イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第21話
?「とうとう、だね…。」
黒魔術をするような部屋で、紅と青の混じったローブを着た少女が、そう言った。
頭を上げ、天井を見上げて、クスリと笑って静かにもう一言。
?「まずは、宣戦布告…。」
少女は、部屋の隅にあった灯油缶の様な物を持ち、窓を開ける。
怪しげな、生ぬるい風に、彼女は満足そうにうなずき。
そして、窓から飛び降り、木の間を縫うように走り抜けていった。
円「稲妻町だっ!」
円堂が、窓から首を出して叫ぶ。よっぽど嬉しいのだろう。瞳がきらきらと輝いている。
瑠璃花と魁渡はそんなキャプテンを見て、故郷を思い出した。
魁「…?!瑠璃姉。」
魁渡が、稲妻町を睨む。瑠璃花が何事かと見てみると…
瑠「…っ!島と同じ…!!!」
顔が凍りついた。ついでに思考回路も。
稲妻町の一部が、ほんの一部が、霧に支配されているように見えた。
約束が違う、と瑠璃花はその事しか頭になかった。
フォッガー2は、キャラバンを降りたら日本を潰す、と言った。
でも、瑠璃花達はキャラバンを降りてはいない。雷門イレブンについていっている。
魁「大丈夫、これは潰すなんかじゃない。これ位の濃度なら、な。」
魁渡がそう言った。自分と姉を説得する様に。
瑠「……うん……。」
そうは言ったものの、瑠璃花は、今すぐにでも走って現場に行きたい気持ちを抑えるのに精一杯だった。
キャラバンは稲妻町に入った。
そこで豪炎寺が早速霧を見つけた。
豪「霧だ…。」
円「本当だ。」
目「珍しいですね。」
瑠璃花が手を握り締める。現場に行ったら何をするのか、シュミレーションもまともにできなくなってきた。
早くしないと、また、フュイとフェイの両親みたいに…!!
魁渡が言った言葉は、もう頭の中に残っていなかった。
やがて、霧がかかる商店街へ。
全「ッ!!?」
そこにあったのは、全員が息をのむ光景だった。
濃い霧、狂ったように笑う人々。
円「何で…幸せそうなんだよ!」
瑠璃花は、少し落ち着いた様子で睨んでいた。
塔「何が起きて…」
塔子が窓を開けようと、窓に手をかけた。
瑠「!!!開けないでッ!!」
全「!?」
何が起きているのが全く理解できていないメンバーは、急に大声で叫び声の様な声を出した瑠璃花に驚いた。
瑠「…大声出してごめんなさい。古株さん、バス止めて下さい。」
豪「!待て、何が起きて…」
古「ここはすぐに通り過ぎんと!」
引きとめる声を無視して、強制的に瑠璃花はバスを止めた。
瑠「魁渡、説得と説明よろしく。私、浄化してくる。」
魁「りょーかい!」
瑠璃花はさっさと出てしまい、残されたメンバーは「ぽけ~」としてしまった。
外に出た瑠璃花は、狂った人々に囲まれながら、リュックから小さな機械を取りだした。
鬼「…魁渡、何が起きて、この人達は狂っているんだ。」
魁「霧さ。あの霧は人を狂わせる。俺達の両親が造ったんだ。」
全「!!?」
でも見たところ、彼らはあの霧を使って何かをしようとしているとは思えない。
魁「両親に、その霧を作るよう依頼した奴がいるんだ。俺等を人質にしてな。」
円「!じゃあ星の使徒研究所で言ってたのは・・・」
鬼「!」
『吉良星二郎がここにいるから。』
鬼「…そういう事か…」
魁「吉良星二郎かと思っていたのに…!!!」
豪「見つかったら、そいつをどうするんだ。」
魁「…。」
瑠璃花が機械のスイッチを入れた。狂った人々が少しずつ正気に戻っていくのが分かる。
魁「…友達が…そいつらについていってんだ…。だから、そいつらの居場所聞きだして、警察にぶちこんでやるんだ」
瑠「何があったんですか!?」
女性に突っかかってる瑠璃花を見て、魁渡は肩をすくめた。
魁「ったく瑠璃姉は…行こうぜ。」
木「もう、出てもいいのか?」
魁渡が頷き、扉を開けた。霧は晴れ、正気に戻った人々は周りを見渡している。
女「雷門中の…サッカー部?」
瑠「?まあ、そうですけど…。」
女「変なのを持ってきた女子から伝言を…」
瑠「伝言?」
女子からの伝言は、瑠璃花達の士気を下げるものだった。

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