■ strawberry ■ 作者/碧琶 ◆xfa1dsRBJk

◆strawberry6...過去1*異変
「慧君――・・・っ」
あの夏の日。
笑顔で手を振る苺に、ほんの少しだけの笑顔で手を振ったっけ。
苺が眩しくて、眩しくて――・・・
あの苺の笑顔は俺意外見せたくない。
こんなの、凄く自分勝手で、独占欲が強いだけだけど――・・・
苺に知られたら凄く恥ずかしい。
「今日は、一緒に帰りたいっ!!」
確か別れる数日前だっけ。
苺は我が儘を言ったんだ。
その日まで、一緒に帰ったことなんてなかった。
凄く一生懸命だから、仕方なく「わかった」って返事をして待っててもらった。
何故か苺は俺の横から離れなくて、時々辺りを見回すような仕草をしていた。
「苺、如何かした?」
いつもの苺だったらすぐに返事をするのに、その日だけは少し黙り込んでから返事をした。
「――ううん。
ただ、周りに人がいると慧君照れちゃうでしょ。だから。」
苺はそう、はにかんで答えた。
違和感を感じたけど、「ふーん・・・・・・」とだけ言ってまた前を向く。
やっぱ、おかしい――・・・
明日、苺と仲がいい由井に聞いてみるか。
「じゃあねっ!
今日は一緒に帰ってくれてありがとう――
ばいばいっ」
「・・・うん。
また明日」
〝また明日〟
明日もまた俺に笑いかけてほしい――・・・
そんな、俺のささやかな願い。

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