イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第48話 瑠璃花の過去―12



~涼野side

医務室の前に来た。深呼吸をして扉を開ける。

ご飯は、少し箸をつけた跡がある。食べたんだな、昼ごはん…

ふ『るりか!』

無反応…。枕元まで行く。

ふ『るりか、何時まで殻の中に居る気だ?』

視線が窓の外から私の顔に向けられた。でも、それ以上はダメなんだ、こちらを向いても話はきっと、耳に入っていない…

また意識は外へ向く。どうしたら、話を聞いてもらえるんだ…。

る『!』

肩がピク、と反応した。抱きしめてみた。

ピリ…と空気が震える。気にせず話す事に。

ふ『るりか、あの試験の事はお前が話すまで聞かない。あんなサッカーをしても皆はお前を流星瑠璃花だと思ってる。信じてるんだ、あれがお前の意思じゃない事を。だから…戻ってほしい、前みたいに明るいるりかに戻ってほしいんだ。』

一気に話した。頭痛がする。頼む、耐えてくれ…

る『…そだ。』

ふ『?』

る『…そだ、うそだ、皆…裏切るんだ、皆……追い出すんだ…』

背中に透けた、綺麗な天使の羽が生える。これは…あの試験の時の、羽…?!

ふ?『…んじろ、信じろ。』

きつい言葉が出た。これはガゼルの言葉?

ふ?『今の内だ。その闇を払えるのは今の内だ。』

羽が黒く染まる。しかし、それは半分ほどで止まった。

ふ『忘れても良い…るりか、戻ってくれ…!』

その瞳の闇を、私は消し去りたい…

涼野風介として。

ふ『戻ってくれ!!!!』


私が叫んだ瞬間―

光が、私とるりかを包んだ。

耳に聞こえた「ありがとう。」は、るりかの言葉。

白い純白の羽がふわりと、雪の様に舞い散った。

るりかを離したとき、既に彼女は眠っていた。

雪の上で寝ころんだ時の様に、穏やかな表情で。


戻ったのか?眠った彼女を起こしてまで確かめようとも思わなかったから、その場を離れた。

医務室を出た瞬間、私の意識は〝ガゼル"に染められた。


涼「あの時はこれで良かった。しかし、やはり…」

瑠「私にも責任はあるよ?そんな事してしまったのですから。」

その言葉に、やや驚いたのは私だけでは無い。周りの3人も瑠璃花をじっと見ている。

瑠「あの時、もしもその事を忘れられなかったら、きっと、今私はサッカーなんて出来てない。だって、もうそんな風にして人を傷付けたくないから。でも、さっきの試合ではそんな惨事にならなかった。多分、そんなサッカーをしようとする気持ちを抑えこめてるんだと思う。」

瑠璃花が私の目を見て、丁寧に言葉を紡ぐ。

瑠「それでも、その話を聞けて良かったと思う。風介君、私を大切に想ってくれてありがとう。晴矢君もヒロト君も、蜜柑ちゃんも…みんな大好き!」

―みんな大っ嫌い!!!!!!

今、幸せそうに明るい笑顔を見せている彼女を見ると、本当にあの時のるりかは何だったのだろう、と思う。

誰にも見てもらえず、裏切られ、不幸のどん底に落ちた様な悪魔は、何故るりかの体で暴れたのだろう。

ただ、今言えるのはさっきの瑠璃花の言葉で何かが吹っ切れた、という事。

愛「あ、瑠璃花ちゃん、話終わった事だし打ち上げ行かないとね!」

瑠「!そっか、ね、風介君達も行こうよ☆」

私と晴矢は顔を見合わせた。それから蜜柑を見る。

瑠「良いの、多い方がきっと楽しいよ♪」

晴矢が笑った。じゃ、行くか、と私に向かって言う。むかつく位満面の笑み。

涼「あとでガリ○リ君のソーダを奢ってくれるなら行く。」

ヒ「何で行きたくないの?」

涼「人が沢山いる=暑いだろう。暑い場所は嫌いだ。」

瑠璃花以外が苦笑する。その瑠璃花は、イナズマジャパンのマネージャーに案内されてタクシーの位置まで着いた所だ。

愛「じゃんけんで負けた人は走りね。」

全(鬼??!)

結局、もう一台タクシーを呼んで全ては丸く収まった。

打ち上げか…

騒がしくなりそうだな。