イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第43話 瑠璃花の過去―7
―…悪魔のティータイム。
悪魔がとびっきりの呪文をかけた甘いクッキーや紅茶が並ぶお茶会。
食べると、ね…
悪魔の思い通りになるんだ。楽しい楽しい、狂った踊りを踊りましょう?
試合は瑠璃花の独壇場。
彼女がドリブルで進めば、刃と化した風が舞い起こる。竜巻の様な風は、当たった者に深い切り傷を負わせた。
ダイヤモンドダストの選手が全員倒れるまで、時間は大して掛らなかった。
空中でクララをかわし、すとん、と静かに着地しゴール前に来た瑠璃花。約束の半分位の時間が過ぎた頃。
クララは苦しそうに倒れている。もう何度、風にやられただろうか。
る?『もう終わり?呆気ないね~』
瑠璃花がニヤニヤ笑いながら言う。と、誰かが彼女の前でふらふらと立ちあがった。
る?『へ~、貴方、しつこいんだ。』
ゴール前で瑠璃花がある人物を睨んで言う。その人物も風に3回以上やられている。もうユニフォームが破れそうだ。
ふ『何故…こんなサッカーをする…』
る?『暴れたいの!今までずぅっと我慢してきたから!!』
風介が、瑠璃花の前に立っていた。
ふ『お前、今までこんなサッカーをやりたかったのか…?』
怒りに声が震えている。緊迫した状況。ヒロト達も耳を澄ませる。
る?『別にサッカーしたかった訳じゃないよ?暴れたいな~って思って出て来たらサッカーやってただけ!』
笑って彼女はそう言った。
風介が突然顔をあげる。ボールを奪おうと突っ込んで行った。
あまりにも突然だったが瑠璃花は慌てずかわす。が、今回、彼は簡単に諦めようとしない。
る?『…イライラする…大っ嫌い……みんなみんな大っ嫌い!!!!!!』
全『!!!』
諦めずにボールを奪おうとする風介に苛立ったらしい。突然風が吹き、彼女の背中に大きな羽が生えた。
ふ『嫌い?』
る?『みんな…みんな私を追い出した!!だから…だから復讐してやるっ!!!!』
ボールに闇色の風が吸い込まれて行く。そして、舞い起こった風を全て吸収したボールを彼女の黒い羽が包みこんだ。
る?『…ヘルエンジェル!!!!』
そのシュートがネットを揺らした。
爆風と爆音。その場に居た全員が耳と目を塞いだ。
だから、彼女が着地した姿を見た者はいない。
ただ1人を除いて…
ヒ『風介!!』
風が収まりかけた頃―といっても埃や塵がまだ空気中に漂っていたが―ヒロト達がフィールドへ降りてきた。
は『まだフィールドの状態が分かんねぇ…ってクララ??!』
ク『!チ…晴矢!…っ…』
クララがチューリップと言いかけた事は別として、彼女は左肩を抑えてよろよろと出てきた。
ク『…お父さんに…お父さん…呼んで来なく…』
リ『だ、大丈夫?!』
倒れそうになった彼女をリュウジが支える。クララはしゃがみ、そして立ち上がって走りだした。
フィールドの煙がほとんど収まった。その中に見えたのは…
ぐったりとした瑠璃花と、それを抱き上げる風介だった。
愛『本当に、瑠璃花ちゃんを入れるつもりですか。』
蜜柑の凛とした声が和室に響く。その言葉は向かい合って座る吉良に向けられたものだった。
吉良が頷く。ずずっ、と緑茶をすすり、良いですか、と切り出した。
吉『瑠璃花は周りの輪を乱さず、十分な力を発揮できます。彼女が負ける事は無いでしょう。そしてそれを絶対にするのがエイリア石。この2つがあれば私の望みは叶えられるのです。』
蜜柑が目の前に居る老人を睨む。この人は苦手、と心の中で呟いた。
と、襖がガラリと開く。入って来た子供を見た瞬間、蜜柑は立ちあがった。
愛『何が…あったの?』
ズタズタのユニフォーム。乱れた髪。沢山の切り傷とみみず腫れ。―クララだった。
ク『お父さん…蜜柑ちゃん……るりかちゃんが!るりかぢゃんが…っ!!!』
泣き崩れたクララ。吉良がおろおろしているのを無視し、蜜柑が走りだした。
―フィールドを目指して。

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