イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第56話 VSダークエンジェル
~瑠璃花side
そう、此処に入った時から、周りと自分は隔離されているも同然だった。全てが蚊帳の外。
でも私は力になりたくて。外に何とか出て、試合に参加したくて。
もがいてもがいて、手にした勝利も、全ての序章に過ぎなかった。
今、私達の目の前に居るのは、ダークエンジェル。
また、試合をしないといけない…
お父さんは何処にいるのですか?私は何をするべきなのですか?この纏わり付く様な空気は、どうしたら良いのですか?
胸の中で唱えても答えは出ない。
見ているしかない。私は―
見破るしかない。お父さんの願いを叶えるために、必要な物を……。
円「…りか、瑠璃花っ!!」
瑠「へ?!」
目の前で手をぶんぶん振られて、私はようやく、自分が呼ばれていたのだと気付く。
円「試合、始まるぞ!」
瑠「…?」
状況が、全く理解できずにいる私にティアラが教えてくれた。
テ「瑠璃花、試合に出ないといけないんだよ!」
え、
瑠「ええっ??!」
交代不能の試合に、私が選ばれてしまったと?!メテオは選ばれなかったのに??!
瑠「…あ。」
全「?」
瑠「ラティア、何時の間に…」
メ「良いからはよ行け。」
メテオ君、何時の間に関西弁に…リカさんの影響ですか?
円「瑠璃花、大丈夫か?」
テ「う~ん、あんまり大丈夫じゃなさそう。」
ラ「……。」
試合が始まった。
何故か私はDFで…憂鬱。今は頭で考えるなんて、出来そうにないのに…。
ふと泣きたくなる。精神状態、ピンチだったり?
セ「確かに同じ匂いがする…。」
瑠「意味不明です…。」
そう呟いてボールを奪う。一瞬、周りの空気が変わった気が…何かあったのでしょうか?
周りの皆さんはドリブルできる状態だったので、パス。今はあまり動きたくないんです…。
大丈夫…ですよね?
音「あのスピードで突っ込んで行った相手からボールを奪った??!」
リ「瑠璃花とメテオってそういう奴やん、今更何驚いてんねん。」
ベンチは騒がしい。ラティアが見るからに不機嫌。抑えられる彼氏は試合中で危険な状態である。
テ「ラティア、今の状態どう思う?」
ラ「DFが瑠璃花のおかげで上手く行っても、攻撃が相手に効いて無いわ。そんな事私に聞かないでよ。」
テ「^^;ご、ごめん…」
ベンチが五月蝿いのも無理は無い。1チーム分の人数が周りに居るのだから。
瑠(頭痛い…だるい…風邪でも引いたかな?)
前半終了時点で0-0。瑠璃花は地べたに座り込んだ。
鬼「大丈夫か。」
瑠「…試合、出たくないです…。」
ぽろり、と零れた本音。鬼道が驚きつつも、タオルを渡す。
瑠「…ありがとうございます。」
タオルを受け取って膝の上に置く。顔を突っ込むように膝の上に伏せた。
瑠璃花は、怖かった。
此処に居て強い相手とサッカーをして、また暴走してしまったら、抑えられる気がしなかった。
体調不良の今、韓国戦の時も詳しくは覚えていないが、必死で抑えようとした事は、うっすらと覚えている。
瑠(…辛い。辛いよ…)
何がこんなに自分をダメにしているのか。
彼女に、知る由も無かった。
後半、相手がボールアタック作戦(つまりボールを当ててダメージを与える)を実行。
仲間が倒れるその間も、瑠璃花の頭痛は悪化して行くばかり。立っているのがやっとの状態にまでなっていた。
ギュエールという選手が、センターの瑠璃花に狙いを定めてボールを蹴った。
瞬間、彼女の限界が訪れる。痛みに耐えられず、瑠璃花はしゃがみこんだ。
ギ「!」
円「っ!瑠璃花?!」
ボールは彼女の頭上をかすめ、円堂がキャッチした。
テ「瑠璃花!」
メ「瑠璃姉??!」
瑠「……いける、いけるよ、私…。」
空気がピリ、と震えたのを周りの選手は察した。
瑠「ー!キャプテン、ボールを下さい!!」
彼女は立ちあがれた。自分を保つ、の意味を改めて理解した。
あの頭痛があって、自分の周りの蚊帳は無くなったように感じた。
彼女は試合にしか集中できない。だからこそ、ボールの周りを見る事が出来る。つまりフィールド全体を見れる。
円「!ああ、頼んだぞ!!」
ボールが瑠璃花に渡った。ドリブルを開始する。
FWの豪炎寺達が何とかして起き上がっているのを確認し、ドリブルを続ける。技をかわし、センターラインを越えた。
瑠「貴方達は天使を、悪魔を、魔王を語れない…!」
ピリッ、と震える空気。苦しそうな表情をしながらも瑠璃花はドリブルをやめようとしない。
フィディオにアイコンタクト。ボールをパスする。
フィ「いくぞ!!オーディンソード!!!」
シュートに合わせ、豪炎寺、虎丸、ヒロトが走りこむ。
豪・虎・ヒ「イグニッション!!」(※イグニッション=点火)
グランドファイアG2のシュートチェイン。
瑠?「…セインは、諦めない良い心を持ってるじゃない。」
ふふ、と瑠璃花らしくない笑顔を浮かべる。
瑠?「でも、勝たせたいし。」
ジ・エンドで止めきれなかったボールをセインがカット。
そのボールを受け取ったのは瑠璃花。
全「!!」
瑠?「Goodbye…魔王のヒトカケラ。」
バシュンと、ボールが潰れたのかと錯覚しそうな音が響き、ネットが揺れた。
1-0。
試合終了。
セイン達も元通りになり、瑠璃花も落ち着いた。
円堂が帰ろう、の「か」を言った時、魁渡が誰かを発見する。
さっきまで使っていた砂時計の辺り。
ふんわりしたドレスの少女。
全「!!!!!」
愛「う~ん、まだ帰らないでほしいなっ☆」
右手の人差し指を立てて、蜜柑は続ける。
愛「さ~て瑠璃花ちゃん、感動の再開が待ってるよ!!」

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