イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第47話 瑠璃花の過去―11
~涼野side
2人が去り、私は1人部屋の前に立っていた。
小さくため息をつく。
理由1、るりかが闇に落ちた感じがしたから。
理由2、あの2人が昼食を部屋の前に置いていったから。
結局、何をしに来たんだ…あの2人は。
お盆を持って医務室の中に入る。
また、風が吹いていた。
ふ『るりか…』
今度は、反応もしなかった。
挫けないでベッドの近くまで歩いていく。枕元まで来てテーブルを探す。ベッドの脇にある穴にさしてテーブルをベッドに着けた。
その上にお盆を置く。彼女の視線が、ゆっくりとご飯に向けられた。
ふ『昨晩から何も食べていないと聞いた。食べないと体に悪い。』
る『…イラナイ。』
聞き逃しそうな程、小さな声だった。
つい2日前まで雪の上でサッカーをしていた少女とは思えない…
頭痛がした。そうだ、時間が無い…私は、この少女を…元の少女に戻さなければ。
元はと言えば私が悪い。あの時、周りに従って何も瑠璃花について言わなければ試験は無かった。
試験があったから、るりかはこうなってしまったんだ…
ふ『屑(くず)…っ!!!』
る『…。』
嫌だ、自分が嫌いだ。
私はもうじき私では無い私になる。
こんな言葉も、当たり前に使うような性格になるのだろうか、と考えていた。
るりかは顔をゆっくり私に向けた。
る『……その通り…』
ふ『!違うっ、るりかは…』
悲しそうに、でもそれを受け止めているかのように、るりかは目を閉じた。
ダメだ…心を完全に閉ざしている…
ふ『…私は、るりかにまた…あんな、サッカーをしてほしい…』
自分で居られるように、慎重に話す。るりかは、やはり無反応だった。
部屋を出た。
私は、どうしてこんなに弱くなってしまったのだろう…
~南雲side
…俺、お人好しなのか?
今、ダイヤモンドダストの練習場の前に居る。右手にはコンビニのビニール袋。明○のスーパーカ○プが1つ。
瞳子姉さんに、風介の分といって渡されたんだ。昼食の時、風介だけいなくて他の奴は食べたのに、居なくて渡せなかったから、らしい。
扉を開けると、真っ先に出てきたのはクララ。
は『風介の奴に、これ。』
ク『…今朝、風介は「今日はソーダの気分」って言ってたから多分食べないよ。』
は『気分??!取りあえず渡しといて!』
愛『貰って良い??!』
何処から沸いたんだ蜜柑…
ク『絶対食べませんよ風介。』
愛『一応見せに行くっ!』
跳ねるように蜜柑は走って行った。
そういえばあいつはバニラが大好きだったような…
~蜜柑side
やっぱりここか…
医務室の前の庭、その木の下。
サク、と少し固くなった雪を踏みしめると、風介が顔をあげた。
微笑んでスーパーカ○プを差し出すと、案の定顔をそむけた。
愛『今日はソーダの気分?』
無言。もぉ~!!!
愛『…そんなに怖い?エイリア石の洗脳作用。』
ふ『当然だ…思って無い事が口から出る……明日か今日にも、ガゼルに飲み込まれるだろうな…』
ふ(緊張から解放された。ダメだな、私は。るりかの前に行くだけで怖くなって緊張する。
だって、あいつは本当にるりかじゃないんだ。あんな怖いサッカーをする様な人間でもあった…)
愛『だからって、このままで良いの?』
迷ってほしくない、それに此処にいたら瑠璃花ちゃんもエイリア石に飲み込まれそうだった。
今、彼女は弱いし不安定な状況に居る。
気が変わったら、吉良は…
これから先、吉良がする事は日本を揺るがす。その時、瑠璃花ちゃんがいなかったら誰が止めるの?
愛『まだ行ける…』
ふ『!』
愛『風介はまだ風介だよ。……まだ行ける!ぶつけてよ!!!!るりかちゃんに、想いをぶつけてよ!!!!!!』
叫ぶように私は言った。
何で…何でこんなに本気になってんだろ、私。
瑠璃花ちゃんは大丈夫って信じてるのに。風介達には出来るって思ってるのに。
ふ『…黙ってい……!!っ、すまない…』
頭を手で押さえて、苦しそうに風介が言う。
木の幹に左手を押しつけて立ち上がり、私の目をじっと覗き込んだ。
愛『取りあえず、アイス食べる?』
ふ『くれてやる。』
風介が走って行った。
ねぇ、神様が居るならさ。
彼に、もっと、勇気をあげて下さい……

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