イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第36話
~瑠璃花目線~
私はザ・カオス戦の映像を見た。
感想。怖い。
何がかというと、複数名、もっと強くなりそうだから。
特にふうすけ君とはるや君。いいえ―
ガゼルさんとバーンさん。
結局、この表の世界での私の強さは曖昧なまま。
2試合(実質1試合分)やっても、仲間という存在に力を与えられての強さしか分からなかった。
それでは、ダメなんです。
私が、ファイナル・ザ・カオス戦で仲間が分からなくなった時…
その時の、表世界での順位を、私は知りたい―。
瑠璃花達が雷門中のグラウンドに着いた時、既に蒼い空は隙間でしか見えなくなっていた。
白い雲と遠くに見える灰色の雲。
響「11時30分まで練習。その後は昼食、相手が来るまで各自ウォーミングアップを行う事。」
全「はいっ!」
魁渡はFWの練習に加わった。瑠璃花は取りあえず風丸について行きDFの練習をする事にした。
風「瑠璃花っ!」
瑠「!」
パス練。風丸からのパスを丁寧に受け取り、ドリブル。
瑠「木暮君!」
風「…すごいな、ついこの前加わったばかりなのに、馴染んでいる…。」
何より、速いと思った。的確で丁寧で、ドリブルの時の誰にも取らせないという気迫。
なのに、休憩を入れる時には気さくな感じで接する。
でも…、深くには足を踏み込めない。
彼女は秘密を漏らしたりはしない。手放したりはしない。他人のだろうと、自分のだろうと…
風丸は、だから試してみたくなった。後輩の実力を。
風「瑠璃花。」
瑠「?はい…」
風「ちょっと付き合え。」
昼食後。だいたい1時10分頃。
頭にクエスチョンマークを浮かべる瑠璃花にお構いなしに、仲間から離れて陸上部の練習場所まで連れて行った。
勿論、練習している部員はいない。いや、1人を除いて。
瑠「……体力の浪費ではありませんか。まさか、100m走で勝負…じゃありませんよね。」
風「そのまさかだ。」
遠くで走りこみをしていた部員に、風丸が声をかける。
走って来た金髪の少年は、風丸の姿を認めると嬉しそうに駆け寄った。
風「宮坂!頼みがある!」
宮「風丸さんっ!はい、何でも!!」
瑠(宮坂…君?1人で自主練って熱心だな…)
風丸は、これから100m走で勝負する旨を伝え計測を依頼した。
宮坂は頷き、ストップウォッチを持って計測場所に移動する。
瑠璃花の方をチラチラ見ていたが^^;
風「手を抜くなよ。」
瑠「あれ位の練習では本気なんて出せません。」
陸上の走り方も知らないし、と心の中で呟く。
宮坂が手をあげる。
風丸が手を振り返す。
宮「位置について!」
声を張り上げて宮坂が叫ぶ。
宮「ようい!スタートッ!」
その時。
グラリ、と地面が揺れた。
スタートダッシュをしていた風丸と瑠璃花、ストップウォッチのボタンを押した宮坂が。
ドスン、という音と共に煙をあげるサッカーグラウンドの方を凝視した。
風「勝負はお預けだ!行くぞ、瑠璃花!!」
宮坂、と風丸が叫ぶと、宮坂が2人を見て、さっきより大きな声で言う。
応援してます。負けないでください。
瑠璃花の瞳が揺れる。
この2人の絆を感じたからだけじゃない。
もっと大きな、蒼い空の様な。
瑠「私は…大丈夫。」
風「?瑠璃花?」
瑠璃花が顔をあげて微笑む。
行きましょう。勝ちに。
疾風のように駆けて行く2人を見て宮坂は呟く。
宮「応援…行かないとな!」
前半が終わったら行こうかな…そんな軽い気持ちだった。
まさか、彼は想像もしていなかっただろう。
この試合が、どれだけ大きなものになるか。
瞳「これは…」
1時11分。
テレビに放送されていたのは、予告状。
アナウンサーが読みあげるのは凄い内容だった。
『私達ファイナル・ザ・カオスが行う試合の勝敗はこの世界に存在する国の強さのものさし。よって今日の試合の勝敗は日本の強さ。負けたならば日本を滅ぼす。我々がそれだけの力を持っている事を忘れるな。』
『そしていずれ私達は世界の頂点に立って見せよう。』
瞳「誰がこんな文章を…」
響木監督が答える。
響「蜜柑じゃないのか。」
瞳「そんな訳ありません!彼女がそんな事をする訳」
ピリッ、と空気が震える。
そして衝撃波と爆音。来た、と誰かが呟く。
煙の中に居たのは少女とユニフォームを着た少年少女。
愛「…あれ。この時間で合ってるよね?」
瞳「18分位早いけど。」
相変わらずフリフリの姫様の様なドレスを身にまとった蜜柑が顔をあげる。
愛「ま、いっか!ね、早くさ、試合始めようよ♪」
恨めない位、整った人形のような顔を雷門イレブンに向けて、乙女は笑った。

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