イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



規則正しい靴の音が響いていた。

やがて姿を現した大柄で黒髪の男。ティアラが反応した。

テ「レストランで見た男の人…。」

魁「―父さん。」

全(!!)

蜜柑が一歩下がる。男が前に出て瑠璃花と魁渡を見下ろして言う。

男「久しぶり、瑠璃花、魁渡…。」



お父さんは優しかった。でも、今、目の前に居る人は嫌い。

サングラスをかけて笑みを浮かべる。この人は好きになれない。

この人がする事は、私達にとって絶対にプラスにはならないから―。

第57話 再会、それは想いを変えた



彼女たちの父親、流星大翔。

選手時代は日本代表になり、MFであったが攻撃的なプレイスタイルで得点を重ねた他、アシストが得点に繋がった事もあった。

海外でも活躍したが足を故障。それを機に結婚し、以来コーチなどを務めた。

ここ数年は表の世界から退いていて、更に死亡したと最近では言われていた。

大「あんな手紙を送ってから後悔した。お前達が来れるのか不安だったからな。」

瑠「安心して下さい、頭はお母さん譲りですから。」

テ(瑠璃花、鋭い言葉を…!!)

鬼「あんな手紙?」

瑠璃花が服のポケットから手紙を取り出した。そしてそれを読み上げる。


―Dear angel

神が此の世を統べる。
その遺志を継ぐ者共は天に近し。

魔王が此の世を手中に収める。
その遺志を継ぐ者共は地に眠りし。

その力を得れば死を迎えし者、再び生を得る。

我は愛しき者に生を与え、その者共を駒とする。

獲物を与え動かし、命の力を集結させよう。
お前も見たいか?
我が愛しき者は、お前にも笑みを投げかけるであろう。

その島の天上界で、時は満ちる。
少年達より、ささやかな願いを聞き届けるかのように―。
お前を待ってやろう。


ラ「随分と変わった内容ね。」

魁「瑠璃姉はこれを解読して、マグニード山まで来た。そこでジャパンエリアで生贄と花嫁が連れ去られるって聞いて戻って来たんだ。」

円堂達が納得した様な、落ち着かない様な顔で瑠璃花を見る。と、瑠璃花が口を開いた。

瑠「何故マグニード山に来れたかというとね。」

彼女は手紙の解説を始める。

1・神が此の世を統べる。
その遺志を継ぐ者共は天に近し。=天空の使徒を指す。

2・魔王が此の世を手中に収める。
その遺志を継ぐ者共は地に眠りし。=魔界軍団Z

3・その力を得れば死を迎えし者、再び生を得る。
  我は愛しき者に生を与え、その者共を駒とする。=彼等を利用して力を集める

4・その島の天上界で、時は満ちる。
少年達より、ささやかな願いを聞き届けるかのように―。

少年達より、という部分に注目すると時期や瑠璃花達の状況から考えて「その島」がライオコット島になる。そこに集まる「少年達」は世界一になりたいと言う大きい夢を持っている。

その夢より「ささやか」、つまり誰もが一度は抱くであろう願い。

そして「我が愛しき者」は「お前にも笑みを投げかける」。つまり瑠璃花達と親しい者。

大翔が愛し瑠璃花達と親しい。そして生を失っている。

瑠「私は、1人しか思い浮かびません。」

マークは流星大翔の死の疑惑を伝えた新聞を思い出していた。

―流星大翔、妻と共に変死?!

瑠「―貴方は、お母さんを…流星桜花を生き返らせようとしている…。」

―その島の天上界で、時は満ちる。

瑠「魔王を復活させる為に集めた、強き魂を使って…。」



大「でも、足りないんだ。」


ウィィィィン、と何処かの扉が開いた。


開いた先に居たのは、ダークエンジェルの選手達。苦しそうにもがく姿が遠目でも分かる。

吊るされていた。手枷をつけられ、その場から動けなくなっている。

大「魔王など小さすぎる力のせいで全く足りない…だからもっと力を与えてやった。強き魂は、あればある程桜花を完全な存在にする!」

セイン、更にはデスタさえも苦しみに顔をゆがめる。

ラ「力が強すぎるのね。彼らの体が拒絶しているわ。」

テ「ええっ?!」

彼の後ろで、じっと様子を見ている蜜柑。

分からない、どうしたら暴走した父親を止められるのかが。何も思いつかない。

魁「また母さんに会いたくなる位なら…」

全「!」

魁「何で自殺なんかしてるんだよ!!!!!!」

涙目になった魁渡が叫ぶ。瑠璃花が目を見開いて魁渡を見ていた。

魁「何で母さんを止めなかったんだ!あの時、ただ流れに身を任せて一緒に死のうとして死ねなくて、それで何で今更子供傷付けて生き還らせようとしてんだよ!!!!!」

大「ーっ!!」

怒っていた。魁渡は泣きながら怒っていた。

魁渡だって寂しかった。でも何をしたらいいのか分からず、吉良財閥へ向かった。

ただ吉良星次郎はシロだった。この時から、もう彼の中にある怒りは消えていたのかもしれない。

そして研崎が仕組んでいたと知った時には戸惑いしかなかった。もう怒りの炎は消えていたから。

だから今、彼は父親と会えて嬉しいのかも知れない。でも母親を生き返らせようとしている、しかも子供を傷付けて。

何で今更。

今更、そんな事をしたって…。

愛「ダメですよ、大翔さん。」

大「??!」

蜜柑がケータイを取り出す。発信履歴に警察の番号。

愛「チェックメイトです。それに桜花さんの御遺体は、既に回収済みですから魂を集めたって、意味がありません。」

瑠(え?)

愛「魂を集めて桜花さんの魂を呼び戻す。確かに強い魂が沢山あれば可能です。でも、行う本人が弱かったら意味が無いんですよ?」

パトカーのサイレンが響く。その場に居た全員が唖然としていた。

それを見た蜜柑は怒った声を装いながら言う。

愛「セイン君達を開放してあげてよ!もぅ!!!」

バタバタバタ、と警官が走って来る。

流星大翔、逮捕。