イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第20話



メ「ええええぇ???!」

本日3回目の魁渡の大声が、雷門ベンチから聞こえる。

瞳「…もう一度言うわ。シュートを打たないで。」

瞳子監督に呼ばれたメテオはに言われた言葉。

メ「シュ、シュートは打たないでもいいけど…何で?」

瞳「このチームとあなた方は、まだこの先付き合うはず。ならばこのチームの力、見ておく必要があるんじゃないかしら。」

メ「!」

まだ付き合う。そう。フォッガーに会うには、このチームについていかないといけない。

瞳子監督は、感じ取っていたのかもしれない、と魁渡は思った。

メ「納得した。でもFWでいいんだよな。」

瞳「もちろんよ。」

メテオはフォーメーションについた。時間が無くなったシュートは打つ。そう決めて。

ウルビダの視線に殺気を感じながら、試合は再開された。

メ「!!!」

豪「速いっ!」

グランからボールを受け取ったウルビダは速攻。急に上がったスピードに追い付けないFWを抜き、すぐにゴール前だ。

魁(くそっ!急にあんなに速くなるなんて!)

円「瑠璃花!」

秋「瑠璃花ちゃんっ!!」

ウ「終わりだ…!」

今まで見た事のない体勢。

ウ「ジェネシス最強の必殺技!スペースペンギン!!!」

凄まじい衝撃波をまとったシュートが、瑠璃花に向かう。

雷全「瑠璃花ーっ」

塔(大丈夫だ!瑠璃花なら…)

シュートを見つめながら、瑠璃花はそっと目を閉じ、右手を首に巻くように曲げた。

目を閉じた彼女に皆は驚いた。止める気あんのか、という声も。

シュートが近づく。と、突然瑠璃花が目を開けた。

勢いよく右手をシュートに向け、その直後。

全「!!!」

ボールは、瑠璃花の右手におさまっていた。

瑠「これが…皆の応援か。」

私を呼んでいた、あの声もあって、これだけダメージを受けずに止められたんだと瑠璃花は思う。

瑠「塔子さん!」

驚くジェネシスをスルーして、塔子にパス。

塔子から土門に。土門から木暮に。そうしてMFへと、全員にパスが繋がり、メテオへ。そして

メ「円堂っ!」

ボールは、不思議と輝いて見えた。でも、誰も怪しんだりしない。

円「これが、想いを一つにするということなんだ!」

魁(―これが、このチームの力!)

円・豪・吹「ジ・アース!!」

ネ「時空の壁!」

大きな力が、時空の壁を押す。

ネ「うわあっ!」

ホイッスルが鳴る。雷門、ジェネシスに勝利。

やったあ、と大喜びする雷門の中には、瑠璃花と魁渡もいた。

吉「グラン…。」

瑠・魁「!!!」

グ「父さん」

吉良が降りてきた様子を、凝視する瑠璃花達。鬼道は、瑠璃花の『吉良星二郎がいたから。』という言葉を思い出していた。

吉「すまなかった…私が間違っていた。」

その言葉を聞いたウルビダが握りしめた拳を震わせる。怒りで。

ウ「よりによって…お前が…っ!私達をうらぎるなぁっ!!!!」

全「!!!」

瑠「―っ!」

蘇る。フュイ達にボールを蹴られた思い出が。お父さん達が命を絶ったあの日の事が。

グ「―っ!」

吉・円「グラン!」

ウ「なぜ…なぜ邪魔をする!グラン!!」

(少し簡単にします)

グ「だって…父さんは、俺の大事な父さんだから…」

瑠璃花は、その様子を静かに見ていた。しかし、ゆっくり口を開き、

瑠「お父さんがいるなら…守らないと、だよね…。」

と言った。

涙声で、続ける。

瑠「私…守れなかった。守らなかったら、きっと後悔するよ。」

魁「瑠璃姉…」

吉良が2人の方に向き直る。

吉「君達のご両親には、ひどい事を依頼してしまったね。」

全「!!!?」

瞳「もしかして、あなた達!桜花さんの…」

両チームの選手たちは呆然としていた。何を言っているのか、全く理解できていない。

魁「お前がっ、あんな事をお父さんたちに依頼したから!あんな霧を作らせたから、お父さん達は…」

吉良が顔をしかめる。

吉「いえ…あなた方のご両親は依頼を断ったので、結局は諦めたのですよ。」

魁渡と瑠璃花は驚いて顔を上げた。そんな訳はない。じゃあ誰が依頼しフォッガーをよこしたのか。

魁渡がさらに問い詰めようとした時だった。

パラパラ、と粉が落ちた。そして揺れ。

古「崩れるぞ!早く逃げるんじゃ!!」

全「!」

キャラバンに逃げ込む。吉良だけが座り込み逃げようとはしない。

グランが説得し連れ込む。キャラバンに乗り込んだ時、彼の眼は涙ぐんでいた。

グ「君達の両親は、とても優しかった。研究中も、時々お日様園の子供達を構ってくれてた。」

瑠璃花と魁渡に、グランはそう声をかけた。


崩れていく星の使徒研究所を眺め、皆、全てが終わった気分だった。

連行される吉良星二郎。保護されるエイリア学園のチームの選手達。

瞳「…貴方達の目的は聞かないでおくけど。このチームを信じて、頑張ってね。」

そして雷門中に戻るべく出発するキャラバン。

その様子を見つめる影。

フォ2「星の使徒研究所が爆発したようだな。」

フォ「今更どうだっていいだろ、そんな事。」

紅いローブ、青いローブ。彼らとの決戦の時は、確実に近づいていた。