イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第67話 メテオファイナルストライク



鬼道が、とある部屋に入った。

風が吹き抜けて行く、涼しい部屋だった。ベッドで上半身を起こし、小説を読んでいた瑠璃花が彼を見た。

枕元の机の上には、紙とガラス製の皿が置いてあり、切られたリンゴがまだ5切れくらい残っている。

カーテンが日差しを遮っている為か、少し薄暗い部屋。

鬼「調子はどうだ。」

そう言いつつ、彼は体温計を差し出す。彼女はそれを受け取ってから答えた。

瑠「随分良いですが…。」

俯いて体温計のボタンを押し、脇に挟む。表情は暗い。

明日が決勝戦。しかし、彼女は医者に、試合には出られないと言われてしまった。

長引いた風邪を恨むしかない。

瑠「…出たかった、です……。」

机の上の紙。それは魁渡が調べたコトアール代表のメンバー表。フェイとフュイの名前が載っていた。

ピピピ、と体温計が鳴る。37.8という数字が現れた。

瑠「全然…ひいてくれない…。」

鬼道が声をかけようとして、言葉に詰まる。ポタリと涙が落ち、布団カバーに丸い跡を作る。

その時、ドアがノックされた。


豪炎寺が部屋に入ったとき、瑠璃花は俯いていて、鬼道が彼女の背中を摩っていた。

豪「…どうしたんだ?」

瑠「!豪炎寺さん…。」

瑠璃花が顔をあげる。右手の甲で目をこすり、鬼道に大丈夫、という風に頷いて見せた。

瑠「豪炎寺さんこそ、どうしたんですか?」

豪「必殺技の事を聞きに来たんだ。」

鬼「必殺技?」

豪炎寺が頷く。瑠璃花は何の?と呟くように聞く。

豪「メテオから持ちかけられたんだが…」

瑠「もしかして、メテオファイナルストライクですか??」

2人は、キョトンとして瑠璃花を見る。彼女は、やっぱり、と呟き笑顔を作る。

瑠「魁渡が前に言っていたんです。何時か豪炎寺さんと連携必殺技をやりたい、と。」

豪「どんな技か教えてもらえなかったから、お前に聞こうと思ってな。」

瑠璃花が説明を始めた。要約するとこうだ。

1・メテオファイナルストライクは3人で行うシュート技である。
2・島に居た時、父親が以前使ったチームのフォーメーションを基に作った技。
3・フェイとメテオと瑠璃花で実際にやったが、成功した事は無い。

次に、内容。

4・まずメテオがメテオファイナルを放つ。
5・それをキック力がある選手が打った方向に打ち返す。
6・距離が半分位まで来たら、もう1人がゴールを狙ってシュート。
7・こうすることで威力があるシュートが打てる。

瑠「こんな技です☆」

すっかり機嫌が直ったらしい瑠璃花が言った。

瑠「フェイは自分でドリブルして持ち込んでシュートを打つ時、一番力が入るらしくて…なので成功しなかったんです。でも豪炎寺さんのキック力なら成功すると思ったんですね、メテオは。」

でも、と表情が暗くなった。

瑠「私は、試合に出られません…」

部屋に流れる空気が、重くなった。

3人は、それぞれ何も喋らず、時を忘れその場に立っていた。

鬼道は、ただ呆然として。

豪炎寺は、試合に出てもらいたい気持ちをどう説明するべきか、考えて。

瑠璃花は、試合に出たいという気持ちを必死に抑えて。


静寂を破ったのは、円堂だった。

ドタバタと廊下を走る音が聞こえ、部屋の扉が大きく音を立てて開いた。入って来たのはジャージを着た円堂。

円「昼食、早く食べないと無くなっちま…どうしたんだ、3人固まって。」

鬼道と豪炎寺が、驚いて円堂を見ていた。が、氷が解けた様に表情が柔らかくなり、口を開く。

鬼「いや、何でも無い。」

豪「すまなかったな、わざわざ。」

円堂の視線が瑠璃花に向けられる。彼女は軽く会釈をして、2人に向け軽く手を振った。

鬼「寝てろよ。」

瑠「了解ですっ。」


―明日、試合に絶対に出る…

そのために、絶対今日で治すんだ…。


決意を宿した瞳で、彼女は3人を見送った。