イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第32話



~瑠璃花目線~

私が見たもの。蜜柑ちゃんが黒いサッカーボールを足元に置き、その5メートルほど前で倒れる少年達。

1人、肩で息をして、立っている少年がいた。足元には、サッカーボール。

る「ふうすけ君…!」

彼も、倒れている少年達も服はぼろぼろ、体には傷。

そして蜜柑ちゃんの足元の黒いサッカーボール、彼女の表情、発言。

何が起きたのか、理解するのにかかった時間は僅か。

蜜柑ちゃんが、彼等に『暴力』という名の『サッカー』をした。

る「早く助け…」

愛「!静かに!」

る(えっ…?)

いまの目は、真剣だった。

私は、見間違いをした?

ふ「…くそおっ!!」

る・愛「!!」

ふうすけ君がサッカーボールを軽く蹴った。

冷気をまとったボールは、足の裏で蹴られた瞬間、強い風と共に蜜柑ちゃんの元へ向かう。

愛「そのぼろぼろの体でよく必殺技ができるね…でも。」

ばしゅっ、と蜜柑ちゃんのすぐ横の壁に当たりボールはつぶれた。

愛「コントロールは出来ないね。」

演技っぽい、って私は思った。

その言葉も行動も、本当はしたくない事なんでしょ?

る「みか…」

愛「これで終わりですよね、吉良さん。」

る「!!」

蜜柑ちゃんが上を見てそう言った。

吉「ええ…良い演技でしたよ。」

どさっ、と何かが倒れた音。

はっとして振り向くと、ふうすけ君が倒れていた。

る「ふうすけ君っ!!」

私は慌てて彼に駆け寄った。私の声に対照的な満足そうな声が聞こえたのはその時だった。

吉「これでようやく、エイリア学園のサッカーチームが出来ます…蜜柑、君には感謝しなくてはいけませんね。」

愛「私には結構です…お兄ちゃんにお礼をあげて下さい。」

吉「…しかし…」

その声は、蜜柑ちゃんの言葉に対する否定では無かった。

そして、私は知らなかった。私に、次の言葉が向けられた事に。

吉「君は、余計な優しさを持っている…本当に残念ですよ…」


吉良が、部屋から去った後、蜜柑ちゃんは急に泣き出した。

愛「皆、ごめんね…」

その皆は、そこに倒れていた、『お日様園』の少年達。

私は、蜜柑ちゃんと手分けして皆に謝った。

何が起きているのか、全く分からないまま、お母さんと共にあの島に行った。


~円堂目線~

円「瑠璃花、ハヤシライスできたぞ!」

瑠「…えっ、うん、ありがとう…」

瑠璃花は、ぼーっとしていたようだ。

今、俺達はイナズマイレブンOBの方の友達が経営する町内最大のホテルに来ている。

ファイナル・ザ・カオスが去った後、俺達は改めて戦う決意をして練習に励んだ。

瑠璃花はいろいろと考え込んでしまい、あまり喋らなくなった。

で、ホテルに着いたら、マネージャー達がハヤシライスを作ってくれた。

食べ始めたら、相変わらずな木暮のいたずらとか綱海の海の話とかで盛り上がって、すっげー楽しかった!

やっぱり、皆で食べたら楽しいし、おいしさ倍増だと思う!

瑠「ごちそうさまでした…」

夏「大丈夫?部屋まで付いていきましょうか。」

円(あ…)

瑠璃花の皿に、ハヤシは残っていなかったけど、ルーの跡からして元々すごく少なかったようだ。

部屋に向かう瑠璃花に、夏未は静かに付いて行った。

円「…」

春「キャプテンっ!木暮くんに七味入れられてますよっ!!」

円「え…えーっ??!」

全「あはは…」

そうしている内に、瑠璃花達の事は、頭の隅に追いやられてしまった。

~次回!ホテルのバルコニーで…~