イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第37話
空模様は、悪くなる一方だ。
不安そうに見上げる瑠璃花は、マネージャーの秋に呼ばれてはっとした。
いつの間にか来ている実況の角馬、テレビ局のスタッフ(何故か奈良)、校門の外側で応援する近所の人々…
そしてグラウンドの上で睨みあう選手達。
その全てと自分が離れている、別世界に居るように感じた。
原因は、両チームがスターティングメンバーを決めた時、ほんの2~3分前の事。
瑠璃花と魁渡は、ベンチスタートの予定だった。
前半は相手の様子を見て後半に攻める、という瞳子監督の方針のためだ。
ベンチに腰掛けた魁渡の元に、相手チームの選手が近付いてきた。
魁『フュイ…』
フュ『ふうん、ベンチか…』
金髪のショートと上から目線は相変わらず。しかし、魁渡はキレなかった。
フュ『落ちたね。実力、やっぱり大したこと無いの?』
魁『黙れ。お前よりマシだ。』
フュイは笑った。くすっ、と右手で口を覆いながら。
フュ『そんな事、言ってられるのも今のうちだよ?』
愛『フュイちゃん、無暗に相手の選手に構わないの!』
瑠・魁・瞳『!!』
生クリームみたいに白いレースが目に入る。後ろは大きなリボンが付いている、完全ロリータ服だ。
愛『…瑠璃花ちゃん、ベンチなんだ…』
良かった。
そんな小さな声が瑠璃花に聞こえて思わず立ち上がった。
蜜柑はベンチに座っている。フュイはDFの位置に立っていた。
その様子を見て瞳子監督は方針を変えた。
瞳『魁渡君、MFに入って。』
魁渡は、あまり嬉しそうではなかった。
フ「どうする?もっと前に行こうか?」
雷門中の校舎の周りに生えている木陰で、フィディオと車椅子のラティアがいた。
ラ「こんな事だったなら私達じゃなくても良かったわ…退屈そうな試合を見る羽目になっちゃったんだもの。」
フ「退屈?そんな風には思えないけど…」
ラティアはそれから口をつぐんだ。その視線の先にあるのは…
校門の前に停まった、リムジン。
20分前―
リムジンに乗っているティアラとマーク、ディランはトランプで遊んでいたが、だんだん飽き始めていた。
テ『マーク、何か楽しい事ない?』
マ『…無いと思うけど…』
デ『空港、案外遠いしね…』
それから5分ほど、ティアラの日本の別荘で遊んだことなどを話していたが話題が無くなり白けてしまった。
マ『こうなったら最終手段…』
デ・テ『最終手段?』
マ『TV!』
ズコーッ、と2人がこけているのをスルーしてマークは車内にあったTVをつけた。
テ『日本のTV番組って面白いの?』
デ『ニュース番組じゃん!早くチャンネル替え…』
そう言った矢先。
アナ『緊急ニュースです!予告状らしき文章が届きました!』
3人の顔に緊張が走る。
内容を聞くうちに、ティアラが運転手に向かって叫んだ。
テ『雷門中に行って!!ルリカとカイトがいるの!!』
多くの者が見守る試合は…
その者達が絶句するものとなった。
角「さあ!スタメンが決まったようなのでお知らせします!」
ファイナル・ザ・カオス
FW ガゼル バーン マキュア
MF レーゼ グラン デザーム レアン(プロミネンス所属)
DF フュイ フェイ クララ
GK ネロ
雷門
FW 豪炎寺 吹雪
MF 一之瀬 鬼道 塔子 風丸
DF メテオ 土門 木暮 壁山
GK 円堂
豪「ガゼル達か…」
吹「でも、今の僕達なら行けるんじゃないかな。」
そんな会話を聞いたメテオは、呟く。
それだけじゃない、と。
角「雷門ボールでキックオフです!」
豪炎寺から吹雪へ。吹雪から風丸へパス。
しかし…
マ「そんなパス、通用しないよ。」
マキュアのパスカット。あまりの速さに雷門イレブンは驚く。
メテオはゆっくり呼吸をした。
メ「行くぜ…メテオブロック!」
マ「!メテオシャ…きゃあ!!」
マキュアの流星は、メテオのブロックの前に砕けた。
マ「マキュア、そーゆう人嫌い!!」
メ「黙れっ!」
ブロックしたボールを空中でシュートする。
今、え?って思った人、正しいです。
メテオがいるのは、ディフェンスエリア。そこから技なしのロングシュート。
愛「!あの子、シュートしたの??!」
瑠(いつものメテオなら、入るけど…でも。今は…)
思ったとおりだった。メテオの自称8割シュートはネロの時空の壁の前に散った。
メ「全力で…シュートできない…」
メ(今、ボールがいつもと違う所に当たった…いつもならこんな所に当たらないのに!)
グラウンドを拳で叩いた。
瑠璃花の胸に募るのは不安。いつも通りのメテオじゃない。
ラ「…退屈、あまりしないかも…」
フ「?」
フ(あのシュート、何処か迷いを感じる…全力であんなシュート打たれたら、止められるのか?)
テ「私、ルリカの所に行ってくる!!」
デ・マ「!!?ティアラ??!」
愛「ちょっと厳しくなるかな…」
蜜柑が呟く。
愛「早めに終わりにしないと、きついかも。」
前半2分のメテオのシュート。
このシュートが広げる波紋は、大きい。

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