イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第65話 果たせなかった約束と恩返し



夏未がイナズマジャパンのマネージャーとして復活し、また円堂はロココの途轍もない力を感じた。

早朝、円堂が新しい必殺技を完成させる為に練習をしていた。

涼しい朝の海辺に、円堂の気合が熱として溶け込む。周囲は暑くなく、しかし何処か円堂の気迫があった。

魁「キャプテン!」

円「魁渡。」

魁渡がタイヤの近くに駆け寄り、海を眺めた。砂浜に、彼の足跡がいくつも付いた。

ラ「…来るんじゃなかったわ。」

フィ「そんなこと言わずに^^;」

円「!フィディオ、ラティア!!」

途端に魁渡の顔が曇り、引きつる。条件反射という奴だろう。

魁「何で…」

すると、フィディオが2人の顔を見て言った。

フィ「リトルギガントと、決勝の前に戦ってみたくないか?」



2人だけではなく、既にイタリア代表オルフェウスのメンバーは全員来ていた。

今回は恩返しとして(チームK戦の)ラティアが言いだした事らしい。

だからフィディオについて来たが、運悪く魁渡が居た為、現在不機嫌だ。

リトルギガントの戦い方をオルフェウスが再現する。試合は15分ハーフ。

ラ「瑠璃花は?」

外に出ると、イナズマジャパンベンチにラティアがやって来て、秋に尋ねた。

秋がおどおどして通り雨に当たった事から説明をする。

秋「今は決勝前なので、大事を取って休んでいます。」

ラ「そう、じゃあちゃんとビデオ撮って見せておきなさいよ。」

彼女はそう言うと、オルフェウスのベンチに戻った。

彼女がベンチに戻ったのを見てから、秋が宿舎を見つめる。瑠璃花の調子はあまり良くない。

決勝に、間に合うかどうか…。


前半、イナズマジャパンは鬼道、吹雪、虎丸というスタメンに入る様な選手を数名下げて臨んだ。魁渡もベンチ。

と、イナズマジャパンの選手が、一瞬目を疑うような相手のフォーメーションが展開されていた。

オルフェウス全員がFW。



早いパスとドリブルで、すぐにフィディオがゴール前。円堂は新しい必殺技を掴もうと挑むが、失点。

マジンらしき影は直ぐに消失する。何かが足りていない。

そして全く足止めにもならなかった選手達に、フィディオから厳しい言葉。

フィ「リトルギガントの攻撃は、もっと厳しいぞ!」


イナズマジャパンボールで再開。

すると今度は、全員DFという再び驚きのフォーメーション。

マネージャー達ベンチが驚いていると、ラティアが説明する。

ラ「敵が2倍いるように感じた…フィディオ達の証言をもとに、相手から再開の時は全員がDF、自分達から始める時は全員がFWにしたのよ。極端だけど人数を2倍にすることで再現しているわ。」

鬼「成程…。」

彼女は続ける。

ラ「それにリトルギガントは激しかった。だから彼等も激しくプレイするために全員が絶えず動いている。元々他のチームの戦法を再現するなんて、体力がいる事。まして自分達と体力がまるで違うチームのプレイ。……15分ハーフが、彼らイタリア代表の限度なのよ。」

佐久間がボールを奪われた。

さっきから、全くパスが通じていない。全員が常に動く事で、常にイナズマジャパン選手の動きを止めている。

円「こんなに手強いのか…リトルギガントは!」

円堂が悔しそうに言った。

イナズマジャパンのDFが全員ぬかれた。ボールは再びフィディオ。

マジンなのか、神なのかよく分からない者は、全身が現れたがまだ未完成。

ボールが、ネットに突き刺さった。



前半が終了し、ハーフタイム。

イナズマジャパンベンチでは、どう戦うべきなのかと作戦会議が行われていた。

圧倒的運動量を持つ相手。リトルギガントは完全無欠であると印象付けられていた。

まるで人数が2倍いるかのようなアタックとディフェンス。実際オルフェウスから8点を奪い、無失点だった。

すると、そんな考えの彼等に夏未が…

夏「完全なチームなんてないわ。必ず、すべてのチームには自分達には見えない穴がある。」

メ「その穴を見つけるのが難しいんだけど。」

メテオが直ぐに上げ足を取るが、円堂や鬼道は深く考えさせられた。

久「土方、吹雪、鬼道、虎丸、メテオ。後半はお前たちで行く。」

ハーフタイムも終わり。靴ひもを確認してメテオがフィールドに出る。すると虎丸と豪炎寺、円堂が会話をしていた。

虎「ハットトリックを決めて見せますよ!」

メ(おいおい。…まあ目標を持つのはいいことだけど。)

ラ(貴方には出来ないと思うけど…その位の気持ちで行かないと、1点も取れないかもしれないわね。)

後半が始まる。


鬼道のゲームメイク力でディフェンスを抜いた。

相手の意表をついていく。対応が遅れたその一瞬でボールを繋いでいく。

鬼道、不動、佐久間の皇帝ペンギン3号に合わせて豪炎寺が走る。シュートをDFがブロックしたこぼれ球を真爆熱スクリューでおしこむ。

イナズマジャパンが、ついに得点した。

メ「豪炎寺!」

豪「!」

メテオが瞳を輝かせて豪炎寺に駆け寄る。こんな表情はなかなか見た事が無い。

メ「俺と瑠璃姉とフェイでやってた連携シュートあるんだけど、今度一緒にやらないか??!」



一方で2点を失ってしまった。

円堂の必殺技が、完成しないのだ。うっすら現れるが、直ぐに消失するマジンだか何だかわからない者。

フィディオが言った。君なら絶対出来る、と。

円堂は、円堂大介最後のノートを思い出す。

―迷わない自信、自分の力を信じる心―

フィ「真オーディンソード!!」

ラ(真まで行くなんて…そんなにシュートチャンスを作ってしまうイナズマジャパンが、決勝までに何とかなるのかしら。)

そこは円堂の力。

ボールを掴んでネットに突き刺さった円堂は物凄く心配された。しかし、心配そうに駆け寄ってきた仲間達に、立ちあがって嬉しそうに、

円「見えたんだ!新しい必殺技の姿が!!」

と言った。

ラティアとメテオは呆れて、心の中で円堂らしい、と呟く。

円堂とフィディオが握手を交わす。笑顔で。


そう、試合は終わった。


ちゃっかりメガネが新技の命名をした。ゴッドキャッチらしい。円堂も納得した。

試合終了後は暫くオルフェウスが練習を見てくれたりと、円堂達には有難いチームだ。

給水に来た豪炎寺が、誰にも聞こえない様な声で呟く。

豪「メテオファイナルストライク…。」



瑠「くしゅんっ!う~、早く治ってよ~…」

瑠璃花の体温、38度。