イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第42話 瑠璃花の過去―5



瑠璃花は苦しくなって来ていた。

点数は3-0。それでもまだ終了の声はかからない。もう始まってから40分は経っている。

11人対1人。しかも相手は普通に強い。

ドリブルした足がもつれる。そこを雫に奪われた。シュートしようとしている。

嫌だ、と瑠璃花はとっさに思った。失点したくない、と。

立とうとする。でも体が拒絶した。

る(動いて!動いてよ!!)

心の中で叫ぶ。ただボールを奪うために。



次の瞬間、瑠璃花の体が闇色の風に包まれた…。



瑠「???」

愛「瑠璃花ちゃん落ち着いて~^^;」

スタジアムの更衣室の中。その時の状況を説明していると、やっぱり瑠璃花はすんなりと理解出来ないらしい。

瑠「本当に私?」

南「今更疑うなよ。」

瑠璃花は何も反論できなかった。南雲が俺はこの目でちゃんと見た、と主張していた。

瑠「疑うのは辞めます!^^;それで、どうなったんですか?」

いつの間にか敬語の瑠璃花。4人は顔を見合わせて微笑した。



※此処から下の『愛』の表示はアイシーです。

闇の風が瑠璃花を包む。

ボールは風で飛ばされラインの外へ出た。風介が瑠璃花に近寄る。

彼女はうずくまり、不安に揺れる瞳で風介を見上げた。風介は手を差し伸べる。

る『…ごめんね。もう大丈夫だよッ!』

…ウソだ。その明るい表情はきっとウソ。

2階から見ていたヒロト達は顔をしかめる。

瑠璃花がボールを持った。

しかし、何かに気付いたかの様に一瞬ドリブルを止めた。

そこに躊躇なく飛びこむ愛。

彼女はハッとしてかわそうとする。

しかし一瞬のすきを突いた愛の方が有利。彼女がボールを奪った。

が、次の瞬間、愛の足元にボールは無かった。

目を疑うヒロト達。と、フィールドの中央で闇色の竜巻が発生した。

白い純白の羽が見える。その持ち主は、見間違えるはずもない瑠璃花。羽ばたき、何かに抗うが羽の色が黒く染まる。

ヒ『何が…起きてる?』

は『わかんねぇ…けど、るりかに見えない…』

る?『あ~疲れた!でも久々に出て来れたしっ、暴れちゃおっかな☆』

風介が顔をしかめる。と、クララがとっさにフローズンスティールをしかけた。

が、氷は瑠璃花の足元できれいに溶けた。

ク『!』

る?『あははっ、ぜんっぜんダメだね!!』

狂ったように笑った彼女はリフティングをし始めた。

ボールは落ちる事なく、フローズンスティールを仕掛けられても、かわした際に落ちなかった。

ふ『一体…何が起きてるんだ?』

ちがう、と彼は心の中で呟く。

これは、瑠璃花のサッカーでは無い。

私の好きな、瑠璃花のサッカーじゃない、と…

る?『う~ん、退屈っ!!…?!』

ふ『ウォーターベール!!』

相変わらずリフティングを続ける彼女に、風介がウォーターベールを仕掛ける。

が、瑠璃花はあっさりかわし、呆れたように溜め息をついた。

る?『もー飽きたぁ…良いよね?君の実力、見てみたいなっ!!』

バシュンッ、と空気を切り裂く音を携え、放たれたシュートがゴールに向かう。一角が構える、が…

一『!?』

ボールの軌道が変わり、ネットを揺らす。その様子を見た瑠璃花が、お腹を抑えて狂ったように笑いだした。

る?『あははっ、全然足りてないよ!!!』

ダ全『!!』

背筋が凍るような衝動が走る。

ク『ふっ、風介、るりかどうしたの?!!』

ふ『分からない…』

戸惑う風介達の耳に届いたのは、靴の足音。規則正しく響くその音は、研崎のものだった。

研『試験は終了です。瑠璃花、君は合格だ。』

る?『ゴーカク?じゃ、もっとやって良いよね?』

パシュ、という音の直後。誰かが倒れた音が響く。

愛『寒太郎??!』

ふ『!!?』

倒れている寒太郎。その顔の近くにはサッカーボール。

る?『ね、やって良いでしょ?』

恐怖。

その時、全員が抱いた感情。

る?『…困ってる?じゃあ10分だけね!!』

ニコ、と何時もの様に明るい笑顔なのに。

怖いと感じる笑顔。

全員がもう一度フォーメーションに着く。

る?『―さ、悪魔のティータイム、始めよ?』