イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第22話 染岡さんは案外…?



夕日が、2人の影を伸ばす。

鬼道に引っ張られ、瑠璃花は今、染岡の家の前に居る。鬼道がインターホンに手を伸ばし押した。

直後、返事がした。おそらく染岡の母だ。

彼女は2人を見るなり、息子はサッカーの練習をしに出ていると言った。本気で謝られて戸惑う2人は直ぐにその場を退散した。

宿舎に戻る道を歩く。気まずい沈黙を破ったのは鬼道だった。

鬼「また、明日にするか。」

瑠「はい…」

少し冷たい風が、夕日に照らされ、熱くなった2人の頬を冷まして行った。河川敷まで来ると、突然低い男子の声が聞こえた。

「ワイバーンクラッシュ!!」

鬼・瑠「!!」

勿論すぐに反応した。2人がグラウンドを見下ろすと、雷門のユニフォームを着た染岡が練習していた。

円「染岡!」

すると、反対側で円堂が叫ぶ。どうやら彼も練習の帰りらしい。

瑠(…いた…)

少し身動きが出来なかった瑠璃花の肩に、鬼道が優しく手を置く。不安そうな視線を向けると、微笑んでくれた。

瑠「…行ってきます!」

河川敷のグラウンドに駆け下りて行く瑠璃花を見ると、鬼道は橋の影に隠れた。

染岡は、駆け下りてきた瑠璃花に気付く。


円「瑠璃花!お前も来てたのか!!」

染「流星…?」

瑠「…えっと…」

染岡の近くに来たが、緊張して話せない。

すると、円堂が(鈍感円堂が)瑠璃花に話しかける。

とんでもない事を。

円「お前も練習しに来たんだろ?!」

瑠「…?!え…」

鬼(あほか…)

円「何だ?違うのか?」

瑠璃花は円堂の流れに流され何故か練習する事に。

しかもGK。

染(本当に練習しに来たのか?あいつ…)

鬼道は影でため息をつきながら、とりあえず頑張れ、と心の中でエールを送る。

染「行くぞ!ワイバーンクラッシュ!!」

円「おおっ!すげー!威力が上がってる!!!」

瑠璃花はシュートを見てから、キーグロ(キーパーグローブ)を忘れた事に気づく。

瑠「やば…」

瑠(取りあえずっ、止めるっ!)

右腕を首に巻きつけるように曲げ、勢いよく前につき出す。

ボールは彼女の手の中にあった。

染「!!!?」

円「なっ…」

鬼(技なしで…止めただと??!)

瑠「うわぁ…強い…こんな強いの久しぶり…」

瑠璃花と染岡の視線が合う。ボールに触れたからか緊張がほどけた。

話しかけられる気がした、今なら…

瑠「…染岡さん…私の事、どう思いますか?」

染「??どうって…」

鬼(…//)

瑠璃花は強く相手を見て声を出す。

瑠「染岡さん達は…選考試合をして一生懸命戦ってそれで代表になれなかったのに…私は…」

染岡は、だんだん声が小さくなる瑠璃花を見てから微笑む。

染「そんな事気にすんな!それにな、特別ルールがあるんだぜ!」

円「特別ルール?」

円堂が聞き返すと、瑠璃花がはっとした様な顔をしてから口を開く。

瑠「試合ごとに代表選手を入れ替えられる…」

染「そうだ!だから諦めない…絶対代表になってやるんだ!!」

瑠璃花が染岡の横顔を見る。本当に代表になって来そうな顔だ。

染「円堂、鬼道、流星、お前等、俺が行くまで負けんじゃねーぞ。」

鬼「…バレていたか。」

染「お前の雰囲気は独特だからな。」

円「でも瑠璃花達は予選に出ないぞ。」

染「そうなのか??!」

それから先の会話は楽しかった。

瑠璃花はあっという間に解決した問題に驚きを隠せなかった。

でも、と心の中で呟く。

私は皆さんが負けないように、練習を工夫していきたい。

響木監督の言葉を思い出す。

『選ばれた者は、選ばれなかった物の想いを背負うのだ。』

瑠(―皆さんが勝てるように…)

彼女は決心する。

少年達に、サッカープレイヤーに、世界で戦うチャンスが訪れるように、勝ち続ける、と…