戦いは終わらない-D.Gray-man― 作者/黒露 ◆KandaS7iF.

それは、私と貴方の一つの絆
◆7◆[シンクロ率・そして私と貴方の絆]
コツコツ・・・
トットッ・・・
リナリーとソロウの、二つの足音が廊下に木霊する。
ソロウは何もかもが初めての感覚らしく、何度も周りを見回している。
その様子をリナリーはクスリと笑った。
「どうかしましたか?リナリー。」
「何でもないわ。」
少し目を細めて笑うリナリーは、とても優しげに見えた。
向かうのはエレベーター。
先には兄のコムイが居る。
―――果たして、この子はこの世に何を齎すのかしら。
ふとそんな事を考えつつ、リナリーはコムイに手を振った。
+
ゴォンゴォン―・・・・・
此処はもうエレベーターの中。
先ほどからリナリーとコムイはしきりに何か話している。
(・・・・・・何かあったのだろうか。)
ソロウはそう思いながら黙って右目に触る。
駄目だ、これ以上"アレ〟に近づくのは―――・・
ついさっきからズキズキと痛み始めている。
″アレ〟を見られたら―・・
◆
暗闇の中に、リナリー・コムイの顔が見える。
きっと、薄明かりの所為だろうか。
「コムイさん、此処で何をやるんですか?」
コムイさんがニッコリと微笑む。
悪寒、を感じた。
「ヘブラスカ・・・君のお気に召す子かい?」
「ヘブラスカ・・?コムイさんそれは誰です・・」
いきなり、光に包まれて、嫌な感じがした。
体を探られる感じ。
それと共に
右目が痛んだ
「イノ・・センス・・・」
「!!」
何だコレ・・・訳が分からない―――
「コムイさんッ!!コレは何です―・・」
其処まで言うと一気に気持ち悪くなる。
目が痛みを増す。
ドクン―・・ドクン―・・
シュルッ―・・
包帯が解けてくる。
「あ―・・う―・・ッ・・・あ・・」
痛みが体の中を這いずり回る。
包帯が全て滑り落ちた。
意識が途切れる。
いきなり右目がグッと開く。
その目には光が無く、血の様な赤い瞳が映っていた。
ズルッ――・・・
ソロウの右目から骸骨の手が伸びる。
「あああああああッ!!」
「兄さん!?アレは何!?」
リナリーがコムイに叫ぶ。
一方のコムイはというと、楽しそうに笑っている。
「何でもないよ、リナリー。唯、シンクロ率を測っているだけだよ?」
「でも・・ッ」
ヘブラスカがゆっくりとソロウを抱きしめる。
「大丈夫・・私は敵じゃない・・」
キィィィィィン―・・・・
ゆっくりとソロウの体が光を帯びる。
「3・・12・・25・・39・・42・・67・・・」
ゆっくりと数字が、ソロウの頭に木霊する。
自分は今、生きているのだろうか。
激しい痛みと気持ち悪さの所為でそんな事も考える。
「う・・・ッ・・・」
汗が流れた。
何故かとても懐かしい気持ちがし、ソロウの瞳には涙が溜まっていた。
「76―・・・・84―・・・・」
ふと、ヘブラスカが数字を止めた。
「84―・・それが今のお前とイノセンスのシンクロ率だ―・・・ソロウ・クラウン―・・」
「はい―・・・」
「きっとお前は、対となる悪魔と戦う事になるだろう―・・・きっとお前には、夥しい恐怖、絶望が待ち受けている―・・・だが―・・」
ヘブラスカの口元が笑った。
「きっと―・・きっとお前は黒く煌く存在となる―・・・・」
黒く、煌く。
その時の私には
意味が分からなかったが
後々、やっと分かる様になる
恐怖、と絶望と共に。
* * *
「此処が貴方の部屋よ、ソロウ。」

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