イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第45話 瑠璃花の過去―9
~涼野side
るりかは目を覚まさない。
白い清潔感のあるベッドの中で、穏やかに寝息を立てている。
やがて医者がやって来た。疲労が溜まって眠っているのだそうだ。
一安心して、私は部屋を出た。
雪が、白い雪が、ひらひらと舞い始めていた。
医務室を出て廊下を歩いていると、父さんが正面に居た。
るりかの様子を聞かれ、医者の言葉をそのまま伝える。
吉『ほう…分かりました。ああ、それと良いお知らせですよ。』
ふ『どんな知らせですか。』
吉『ダイヤモンドダストの選手たちに、エイリア石を使います。』
さらり、と父さんは言った。
…一番ではないか?ついさっきまでヒロト達キャプテン組と一緒に居たが、それらしき事は誰も言っていなかった。
しかし、それと同時に湧いてくる疑問。
私のチームの選手は、全員ケガをしている。
他のチームの方が練習も多少は多く出来るだろうし、まだ結成して間もないうちに全員ケガしてしまっている私のチームが、何故一番最初に?
ふ『何故、私のチームに?』
吉『エイリア石には、怪我を早く治す作用もあります。力が沸いて来ますから、直ぐに回復して練習に取り組めるようになるでしょう。』
それに、と怪しげな笑みを浮かべて吉良が続けた。
吉『風介、貴方は優しい…その感情も、早く失くしてほしいですから…』
ヤサシイ?
吉『瑠璃花は直ぐに壊れる失敗作の様な物…あんな物を切り捨てられないという感情…それが、要らない感情なのですよ。』
失敗作?
その時、私はこの男に怒りを覚えたような気がする。
要らない気持ちを排除する、それは洗脳に当たる気がした。
吉『大部屋に選手はいますから、会いたければ行きなさい。』
吉良はそう言って、自分の部屋に戻って行った。
瑠「…洗脳作用…」
南「そんな事もあったっけな~」
晴矢がぼんやりと呟く。
しかし、あの作用は『ガゼル』という人格を造るのにかなり影響を及ぼしていた。
冷酷、冷徹…凍てつく闇…
様々な言葉で表現できるが、大体冷たい。
瑠璃花が考え込んでいる。当然か、と思ったら、ふ、と力が抜けた。
ヒ「突然笑って…どうかした?」
涼「!私、笑ったか?」
ヒロトがくすくす笑い出す。
…力が抜けた時、顔が緩んだのか?
~南雲side
は『ヒロト、るりかの見舞いに行こうぜ!』
ヒロトにこう提案したのは、あの夜。試験があった日の晩だ。
るりかには聞きたい事いろいろあったから。
ヒ『うん、えっと、医務室だよね。』
は『イムシツ?へ~、そこに居るんだ!』
ヒ『・・・もしかして分からないで言ったの?』
は『もちろん?』
ヒロトが黙った。はは、と苦笑いの様な顔をして、行こうか、と言った。
…さっきの沈黙は、何だったんだ??
いむしつ、とかいう部屋の辺りは、色々ごちゃごちゃ。通路入り組んでるんだよな、そこだけ。
お見舞いとか言って来たが、俺もヒロトも手ぶら(笑)
?『……じられね~…』
?2『あれやり過ぎだよね、全滅じゃん…』
ヒ・は『!!』
何言ってるのかは、大体分かった…るりかの事だって。
?『あいつ此処からいなくなるべきだろ、あんな風にやれらたら俺等終わるし。』
は『テメー等何言ってんだ!!!』
びくっ、と影が揺れた。慌てて逃げて行くのが見える。
追わない事にしておこ。騒いだら怒られっちまうし。
ヒ『…しょうが無いかもしれないけど…』
ヒロトがいむしつの扉を開ける。
人の気配がしない。ベッドには誰も居なかった。
は『るりか?』
ヒ『るりかちゃん…いないね。』
探そうと一歩踏み出した時。バタン、と誰かが倒れた音。
奥の扉から、突然人が倒れてきた。
橙色の髪…え、
ヒ/は『るりかちゃん/るりか??!』
何で…突然?
る『…ぅ…』
慌てて駆け寄る。るりかの目に溜まった涙が、ポタリと床に落ちた。
るりかが…泣いてる。
声を殺して。
るりかは、それから何も喋らなかった。何も口にしようとしなかった。
瞳に闇を宿して、何処か遠くをぼんやりと眺めていた。
こうして過ぎた試験の日。
翌朝も、朝食を食べようとしなかった。
昼間になって、俺は気付いた。
その試験の日の夜、変わったのは…
るりかだけじゃ無かった、という事に…―

小説大会受賞作品
スポンサード リンク