イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第35話
翌朝の空は蒼く澄んでいた。
綺麗な空は、瑠璃花の心の底でうずうずしていた最後の霧を蹴散らした。
微笑んで瑠璃花は窓辺を離れる。そして、ハンガーにかけてあった雷門中のジャージを持ち上げた。
私達は、フュイ達を越えられるだろうか。
昨日の晩から、ずっと気になっていた事だ。霧は晴れても、これは霧では無い。
重りだ、と瑠璃花は思っている。
半袖の体操服の上から長袖のジャージを着た。昨日からだが、随分体に馴染んだ。
時計を見ると6時30分と20秒ほど。コンコン、とドアをノックする音が部屋に響いた。
夏「瑠璃花ちゃん、朝食の時間よ。」
瑠「あ、後1分位で行きます!」
此処で待ってるわ、と夏未は答えた。瑠璃花は彼女達の底無しの優しさに触れて、少し胸が痛んだ。
嬉しいけど、そんな優しい彼女達を巻き込んでしまった。
蒼い空も、そんな痛みを大きくするだけだった。
魁「うおーっ、バイキングかぁ!!」
食堂に着くなり叫ぶ魁渡に、瑠璃花は苦笑した。
瑠「でも…こんなカラフルな食事、何時ぶりかな…」
円「食べまくろーぜっ!」
おーっ、と元気でバカみたいに明るいメンバーが叫ぶ。
マネージャー一同、苦笑。その様子を、妙に大人っぽい魁渡は笑って見ていた。
円堂達に続いて瑠璃花もバイキングの列に並んだ。
思い出すのは、ティアラの家に居た、1カ月余りの日々。
毎日、では無かったが1週間に3日位こんな日があったなあ、と。
秋「瑠璃花ちゃん、一緒に食べましょう。」
瑠「はい。」
こんな風に、いろんな仲間達に囲まれている幸せ。
今は辛い事を忘れていられる。
一時的でも良い。心にこんな日々を焼き付けられたなら。
ラ「あら…」
フ「マモルだ!」
ラティアとフィディオは、朝食を食べるために食堂に来ていた。
そこに雷門中のサッカー部がやってきたため、内心少し驚いていた。
ラ「……」
フ「そういえば、昨日は何も無かったな。」
ラ「え…」
魁「うおーっ、バイキングかぁ!!」ラ「うるさいわね。」
ラティアが列の方を振り向く。自分が喋っている時に遮られたのである。少しイラッときた。
そこに居た少女と男の子。自然と視線が向く。
記憶には無い。何せ1年から前の記憶が無いのだから。
でも、何処かで仲が良かった気がする。
ラ「…今日、何か起きるんじゃない。」
フ「本当は無い方が良いけどな」
ラティアが席を立つ。
ラ「部屋に戻りましょう。彼らの朝食は五月蝿いもの。」
AM8時―
円「ありがとうございました!」
全「ありがとうございましたっ!!」
キャプテン円堂に続き、雷門イレブン全員が礼をして繰り返す。
皆は荷物をまとめキャラバンに積んだ。午前中は、練習に充てなければならない。
響「本当に世話になった。」
良いって、とOBと響木監督が握手を交わす。
円「さあ!戻って練習だーっ!!」
全「おーっ!」
大人達は、そんな様子を見て微笑んだ。
瞳「皆。早く乗って。こうしている間にも練習ができる時間は減っていくのよ。」
響「そんなに焦るな。」
とは言いつつも、響木監督も焦っている気がしたのは、瑠璃花だけだろうか。
キャラバンに乗り込んだ全員は、和気あいあいと会話を楽しんでいた。
魁渡と瑠璃花の表情はきつい。
瑠「瞳子監督…」
瞳「何かしら。」
瑠「ふ…ガゼルっていう人と、バーンっていう人がサッカーをしている映像、ありますか。」
瞳子監督はメガネが撮っていた映像を瑠璃花に渡した。
勝ちたいと思っている。
この試合も、点数的なものだけではダメな試合なんだと、瞳子達は理解し始めていた。

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