イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第28話



~メテオ(魁渡)目線~

円「思い出せっ!みんなーっ!!!」

キャプテンがボールを持ち、掲げてそう叫んだ。

DEのメンバーは、その流れに、キャプテンの想いに抗おうとしたが出来なかった。

思い出せたのか?俺等が知っている、雷門中サッカー部の、熱いサッカーを。

キャプテンは力の限り叫んだらしい。倒れてしまった。

近寄ろうとした時、耳に聞こえた微かな声。

メ(俺の後ろに居たのって…)

慌てて振り向いた。声の主は…

瑠「い…たい…割れる…!!」

メ「瑠璃姉ッ!!?」

額に手を当て、苦しそうに息をする瑠璃姉だった。

倒れそうになる瑠璃姉を支える。必死に呼んでも、聞こえていないのか応答がない。

鬼「!どうした!」

メ「鬼道さん!瑠璃姉が…」

瑠「…めて…違う…よね…」

座らせて声をかけていると、綱海やら吹雪さんやらが集まって来た。

鬼「混乱してるな…」

メ「ーッ!」

思い当たる節は無い。このままだと、瑠璃姉どうなるんだ?

瑠「やめてっ!ちがうのっ、おかあさんはっ…!!」

全「!?」

大声で叫び泣きじゃくる瑠璃姉は、まるで子供だった。

ずっと小さな、小学校低学年位の。

瑠璃姉は、保育園に通うような時期に一度、心を閉ざした事があると親から聞いた。

原因は分からないという。

メ「瑠璃姉ッ!!起きろっ、目を覚ませ!!!」

秋「!!?」

マネージャーからぬれタオルをひったくり、投げつけてみた。

瑠「!!………?か…いと?れ…何してたんだろ?私。」

ほっと一息。瑠璃姉はきょろきょろ辺りを見渡している。

メ「何の悪い夢だ?瑠璃姉。」

瑠「…ごめん、もう思い出したくないんだ、ごめんね。」

そう言って、涙の痕をタオルで消した。


?「あ~あ!結局ダメかぁ。」

木の枝に腰掛けている少女が、溜め息交じりに呟いた。

?「!…遅かったね、フォッガー君☆」

くすっ、と微笑みながら少女は言った。

背後には、5つの影。

フォ「お前が行ってれば早かったんじゃねえの?」

フォ2「それに、いい加減そのあだ名はやめてほしいな。」

?「そお?」

フォ「で、何見物してたんだ?」

フォッガーの質問に、少女は指を指して答えた。

その先には、鬼道の手を借り立ちあがる瑠璃花の姿。

フォ2「…記憶操作か。」

?「ちょっとだけ☆あんまりやったら、私が監督できなくなるでしょ!」

フォ・フォ2「それがいい。」

3つの影は、動かない。少女は、くすっ、と再び微笑み…

?「この試合が終わって準備ができたら…行こうね。」

ふと、少女が下に目をやる。

研崎が連行される様子が見えた。

その様子を少し寂しそうに見た後、誰にも聞こえないような声で呟いた。

?「…待っててね…

             お兄ちゃん。」

怪しげな、意味深な笑みと共に…



響木監督は一旦全員を集めた。

響「この後は自由な試合ができる。思いっきりやってくれ。」

オウ、と全員が返事をした。若干1名を除いて。

響「…瑠璃花、体調は大丈夫か。」

瑠「!あっ…はい、すいません。」

大丈夫です、と明るい声で言ったのを聞いた監督は大丈夫だと判断した。

話が終わり、再びフォーメーションについた。

円堂はGK、メテオはMF、瑠璃花はDF。

瑠「メテオ、出来るだけパスをつなげよう!」

メ「?何でだ?」

顔をしかめて言うメテオに、瑠璃花は声を潜めて言った。

瑠「フュイ達がサッカーで勝負を挑んできたら、2人じゃ出来ないでしょ。雷門サッカー部の力を借りることになるかもしれない。」

メ「つまり、連携をある程度とらないと、って事だな。」

瑠璃花が頷いたその時、試合再開のホイッスルが鳴り響いた。

生き生きとした顔で、全員がサッカーを出来た。瑠璃花はそう感じた。

攻めてきた相手を魁渡がブロックし、瑠璃花にパス。ドリブルでしばらく攻め上がりメンバーにパス。

パスを受けた人が攻め上がっていく。

そのボールは豪炎寺にわたり、シュートで点を決めてくれた。

その様子を見るのは、瑠璃花にとって、メテオにとって、とても楽しい事だった。

喜ぶ瑠璃花を見たメテオは思う。

こんなサッカーを、フェイ達と出来たら。

きっと、それはすごく楽しい物になるだろう、と。

メ「絶対、やりてー!フェイを連れ戻して…絶対!」




彼らは、知らなかった。

その想いを持ち続ける事がどんなに大変なのか。

その仲間が、どんな闇に飲まれているのかを…



ホイッスルが鳴った。

3-3で、DE戦は終了した。