神の力を受け継ぎし者 作者/粟生空

第5章 記憶 不幸のメモリーチップ



黒い煙に包まれた後、俺は扉の中に引きずり込まれた

しーんとしていて、音など一切聞こえてこない

眼を、ゆっくりと開いていく

あの【時の狭間 白の分岐点】とか言う所は

痛い位、綺麗な真白の空間だったが

此処はさっきまでいた、あの場所とは真逆だった

真黒だ・・・何1つとして見えない空間・・・

(確かに此処めっさ危険そうだよな・・・・)

『――前を向いて 前だけを見て 前に進んで――』
『あの娘(子)がつってた『前』ってこのことか?』

(・・・前・・・か・・・)

1歩ずつ、ゆっくり脚を『前』に動かしていく

脚が何となくだが重く感じる、気のせいだろうか?

丁度そう思ったときだった

『ズキン・・・・キィイィン・・・・』

『っう・・・ってぇ・・・んだよ・・・!』

頭に今まで感じたことのない、激痛がはしった


『――あんた何か 産むんじゃなかったわ!――』


(・・・!・・・おか・・・あさん・・・?)

『どうしてあんたは、言うことが聞けないの!』

『ゃ・・・ゃめ・・・ろ・・・』

頭を押さえ抱え込んで、その場にしゃがみこむ

『ちょっとはお兄ちゃんを見習いなさいっ!』

『・・・ぉ・・・俺は・・・嫌だ・・・っ』

『お兄ちゃんの代わりにあんたが死んでれば・・・』

【やめろぉおぉぉっ思い出したくないんだ!!俺は!!】

頭を押さえ込んでいた手を振り払い、眼を瞑り

そのまま『前』へと、全速力で駆け出す

『俺は死なねぇっ!!此処にいるんだよぉおぉぉっ!!』

『前』へ駆け出していった俺の視界には

もう、あの『黒の空間』は無くなっていた・・・

――『闇』から解放された『碧』は何処へ行く――