、私達は総督府に向かった。
戦闘についても戦闘の前に大体教えてもらい、イベントの目玉、“ArFA system tipe-x"についても聞いた。
久しぶりのVRMMO…ワクワクする。
「あ!イツキさんだ!」
転送ポート近くにできている人だかりの中心を見て、クレハが言った。
「知ってるの?」
あの人、《GGO》では珍しいイケメンアバターじゃん。
「知ってるっていうもんじゃないわよ!イツキさんはトッププレイヤーの一員なのよ!イツキさん率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ!」
「…すこーど…?」
「スコードロン。ギルドみたいなものね。」
「あー、なるほど。」
イツキさんは、すごいらしい。トッププレイヤーなんだから、まあそうだろうけど。すごいスコードロンのリーダーでもあったんだね。
「やあ、君たちも大会に参加するの?」
「え?」
なんか、この人話しかけてきたよ⁉大丈夫なの、あの取り巻き達に恨まれたりしません?
「はい!」
クレハ気にしてないし。
「クレハくんだよね。噂は聞いているよ。」
「へっ?」
おー…。トッププレイヤーだもんなあ…。クレハは準トッププレイヤーだから、クレハくらいの情報は持っておかないと地位を保てないよねえ…。
「複数のスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判いいよね。」
「あ、ありがとうございます!」
うわー、クレハが敬語だとなんか新鮮というか、違和感というか…。
トッププレイヤーの威厳ってものかね。
「そこの君は…初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あ、はい。私はリノセ!よろしくです!」
「リノセ、ゲームはめちゃくちゃ上手いけど、《GGO》は初めてなんです。」
「へえ、ログイン初日にイベントに参加するとは、冒険好きなんだね。そういうの、嫌いじゃないな。」
うーん。冒険好き、というよりは、取り敢えずやってみよー!タイプの気がする。
「銃の戦いは、レベルやステータスが全てではない。面白い戦いを―――期待しているよ。それじゃあ、失礼。」
そう言って、イツキさんは去っていった。
「イツキさんはすごいけど、私だってもうすぐでトッププレイヤー入りの腕前なんだから、そう簡単に負けないわ!」
クレハはやる気が燃えまくっている様子。
「ふふ、流石。」
クレハ、ゲーム好きだもんなあ。
「さあ、行くわよ。準備ができたらあの転送ポートに入ってね。会場に転送されるから。」
―――始めよう。
私の物語を。
大会開始後、20分くらい。
「リノセ、相変わらず飲み込みが早いわね。上達が著しいわ!」
ロケランでエネミーを蹂躙しながらクレハが言った。
「うん!クレハのおかげだよ!」
私も、ニコニコしながらエネミーの頭をぶち抜いて言った。
うん、もうこれリアルだったら犯罪者予備軍の光景だね。
あ、銃を扱ってる時点で犯罪者か。
リロードして、どんどん進んでいく。
そうしたら、今回は運が悪いのか、起きて欲しくないことが起きた。
「おや、君たち。」
「……イツキさん。」
一番…いや、二番?くらいに会いたくなかったよ。なんで会っちゃうかな。
…まあ、それでも一応、持ち前のリアルラックが発動してくれたようで、その先にいたネームドエネミーを倒すことで見逃してくれることになった。ラッキー。
「いくわよ、リノセ!」
「うん!」
そのネームドエネミーは、そんなにレベルが高くなく、私達2人だったら余裕だった。
うーん…ニュービーが思うことじゃないかもしれないけど、ちょっとこのネームド弱い。
私、《SAO》時代は血盟騎士団の一軍にも入ってたし。オレンジギルド潰しまくってたし。まあ、PKは一回しかしてないけど。それでも、ちょっとパターンがわかりやすすぎ。
「…終わったわね。」
「うん。意外と早かったね?」
「ええ。」
呆気なく倒してしまったと苦笑していると、後ろから、イツキさんが拍手をしてきた。
「見事だ。」
本当に見事だったかなあ。すぐ倒れちゃったし。
「約束通り、君たちは見逃そう。この先は分かれ道だから、君たちが選んで進むといい。」
え?それはいくらなんでも譲り過ぎじゃないかな。
「いいんですか?」
「生憎、僕は運がなくてね。この間、《無冠の女王》にレアアイテムを奪われたばかりなんだ。だから君たちが選ぶといい。」
僕が選んでもどうせ外れるし。という副音声が聞こえた気がした。
「そういうことなら、わかりました!」
クレハが了承したので、まあいいということにしておくけど、後で後悔しても知らないよ。
「じゃあリノセ、あんたが選んでね。」
「うん。私のリアルラックを見せてあげないと。」
そして私は、なんとなく左にした。なんとなく、これ大事。
道の先は、小さな部屋だった。
奥に、ハイテクそうな機械が並んでいる。
「こういうのを操作したりすると、何かしら先に進めたりするのよ。」
クレハが機械をポチポチ。
「…え?」
すると、床が光り出した。出ようにも、半透明の壁のせいで出れない。
「クレハ―――!」
「落ち着いて!ワープポータルよ!すぐ追いかけるから動かないでー!」
そして、私の視界は切り替わった。
着いたのは、開けた場所。戦うために広くなっているのだろうか。
「………あ。」
部屋を見回すと、なにかカプセルのようなものを見つけた。
「これは…」
よく見ようとして近づく。
すると。
「―――っ」
後ろから狙われている気がしてバッと振り返り、後ろに飛び退く。
その予感は的中したようで、さっきまで私がいたところには弾丸が舞っていた。
近くのカプセルを掴んで体勢を立て直す。
【プレイヤーの接触を確認。プレイヤー認証開始…ユーザーネーム、Linose。マスター登録 完了。】
なんか聞こえてきた気がした機械音声を無視し、思考する。
やっぱり誰かいるようだ。
となると、これはタッグ制だから、もうひとりいるはず。そう思ってキョロキョロすると、私めがけて突っ込んでくる見知った人物が見えた。
キリト⁉まさか、この《GGO》にもいたの…⁉ガンゲーだから来ないと思ってたのに。まあ、誰かが気分転換に誘ったんだろうけど。ってことは、ペア相手はアスナ?
うっわ、最悪!
そう思っていると、カプセルから人が出てきた。
青みがかった銀髪の女の子で、顔は整っている。その着ている服は、まるでアファシスの―――
観察していると、その子がドサッと崩れ落ちた。
「えっ?」
もうすぐそこまでキリトは迫っているし、ハンドガンで攻撃してもどうせ弾丸を斬られるだろうし、斬られなくてもキリトをダウンさせることは難しい。
私は無理でも、この子だけは守らなきゃ!
そう考える前に、もう私の体は女の子を守っていた。
「マスター…?」
「―――っ!」
その女の子が何かを呟くと、キリトは急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「…?」
何この状況?
よくわからずにキリトを見上げると、どこからか足音が聞こえた。
「…っ!ちょっと待ちなさい!」
クレハだ。
照準をキリトに合わせてそう言う。
「あなたこそ、銃を降ろして。」
そして、そんなクレハの背後を取ったアスナ。
やっぱり、アスナだったんだね、私を撃とうとしたのは。
一人で納得していると、キリトが何故か光剣をしまった。
「やめよう。もう俺たちは、君たちと戦うつもりはないんだ。残念だけど、間に合わなかったからな。」
「間に合わなかった?何を言っているの?」
クレハが、私の気持ちを代弁する。
「既にそこのアファシスは、彼女をマスターと認めたようなんだ。」
………あ、もしかして。
アファシスの服みたいなものを着ているなーと思ったら、この子アファシスだったの?
というか、マスターと認めた…私を?
あー…そういえば、マスター登録がなんとかって聞こえたような気がしなくもない。
うん、聞こえたね。
あちゃー。
「ええええ⁉」
この子がアファシス⁉と驚いて近づいてきたクレハ。
「ねっ、マスターは誰?」
「マスターユーザーネームは【Linose】です。現在、システムを50%起動中。暫くお待ち下さい。」
どうやら、さっきカプセルに触れてしまったことで、私がマスター登録されてしまったようだ。やっちゃった。……いや、私だってアファシスのマスターになる、ということに対して興味がなかったといえば嘘になるが。クレハのお手伝いのために来たので、私がマスターとなることは、今回は諦めようと思っていたのだ。
―――だが。
「あんたのものはあたしのもの!ってことで許してあげるわ。」
クレハは、からかい気味の口調で言って、許してくれた。
やっぱ、私はクレハがいないとだめだね。
私は改めてそう思った。
クレハに嫌われたらどうしよう、大丈夫だと思うけど万が一…と、さっきまでずっと考えていたからだ。
だから、クレハ。自分を嫌わないで。
クレハもいなくなったら、私―――
ううん。今はそんな事考えずに楽しまなきゃ。クレハが誘ってくれたんだから。
「私はクレハ。よろしくです!」
「リノセ。クレハの幼馴染です!」
「俺はキリト。よろしくな、リノセ、クレハ!」
「アスナよ。ふたりとも、よろしくね。」
自己紹介を交わした後、2人は優勝を目指して去っていった。
きっと優勝できるだろう。あの《SAO》をクリアした2人ならば。
私はその前に最前線から離脱しちゃったわけだし、今はリナじゃないし、2人にバレなくて当然というか、半分嬉しくて半分寂しい。
誰も私の《SAO》時代を知らないから、気付いてほしかったのかもしれない―――
「メインシステム、80…90…100%起動、システムチェック、オールグリーン。起動完了しました。」
アファシスの、そんな機械的な声で私ははっと我に返った。
「マ、マスター!私に名前をつけてくださいっ。」
「あれ?なんか元気になった?」
「えっと…ごめんなさい、そういう仕様なんです。tipe-xにはそれぞれ人格が設定されていて、私はそれに沿った性格なんです。」
「あ、そうなんだ。すごいね、アファシスって。」
じゃあ、このアファシスはこういう人格なんだね。
「名前、つけてあげなさいよ。これからずっと連れ歩くんだから。」
「うん。」
名前…どうしようかな。
この子、すごく綺麗だよね…綺麗…キレイ…レイ。レイ…いいじゃん。
「レイ。君はレイだよ。」
「レイ...!登録完了です。えへへ、素敵な名前をありがとうございます、マスター。」
アファシス改め、レイは嬉しそうに笑った。
「…リノセ、あんた中々センスあるじゃん。あのときはずっっと悩んでたっていうのに。」
クレハが呆れたように言った。まあ、いいでしょ。成長したってことで。
「えと、マスター。名前のお礼です。どうぞ。」
レイは、私に見たことのない銃を差し出した。
「ありがとう。これは何?」
受け取って訊いてみると、レイはニコッとして答えた。
「《アルティメットファイバーガン》です。長いので、《UFG》って呼んでください。」
《UFG》……何かレアそう。
また、大きな波乱の予感がした。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.42 )
- 日時: 2023/07/26 22:46
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「結局…死銃は何だったんだろうね?ユーザーネームもプライバシー機能で隠されていたし。」
「……」
ラフィン・コフィン…赤眼のザザ…なぜ、今。なぜ、ここに?
ザザが殺したの?ゼクシードを?どうやって?
「リノセ?大丈夫かい?」
「あっ、うん。平気。」
イツキに顔を覗き込まれて思考を中止する。
そうだ、ここは《GGO》だ。《SAO》じゃない。大丈夫。アミュスフィアに脳を焼き切るような電子回路はないんだから。
「楽しい休憩に水を差されちゃったね。そうだ。みんなと行きたいダンジョンがあるんだ。一緒に行かない?」
「いいわね、行きましょうか。」
「ああ、いいじゃないか。」
「いいわね、ついてくわよ!」
「みなさんよろしいようですね。では向かいましょう、マスター!」
「うん!」
シュピーゲルが教えてくれたダンジョンは、レベルが高い隠しダンジョンだった。
ボスはAI搭載のNPCパーティ。スナイパーのNPCはネームドだ。
「スキルフリーズ中!チャンス!」
「了解、行くよ、イツキ!」
「ああ!」
イツキとの連携で高台からトリガーを引く。
無事、私の弾丸は一人目の頭を撃ち抜いた。
「よしっ、どんどん行くよー!」
スナイパーのネームドはレイを追っているが、レイはAGIを上げているからか、あまりレイのHPは減っていない。
だが、もうすぐターゲットを止まっている私に移すだろう。タイムリミットは少ない。
って、あれ、もしかして…。…そうか、ああすればいいのか。
「吹き飛びなさいっ!」
クレハがグレネードランチャーで二人目を倒す。
あと二人。
私は《UFG》を駆使して壁を蹴って狙いをグラつかせると、その隙をついて頭を撃った。
これは自身の動きが大きいから結構集中する技だ。
あと一人。
スナイパーのネームドと私は、両方同時にトリガーを引いた。
バンッ!という2つの発射音が重なり、一つの直線上に2つの銃弾が舞う。
あいつが持っているのはAMRアンチマテリアルライフルだ。
銃の造りからしてあの銃の弾速はマッハ3くらい。私とあいつの間は1.5キロメートルくらい。となると…
私に、弾が当たることはない。
なぜなら、今私は壁を蹴った反動で浮いているわけで―――
そう、当たる前に落ちる!
マッハ1は音速と同じでだいたい秒速340メートル。つまり、マッハ3は一秒に1.2キロメートル。
あいつが放った弾丸が、あの位置に届くまで一秒とちょっと。
その間に私は既に落ちている。
戦っているとき、あのネームドが偏差撃ちができないことに気付いた。
だから、単純に偏差撃ちができないという弱点をついた戦い方をすればいい。
スナイパーボスのHPが尽き、パリーンとデータホログラムが散った。
「よし、クリア!」
「マスター、お疲れさまでしたっ。」
「ナイスファイトね、リノセ!」
「ああ、お疲れ。今回のダンジョンでだいぶレベルが上がったんじゃないかい?」
「そうだね!これでフリューゲルがもっと素早く攻略できそう。」
「うふふ〜。じゃあ、一旦戻ったらフリューゲルに行きましょうか。」
そのとき。
気配を感じて振り返り、警戒態勢に入る。
「あっ、気付いたの?僕ら、二人ともハイディングスキル使ってるのに。流石は強いリノセだ!」
ボス部屋の扉の上…しかも一番遠い場所にいた2つの影はスタッと降り立った。
「シュピーゲル、ケイ。」
「やっぱりきみは強いよ、何よりも。きっときみなら、孤高でかっこいい最強スナイパーになれる。」
心底嬉しそうに笑ってシュピーゲルは手を広げた。
「さあ、見せてくれよ。《GGO》最強のAMRライフルを…!」
あ、そうか。ドロップ…。
インベントリを確認すると、小さい「New!」という文字とともに一つ、レジェンダリーのAMRライフルがあった。その名も…
「AMR Fetal Bullet…?」
アンチマテリアルライフル、フェイタル・バレット。
火力と射程がDestroyGateよりも大きい。その分重量は、ガトリングよりも圧倒的に重い。
ただ、それを覆すほどのレアリティと性能。
そして説明文には……
「…使用者の個性や強さによって、何が優れているかが変化するライフル…?」
つまり、連射型スナイパーならフルオートライフルになったり、単発のロマン砲スナイパーだったらこんな風に威力と射程に特化したライフルになる、ってことだ。
「このライフルは君だけのものだ。そして、この《GGO》にて最強の武器になるだろう…!」
フェイタル、バレット。致命的な弾丸?いや…きっとこれは……
「運命の弾丸……」
なぜか、FetalBulletを持ってると落ち着く。
そう、まるで、《SAO》時代に使っていた黒霧みたい。
そう言えば、漆黒に輝く見た目や侮れない雰囲気と圧とか、なんとなく黒霧に似てる…。
もしかして、黒霧…?
…いや、まさかね。
「…これから、よろしく。」
さてと、と呟いてシュピーゲルとケイを見やる。
うーん、ケイの顔…前も思ったけど、やっぱり見たことあるなあ…。
「きみ、武器なに?」
「お、俺か?」
「そう。」
「ガトリングだが、それがどうした?」
雰囲気、言葉遣い、身長、趣向、武器………。
………え、啓治?
あー……「啓」治ってか。なるほど。今度聞いてみよ。
「リノセ?どうかしたかい?」
イツキが顔を覗き込んできた。
「ううん、なんでもない。…シュピーゲル。」
「なんだい?」
「きみは死銃って知ってる?」
ピクリとシュピーゲルが動いた。
「…オッケー、ありがと。……じゃあ、また。行くよ、みんな。」
「えっ、もうよろしいのですか、マスター?」
不思議そうにするレイに、ゆっくり頷いた。
ちょっと反応したってことはやっぱり関係者の可能性が高い。
前に推察したとおり、シュピーゲルに恐怖を感じたのは、ザザの…死銃デスガンの関係者だったから、と思えば納得できる。
私の勘って私でもわからないうちに当たってたりするからね。
「うん。だいたいわかった。」
「ふふふ…やっぱりきみは素敵だよ、リノセ。ああ、また会おうじゃないか。次会うときにはきっと、最強になっているだろうね。」
薄気味悪いシュピーゲルを静かに見つめながら、私たちはダンジョンを出た。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.43 )
- 日時: 2023/07/29 09:22
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
グロッケンに戻り、アイテム整理と消耗品の購入を済ませ、そろそろ《SBCフリューゲル》に向かおうとみんなで頷きあう。
そしてメニューコンソールを出そうと手を構えた、そのとき。
ピロリン!
無機質な電子音とともに、とある一通のメッセージが出てきた。
キリトからだ。
《突然すまない。
話したいことがあるから、至急集まってほしい。》
必要最低限の内容が書かれたメッセージだった。
その短さからも緊急性が見て取れる。
「これは…」
「すぐ行こう。フリューゲルはその後だね。」
キリトたちの部屋には、全員が集まっていた。
みんなこのメールを受け取ったそうだ。
「どうしたんですか、キリトさん?急に呼び出して?」
「まーた面倒事に巻き込まれたのかよ?」
戸惑うシリカに、開口一番に若干失礼な発言をするクライン。
そんな2人に、肩をすくめたリーファが首を横に振る。
「違いますよ。キリトくんは巻き込まれるんじゃなくて、自分から首を突っ込みに行くんですよ。」
キリトが可哀想だが、残念ながら私もまったくもってその通りだと思ってしまった。ごめんキリト。
「そーよ!さあキリト!しゃきしゃき吐きなさい!あらいざらい全部!いつものように!」
「俺ってそんな風に見られてるのか…」
むしろ自覚ないキリトが心配だよ。
「リズベットさんたちのおっしゃることは筋が通っています。今までのパパの行動はほとんどパパ自らが関わろうとしていますから…」
「あー…まあな。でも、今回は頼まれたことで、巻き込まれた範疇だからな。」
ごほんっと咳払いをして、キリトは真剣な表情になる。
…やっぱり、ただ事じゃなさそうだなあ…嫌だ嫌だ。面倒事はお腹いっぱいなんだけど。
「みんな、しばらく《GGO》にログインしないでほしい。」
は?と言いそうになったのを我慢した私偉い。
でも、みんな、は?と言いたげな顔だ。
「どういうことよ。いきなり来るななんて。」
「まだフリューゲル攻略も途中よね?なんで今…」
シノンとリズベットは不満そうだ。
そりゃそうだ。いきなりもう来んなと言われたらそうならざるを得ない。
「まあ、そうなるよな……。」
「キリト、なぜだ?」
エギルの問いに、キリトはもう一度真剣な顔で口を開いた。
「先日、ゼクシードと薄塩たらこというプレイヤーが、謎の死を遂げた。」
「ッ!」
ゼクシード。死亡。
私、クレハ、ツェリスカ、イツキ、レイの5人は一瞬顔を見合わせた。
「どちらも、VR空間にいるとき…しかも《GGO》のアバターのときに殺されたんだ。どちらもたくさんのプレイヤーが見る中で緊急ログアウトして、その後、死亡が確認された。」
「ゲーム中の不幸な死、というわけね…。」
シノンが言うが、それは少し違うことを、私たちは知っていた。
だって、その不幸な死は、死銃デスガンがその手に持つ銃を撃った瞬間に強制ログアウトしたんだから。
「で、ここが大事なんだが、どちらも、とあるプレイヤーに間接的、あるいは直接銃を向けられ、発砲されたそのときに緊急ログアウトしたことだ。」
「えっ⁉」
「それって、まるで―――」
その先は、誰も言うことができなかった。
そう、それってまるで、《SAO》みたいな。
かつての、ここにいる数人を除く全ての人が経験したあの恐怖の空間に似ている。
《ソードアート・オンライン》に、似ている―――……
「…死銃デスガン」
「!!」
「それって、そいつのことだよね?」
「……知ってるのか」
キリトは、目を見開いて私を見つめた。
「私たちは、ゼクシードが死ぬ瞬間を見たんだよ。あいつに…相当恨まれている感じだった。」
「ああ、その通りだ。あの声には相当な怨恨がこもっていたよ。」
イツキは私に賛同する。
「そうか…。それついては後で詳しく聞こう。それで、アミュスフィアに殺人機能は搭載されていない今、そのような意図的なVRでの殺人はできないはずだった。そう、できはしないんだ。」
「そらそうだ!できたら困る!」
クラインは半ば投げやりだ。
これでもだいぶテンパってるんだろうな。
「でも、これで人が死んだのは事実なんだ。俺はとある人の依頼で調査に協力することになってさ。きみたちは、その調査でトリックがわかるまではログインしないでほしい。そういう話なんだ。」
なるほどね…。
どうやって殺されたかがわからないから、それならログインしてこなければいいじゃないと。
残念ながら私はそうはできないな。
なぜって、《ザスカー》を信用してるわ!とかそういうことじゃなくて。
単純に、そんなことに負けてやるつもりはないからだ。
ザザには負けない。ラフィン・コフィンのやつらになんか負けてあげない。
私は、ログインをやめない。
「私は別にいいよ。キリトくんが一緒なら。」
アスナは当然のように言った。
「俺は残るよ。調査があるしな。」
「でしょう?だから私は残ります。」
アスナは私と同じく、結論が出ていたみたい。
「そうね。私も残る。」
シノンも即決。
やっぱり《SAO》組は決断が早いね。もともと死の戦場を脱してきた人だからか。
それは、私も一緒かも。
「うーん…やっぱりそうなるよな…。結論は急がないから、ゆっくり考えてほしい。リノセ、きみが話を聞いてやってくれないか。きみはもう答えは出ているみたいだし。」
キリトは薄く苦笑いを浮かべた。
私が残ると思っていることはわかったようだ。
「うん、わかった。」
私はそう言って微笑んだ。
そう、私はやめないよ。
ザザとの因縁は、ここで切らなきゃいけないしね。
次へ続く
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.44 )
- 日時: 2023/08/02 15:36
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「うーん…あたしは…ちょっと、わかんないかも。」
クレハはふるふると首を振った。
「《GGO》で殺人が起きて、あたしも殺されるかもしれないだなんて…頭がぐちゃぐちゃ。それなのに、アスナさんたちはちゃんとしてて…凡人との差ってこれなのね…」
自嘲気味に笑ったクレハに、私は否定する。
「ううん、クレハ。いいんだよ、迷って。命に関わることなんて、すぐ判断しなきゃいけないときもあるけど、それでも大事なことだから。いっぱい悩んでいいと思う。」
「そういうあんたは、どうなのよ?」
「私は…残るよ。例え、ザ……じゃなくて、死銃が本当に人を殺せるのだとしても。私は、そんなクズに負けるつもりはないから。」
「そっか…。うん、あんたの言葉聞いてたらなんか、大丈夫な気がしてきたわ。フリューゲルもあるし!私も残る。」
「うん。一緒に頑張ろう!」
「ええ!」
クレハは残るようだ。
次にツェリスカ。ツェリスカは腕を組んでピリピリした雰囲気だ。
「ツェリスカはどうするつもり?」
「私は残るわ。《GGO》で殺人なんて、絶対にありえないもの!アミュスフィアはナーヴギアとは違うの。長い時間をかけて安全性確保の実験を行ったのよ。言わば、研究者たちの努力の結晶。それの安全が脅かされることがあってはいけないの!」
「…信用してるんだね、ツェリスカ」
「ええ。…ごほん、ということで、私はなにが何でも残るわ。」
クレハもツェリスカも残る、か。
あとは、イツキかな。まあ、イツキは残るって言いそうだけど。
「僕かい?そうだなあ…少し、外に出ないか。」
私たちは総督府広場の先端に来た。
ここからは、大部分の《SBCグロッケン》を見渡せる。
まあ、迷路みたいに上下ぐちゃぐちゃだから、見えていないところもたくさんあるけど。
「VR殺人…起きたことがあり、もう二度と起きてはいけないと誰もが思い、もう二度と起こらないだろうと誰もが思ったよね。そう、そのときまでは。死銃の怨恨は本物だし、ゼクシードも死んだ。」
「そうだね。あれはびっくりした。」
「でも僕は、VRでそいつにHPを削り切られるほどヤワじゃないよ。僕は残る。」
イツキも、みんな…残るようだ。
「本物の強さってなんなんだろうね?あいつはゼクシードを偽りの勝利者と言った。果たして、じゃあ、本当の勝利者は誰なのか?」
イツキは、私を見て微笑んだ。
「きみなら、きっと答えが出せるんじゃないかな。死銃をどう思うか。真の強さ、真の勝利者とはなにか。僕はその答えを聞くためにも、ここに残る。ああ、だけど…《GGO》で殺人が起きないとは言わないよ。」
気をつけてね、と色気たっぷりで私の頭をポンポンと撫でたイツキ。
…やっぱり、好きだなあ。
でも…まだ、隠しておこう。気持ちは―――全てが収まったときに。
フラグ?そんなものへし折ってやる。
物語みたいな事前フラグなんざに運命を左右されるつもりはないんだ。
「そういえば、バザルトくんと和解したそうじゃないか。」
「あ、うん。そうなんだよね。ちょーっと弾遊びで仲良くなって。最近は『お前さんといると楽しいぜ!』なんてキザなセリフも言ってきてさ。」
流石にあれはびっくりしたよね。バザルト・ジョーもそういうこと言うんだって思った。
あと、「弾遊び」はまあ、うん、銃撃戦のことだ。
すると、イツキの瞳の光が僅かに揺れた。
「…ちっ。敵が増えた」
「え?なに?」
「なんでもない、ほら行きなよ。キリトくんが待っているんだろ、リノセ?」
「ああ、そうだね。じゃあ、また。《SBCフリューゲル攻略》、最後まで頑張ろうね。」
「もちろんさ。」
そうして、私はキリトたちの部屋に戻っていった。
―――リナ。
微かに響くその声に、私はまだ気付かなかった。
「そうかあ…みんな残るのか。こっちも、全員残るって。」
まあ、アリスやユージオとかはむしろ別の場所に行けなくて困っているみたいだし…。
アスナやシノンだけではなく、シリカやリーファなどの他の人も残るようだ。
やっぱり、《SAO帰還者》勢はそこについてはよくわかっているのだろう。
そして、仲間を見捨てず最後まで一緒にいる大切さも、ね。
「きみは、どうするんだ?」
「残るよ。私はザ……ごほっ、死銃に負けるつもりなんてないから。」
「そうか…。…うん、きみならきっと大丈夫だろう。わかった。」
「その代わり、早く集中できるようにさっさと一大イベントにケリをつけちゃおう。」
「ああ!」
そうして…私たちは、バザルト・ジョーを仲間に迎えた状態で、《フリューゲル最奥部》の攻略を早急に進めることにした。
****
ピッ…ピッ…ピッ……と規則的に機械音がなる個別病室505番、もう何年もただ一人が使っている、病室。
その病室のベッドには、あの事件から少ししか体が育っていない、高校生ほどに見える男がいた。
その病室前のドアには、こう名前が貼ってある。
『神名 凛太郎 様 病室』
そのベッドの横に置かれた小さな椅子は、もう何年も、たった一人しか座ったことがない。
彼女は大型クエスト《SBCフリューゲル》攻略があっても、あの事件からずっと、見舞いを欠かさなかった。
一週間に一回訪れ、ぎゅっと彼の手を握りながらその一週間のことを語りかけ、優しく微笑んで去っていく。
もう何回それを繰り返したかは数え切れない。
あの事件からはや8年。高校生だった凛太郎は24歳になる。
とある日、電子機械に繋がれ、定期検査を昏睡したまま行った彼に、インターネット上からとある情報が流れ込んだ。
それは誰にも、何にも見つかることなく凛太郎の深い眠りを刺激する。
………………………
「神名くん」
彼は、深い眠りの中、夢に突如響いた覚えのない声に驚き、周囲をきょろきょろと見た。
「後ろだ」
彼が振り返ると、そこには鎧のようなものを着た男性が立っていた。
「お前は…」
「私はヒースクリフ。いや…本名は、茅場晶彦だ。」
かやば、あきひこ?
彼は、全く知らない名前に首を傾げるしかない。
「きみが神名凛太郎くんだね?」
「そうだが…いったい……」
「時間がない。完結に説明しよう。今から私が話すことは全て本当だ。信じてほしい。」
《かやばあきひこ》は、真面目な顔でそう言って話を始めた。
「―――なるほど。凛世はリナとして《SAO》でそれを経験して、今は《GGO》というVRゲームに、と。」
「その通り。彼女は、そこで傷つきつつも大きな成長を遂げるだろう。彼女は少し一人になりすぎた。きみにそばにいてやってほしい。」
「って言っても、もうずっと…あのときからこのよくわからない空間に閉じ込められているんだ。どうやって…」
「大丈夫、きみは昏睡しているだけだ。私が脳のネットワークを少しいじる。そうすれば一日か二日で回復するだろう。彼女に寄り添ってあげてほしい。あるいは…」
「あるいは?」
「彼女の決断を肯定してあげてほしい。」
どういう意味なのか凛太郎はよくわからなかったが、《かやばあきひこ》に「後にわかる」と言われて追及を諦めた。
「じゃあ、頼んだ。」
「ああ、わかった。」
深い昏睡の底、覚めることなき夢の狭間をさまよい続けた凛太郎お兄ちゃんは、ようやく―――
ようやく、目覚めようとしていた。
****
「ここが、《SBCフリューゲル》の一番奥…なのかな。」
「まだ誰も来ていないようだし…うふふ〜、私たちが一番乗りね〜。」
「やった!最初だっ!」
ジャンプして喜ぶクレハ。
だが、私は奥に目を凝らす。
「うーん、でもあそこにボスエネミーいるね。倒せってことかな。」
「待て、あそこにコンソールがある。見てみよう。」
画面が真っ赤で、いかにもヤバそうなコンソールをレイと一緒に覗き込む。
『Эне компьютерди инициализациялоо―――』
なんて言ってるかわかんない。
「ここにもエラーコードが…レイちゃん、翻訳お願い…。」
「………っ」
「…レイ?」
もしかして…ううん、やっぱりマザーコンピュータになにかあったんだね。
「…マザーコンピュータに異常発生。解決には該当機械を初期化、OSを再インストールせよ…」
「…うーん、なるほどね」
OSを再インストール、つまりは…。
「そうすれば、レイともお別れなんでしょ。」
「そうです。お母さんを初期化してしまえば…私たちアンドロイドも、消えてしまうんです…。」
「他に、方法は?」
「…私とお母さんを繋げば、私の機能の自己修復機能で…直せるかもしれませんが…。」
あそこのボスと戦わなきゃいけなくなる、か。
「…僕は、OS再インストールに一票。」
イツキは、神妙な顔でそう言った。
「イツキ、あなた…何を言ってるかわかってるの⁉」
「ボスは大型クエストのラスボスだ、情報収集もしてないから負けるかもしれない。そして街に戻った隙に誰か着たらどうする?それよりかは再インストールがいいさ。」
「…」
まあ、たしかにね。でも…。
やっぱり、諦めるわけにはいかない。
そもそも、マザーコンピュータを助けたらご褒美くれるって話だし。
「判断はあんたに任せるわ、リノセ。」
「そうね〜。リーダーはあなただし、レイちゃんはあなたのよ。」
「そうだな。どうする、リノセ?」
私は。
「レイとお母さんを会わせるために、ここまで来たんだよ。」
まあもちろん、ゲーマー魂が燃えたっていうのもあるけど。でも一番は、これ。
アンドロイド?NPC?データだけ?知るか。
私にとっては、レイは大事な大事な仲間なんだ。その仲間の悲しむ様子なんて見たくないし。
その仲間と、別れたくないし。
もう、誰一人だって失いたくない―――
「はあ、そうなる気がしていたよ。了解、絶対に勝とう」
「みんな、HPは大丈夫?弾の数は足りているかしら?」
「バフもかけておきましょうね〜。」
ウェポンアーツは溜まってる。愛剣フィリルも大丈夫。AMRFetalBulletも万全の状態だ。
あとは、行ってくるだけ。
「勝つぞ!」
「「オーッ!!!」」
ボスは、よくみる巨大ロボット型だった。未知のエネミーじゃなくてよかった。
だが、いくつか見覚えのないモーションが出てくる。
「バザルト・ジョー!」
「おうよ!俺様はこっちだあっ!」
ヘイトを取ってくれている隙に、私は戦闘場所を囲むようにして立っている柱に《UFG》を使って登ると、強く蹴って飛び上がりながら剣に切り替える。
空中で構え、それを放つ。
片手剣単発ソードスキル、《ヴォーパル・ストライク》。
それはボスの弱点にクリーンヒットし、ボスはスタンに入る。
「えー…」
だが、スタンは3秒ほどで解けてしまった。
流石だ。私の武器がちょっと桁違いなだけで強いもんね、このボス。
「ちぇっ。真面目に撃つしかない、か!」
絶対に貫いてみせる。
必殺の弾丸―――ウェポンアーツの弾を込め、目を見開いてスコープを覗いた。
「みんなっ!後ろ頂戴!」
「了解!」
みんながヘイトを操作しながらボスの体を動かさせ、私に背を向けさせた。
「いけっ!」
ドカンッ!と大砲でも撃ったかのような反動が体を襲うが、なんとか立て直す。
なんとここで!体力がミリで残ってしまった。
そのとき、ボスがヤバそうな光線を放とうとする。目標は、クレハ。
もう間に合わない、誰もがそう思ったとき。
私は《UFG》を取り出し、クレハの腕をむんずと掴んで一緒に転がり込んだ。
「クレハ、大丈夫⁉」
「あ、あんた…ああ、ええ、大丈夫よ。」
「ひゅー!かっけーな、おい!」
バザルト・ジョーを睨む。
かっこいいよりかわいいのほうがいいんだけどね。
「…きみは、そうやっていつも自分を危険に晒すんだね。ほら、少し当たってHPが半分削られたじゃないか」
イツキは心配そうに言って私に手を差し伸べた。
確かに、私の背中は少し負傷した。
「大丈夫かい?立てないなら―――」
「立てます!大丈夫です!」
危険を察知した。自己防衛力。
あのままだと心臓が爆散して、3人目のゲーム中死亡が出るところだったよ。危ない危ない。
今イツキに密着しちゃえば、隠せるかどうかわからないからね。
ボスは、イツキとツェリスカによって長期スタンになっていた。
「さあ、リーダー。とどめ。」
「うん、ありがと。」
私は、スタン中のボスの頭に愛銃を突きつけた。
「…ごめんね―――」
巨大ボスから散らばるデータホログラムの欠片は、美しかった。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.45 )
- 日時: 2023/08/02 15:39
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「勝った!勝てたわ!さあレイちゃん、お母さんのところへ!」
「は、はい!行ってきます!」
全速力でマザーコンピュータのもとに走っていくレイを見つめる。
マザーコンピュータのエラーを治すためにボスと戦ってここまで来た。
《SBCグロッケン》とほぼ同規模の巨大ダンジョンである《SBCフリューゲル》…敵の本拠地の最奥に一番早く到達した私たちは、ついに、そのゲーム全体のクエストを最速でクリアしようとしている。
「ふー、ナイスファイト!かなり緊張したぜ。よく勝てたな!」
「本当!最初で勝たなくちゃいけないラスボスなんて、普通は無理よね。」
「そうそう!普通は何度か戦って、戦闘パターンを把握しますもんね!」
みんな有頂天だ。
そんなみんなを眺める私も、大きな達成感に包まれていた。
「リノセ、この結果もきみがいたからだな。最後の選択と戦闘、本当によくやったな。」
「ええ!今回のMVPはあんたよ!おめでとう!」
「…必死だっただけだよ。レイの悲しむ姿は見たくなかった。」
「ああ。この戦いは、きみにとってはゲームではなかったんだよな。」
その通りだ。
レイは私にとって仲間であり、友達であり、大切な人。
永遠の別れになるかもしれなかったし、悲しむ姿も見たくなかった。
例えここが仮想世界で、このクエストがゲームだったとしても、私にとってはゲームではなかった。
「……ゲームではなかった?」
なにか呟くイツキ。
どうしたのと聞く前に、レイがマザーコンピュータのもとに到着した。
「お母さん、今直しますから!」
マザーコンピュータ。
その巨大さと形からパイプオルガンのようにも見える。だから、《マザークラヴィーア》とも呼ばれているそうだ。
その正体は銅像―――とかではなく、《SBCフリューゲル》の主。アファシスやエネミーを生み出した、母。
レイが会いたがっていた、実の母。機械だけど。
「Сураныч, ошол жерден консолго туташыңыз―――」
「あ、ここですね!……接続完了です!自己修復を開始します!」
エラーコードで何を言っているかは相変わらずわからない。
でもレイがわかるところとか、通じ合ってる感じがするよ。
そしてしばらく見守り、レイがマザーコンピュータの横にあるコンソールから接続部を外すと―――
『Afasystem A290-00。私のかわいい子。』
「お母さん、お母さん…!」
『ありがとう。あなたのおかげで私は正常になりました。』
優しい女性の声。マザーコンピュータの、慈悲に溢れた声。
昔人類は、こんなに優しそうなコンピュータと敵対していたなんて。
『この子を連れてきたこの子のマスターと、それに連なるギルドの者たちも、ありがとう。』
「……よかった、ほんとに治ったみたいで。」
『あなたの名とスコードロンの名をこの体に刻み、その功績を永遠に残しましょう。お礼に、あなたには新たな力を、スコードロンには報酬を授けます。命の恩人であるあなたがたのこれからの活躍を、期待していますよ。』
マザーコンピュータは、そう言って微笑んだ…気がした。
「リノセ、クエストクリア、おめでとう!」
「おめでとう!やっぱりあなたはすごい人ね!」
「あんたは一番よく頑張ったものね!おめでとう!」
キリト、アスナ、クレハが口々に言った。
「リノセ……きみは…」
「クエストクリアおめでとう、リノセ!」
「…人の話を遮るなよ。」
イツキが何か言おうとしていたのをツェリスカがニコニコしながら遮って祝ってくれた。
「僕からも、おめでとう。きみはいつも僕を驚かせてくれるよ。最後の戦い然り、ね。」
「ああ、あれ?あれは唐突な思いつきだけどね。」
イツキはさっきの話を諦めたようで、優しい微笑みで祝ってくれる。
なんだかんだ楽しんでくれたみたいだ。よかったよかった。
「マスター、お母さんを治すのを手伝ってくれて、ありがとうございました!まだマスターといることができて、とっても嬉しいです!」
「レイが喜んでくれてよかった。これからはいつでもお母さんと会えるね。」
「はい!」
振り返ってみんなを見る。
ここまで、長くて短かったなあ。いろいろあった。でも、いつだってそばにはみんながいてくれた。
私にとってかけがえのない世界、《GGO》。きっと、これからも私が帰ってくる場所になる。
「みんな、ありがとね。―――帰ろっか。」
「ああ!」
「うん!」
「はい!」
私たちは、笑い合って《SBCフリューゲル》を出た。
「このあと、キリトたちの部屋でパーティーがあるそうです。マスター、準備ができたら向かいましょう!」
「うん。」
ホームにて。戦闘の後処理をしていた私は、レイに頷いた。
「あと、マスター。実はマスターに、プレゼントがあるんです。」
「プレゼント?」
レイがくれたのは、レイの髪色と同じ、青銀色のお守り。
「それ、お守りです。どうやって作ったのかは、私だけの秘密です。マスターと私の絆の証、ですよ。」
「ありがとう、レイ。大切にするね。」
どこかぎこちない手付きで縫われたような跡。でも、不思議な力を感じる。
私は、だらしなく頬を緩めた。
「―――クエストクリアをみんなでお祝いしましょう。」
「いっぱい料理あるから、いっぱい食べて飲んでね!」
「うわぁ…!美味しそうです!」
「みんな作ってくれたの?」
「そうだ!たくさん味わってくれよな!」
「盛大なお祝いだから、今日は寝落ちするまでパーティーよ!」
キリトたちの部屋にて。
テーブルに所狭しと並ぶ料理の数々。どれもいい匂い。
みんなが腕をふるって作ってくれたようだ。実に嬉しい。
うーん、お腹が空いてきたっ。
「みんな、飲み物は持った?」
「イエーイ!」
「じゃあ、大型クエスト最速クリアを祝って!」
「「「かんぱーい!」」」
カランカラン!というコップの音でパーティーが幕を開けた。
料理を頬張っていると、みんなが揃ってお祝いしてくれる。
「ナイスファイト!あなたの最後の選択は正しかったと思うわ。」
「本当。最後の戦いはヒヤヒヤしたわよ。」
「でも、きみは無事にクエストを達成させた。今や《GGO》の英雄だ!」
「称号だけじゃなく、実力もね。」
みんな、とても嬉々とした表情を浮かべている。
私を褒めながら私のお皿にどんどん料理を置いていってくれるからもはや満杯だ。
「なんか、先越されちゃったわね。あんたももうトッププレイヤーか…。」
「最初っからベテランプレイヤーみてぇな動きだったもんな!」
「とにかく、あなたはよくやったわ〜。おめでとう。」
「みんな、ありがとう。」
なんというか、お腹と胸がいっぱいだ。
あ、ケーキ。ケーキはいただこう。え?お腹いっぱいなんじゃないかって?そんなわけないじゃないか。
ケーキのためなら爆速で消化するって胃が言ってる。
「おーい!俺様も来てやったぜ!嬉しいだろ!」
「アーウレシーナー。モノスゴクウレシーナー。」
「水臭ぇなあ。お前と俺の仲じゃねーか!」
「え?あ、ウン、ソーダネー。」
みんなが「ぶっ」と吹き出して笑う。
一通り笑ったところで、私はふと、とある場所を見た。
「マスター…?」
「…イツキは?」
「そう言えば、いつでもどこでもベラベラ喋る、腹黒男がいないわね〜。あいつ、最後に真逆の判断をしたから気まずいのかしら。ああ見えてデリケートだから〜。」
ツェリスカは呆れたように肩をすくめた。
「気が向いたら声でもかけてあげて。イツキを喜ばせられるのはあなただけなんだからね、リノセ。」
目を丸くする私。
イツキを喜ばせられるのは、私だけ?それっていったい―――
ピロリン!
メッセージが一通届いた。
確認してみると、それはシュピーゲルからだった。
《クエストクリアおめでとう。やっぱりきみはすごい人だ。
新しいスナイパーライフルはどうかな?きみの力になることを祈ってるよ。》
短くて、だけどどこか狂気のこもったメッセージだった。
一見ただ褒めているだけ。でも…ううん、違う。きっと私が怖がっているだけだ。
もっと真面目に向き合わないとね。
《ありがとう。シュピーゲルが教えてくれたところのライフルはすごく強いよ。助かった。》
距離をおいた無難なメッセージではなく、ちゃんと真面目に返す。
…びっくりするかな?わかんないけど、でも…
死銃デスガンやシュピーゲルについての決心は確立した。
「ちょっと食休みに散歩してくるね。」
「了解!いってらっしゃーい、リノセ。」
クレハに一言の残し、私はそっとキリトたちの部屋を出た。
****
「はあ……」
こっそりキリトたちの部屋から抜け出したイツキは、ホーム建物前で大きな溜息を付いた。
「どうしたんだ、イツキ。パーティーにいるんじゃなかったのか?」
「どうしてバザルトくんがいるんだい?」
「何言ってるんだ?こんな大きなお祝い、知り合いはみんな来ているぜ。まずは主役にご挨拶、といきたいところだが、まずはスコードロンのメンバーが優先だからな。イツキ、お前さんはいいのか」
「ああ。…後でゆっくり話すよ。」
そう言うイツキの目からはとある1つの感情以外は読み取ることができない。
ただ、いつもの笑顔が剥がれ落ち、明らかな不機嫌さだけは漂っていた。
「あら、珍しい組み合わせね〜。」
「…ツェリスカくんか。悪いけど、今僕は忙しいんだ。後にしてくれ。」
「イツキ、あなたも拗ねてないでお祝いしたらどう?」
「はあ?どこからそんなことが出てくるのか、全くわからないんだが。」
「最近のあなたはとても楽しそうよ。《GGO》を始めた頃みたいに。」
「ああ、その通りだ。」
始めたばかりのイツキ―――
つい最近目にしてしまった偽イツキを思い出し、彼は顔をしかめた。
この女はいつまでも気に入らない、と心の中で吐き捨てて小さく舌打ちをしたイツキに、ツェリスカは追い打ちをかける。
「イツキはもっと素直になるべきよ。あの子が、誰かに攫われてしまう前に。」
「………サイアクな気分なので失礼するよ。」
彼は耐えられずその場をさった。
図星だったから、というのはイツキもわかっていた。
「まったく。大切なものを取られた子供みたいね。」
「まあ、いいんじゃねぇか?いつもの上っ面だけの笑顔より、あの仏頂面のほうが100倍マシだぜ。」
2人は付き合いが長いからこそわかったのかもしれない。
彼の恋心と狂気が。
後に2人は、彼を止められなかったことを強く後悔することになる―――
***
上り道をゆっくり歩く。
最近はレイやクレハ、イツキたちといつも一緒だったから、ここまでずっと一人だったのは久しぶりだ。
こういう静かな時間も、たまには必要なのかもしれない。
だけど、今ここに来たのは―――
「…みーつけた。」
イツキに会うためだから。
イツキはそっと振り返って、私と目が合うと苦笑いを溢した。
「どうしたんだい?主役が抜け出しちゃだめだろう?」
「んー?大丈夫だよ。一応声かけてから来たから」
「ま、いいか…賑やかなところが苦手というのはわからなくもない。」
あー、確かに。イツキはどっちかというと一人が好きそう。
「集団戦は得意だけど、集団でいるのは苦手なタイプ?」
「…っ…驚いた。僕は今、それを言おうとしていたんだよ。」
イツキが好きな人間として、私は気づけばイツキを見てきた。だから知ってる。
女の子に囲まれるのも、本当は好きじゃないんだなあって。
「そうだ、これを言っていなかったね。クエストクリア、おめでとう。あそこが分岐点だったとはね…。考えてみればよくあるパターンだけど、それでも僕はOS再インストールを選ぶだろうな…。そしてトゥルーエンドには至らない。僕は英雄になる素質はないのか…。」
そう言うイツキの顔は、どこか寂しそうだ。
「勘違いしないでくれ。悪くない気分なんだ。同時に、すごく不愉快でもある。ああ、きみのせいじゃない。出会ったときから意見が合わない誰かさんのせいなんだけどね。彼女に指摘されたことで不愉快になったってことは、やっぱり図星なんだ…。」
何を言われたんだ?
っていうか、その誰かさんって明らかにツェリスカだよね。顔に書いてあるよ。
それにしても、図星だったっていうそのツェリスカの指摘、すごく気になる。
「それでつい、いろいろ考えてしまったんだ。この世界の意味、そしてこの世界の父である茅場晶彦と、彼が作った《ソードアート・オンライン》について。」
イツキは振り返って、展望台から一望できるグロッケンを眺める。
総督府広場よりもより広く見渡せる場所だ。
「死と隣合わせの状態にしてまでなぜ、作ったのか。僕はあのゲームにいなかったけれど、《GGO》という仮想世界に初めて来たとき、感動を覚えた。不安…期待?言い表せない興奮が沸き起こって…退屈なんて、どこかに吹き飛んでしまった。」
だけど、とイツキは表情を暗くする。
「絶対に死なないこの世界でクエストをこなすことは、テレビゲームと何ら変わらない。それを知ったとき、僕はまた、退屈を感じ始めていた。」
そして、私を見る。
「そんなときに、きみと出会ったんだ。きみといると退屈が嘘のようになくなった。世界が輝いて見えた。」
今までで一番優しくどこか甘いその笑顔は、私をドキドキさせるには十分だった。
「長話は僕の悪いクセだね…ごめん。言いたかったのは、きみは僕にとって特別だってことでさ。そんなきみは今日、英雄になった。僕だけではなく、世界にとって、きみは特別になったんだ。」
どういうこと、という言葉は喉につっかえて出なかった。
意味はわかった。流石にわかった。自意識過剰なのかもしれないけれど。
特別って、好きってことでいいの?今のきみが不機嫌なのは、嫉妬って受け取っていいの?
ねえ、好きだよ、イツキ。
「―――なーんてね、じょうだ―――」
イツキが笑っていない瞳のままで誤魔化そうとしたとき、イツキの左目からすっと、美しい涙がこぼれた。
「っ、これは…!ああ…VRの中では感情を隠せない…んだっけ。参ったなあ。」
イツキはそっと天を仰いだ。
曇で綺麗とは言えない空。いつも見てきた空。いつも一緒に見上げた空。
「本当のことを言うと、僕は本当の信頼関係が欲しかったんだ。たった一人だけでいい。ともに歩める。偽らなくていいような信頼関係を持った人が。きみは、僕の誘導に引っかからない。僕の考えに汚染されない。僕の醜さを知っていても、仲間だと言ってくれる。」
そりゃそうだよ。醜さも、性格も全部好きだから。
ううん、それだけはイツキに限らず、みんな。
「僕は、きみとなら…っ。………リノセ。僕は、きみの特別になれるだろうか…?」
言わないと。もうとっくの昔に好きだよって言わないと。ずっと前から特別なんだよって。
でも、拒絶されたら?特別な仲間って意味だったら?
イタいやつだって思われたら、私は立ち直れるかどうかわからない。
「…みんなイツキが大好きだよ。」
ああ、言えなかった。言わなきゃいけなかったのに。
わかってた。わかってたんだ。素直にならなきゃいけないって。
でも、言えなかった。
「……きみは、キリトくんやクレハくんみたいに、僕はきみにとって大切な仲間だと、みんながそう思ってくれていると、そう言ってくれているんだね。………そうかあ…。」
「…………ッ」
違う。違うよ。
どうしようもなく好きだよ。恋だよ。仲間としてでも、友達としてでもない。
ごめん、違うんだ。
「きみは、明るくて光に満ちた世界を見てきたんだろうね。でも、僕の見る世界は違うんだ。」
声音をすっかり低いものへと変えたイツキは、コンソールを操作した。
何をしたかまではわからない。
「僕だ。―――開始してくれ。」
その瞬間、この世界のプレイヤーが次々にログアウトした。
「⁉」
「これが…現実リアルさ。世界はもっとずっと冷たい。願いは届かず、想いは裏切られる。色さえない虚ろな世界で、僕は生きている。」
私の体も徐々に消え始める。
強制ログアウトだ。
―――違う。ううん、違わない。
私は素直になるべきだったのに、イツキの想いに裏切ってしまった。願いを突っぱねてしまった。
待って。お願い。止まって。
「ただのゲーム仲間でいられたらよかったんだけどね…。もう耐えられないんだ。」
そして、視界が暗転する。
「―――きみを手に入れるためなら…僕は魔王にでもなってみせる。」
その声を合図に、ぷつりと通信が切れた。
- Re: フェイタル・バレット 〜運命を貫く弾丸〜 ( No.46 )
- 日時: 2023/08/04 07:53
- 名前: イナ (ID: 8GPKKkoN)
「どうしたのよ、凛世。なんか辛気臭い顔してるじゃない」
顔を見るなり失礼な発言をしてきた親友を力なく睨み返す。
寒くなってきた11月。
あの日から一週間ほど経ったが、まだ《GGO》のサーバーダウンは直っていない。
金曜日の今日は本来なら雪嗣さんとどこかへ出かける予定だったか、あんな出来事の後だからか、どちらからともなくキャンセルになった。
最近は、隙あらば雪嗣さんのことを考えて何やっているんだろうとため息を吐く日々が続いている。
そのくせいつの間にか勉強やら家事やらはこなしていて、いっそ何にもできなきゃいいのに、と筋違いなことを考えたりもする。
香住は、私の前である自分の席に座って私をじっと見つめてきた。
「さてはあんた、好きな人とすれ違ったでしょ」
「ぶっ」
口に含んでいたお茶を吹き出しそうになったのはもはやお約束だろう。
「その様子じゃ当たりみたいね。あたしの目は誤魔化せないわよ。さあ、この香住超人天才慈愛大先生に言ってみなさい!なにかいいことがあるかもしれないわよ?」
長いよ。
なに、香住超人天才慈愛大先生って。美化にもほどがあるよ。
でも…そっか。香住は私を元気づけてくれてるんだ。
おかげでちょっと元気出たかも。
「…よくわかったね」
「……あんたは、聖夜に恋したばっかのあたしに似てるわ。初々しくて、でも進むのが怖くて聖夜を傷つけてしまったあたしに。」
「香住…」
「あんたがどうなのかは知らないけど。でもあたしも、何日も悩んで、なにも頭に入ってこなくて…それほど、あたしにとって聖夜って、実は大事だったのよ。肌で感じたわ。」
今まで耳にタコができるほど聞いた惚気。
ううん、違う。一般的に見たらそうなんだけど、香住が今言ってるのはそうじゃなくて。
「あんたにとってその人も、そういう存在なんじゃないの?」
恋愛の大先生としてのアドバイス。
「…大切だよ。大好き。確かに怖かった。両想いかわからない状況で告白を口にすれば、今の関係が壊れるんじゃないかって。それで怖気づいて…結局言えなくて、傷つけちゃった。」
「やっぱり?あたし天才。…あたしも、そうだったわ。」
ふふっと優しく微笑んだ香住は目を閉じて、在りし日に思いを馳せる。
「でも、今思えばそれ、聖夜を信じてなかったなって思うの。聖夜はあたしを好きじゃなくてもきっと、告白されたくらいであたしから離れていかなかった。断るにしても、ちゃんと受け入れてくれる。あたしはそんな聖夜を好きになったはずなのに、好きな人の性格が信じられなかったのよ。」
「あ……」
「凛世、逃げないで。あんたなら大丈夫。あとはあんた次第よ。あんたがそれで悩んでるなら、まだチャンスはある。さっきの大切だ、大好きだっていうのをそのままぶつければいいだけよ。」
そうだった。
イツキは、私が辛いときも、泣いちゃうときも、弱気なときも、いつも隣にいてくれた。
そうだった。
イツキは、私があの場で勘違い発言をしても、優しく笑って受け入れてくれるような人だったじゃない。
それだから、私は好きなんだ。
「…ありがとう、香住。なんか掴めた気がする」
「どういたしまして。崇め奉りなさいよ。」
「崇めはしないけど…うん、感謝はしてるよ。……香住超人天才慈愛大先生。」
「長いわね」
「自分で言ったんでしょ?」
ふっと笑って、お茶のパックを飲み干す。
よし、やる気出てきた。
サーバーダウンが直ったら、機会を見繕って言おう。
イツキが好きだよって。雪嗣さんが特別なんだよって。
「あ、あと。受験終わったら、あたし《GGO》本格的にやることにしたから。」
「今までやってなかったの?」
「ええ。何回か借りて入ってただけで。入ったら、いろいろ教えなさいよ?」
「うん。そのとき、隣に私の好きな人が立ってるのを願ってて。」
「ええ。ファイトよ、凛世。」
スペイン語ができるだけじゃなかったんだね、香住。恋愛カウンセリングできるなんて。
本当にありがとう。
「さて!放課後予定ある?凛世。」
「ない。」
「じゃあ、また英語の課題教えてちょうだい?で、その後ショッピングにでも行きましょう?」
「うん!」
私は香住に満面の笑みを返した。
「この前行った大学受験に合格する可能性を判定するテストの結果が業者から返ってきたのでお返しします。よく目を通してこれからの進路について考えてください。」
先生がそういった後、テスト結果を配布していく。
私の進路は家から近く偏差値も高くて将来に有利である聖光大学の薬学部。
香住はスペインやイタリアなど、多数の国々との交流が重要視されている外海学園の大学部。
漣くんは指揮者になる夢を叶えるために中央音楽学院大学。
啓治は医者になるために名祭医学大学。
啓治のテストがどうだったかは学校が違うからわからないけれど、これで大体の進路が決まる。
「神名さんの成績は素晴らしいです。合格は間違いないでしょう。」
「ありがとうございます。」
受け取った成績表を見やる。
うーん、国語が98点だ。残念。それ以外100点なのに。
そう。合計点は498点。テストを受けた、全国の受験生1200人の中でも上位。
でも、上には上がいるからもっと上を目指したいものだ。
「香住はどうだった?」
「合格可能性は十分よ。でも、国語が悲惨」
まあ、スペイン語ばっかっていうのもあるけれど、国語は対策が難しいからなあ。
「今度漣くんに教えてもらいなよ。」
「そうするわ。」
その漣くんも合格可能性と点数、どちらもよかったらしい。流石学級会長。
「さーて!切り替え切り替え!こんなの封印よ」
「かーすーみー?せっかく漣くんとふたりきりになるチャンスを作り出せる紙なんだから、破って捨てないでよ?」
「はっ!そうだった!」
うん。漣くん、あとは頼んだ。
「見て見て香住!このぬいぐるみすごくかわいい!サメだよサメ!ふわふわ〜!」
「サメがふわふわ…⁉」
放課後、ショッピングモールにて。
私は香住に連れてきてもらったぬいぐるみ専門店で驚愕していた。
なんだこの楽園は。全部かわいすぎる。
肌触りもいいし、見た目かわいいし…これを抱いて寝るのはリラックスできそうだ。
『ふう…相変わらず寂しいこと。テディベアの一匹や二匹でも置きなさいよ。』
あれは案外合っていたのかも…?
「うりゃっ!」
「ひゃっ⁉びっくりした!しばわんこだ〜!」
後ろからぬいぐるみの前足で首を突っつかれて振り返ると、なんともかわいい柴犬のぬいぐるみがドンッと目に入った。
「かわいい〜!」
「え、何この天使。女の私でもドキッとするわよこれ。こんな天使とすれ違ってる男って一体…」
香住がなんかブツブツ呟いているが、背を向けているため聞こえない。
「あっ、これねこちゃんだ」
そう言ってねこちゃんのぬいぐるみを手に取ったとき。
「「凛世」」
私を呼ぶ二人の男の声が後ろから聞こえてきた。
「え…?」
サメと柴犬と猫ちゃんを抱えたまま振り返ると、二人は少しうろたえる。
「かわっ……」
「皮?」
皮製のぬいぐるみは売られてないと思うけど。
「っていうか……二人共、知り合いだったの?」
私を同時に呼んだ、雪嗣さんと啓治。
一緒に来たのかな?
「いいや。偶然同じタイミングで名前を呼んだだけさ。まさか、同じ人を呼ぼうとしているとはね。」
雪嗣さんはそう言って笑った。
ああ、かっこいい。この前のこと、雪嗣さんはどう思ってるのかな。
変わらず、雪嗣さんは私にとってただの仲間だって誤解してるのかな。いや、それは私のせいなんだけど。
「凛世、紹介してくれ。この男は誰だ?」
啓治の笑顔が笑顔じゃない。なに、怖いよ?そして言葉に棘があるよ?
「えーっと、最近いつも遊んだりご飯に行ったりしてる、雪嗣さんだよ。」
「どうも。狭井 雪嗣だ。よろしく。」
「で、こっちが小・中学校の親友の啓治。」
「ども。坂本 啓治だ。」
二人共笑顔だけど目が笑ってない…。だから怖いよ?なに?どうしたの?
「凛世…あんた、気付いてないの…?」
「え?なにに?」
「あ、いや……あー…あたし、あんたが好きな人わかったわ。」
「えっ⁉」
なんでバレたし!
《GGO》での私たちどころか、現実リアルで一緒にいるところも今日初めて見たクセに。
「あたしを誰だと思ってんの?香住超人天才慈愛大先生よ?」
「あ、それまだ引きずってたの?」
「もちろんよ。あんた、好きな人の前では全てが明るいわよ。雰囲気とか、声音とか、顔とか。」
「えー…そんなにあからさまとはなあ…」
ちょっとやばいなあ。これ、雪嗣さんが学校に来てたら、間違いなく学友全員にバレただろうな。
危ない危ない。
あ!っていうか、他の2人に今の会話…
「ところで、小さい頃の凛世はどんな感じだったのかい?」
「ああ、それは…」
聞いてなさそうだな。
「ストップ!それは恥ずかしいからダメ!」
「えー、いいじゃないか。今もものすごくかわいいんだから、昔のきみもかわいいに決まってるって。」
「かっ……そ、そんなこと言ってもだめだから!」
「ちぇっ。それより、その手に抱えるぬいぐるみは何なんだい?」
「あ、これ?かわいいなあと思って。うちにぬいぐるみないからどれか買おうと思ってるんだけど。」
今のところはサメかなあ。でもしばわんこも捨てがたいよなー…
「ねえ香住。香住はサメ派?しばわんこ派?それとも猫ちゃん派?」
「んー、あたしは柴犬かしら」
香住に聞くと、雪嗣さんと啓治はグルンと後ろを向いた。
「は?かわいすぎだろ。なんだよ、しばわんこって。はー、マジ天使。こいつになんか渡したくないんですけど」
「凛世はかわいすぎる。なんでそんなに他の男にも可愛い顔見せちゃうんだか。それは僕だけでいいのに。というか僕だけにしてくれよ…ねこちゃんとか普段とのギャップがかわいい…」
さっきの香住みたいになんかブツブツ呟いてるな。3人揃ってなにしてるんだろ?
念仏かな?でも、雪嗣さんは神社で働いてるって言ってたしなあ?
まあ、いいか。
「―――結局サメにしたのね。」
「うん。」
残ったやつは俺が買うとか僕が買うとか言っていた人がいたが、とにかく私はサメにした。
そしてみんなで帰ろうとしているところだ。
「あ、ちょっとあたしトイレ行ってくるわ。」
「……俺も。」
啓治は、雪嗣さんを一瞥した後に香住の後を追うようにしてトイレに向かっていった。
「…凛世。」
「ん?」
雪嗣さんは、完全にふたりきりになったタイミングで話しかけてくる。
「あの男が好きかい?」
「え?どゆこと?」
「男として、あの啓治っていうやつが好きかい?」
「ううん。あれは本当に親友だよ。それ以上もそれ以下もない。」
「そうか…。」
雪嗣さんは気まずそうに視線を遠くに移した。
「それ、貸して。」
「これ?はい。」
そして、私からサメのぬいぐるみが入った袋を受け取ると、にっこり微笑んだ。
「目閉じてて。」
なんだろう?袋の中にプレゼントでも入れてくれるのかな。
ガサッと袋の音がした、そのとき。
「ッ⁉」
ふわっと、温かい何かが唇に触れた。
するりと頬に滑り込んできた雪嗣さんの指はそのまま私の頭を固定させる。
10秒ほどの、長くて短いキス。
目を開けると、キスはサメで隠されていた。
「ゆ、ゆゆ」
「誰かに攫われるくらいなら、僕が先に……」
「ゆゆゆ」
「じゃあ、僕は先に失礼するよ。はい、これ」
「ああ、ありがと…」
私は、去っていく雪嗣さんをただ呆然と見ることしかできなかった。
―――行かないで。
そう言いたいのに、声が出ない。
「凛世?」
はっと我に返る。
雪嗣さんに伸ばしかけて行き場を失った右手を引っ込めた。
「どうしたの?なにかあった?」
「な、なんでもない。」
チラッと雪嗣さんが出ていった出口を見る。
雪嗣さんに、キスされた。
キスしてきた。受け入れちゃった。
やっぱり、サーバーダウン前のアレは私も好きだと言うべきだったのだ。
私だって馬鹿じゃない。雪嗣さんは誰でも構わずキスするような尻軽な男じゃない。
私は、応えられなかったんだ。
全ては、私のせい。
だから私が、責任取らないと。
「凛世?ほんとになにもない?顔真っ赤よ?」
「…なんもない」
密かに決意した私とそれに気付きそうな香住となぜか不機嫌な啓治は、その後、なにもなかったように帰った。
「リンク・スタート」
そして土曜日、ついにサーバーダウンが復帰した。
「マスター!会いたかったです!」
「よかった、直って。」
「この前はびっくりした~。急に切断されるんだもの。」
「はい。目の前が急に真っ暗になって驚きました…。」
ホームにみんなが集まってきた。
そうだ、フリューゲル攻略完了の打ち上げの途中だったっけ。
「結局、この前のアレは何だったの?急なサーバーダウンって話だったけど」
「今頃担当は相当な苦情を相手にしているでしょうね〜。」
「あれか?ユーザーが多すぎたとか?」
「それはありえないわ〜。そうならないように元からシステムが整えられているのが《ザ・シード》であり、《GGO》だから〜。」
「だな。大方ヒューマンエラーだろ。」
「だからこそ、担当は大忙しね〜。」
ヒューマンエラー、ね。
つい、近くのイツキをチラ見してしまった。
「どうしたんだい?僕の顔に、なにかついているかい?そんなに見つめられると照れるな〜。なーんてね。」
あくまでバラすつもりはない、か。当たり前だよね。
「マスター、今日は何をしますか?」
「何する?ボクも連れて行ってよ!」
「私も同行したいわ〜。」
「僕も一緒に行こう。」
「みなさん参加してくれるみたいですね。」
何しよう?フリューゲル攻略が終わったから後回しにしてきた隠しクエストとか?
「そうだ!打ち上げの続きをしない?」
「いいわね〜。結局途中だったし。」
「まあ一週間空いてしまったけどね。」
「食事とかも持っていって、ピクニックしましょうよ!」
「お、いい案!」
「いいかな、リーダー?」
「あ、うん。いいと思うよ!」
なんで私に許可を…?
と思ったが、それを口にすることは叶わなかった。
「ねえリノセ。ずっと前から思っていたことなんだけど。」
「うん?」
「あたしが前から始めてあんたを誘った《GGO》で、あんたはどんどん成長した。あたしなんかすぐに追い越して…あんたはすぐにトッププレイヤーになった。そうよね?」
「……クレハ」
「あたしは…あたしは…ここまで頑張ってきたのに。いつも惨めで仕方がないの。カリスマ性とかがあんたにあるのは知ってる。ゲームセンスがいいのもわかってる。だけど…どうしても、割り切ることができないのよ!あんたの影にいるのは…あんたの近くで霞んでいるのは、どうしても嫌なの!」
はっとする。
前、このことで話したことがあった。
クレハ…紅葉のお姉さんのことだ。
私は、無意識に紅葉を傷つけてしまったのだろうか。
「リノセ、あたしと決闘しなさい!」
クレハはつらそうだった。そりゃそうだ。今までずっと一人で抱え込んできたんだろうから。
それに気付けなかった私は馬鹿だ。そして、それならクレハの願いには、応えなきゃいけない。
クレハはどこかでお姉さんを超えたかったんだろう。完璧な誰かといると辛かったのかもしれない。
でも。
クレハの求める強さは、ちょっと違う。
私だって最初から強かったんじゃないんだよ。言えないけど。
《SAO》で生きていたからこそ、言えること―――…
静かに準備ブースから出る。
「…まさか、このスキルをもらって初めての戦いがクレハとの決闘とはね。」
まだ誰にも効果を明かしていない、報酬スキル《ハイパーセンス》。
これが最初とは思わなかった。
「…あんたの影でいることに意味はない。あたしは強くなるの。《GGO》に名を刻むのは、このあたしなんだから!」
クレハはそう言って仕掛けてきた。
クレハはグレネードランチャーとサブマシンガン。対して私はスナイパーライフルとガン&ソード。
私のハンドガンはデュアルアームズしているとはいえ、近接戦は不利だ。
まずクレハはサブマシンガンでHPを削ろうとしてくる。
私は走って避ける。
偏差撃ちの技術を駆使しながら頭を撃ち抜くが、クレハは用意していた回復弾ですぐ回復。
―――3分後。私たちのHPは両者共々1割を切っていた。
私たちが決着はもうすぐと自覚したとき、お互いの切り札を切る。
「はあっ!」
最初に出したのはクレハ。
なんと、本来は適用できないはずのガンスキルをグレネードランチャーに適用し、同時に何発ものグレネード弾を撃ってきたのだ。
グレネード弾は大きく当たり判定も広いことから何弾も同時に撃てば確実に包囲できる。
《UFG》で離脱できる壁もない。前後左右はグレネード弾で囲まれている。
誰もがやられるかと思った、そのとき。
「見えた」
そんな一言で、瞬時に私はその炎の檻から抜け出した。
「なっ⁉」
そのまま狼狽えたクレハの頭を撃ち抜く。
―――GAME SETという文字が空間に浮かんだ。
ごめんねクレハ。
これが私のスキル、《ハイパーセンス》。一度だけ、あらゆる攻撃を回避する―――
そうして、私とクレハの決闘は終わりを告げた。
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