■ strawberry ■ 作者/碧琶 ◆xfa1dsRBJkU

◆strawberry 1...傷



キュッ 
体育館に靴の軋む音が響く。

頬に汗が流れる。
俺はあの時から、がむしゃらだった。
〝俺達〟の時が止まったあの時から。
がむしゃらに走って、部活に打ち込んだ。

バスケしか夢中になれなかった。
――いや、なろうとしたんだ。

〝君〟を忘れたくて。
でも結局忘れられなかった。


ふと時計を見る。
――6時50分。
そろそろ〝君〟が来る時間だ。

キィ...

ほら――・・・

体育館のドアから、小柄で可愛らしい仔が顔を覗かせている。
彼女は〝菫野 苺〟俺の元カノだ。
何で別れたんだろ――・・・
今更こんな事思ったってしょうがないだけ・・・か。


俺の心にはぽっかり穴があいているまま。


苺は、〝柊 優飛〟の姿を見つけると一気に顔がパァッと明るくなった。
ズキン、と心が痛む。




   苺が見てるのは――もう俺じゃない。

  悔しいけど、俺じゃないんだ――・・・